新卒職員として企業に就職し、営業部などに配置されると毎日のように製品開発やマーケティングで他社と激しい先陣争いをしていますので おそらく「ロジカルシンキング」という言葉を耳にしたことがあると思います。「ロジカル」は英語の「Logical」で日本語の意味は形容詞として「論理的な・論理にかなった・道理にかなった」などの意味があり、シンキングは「thinking」で「考えること・思考」などの意味がありますので日本人は「あ、分かった『論理的思考ですね』」と理解できるものと思います。
現在はどの企業も企業運営でロジカルシンキングを最重要視していますが、米国ではこのような考え方をビジネスに取り入れていないと言うのを聞いたことがありましたので、本当なのか調べたところ全く逆でロジカルシンキングは「世界の共通語」であることが分かりました。例えば米国の1例ではロジカルシンキングを次のように述べています。
「論理的思考は、状況を分析し、賢明な解決策を考え出す行為としても定義できる。」(Logical thinking can also be defined as the act of analyzing a situation and coming up with a sensible solution。)
そう分かるとますますロジカルシンキングを広い角度から取り上げてみたくなりました。
そこでここでは「ロジカルシンキングとはどのようなことを言うのか?類義語との違いやメリット、代表的な手法も解説」しますので、知識の蓄積に役立ててください。
ロジカルシンキングとは
「ロジカルシンキング」は上述しましたように日本語では「論理的思考」と訳され、当初はコンサルティング業界を中心に使用されていた言葉ですが、現在は業種・職種・部門等を問わず、ほとんどの分野で使用されています。
ロジカルの意味
「ロジカルの意味」について、冒頭で「論理的思考」を意味することを述べましたが、もう少し具体的に言うと「体系的に整理する」「理論に当てはめ矛盾をなくす」という意味でも使われています。
体系的に整理する
例えば、今年度の貴社の決算額が前年度より1.5倍も増加した時、その要因を体系的に整理・分析することで説明がつくはずです。もし、特許権を獲得した場合は次のようなストーリーが考えられます。
- 7月に他社にないサービス開発に成功し、メディアを使った大キャンペーンを実施
- 同時に特許庁に特許申請を行った。(特許庁が出願公開)
- 特許庁による実態審査が実施され4か月後に特許認可が下りた。
- 設定登録をして以後独占販売ができるようになった。
このように体系的に整理すると決算額が1.5倍増加した理由が明確になります。
理論に当てはめ矛盾をなくす
ロジカルシンキングですから、常に理論的な考え方が要求されます。そのため1つの事象が発生した時は、その要因と思われることを分析してそれを土台にストーリーを作成して「理論に当てはめ、矛盾がないか常に精査し矛盾をなくす努力」が求められます。
ロジカルシンキングの定義
「ロジカルシンキング」はほとんどの企業で使われていますので、きちんとした定義があると思い込んでしまいますが、確立した定義は今のところありません。それでも「論理的思考」であり「筋道を立てて分析すること」の2点は必ず使われています。
論理的思考
起承転結と言う言葉をご存知だと思います。文章を作成するときは「起承転結を心がけるように」と学校などで言われたことがありませんか?
起承転結はもともと四字熟語で、中国の漢詩で使われていた文章の構成方法に由来していると言われています。
例えば、それを日本の古い物語「桃太郎」で説明すると次のようになります。
起:
昔々あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいておじいさんは芝刈りに、おばあさんは川で洗濯していました。すると川で洗濯していたおばあさんのところに大きな桃が
流れてきたのでそれを拾い上げ、持って帰ります。家でおじいさんとその桃を食べようと切ってみると、中から元気のよい赤ちゃんが飛び出してきました。二人には子どもがいなかったので、神様が授けてくれたものと喜び「桃太郎」と名づけて大切に育てます。
承:
すくすくと育った桃太郎はある日、悪い鬼を退治するために鬼ヶ島へ行きたいと言います。おばあさんはそれを聞いて、きび団子を作って桃太郎の腰につり下げてやります。
転:
桃太郎が道中で出会った「犬」と「猿」と「キジ」がこのきび団子を欲しがったので与えると次々と桃太郎の家来となり、鬼ヶ島へ乗り込んで、鬼と激しい戦いをおこない、桃太郎組が鬼退治に成功します。
結:
その結果、鬼たちが盗んだ島の財宝を持って故郷に帰り、幸せな生活を送ることができました。
ちょっと息抜きで、脱線しましたが、感想はいかがでしょうか?起承転結文が「論理的思考」に対応していると思われませんか?
筋道を立てて分析すること
日本語は起承転結文に適していると言われています。ビジネスシーンでも使われています。
例えば、自社製品のプレゼンを行う場合は、「筋道を立てて分析した結果」や自社製品がいかに優れていることが分かったかを具体的に伝えることで説得力を持ちます。カスタマーの購入意欲をかきたててくれます。その上で、企業の日常活動ですからスピードも求められます。それに適しているのがアメリカン・スタイルです。アメリカン・スタイルは最初に「結論を述べる」「次にその理由を述べる」「結論を補強するデータや具体例を示す」「最後にもう一度結論を述べる」という流れが一般的です。起承転結文を素材にするにしても、筋道を立てて分析することは、常に求められます。
ロジカルシンキングの類義語
ロジカルシンキングは現在企業運営で最も重視されていますが、その周辺に類義語として「クリティカルシンキング」と「ラテラルシンキング」がありますので、取り上げておきます。
クリティカルシンキング
「クリティカルシンキング」は「批判的思考」と訳されています。「クリティカル」は英語でスペルは「critical」意味は(批判的な)ですので、シンキングと合わせて「批判的思考」と訳されています。
批判的思考と訳される
この「批判的思考」はロジカルシンキングとの対比で考えると理解しやすいと思います。例えばロジカルシンキングでその論理的思考がほぼ間違いなく構成されていると思われていても、視点を変えると新たな気づきが生まれ、さらにロジカルシンキングを促進させる相互作用があると言われています。
ロジカルシンキングとの違い
ロジカルシンキングとの違いは、先行して提唱されたロジカルシンキングの論理や事実あるいはデータ等をクリティカル(批判的)な観点から点検した結果、論理や事実に疑義が生じたり、正しいとは言えないデータが使われていたなどの問題点が明らかになることです。
ロジカルシンキングにより提唱された「論理や事実は本当に正しいのか」「使われたデータは論理や事実をバックアップするのに十分か」など視点を変えた点検により不備がみつかれば、提唱されているロジカルシンキングを補強する効果もありますので、同時並行的に実施されることもあります。
ラテラルシンキング
もう一つの類義語はラテラルシンキングです。ラテラルは英語でそのスペルは「lateral」です。意味をウェブ専用辞書である英辞郎で調べると名詞形で使われる時は「側面・側部」形容詞形の場合は「側面の」あるいは「水平な」の意味で使われています。
ラテラルシンキングは1967年にエドワードデボノという情報処理の心理学的研究者が提唱した考え方です。ロジカルシンキングが1つの枠組みの中で理路整然と実施されているのに対して、枠組みにとらわれずにもっと自由な発想をした方がイノベイティブ(革新的)な事業が生まれるのではないかという考え方です。
新しい視点で結論を出す
つまり「新しい視点で結論を出す」ことを意味します。固定観念を捨てて多角的な視点から新たな事業展開を試みる大胆な発想ですから、事業環境が目まぐるしく変化し、スピーディーな解決策が求められる現代でも注目されています。
ロジカルシンキングとの違い
「ロジカルシンキング」と「ラテラルシンキング」の違いを問われた時は、「ロジカルシンキング=垂直思考」「ラテラルシンキング=水平思考」と答えるのが分かりやすいと思われます。水平思考は素晴らしいアイディアを出して問題解決をするために既成の理念や概念にとらわれないという考え方です。
ロジカルシンキングのメリット
ここではロジカルシンキングのメリットについて述べます。
ロジカルシンキングのメリットは、「自分の意見を伝えやすくなる」「分析力が向上する」「問題解決能力が向上する」「コミュニケーション能力が向上する」「生産性が向上する」などをあげることができます。以下、順次説明します。
自分の意見を伝えやすくなる
何事でもそうですが、一つのことに精通すると思わなかったような副次的な技能・技術を会得することがあります。常にロジカルシンキングを実践していると情報の分析力が磨かれ、問題の内容把握や理解力が飛躍的に上達します。自分が従事している業務関係の話を同僚や上司が話題にすると直観的に「あ、あのことだな。」と思ったご経験があると思います。
無駄のない説明
その結果、例えばプロジェクトなどに参加しても内容を理解していますので、自分自身の言葉で説明できますので、「無駄のない説明をする」ことが可能です。
根拠を示して信頼を得る
当然、その案件の背景や課題も把握していますので、その根拠を示してメンバーなどから信頼を得ることにもつながります。
分析力の向上
ロジカルシンキングによる「分析力の向上」は「問題を客観視できるようになる」「関係性を理解できるようになる」などのメリットをもたらしてくれます。
問題を客観視できる
ロジカルシンキングにおいて、さまざまな事象や問題について分析する時は「問題を分類化する」「因果関係や相関関係を解明する」「それらに基づく適切な対応策や判断をする」というプロセスを踏みますので「問題を客観視する」ことができるようになります。
関係性を理解できる
また、以上のプロセスを踏むことで、それぞれの関係性を理解することもできます。
関係性が分かれば、対応策も見つかります。
問題解決能力の向上
ロジカルシンキングは「問題解決能力の向上」にも役立ちます。その理由は次の2点です。
原因と結果の因果関係
ロジカルシンキングに精通すると、会社の運営などで問題が発生したり課題が生じた場合は、「何が原因でそのような結果が生じたのか」正確な判断ができるようになります。
改善点を見抜ける
原因と結果が判明すれば、どのような対策を取れば良いのか「改善点を見抜くこと」ができるようになります。
コミュニケーション能力の向上
「ロジカルシンキング」と言うと、どうしても思考能力の向上にファーカスされる傾向がありますが、もう一つ忘れていけないことは、コミュニケーション能力の向上です。
ロジカルシンキングで培われた膨大な情報量の中から伝える必要があると判断した情報をピックアップして利害関係者に伝えるためのコミュニケーション能力の向上を図る必要があります。
相手の意見も理解しやすくなる
レベルアップしたコミュニケーション能力で相手方に語りかければ、相手方もそれに応えてくれます。相手方も同程度のコミュニケーション能力があれば、いろいろな問題について会話が弾むと思います。英米等のビジネスパーソンに比べて、日本のビジネスパーソンが一番遅れている部分と言われています。例えば米国の小学校では、大部分が「ディベート」の時間を設けています。日本でも少しずつ取り入れられるようになりましたが、はるかに遅れています。
建設的な意見交換
コミュニケーション能力が高まれば「建設的な意見交換を行う」ことができます。ビジネス用語としてのロジカルシンキングは、単に理論的思考の枠組みの中に留まるものではなく、そこから派生するさまざまな問題も含まれます。両者のコミュニケーション能力が高ければ「建設的な意見交換」ができ、トータルな解決策を見出すことが可能になります。
生産性の向上
生産性の向上は「プロセスの無駄を省ける」「問題の本質を見極めることができる」ことに連結します。
プロセスの無駄を省ける
近年はロジカルシンキングの効率的な実現に向けて様々なツールやプラットフォームが誕生しています。例えば、ロジカルシンキングのための「ロジックツリー」というフレームワークがありますが、これらの有効活用によって生産性の向上を図ることができ、ロジカルシンキングの実現過程において「プロセスの無駄を省く」ことができるようになっています。
問題の本質を見極める
また、プロセスの無駄が省かれることによって時間的な余裕ができ「問題の本質を見極めること」が可能になっております。
ロジカルシンキングの手法
ここではロジカルシンキングの手法について述べます。ロジカルシンキングの手法としては「ピラミッド構造」「フレームワーク思考」「ゼロベース思考」の3つがあげられます。
ピラミッド構造
「ピラミッド構造」は「ピラミッドストラクチャー」とも呼ばれていますが、その名称どおり「結論を頂点とした構造のものを言います。
結論を頂点とした構造
具体的には「最も主張したいこと、つまり結論を頂点におき、その根拠は下層部に配置」されます。
トップダウンとボトムアップ
会社で活動していると「これはトップダウンだからね」と言われることがあると思いますが、それは「経営層から命令された活動」を意味します。逆に社員が「このような活動をしたらどうでしょうか」と上層部に提案して採用された活動はボトムアップになります。近年はCEO(最高経営責任者)といえどもAIを始めとするICT関係に関心を持ち始めていますが、会社発展のためにはそのフロントラインで頑張っている社員の方々が実情を良く把握されていますので、ボトムアップの増加が好ましいと言えます。
フレームワーク思考
フレームワーク思考では「ロジックツリーの活用」や「3種類の基本を利用する」ことがあげられます。
ロジックツリーを活用
テーマや課題がツリー状に構成された図形をご覧になったことがあると思います。これを「ロジックツリー」と言います。ロジックツリーは問題解決方法の洗い出しとしてこのような方法を取っています。
3種類の基本
この「ロジックツリー」には、次のような「3種類の基本」があります。
- 要素分解ツリー:最初に問題や課題を全体として捉えてから、部分や要素に分解して整理する
- 原因究明ツリー:問題や課題についてそれを生み出している原因が何かを追求する。
全体と部分の包含に加えて問題や原因の「量と質」にも着目する - イシューツリー:例えば貴社が何か目的を掲げているのであれば、その論点を洗い出すために「いま、何をすべきか」を明確にする
等です。
ゼロベース思考
「ゼロベース思考」はそのネーミングが示唆するように「白紙の状態からスタートする」ことと「先入観を取り除くこと」を意味します。
白紙の状態からスタート
「ロジカルシンキング」についてこれまで述べてきたことが貴方の脳にインプットされていると、そのいくつかは先入感や固定観念となっている可能性があります。豊かな発想を担保するために一旦それらを忘れて白紙の状態からスタートしてみてください。
先入観を取り除く
「先入観を取り除く」ことは「白紙の状態からスタート」に連結しますが、ある業務に詳しい人ほどその業務を実行するに当たっての先入観を持っています。その先入観に基づいて業務処理を行っていると思いますが、一旦それを忘れて「もっと何か良い方法はないのだろうか?」と思いつくアイディアを書き連ねていくなど、これまでのやり方に疑問を投げかけることから出発することをお勧めします。
ゼロベース思考法の参考書や研修機関がありますのでご利用されることも1案です。