就職みらい研究所が実施した2024年卒業の大学生・大学院生の就職内定状況は2023年4月時点では48.4%だったのが6月時点で79.6%になっております。約8割の大学生・大学院生が就職先の内定を勝ち取っていますので、企業側も優秀な人材確保に熱を入れている結果と思われます。
大学生の就職率が高いことは、日本経済が順調であると捉えることができますので喜ばしいことですが、他方で厚生労働省の調査では平成31年3月に卒業した大学生就職者の3年以内の離職率が31.5%と言いますので、原因はいろいろあるのでしょうが、せっかく企業に就職してもその職場が自分に合わなかった人が多いと言えます。
企業に事務職として就職した場合は、その企業の総務部あるいは人事部が配属先を決定するのが一般的です。「どの部門に配属されるか分からない」という不安と「実際に配属された部署は自分が希望するところではなかった」というミスマッチが離職につながっている可能性もありますので、ここでは最初に配属される可能性が高い「営業事務」を取り上げ、「営業事務とはどのような仕事か、一般事務との違いや業務内容、必要なスキルも解説」しますので、あらかじめ知っておくと役に立つと思いますので参考にしてください。
営業事務とは
初めにここでは「営業事務」を概括的に捉え「営業事務の主要な業務」と「一般事務との違い」を説明します。
営業事務の主要な業務
営業事務の主要な業務としては「社内業務」と「社外業務」に大別できます。
社内業務
社内業務は文字通り外出することなく、社内にとどまって当面は先輩社員などの指示に基づいて実施する営業事務です。スタイルは会社によって異なりますが、配属された部署内に自分専用のデスクが与えられ、そこで営業事務を行うのが一般的です。業務内容は社内の会議資料作成・受発注データ入力、請求書の作成・備品管理など多岐にわたり正確性が求められます。
社外業務
社外業務は配属された部署が営業部ですから取引先や顧客対応などいわゆる「ステークホルダー」と呼ばれる利害関係者を対象とした営業事務を処理することになります。当面は先輩などが新入社員紹介として営業部に関係ある外部企業などに連れていってくれると思いますので、会社が用意してくれる名刺(?)を持って関係先の社員などと「名刺交換」することになると思います。それで新入社員としてのデビューを果たします。デビュー後は、顧客に対応して、顧客から請求された資料作成や顧客との電話やメールでのやりとりなども実施します。
一般事務との違い
営業事務と一般事務は共通点が多いですが、営業事務は「営業担当者のサポート」「取引先との対話が多い」「多様なスキルが求められる」などで一般事務との違いがあります。
営業担当者のサポート
一般事務は大部分が人事部あるいは総務部に属して全社的な事務を担当します。これに対して営業事務は営業部に属して営業担当者のサポートをすることが中心になります。
取引先との対話も多い
一般事務の担当者が取引先と対話するのは、例えば、各部署が必要な文具類などを一括購入する時にその業者と交渉するぐらいですが、営業担当の事務は営業に関わる全ての事項を処理する必要がありますので、「取引先との対話も多く」なります。
多様なスキルが求められる
営業事務では書類作成が中心業務になります。そのためPC操作をできることが必須になっています。具体的には、「基礎的なパソコン操作スキルがある、WordやExcelといった基本的なビジネスソフトウエアを問題なく扱うことができる」などのスキルが必須です。 さまざまな書類作成やデータ入力が求められますので、入社する前にPCスキルを会得しておくことをお勧めします。会得しておけば、一般事務でも評価されます。
営業事務の業務内容
営業事務ではパソコン操作をできることが必須であることを述べましたが、営業部門の日常活動の中では「電話・メール対応」「書類の作成」「資料の作成」「書類のファイリング」なども営業事務として対応する必要があります。
電話・メール対応
「電話・メール対応」をする時は、「営業部署の代理」として対応し、単に「取り次ぎにとどまらないこと」そのために日ごろから「自社商品・サービスに対する理解を深めておくこと」が求められます。
営業部署の代理
電話をかけてくる人、メールを送ってくる人が「営業部の〇〇さんをお願いします」と指定しない限り営業部を一体的に捉えていますので、対応する人は営業部署の代理人として責任を持つ必要があります。
取り次ぎにとどまらない
そのため、問い合わせ事項については、それを受けた人が調査を行い、内容が正しい回答文であることを確認することが必要です。電話の問い合わせに、うろ覚えで回答すると後でトラブルが生じることがありますので、「近くに先輩がいれば確認する」いなければ「確認するのに少しお時間をいただきたいと存じます。分かり次第折り返しお電話させていただきます」などいったん電話を切るような対応をすることも必要です。営業部門は特にチームワークが重要であることを常に意識する必要があります。
商品・サービスに対する理解
営業事務担当であれば「自社商品・サービスに対する理解・見識」を深めておくことが大切です。取り扱っている自社商品やサービスに精通していれば、顧客などからクレイムがあった時に問題点を即時に把握することができ、大きな問題化する前に収束させることが可能になります。
書類の作成
「書類の作成」は営業事務の本丸ですので「作成する書類の例」と作成するに当たって「正確さと速さが求められる」ことを述べます。
作成する書類の例
「作成する書類の例」についてそのいくつかを前述しましたが、もっとブレイクダウンして具体的にあげますと最初に取り組む必要がある書類は次のようなものです。
「見積書」「契約書」「発注書」「納品書」「請求書」「検収書」「伝票」
これらの書類はひな型があったり、既に印刷されていて文言や数字等を書き込めば済むものが多いですが、営業事務の出発点となります。
正確さと速さが求められる</h4>
そのため、これら全ての書類について記入事項等に誤りがないか確認し、その作業をスピーディーに処理することが求められます。スピードが必要なのは、その書類がないと仕事を始めることができないことがあるからです。数量・条件・納品日のチェックは特に慎重な対応が必要です。
資料の作成
資料の作成についてもいくつかの項目を先述しましたが、ここでは「各種ツールの活用」と「指示がある時はそれを理解して従う」ことについて述べます。
各種ツールの活用
ICT関係の進歩が目覚ましく、「各種ツールの活用」ができるようになりました。とりわけ営業部門は自社商品やサービスのプレゼンを実行する時はパワーポイントやキーノートあるいはワードを利用できるのが強みになっています。操作スキルを会得すれば見違えるようなプレゼン資料を作成できますので、営業事務が高く評価されます。ぜひ取り入れてください。
指示の理解
プレゼンする人は自分が納得する資料を使って実行するのが一般的です。例えば、パワーポイントを使う場合は自分なりのストーリーを作ります。営業事務としては、それを実現することが腕の見せ所ですので、話し合いをしてその「指示を良く理解」した上で作業を進めるようにしてください。中途での確認も必要です。
書類のファイリング
書類のファイリングも営業事務の重要な仕事です。基本的にはいつでも迅速に取り出すことができるように「見やすいように整理すること」が基本です。また、書類の中には法律で「保管を義務付けられているもの」があります。書類の種類によって保管期限が細かく定められています。そのことを考慮してファイリングを考えるようにします。
見やすいように整理
ファイリングするに当たって重視する必要があることは「見やすいように整理する」ことです。ファイリング・グッズは透明な袋を利用したものなど目的に合わせた製品が各種販売されていますので各種取り寄せて書類ごとに使用するファイルを決めると良いでしょう。ファイリングするための分類法は自分で考えて直ぐ取り出せる分類の仕方にします。「見積書類・契約書類等項目別にする」「取引先別にする」「クライアント別にする」などが考えられますが、部署内でシェアする必要がありますので、決定したら「分類メモ」などを作成して誰が見ても分かるようにしておくと「分かりやすい」と評価されると思います。
保管義務のある書類
保管を義務付けられている書類は保管期限も細かく定められていますので調査して、別綴じでその期間保有することをお勧めします。
売上の管理
「売上の管理」は会社の花形である営業部門の活動が順調な利益をあげているかどうかを示すバロメーターの役割を果たします。その事務に携わることができる営業事務は誇りをもって取り組んでください。事務内容は「毎日の売上記録と分析」及び「売上報告書の作成」になります。
記録と分析
会社の営業部門は営業日であれば現場の販売店等を通じて「売上記録」が報告されると思います。その報告に基づいて日別・月別などでまとめます。それで年単位の傾向が分かります。コロナ禍が売り上げに与えた影響なども分析・推測ができ今後の対策に活かすことができます。
売上報告書の作成
営業部門の売上は上層部だけでなく全社的に注目されています。月別の売上報告書はその月が終わり次第、年の報告書は会計年度終了次第、直ちに報告書を作成して全部門に配布すると、営業事務の存在感が増します。
納品や在庫の管理
納品や在庫の管理も営業事務の仕事になります。「取引先に商品の発送(納品)をする」「必要に応じて自社商品を製造元に発注する」などを通じて在庫の管理を行います。
取引先に発送
日ごと・週ごと・月ごと・四半期ごとといった一定期間ごとに商品の在庫数の記録やチェックを行い、取引先の在庫が少ないと判断した時は商品を発送します。
必要に応じて発注
また、在庫管理で手持ち分が少ないと判断したときは製造元に「必要に応じて発注」します。
顧客や案件の管理
守備範囲が広くて目が回りそうですが「顧客や案件の管理」も営業事務の仕事です。
「顧客情報の管理と分析」や「案件の更新案内」を通じて引き続き自社の顧客として留まることを目指します。
顧客情報の管理と分析
取引に関わる顧客情報は「氏名や名称、住所や電話番号、担当者や取引履歴」などです。これらの情報を管理しておき、担当者に協力して引き続きどのようなアプローチをするか分析を行います。
案件の更新案内
継続的な取引の場合でも更新作業が必要な時は「契約期間満了前に担当営業職に連絡する」「直接顧客に継続契約の案内を送付する」といった事務を営業事務が引き受けることがあります。
営業事務に求められるスキル
営業事務に求められるスキルについてはこれまでにかなり取り上げましたが、ダメ押しとして「PCスキル」「事務処理スキル」「必要な営業経験」について述べます。
PCスキル
PCスキルについては代表的な例としてパワーポイントを取り上げましたが、企業により独自のものを使っていることがあります。
オフィス系ソフト
オフィス系ソフトで最も使われているのはマイクロソフトのOFFICEですが、最近ではキングソフトなど安価なものやOFFICE シリーズと互換性のあるソフトも多数登場しています。また、Mac OSに対応したソフトもありますので悩んでしまうかもしれません。就職先が導入しているソフトに習熟するのがベストだと思います。就職先が広報に使っているウエブサイトを訪問すると分かるかもしれません。
MOS等の資格の取得
この際将来を見越してMOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト)等の資格の取得をすることも良いアイデアだと思います。資格を取っておけば企業の経営層はPC関係に強い人がすくないので、目に留まる可能性があります。
事務処理スキル
「事務処理スキル」として「間違いのない書類作成」ができること、「ミスは社内外に迷惑がかかる」ことについて述べます。
間違いのない書類作成
「間違いのない書類作成」は全ての職種に言えることですが、営業事務は金銭が絡むことが多いので、「念には念を入れよ」を常に心がける必要があります。例えば、数字の桁が1つ多い請求書を取引先に送ってしまうとその企業の評判はいっぺんに下がってしまいます。
ミスは社内外に迷惑がかかる
「ミスは社内外に迷惑がかかります」ので絶対に避ける必要があります。数字はもちろんのこと文字変換ミスにも気をつけてください。最終的に営業担当のチェックを受ける必要もあります。マイナカードで公共機関が様々なミスをしておりますが、企業の場合は大きなダメージにつながる可能性があります。
営業経験
営業事務の守備範囲が広いので「私にできるかしら?」と尻込みするかもしれませんが、現在活躍している営業担当者も同じ道を歩んできたはずです。最も身近な最も頼りになる先輩です。
営業担当者との連携
その営業担当者と良好なコミュニケーションを通じて常に連携するように心がけてください。丁重な姿勢で仕事を教わり、それを吸収することを続けることで、2~3年後には同じポジションにいる自分を発見すると思います。
ビジネスマナーの習得
営業事務を担当するに当たってもう一つ取り組んでいただきたいことは「ビジネスマナーの習得」です。電話・メール・対面によるビジネスシーン等全てのシチュエーションで正しい敬語の使い方が要求されます。営業事務担当者の立ち居振る舞いが貴社の評判に直結することがあります。ビジネスマナーを習得することは人格を高めることにも繫がります。
「あの営業事務担当者の言うことなら信用できる。」と言われるようなシーンを期待しております。