「カフェテリア」と言う言葉をご存じと思いますが、スペイン語のcafeteríaに由来しています。多種類ある飲食メニューから利用者が食べたいと思った種類の料理を決まっている量だけ組み合わせて食べることができる形式の食堂を言います。
このカフェテリア方式が「カフェテリアプラン」に名前を変えて、企業の「福利厚生事業」の一環として取り入れられ普及しはじめています。中間的な立場にある管理職の方々は導入の検討をするプロジェクトチームに指名される確率が高いと思います。
そこでここでは、「カフェテリアプランとはどういうものか、そのメリットや導入方法」を解説しますので参考にしてください。
カフェテリアプランとは
「カフェテリアプラン」は、会社が従業員に提供する福利厚生事業の一つとして運営されています。社員に一定のポイントが与えられ、社員はそのポイントの範囲内でカフェテリアプランを選んで利用することができます。
カフェテリアプランの由来
カフェテリアプランの由来は冒頭でも述べましたが、歴史的な経過は次の通りです。
自由にメニューを選べる「カフェテリア」が由来
19世紀から20世紀にかけてスペイン人がアメリカ大陸に渡り活動しましたが、その当時にスペイン語で「コーヒーハウス」を意味する「cafeteríaカフェテリア」
を各地に設置したのが起源と言われています。カフェテリアは多種類の料理から量は限定されますが自由にメニューを選んで組み合わせることができます。
1970年代に米国で誕生
その後1970年代に入り「カフェテリアプラン」の名称で福利厚生事業の一つとして米国で誕生しています。米国では既にこの頃から従業員の福利厚生事業などに対するニーズが多様化していたため、その対応策として考案されたものです。
新しい福利厚生のシステム
カフェテリアプランは、従来の一律授与的なプログラムと異なり自分で選択できる福利厚生プログラムですので、「新しい福利厚生のシステム」と言うことが
できます。
日本では1995年に初めて導入
アメリカと違って日本は社員が福利厚生事業などについてあまりクレイム(申し立て)しないようですので導入が遅れ、1995年にベネッセコーポレーションが導入したのが最初です。米国と比べて25年のギャップがありますが、働き方改革などが実施段階に入っており、近年は社員のニーズも多様化していますので、今後は多くの企業の導入が予測されています。経団連が2022年に発表したデータでは2019年に19.1%の企業が導入しています。
ニーズに合ったメニューを選択できる
カフェテリアの注文スタイルがヒントになって、福利厚生メニューの自由選択に発展してきた現在、どのようなメニューがあるのか調べてみますと多種多岐にわたっています。メニューについては後述しますが「ニーズに合ったメニューを選択できる」という特徴があります。
カフェテリアプランの仕組み
選択できる福利厚生メニューとして「カフェテリアプラン」がどのような仕組みになっているのか見てみましょう。
ポイント制度とメニューの選択
簡略化して言うと、会社が従業員に一定のポイントを支給することで、従業員がそのポイント内で受けられるサービス内容を自分で決定できるという仕組みになっています。
従業員に一定のポイントを支給
従業員に支給されるポイント数は各企業によって異なります。1人当たり年間数千~数万ポイントが付与されるのが一般的のようです。1ポイントを100円で換算する企業が大部分です。
サービス内容を自分で選択できる
この支給されたポイントの範囲内で企業が用意している「福利厚生サービスメニュー」を選択できます。「サービス内容を自分で選択できる」ことが従来の福利厚生サービスとの大きな違いです。
カフェテリアプランとパッケージサービスの違い
カフェテリアプランに似たメニューに「パッケージサービス」がありますので
その違いを見てみましょう。
パッケージサービスは定額制の福利厚生
パッケージサービスは定額制の福利厚生メニューです。1人当たりの費用を定額制で支払うとパッケージ化されたサービスを従業員が自由に利用できるものです。支払う1人当たりの費用が安く、他企業と提携するサービスを利用できますので、従業員が多い大企業にはメリットがあると言います。サービス内容の変更はできません。
カフェテリアプランは選択型の福利厚生
パッケージサービスに対してカフェテリアプランは、先述したように「選択型の福利厚生メニュー」ですから、自由度と従業員の満足度が高いと言えます。
カフェテリアプランのメリットとデメリット
カフェテリアプランの導入を検討する時に、そのメリットとデメリットがあることを知っておいてください。
カフェテリアプランのメリット
カフェテリアプランのメリットとして次の2点があげられます。
従業員への公平な福利厚生
従業員が一定額のポイントを付与されて、そのポイントの範囲内で自分が受けたい
福利厚生メニューを選択できますので、「従業員への公平な福利厚生システム」であると評価することができます。
福利厚生費の管理がしやすい
年間予算の上限が決まれば、従業員に付与するポイント数を算出することができますので、会社側は「福利厚生費の管理がしやすい」と言えます。(社員数×年間付与ポイントが年間予算額の上限)
カフェテリアプランのデメリット
カフェテリアプランのデメリットとしては、次の2点をあげることができます。
費用と手間がかかる
ポイント制度のためその管理システムを構築する必要があり費用がかかります。
また、そのシステムを運用する職員が必要で手間がかかります。
内容によって課税と非課税がある
例えば、ポイントの付与が職員や役員で異なる場合は課税対象、換金性のない現物支給は非課税など内容によって課税対象と非課税があります。
カフェテリアプランのおもなメニュー
カフェテリアプランで実際に運用されている主なメニューの概要は次の通りです。
生活・財産系
生活・財産系では次のような補助メニューがあります。
育児費用補助
育児費用・育児用品の補助を実施
医療費補助
医療費・人間ドック・予防接種費用の補助を実施
保険料補助
財産形成の一環として各種保険料の補助を実施
住宅ローン補助
住宅ローンの補助を初め、住宅・引っ越し・リフォームについても補助を実施
自己啓発・趣味系
自己啓発や趣味系のメニューは次の通りです。
資格取得や講習などの費用補助
資格取得や自己啓発を目的に講習を受けた場合にその費用を補助
IT機器購入費の補助
パソコンなどのIT機器を購入した場合にその費用を補助
旅行費用補助
宿泊費・旅行費の補助
レジャー施設の利用補助
レジャー施設を利用した場合にその利用費を補助
カフェテリアプランの導入方法
カフェテリアプランを導入する場合にどのようなことが必要か述べます。
運用開始前
運用開始前は多角度からの調査期間とすることをお勧めします。資料収集して「社内の現状分析、特に福利厚生事業を徹底分析」する。従業員にどのような福利厚生メニューを希望するかアンケート調査や懇談会を実施する。導入している他社の状況調査をして課題点などを把握する等に当てます。その結果「導入する」という結論がでたら、導入する理由を明確に整理して説得性のあるものにする。(社内のオリエンテーションに利用)
制度の設計
導入が決定したら「制度の設計」に入ります。自社従業員のニーズにマッチした福利厚生メニューや運用規則の設定、付与するポイントの扱い方やメニューとの関係整理、事務運用フロー設計等々、一番労力が要求される部分です。
システムの開発
制度の設計が完了すると、その制度を運用するシステム開発を行います。
自社スタッフにシステム開発の経験者がいれば、その人を中心に自社で開発することができますが、いない場合はアウトソーシング(外注)になります。アウトソーシングを利用する時は制度設計の内容を正確に理解してもらう必要があります。また、多くの企業を担当した実績のある会社を選んでください。
運用開始後
運用開始後は次の2点に留意してください。
運用と管理
システムの運用は順調か、ポイントの管理は間違いなくできているか等常に点検する必要があります。従業員にアンケート調査などをしてメニューがニーズに合致しているかなども調査します。
分析と改善
運用状況や管理状況を調査・分析して改善点があればシステムに反映させます。
カフェテリアプランの注意点
カフェテリアプランを運用するなかで出ている次のような注意点に留意してミスのないようにしてください。
課税か非課税か確認
カフェテリアプランのサービスには、課税されるものと非課税のものが混在しています。「課税対象」か「非課税」なのか確認が必要です。次の2点に留意してください。
国税庁の規定をもとに判断する
国税庁の次のような回答があります:従業員に付与されるポイントに係る経済的利益については、原則として従業員がそのポイントを利用してサービスを受けたときに、そのサービスの内容によって課税・非課税を判断することになります。
換金性のあるサービスは課税される
例えば、ポイントを商品券に変えるとその商品券は課税対象になります。社員旅行・社宅や寮の貸与・過度の通勤手当なども条件を満たさないと課税されることがあります。非課税にするには要件が決まっていますので、その都度確認することになります。
公平なサービスの提供
カフェテリアプランは従業員全員が同じポイントを付与されますので、公平なサービスの提供を受けることができるはずですが、ポイントの付与が単年度に限定している企業が大部分ですので、次の2つの事項に留意してください。
ポイントの失効に注意
ポイントは付与された年度限りで持ち越せませんので、その年度が終わる前に使い切ることを周知してください。
従業員に十分な告知が必要
カフェテリアプランが公平なサービス提供を基本としていることやどのようなサービスがあるのか従業員に十分な告知をしてください。