フィージビリティは英語の「feasibility」をカタカナで読んだものです。「実行可能性、実現可能性」などの意味を持ちます。また、「study」は英語を習い始めたころは多分最初に習った単語でその当時は「学習・勉強」程度の意味しか記憶する必要がなかったと思います。しかし、社会人になって企業などに就職し、管理職になると会社経営にも参画することになります。会社利益拡大を目指して新プロジェクトを立ち上げることに協力する役割を果たす可能性があります。そこでこのサイトでは「フィーズビリティスタディ」を取り上げて、その意味や実行手順、実践ポイントも解説しますので参考にして、プロジェクトをスタートアップするチャンスがあったら是非チャレンジしてください。
フィージビリティスタディとは
フィーズビリティスタディについての歴史は後述しますが、近年はビジネス英語として使われており、企業などが「新しい事業をスタートアップしよう」と意思決定する前段階で採算性や実現する可能性などをあらゆる角度から調査・分析するプロセスを言っております。
日本における「フィーズビリティスタディ」は、環境プロジェクト特に産業廃棄物関係で使われていましたが、近年はICT関係やマーケティング分野でも使われるようにもなっています。
フィージビリティスタディの意味
「フィージビリティスタディ」を実施する範囲の拡大とともに、フィーズビリティスタディの意味は「企業の新事業を事前調査」することと「実現可能性や利益などを調査」する意味で使われるようになっています。
企業の新事業を事前調査
企業は社会貢献することと同時により収益をあげて成長することを常に目指しています。そのためには何か新しいプロジェクトを立ち上げて新事業を検討する必要があります。近年はその事前調査を実施する意味で「フィーズビリティスタディ」が使われています。
実現可能性や利益などを調査
事前調査では計画する新事業が「実現する可能性があるか」「利益はどの程度の額を確保できるか」「期間はどの程度要するのか」等をメインに会社のビジョンとの整合性、その時の業界やマーケット市場の状況、社会・経済状況等も考慮しながら広い視野を持って調査をする必要があります。
フィージビリティスタディの歴史
現在は企業等の新事業スタートアップ前の綿密な調査の意味でフィーズビリティスタディが使われていますが、その歴史を知ると理解が深まると思いますので、取り上げてみます。
1933年のアメリカの政策
フィーズビリティスタディの最初の事例は世界的な恐慌を防止するために1933年に米国大統領だったフランクリン・ルーズベルトが実施した「ニューディール政策」にあると言われています。ルーズベルト大統領は、テネシー川流域の総合開発を目的として「テネシー川流域開発公社」を設立し、公共事業を展開することにより失業者を減らすなどしました。この公社は現在も活動しており、年間の発電量は約1,580億キロワット時で、関西電力(1,400億キロワット時)を上回っています。ニューディール政策については批判的な声もありますが、ビジネス大国と言われる米国で政府が公共事業に積極的に投資を行い失業者を救済した功績は評価できると思います。しかも、事業実施前に環境への影響など綿密なフィーズビリティスタディを実施していたそうですので「先見の明」がある大統領だったと言えます。
大規模公共事業で数多く実践
上記以外にも65万マイル(約100万キロメートル)の道路建設、社会資本整備を進めるために「市民保全部隊(CCC)」を設置して失業状態の若者を大量に雇用、集団生活のための宿舎を設け、道路建設、小規模なダム(堰)づくりなどの公共事業や森林の伐採、植林などの国立公園の維持管理作業等に従事させて失業の防止と人材育成にも注力しています。
この時代に政府が実施した積極的な公共事業への投資が、現在も使われている基盤整備につながっています。
フィージビリティスタディの調査項目
フィーズビリティスタディの調査項目としては、「資金・費用対効果に関すること」「技術・特許に関すること」「人材・スケジュール」「市場に関すること」が挙げられます。順に説明します。
資金・費用対効果
フィーズビリティスタディでまず調査が必要な項目は「資金や費用対効果」です。
自社を発展させるためにアイディアを出し合ってそれが実行できるかどうかを事前調査するわけですから、アイディアが固まった段階でそれを実施するには「資金がどの程度かかるのか」「そのアイディアを実行することでいくら利益が得られるのか」を調査する必要があります。企業活動を継続発展させるために良いアイディアだと思われる案がまとまれば、それをフィーズビリティスタディの対象として調査を進めることになります。その際には常に費用対効果のバランスを考慮する必要があります。次の2点について検証するようにします。
商品開発の資金と回収度
多くの場合、新しい商品やサービスを開発するには多額の資金が必要になります。仮に多額の資金を注ぎ込んで「本当に回収できるのか」「回収できるとすればその期間はどの程度かかるのか」「いくら回収できるのか」を最初の調査項目にすべきです。「商品開発のために最高のアイディアを出すことができた」とスタッフが思ってもフィーズビリティスタディの結果は「大幅な赤字」予測が出るようでは開発を断念せざるを得なくなります。しかし、アイディアは「先進性」があるので時間をかけて開発を進め完成後にマーケティング対策に注力すれば4年後にブレイクする可能性がある」という結果であれば長期プロジェクトとして検討していくことも考えられます。
費用のバランスを把握できる
次の項目は費用のバランス把握です。開発期間・材料費・人件費・販促費等の項目ごとの把握をすることでバランス把握ができ経費節減に向けた合理化を検討できます。
技術・特許
「このような商品開発を進めよう」とアイディアの意思統一がされた時はそのアイディアに関して「技術的問題と特許」について確認する必要があります。
自社で実現可能か
その商品を開発するに当たって自社が保有する技術で実現できるのか確認する必要があります。できない場合は他社との連携になると思いますが、商品開発後の取り扱いについてトラブルが生じないよう開発作業に入る前に話し合いをして、契約書等で確認しておくべきです。
特許が申請されていないか
開発を目指す商品が既に特許申請されていないか確認しておく必要があります。特許権は先願主義を取っておりますので、先に申請受理されてしまうとそれと似た商品は申請しても却下されてしまう可能性があります。このことを知らずに開発商品を市場に出すと、訴訟になり高額な損害賠償を請求される可能性があります。面倒でも調査して確認してください。確認方法は特許庁のホームページが良いと思います。
人材・スケジュール
人材やスケジュールについても可能な限り決めておくと、フィーズビリティスタディの的確な活用を図ることができます。
必要な人材の調査
意思統一したアイディアの実現行動に向けて「必要な人材は何名か」「アイディアの補完に青年層の感性を取り入れるべきではないか」「人材確保をどう進めるか」等アイディアを具体的に進める観点から「必要な人材の調査」を実施します。
実現までの日程を調査
「実現までの日程調査」は「業務分割積み重ね方式」が良いと思われます。実現までにどのような作業が必要なのか全て出し、各作業に必要な日数・時間を予測して割当て全体を合計すれば大まかな日数がでます。アイディアによっては実現までに数年かかるものがあるかもしれません。その場合は最終目標の期限を定め、それを数期に分割して進捗状況の点検と必要な軌道修正を実施します。実際に活動を始めると思わぬ事項が発生することがありますので、余裕のあるスケジューリングが望まれます。
市場
フィーズビリティスタディでは市場調査が欠かせません。どんな素晴らしいアイディアでもマーケット市場のニーズがなければ売れませんので赤字が増えるだけです。商品開発を断念する必要があるかもしれません。企業の経営戦略にも大きな影響を与えます。また、市場の現況に精通することは、新たなビジネスチャンスを発見することにもつながります。次の2点を考慮して、フィーズビリティスタディの有効活用を図ってください。
需要が見込まれるか調査
アイディアに基づき開発準備を進めている商品の需要が見込まれるか調査を実施する必要があります。需要調査方法はこれから開発する商品ですからインターネットを使って構想を説明し、どのような商品を望むか聞くことが適切だと思います。回答してくれた人には自社商品購入に使えるポイントを提供すると回答者数の増加が期待できます。
ニッチ戦略にもつながる
マーケットリサーチをしていると普段は目に見えない消費者の多様なニーズがわかりますので、「こんな商品なら売れるな」と思わぬ発見をすることがあります。それをニッチ戦略に活かすことができる可能性があります。
フィージビリティスタディの実行手順
「フィーズビリティスタディ」を実行するにはどのような手順で進めたら良いのか説明します。
課題を明確にする
企業運営をしていれば必ず様々な課題を抱えています。とりわけ会社の収益を向上させるために新事業を計画している時は、プロジェクトを設定しているのが一般的ですからフィーズビリティスタディ実行手順のトップは「課題を明確にする」ことです。具体的には「新事業の課題の原因を示すこと」と「課題解消に必要な期間の特定」をすることです。
新事業の課題の原因を示す
プロジェクトを設けているのであればそのメンバーで、設けてなければ社員が集まって話し合いをします。話題はもちろん「新事業の課題の原因」についてです。それぞれの考えを述べてもらい課題の原因について共通認識をシェアします。
課題解消に必要な期間の特定
課題となっている原因が分かればさらに前進するために課題解消に必要な期間の特定をします。期限を決めることで「やるぞ!」という気持ちになり、モチベーションの向上が期待できます。
第2段階では、要求事項をリストアップすることです。
要求事項をリストアップ
課題解決に必要な事項
課題解決に必要な要求事項をリストアップします。要求事項の例としては次のような事項が考えられます。
- 業務効率化に有効なシステムやグッズ
- 効率的に活動できるチーム編成
- プロジェクトやチームの機能拡充
課題解決にはそれに関わる人材やその活動が効率よくできることが必要です。
システムやプラットフォームの導入など
活用できるシステムの導入や技術面を安定的に支えてくれるプラットフォームなどの導入もリストアップすべきです。
代替案を明確にする
以上のようなプロセスを経て原案が固まったら次は代替案をいくつか用意し、明確にする必要があります。原案が実行できなかった時の代替措置です。
実現可能かどうか
代替案は「実行が可能かどうか」をメインにして検討し、複数用意します。原案が実現できる可能性が低いなどと判断された場合に、直ちに代替案をフィーズビリティスタディの検証にかけるようにします。
フィージビリティスタディの実行
原案をトップバッターとしてフィーズビリティスタディの判定を仰ぎますが「実行可能性は低い」と判断された場合は、代替案について判定を仰ぎます。
フィージビリティスタディの結果を評価
フィーズビリティスタディの判定が終了したら、その結果の評価をします。
プロトタイプの作成
結果の評価に基づいて後々の改良を予測したプロトタイプ(原型)を作製します。このプロトタイプを中心に引き続き論議を深めることで新たな気づきと改良案が出るでしょう。
リスク回避のためのソリューション決定
フィーズビリティスタディの判定では恐らく「実行上でリスクがある」と指摘される可能性が高いと思われますので「リスク回避のためのソリューション(解決策)」を決定します。
フィージビリティスタディの実践ポイント
ここではフィーズビリティスタディの実践ポイントについて述べます。
目標の分割
一般的に新事業が軌道に乗るのは、早くて半年から1年かかると言われています。ということは、会社が安定的な利益を得ることができるようになるのは2年以上かかるということですから、3年を一つのメルクマールとして考えるのが順当のようです。
3年間はあっという間に過ぎてしまいますので、能動的に新事業を進めるには目標を分割して進めるのが効率的です。具体的には「中間目標・小目標の設定」「従業員ごとにノルマを設定」することで活動に機動性をもたせるようにします。
中間目標・小目標を設定
3年間を1スパンとした時は1年半で中間目標達成、9カ月で小目標達成をすることになります。期間を限定することで前向きな行動を促すことができます。この節目では全員が集まって達成状況などの報告をするようにします。苦労していることや疑問に思うことなどを出し合って気軽に話し合えば、新たなインセンティブが沸いてくると思います。
従業員ごとにノルマを設定
従業員ごとにノルマを設定することで使命感が思い起こされ、従業員のモチベーションが維持されます。ノルマを設定されるのを好まない人には話し合って「MBO(目標管理制度)」により本人に目標設定をしてもらうといいでしょう。
目標達成の期限設定
上述した内容は3年間の行動計画ですから、3年後をデッドラインとして目標達成ができたか検証することになりますが、ポイントは次の2点です。」
長期的な利益を生み出す
会社が発展していくには長期的な利益を生み出す体制を構築する必要があります。新事業がその命題に応えたものであれば成功と言えます。
達成度を定期的に検証
新事業が成功したものであれば、今後も達成度を定期的に検証して改善点があれば修正していくようにします。
微調整を繰り返す
新事業を実施すると予想外の事項が発生することがあります。そのたびに微調整を繰り返しながら目的達成に向けて進むようにします。
すぐに結果を求めない
「桃栗三年柿八年」ということわざがあります。果実の種類によって植樹してから実がなるまでの年数が異なることを言っておりますが、「物事は一朝一夕にできるものではない」という「メタファー(隠喩)」も含まれています。直ぐに結果を求めずに着実に目的達成に向けた活動することが大きな果実を生むことにつながります。
トラブルを最小限に抑える
商品やサービスに関してのトラブルを最小限に抑える方法は企業が運営する事業内容によって異なりますが基本的には事前の予防策とトラブルが発生したときの対応方法になります。
事前の予防策は自社製品やサービスによりどのようなトラブルが発生する可能性があるか予想して考えられる事例を全て出し社内で話し合い、予防が可能であれば対策を講じる、それが無理であればトラブルが発生した時にどのような対応をするか規則化して社員全員が共有するようにします。
トラブルが発生した場合は、各企業のリスク管理マニュアルに従って対応することになりますが、対応の仕方で企業に与える損害が拡大することがありますので気を付ける必要があります。対応の仕方で基本的に言われていることは次の通りです。
- 最初の情報は8時間以内に開示(発表)する
- 説明責任があるので偽りのない的確な情報を伝える
- 事実確認ができていない事項は「調査中です」として後日に伝える
- 誠実な態度で対応する
きちんとしたリスク対応ができていないと長年かけて築いた企業の信用をあっという間に失いますので気を付けてください。