ディスクロージャーとは?意味や目的、メリットとデメリットも解説

貴方が管理職で上層部から会社のディスクロージャーを検討するように言われて部下に「わが社もディスクロージャーを検討することになったので協力してもらうことがあるかもしれないが、そのときはよろしく」と声をかけると部下から「ディスクロージャーってなんですか?」と質問されるかもしれません。株主・投資家・銀行・金融機関などの関係者でないと「ディスクロージャー」という言葉を知らない可能性があります。

そこでここでは、ディスクロージャーについて、意味や目的、そのメリットとデメリットについても解説しますので、参考にしてください。

 

ディスクロージャーとは

「ディスクロージャー」は情報開示もしくは情報公開と呼ばれています。

ディスクロージャーの意味

「ディスクロージャーの意味」は次に述べる通りです。

英語の「disclosure」(情報開示)が語源

英語の「disclosure」を英和辞典で調べてみますと「(秘密の)公表、(情報の)公開・発表・暴露・露見・発覚」等の日本語訳が出ていました。いろいろな意味で使われていますが、最近は行政機関に限らず企業なども「透明性」を要求されていますので「情報開示」と捉えるのが最適な訳語と思われます。

IT関連企業がセキュリティ用語として使用

英語の「disclosure」を日本ではカタカナ語でそのまま使っていますが、この用語が使われたのは「IT関連企業がセキュリティ用語として使用」したのが初めてでした。パソコンのソフトやシステムに何か障害が発生した時は直ちにその状況を顧客に知らせて被害を最小限に留めるという「顧客第一主義」の思想に基づくものです。

近年のディスクロージャー

昨年(2022年8月24日)に亡くなられた京セラの創始者である稲盛和夫氏が顧客第一主義を掲げておられましたが、近年のディスクロージャーはどのような状態でしょうか見てみます。

業界を超えて広く使用されている

顧客第一主義の観点からは、幸いなことに「業界を超えて広く使用されています。」会社組織のディスクロージャーは自社の経営状況を明らかにすることですが、証券取引法で企業のディスクロージャーが義務化されていることもあって、投資家・株主・債権者などの保護を目的に企業のディスクロージャーが実施されています。

企業や行政が情報を公開すること

ディスクロージャーは、企業のみならず行政が情報公開することも含まれます。

行政の情報公開につきましては「情報公開法」があり、行政の情報を知りたいときはこの法律に基づいて「開示請求(情報公開請求のこと)」をすれば、都道府県や市区町村は開示しなければなりません。ただ、プライバシーに関することなど開示になじまない例外も定められていますので、開示を拒否するあるいは開示不適当と判断された部分を黒塗りすることがあります。

また、この処分(開示請求)に不服がある時は、行政不服審査法に基づき不服の申し立てをすることができます。その場合は、処分庁の最上級行政庁になります。

ディスクロージャーの目的

企業にとってディスクロージャーをする目的は何でしょうか?

ディスクロージャーが生まれた背景

このサイトを訪問していただいた貴社は「ディスクロージャー」する明確な目的を持っておられると思いますが、次に述べる「金融システムの変革」や「健全な株式市場の維持」をするという政策が「ディスクロージャーが生まれた背景」にあったことを理解すると納得できると思います。

金融システムの変革

「金融システムの変革」は現在の財務省が大蔵省だった1996年に開始されました。当時はグローバル化の波が押し寄せ変革を余儀なくされていました。そこで大蔵省は「Free(市場原理が働く自由な市場に)」「Fair(透明で信頼出来る市場に)」「Global(時代を先取りする市場に)」を基本理念として2001年までに改革が終了するプランを作成し活動をした結果は健全な株式市場の維持を優先していくことでした。

健全な株式市場の維持

当時のコメントは次の通りです。

「本改革の実現に当たり金融機関の不良債権問題の速やかな処理を促進するとともに、早期是正措置の導入やディスクロージャーの拡充などを通じて金融機関等仲介者の健全性確保に努め、金融システムの安定に万全を期すことが重要である。」

というものです。金融システムを安定させることで「健全な株式市場の維持」をしていこうとする意図がうかがえます。

ディスクロージャーの役目

ディスクロージャーにおける企業の役目は「企業の経営状況の公開」と「投資家の保護」にあります。

企業の経営状況の公開

投資家や株主あるいはステークホルダーと呼ばれる利害関係者の保護を、株式の世界では非常に重視しております。「企業の経営状況の公開」はそのスタンスを明確に示したものと言うことができます。例えば、2021年度はコロナ禍で企業実績が落ち込んでいるが包み隠さず公開することで投資家や株主は理解して信頼関係が醸成できることを読んでいたものと推測できます。  

投資家の保護

ディスクロージャーには法律に基づき上場企業に課せられる強制的なものと、企業が任意に行うものの2種類がありますが、いずれも「投資家の保護」を目的としています。投資家の動きは株式市場全体に大きな影響を及ぼしますので、厚く保護されています。

ディスクロージャーのメリットとデメリット

ここでは「ディスクロージャー」のメリットとデメリットを取り上げます。

ディスクロージャーのメリット

ディスクロージャーのメリットとして「信頼の獲得」と「投資を呼び込む」ことがあげられます。

信頼の獲得

上述しましたが企業のディスクロージャーによって株主や投資家等との間で信頼関係を保持することは企業側としては最優先事項です。そのため、企業は法定以外でも様々な取り組みをしています。

投資を呼び込む

例えば、ディスクロージャー誌の発行やディスクロージャーをホームページで公開するなどの活動も実施しています。このディスクロージャーの普及を請け負う企業が出てきており、多数の企業が依頼していますので、いかに重要視しているかが分かります。このような積極的な活動が投資を呼び込むことにつながっています。

ディスクロージャーのデメリット

ディスクロージャーのメリットを強調しましたが、その対極にあるデメリットは「コストがかかる」ことと「マイナスイメージも公開」することです。

コストがかかる

メリット獲得の活動は、情報管理などでスタッフを張り付ける必要があります。人件費などのコストがかかることを覚悟する必要があります。

マイナスイメージも公開

「マイナスイメージも公開」することにも懸念が生じます。競合他社と激しく競い合っていますので、弱点を知らせることになります。また、メディアは興味を引くために極端に誇張する傾向がありますので、開示した内容が問題になることもあり得ます。

企業が行うディスクロージャー

ここでは企業が実施するディスクロージャーについて述べます。

法律で決められているディスクロージャー

法律で決められている「ディスクロージャー」は、「決算と短信の公表」「有価証券報告書の公開」「業績に影響を与えた情報」が対象になります。

決算と短信の公表

決算と短信は全ての上場企業が公表する義務があり、決算および四半期決算の発表を行う際に、決算内容の要点をまとめた書類です。事業年度又は連結会計年度に関する決算の内容及び四半期累計期間又は四半期連結累計期間に関する決算の内容が定まった時は、直ちにその内容を開示することが義務づけられています。

有価証券報告書の公開

「有価証券報告書」は金融商品取引法により公開が義務付けられています。その内容は、

主要な経営指標等の推移、資本金、株式資本比率、キャッシュ・フローなど、企業の数年間の推移がすぐにわかるように決算等から抜粋された重要な指標が記載されています。さらに、企業の概況では、提出会社だけでなく、関係会社や連結会社の情報も記載されます。投資判断に最適な報告書です。

業績に影響を与えた情報

「業績に影響を与えた情報」も報告義務の1つですが、具体的には企業の業績に大きく影響した「適時プレスリリース」などがあげられます.

企業が任意で行うディスクロージャー

「企業が任意で行うディスクロージャー」には「IR(Investors Relations)」と「内容は企業自身で決定できる」ものがあります。

IR(Investors Relations)

「Investors Relations」でそのまま検索すると多数の英文の勧誘文が出てきましたが、 

投資判断に必要な企業の経営状況や財務状況などを投資家に向けて提供する活動を言います。具体的には株主や投資家に呼びかけて企業説明会や決算説明会などを開催して投資家などの関心を得るような活動をしています。IRの検索だけで英文の呼びかけが出てくると「さすがビジネスの国だな」と感心します。

内容は企業自身で決定できる

「内容は企業自身で決定できる」と言われると逆に「何をしたらいいのか」迷いますが、投資家や株主が投資し易い環境づくりと考えると、「テーマを決めた定期的な懇談会」

「自社施設見学会」などが思いつきます。親近感を持ってもらえるようなプログラムを

計画すると良いと思います。

金融機関が行うディスクロージャー

金融機関が行うディスクロージャーについては「取引相手に対する情報公開」「価格形成の促進」「市場の健全性の維持」の3点について述べます。

取引相手に対する情報公開

「取引相手に対する情報公開」は「リスク関連情報」があり「金融機関の株価に影響」します。

リスク関連情報

金融機関はその取引相手に対してその金融機関が負っているリスク量とリスクの管理状況等評価ができるリスク関連情報を提供しています。株式市場やFX市場の参加者はこのリスク関連情報により取引相手を選びやすくなります。     

金融機関の株価に影響

このようなリスク関連情報の提供は、「金融機関の株価」「資金調達コスト」に反映されていると推測されています。

価格形成の促進

取引先選定のために実施する金融機関の情報開示は、「価格形成を促進」させると言われています。

 金融商品の価格に影響

そして価格形成の促進は各種金融商品の価格にも影響します。「株式、債権、金利、為替など原資産となる金融商品から派生した取引」であるデリバティブにもおよびます。

市場から高評価を受ける

また、「市場から高評価を受けるため」さらにディスクロージャーを利用しようとする刺激を受ける可能性があります。

市場の健全性の維持

ディスクロージャーを行う金融機関の経営陣は、株式市場・FX市場などで活動する市場参加者たちから高評価を獲得するために「経営方針の見直し」「リスク管理の技術向上」「リスク管理方針の厳格化」などに取り組むことが期待できます。

経営規律の向上

こうした経営規律の向上が「市場の健全性を維持」することに貢献することは明らかです。

経営方針の公開

経営状況の開示に留まらず、「経営方針の公開」まで進展することで「市場の健全性の維持」よりもさらに進歩するものと思われます。


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