マーケティングとは?定義や種類、基本となる戦略も解説

マーケティングとは

当サイトをご訪問頂きありがとうございます。「マーケティング」と言う言葉に惹かれてこのサイトをご訪問いただいたとすると、貴方が製品やサービスを販売する企業に就職されて営業部門などに配属され、「マーケティングのことをもっと詳しく知りたいと思われたのが動機」ではないかと勝手な推測をさせていただいております。

日本でも「マーケティング」という言葉はごく当たり前のように使われていますので、断片的に分かっているつもりでも、「説明してください」と言われると近年は企業戦略まで含めて幅広くとらえられている傾向がありますので、苦労すると思います。そこでここでは、マーケティングとはどのようなことをいうのか、その定義や種類、基本となる戦略も解説しますので、知識の蓄積とともにマーケティングに精通することによる将来的な貴社発展に活用していただければ幸いです。

それでは最初に「マーケティング」を知っていただくために、「マーケティングの定義」と「マーケティングの理想」について述べます。

マーケティングの定義

「マーケティング」の定義について公的に確立されたものはありませんが、昭和32年に設立された「公益社団法人日本マーケティング協会」が公的機関に近いですので、この協会が提唱しているマーケティングの定義を一読していただくとこれからの説明が分かりやすいと思います。多少アレンジして引用させていただきます。

「マーケティングとは、企業および他の組織(1)がグローバルな視野(2)に立ち、顧客との相互理解(3)を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動(4)である。」

と定義しております

また、提唱されている定義に関するカッコ内の事項に関しては次の通り解説しています。

  1.  他の組織には教育・医療・行政などの機関、団体などを含むこと。
  2. グローバルな視野とは、国内外の社会、文化、自然環境を重視すること。
  3. 顧客との相互理解には、一般消費者、取引先、関係する機関・個人や地域住民を含むこと。
  4. 総合的活動には、組織の内外に向けて統合・調整されたリサーチ・製品・価格・プロモーション・流通、および顧客・環境関係などに係わる諸活動を意味すること。

マーケティングの定義は幅広い観点から捉えられていますが、最初に「顧客のニーズを大切にすること」とマーケティングは「単なる販売活動ではない」ということについて述べます。

顧客のニーズを満たす

ご経験があるかと思いますが、例えば通販サイト・新聞広告・テレビを使った販売活動・新聞折り込み等で気に入った商品などが見つかり、「残りあと10個」などとせかせられると思わず購入してしまうことがありますね。これはメディアの販売戦略に乗って顧客の潜在的なニーズが掘り起こされたと言うことができます。「顧客のニーズがあればほとんどの商品は売れる」と言っても過言ではありません。そのため貴社も顧客のニーズ把握のために苦労されているのではないでしょうか?

販売との違い

しかし、このような活動は単なる「販売活動」ではありません。マーケティング活動は顧客と長期間にわたって良好な相互関係を構築することであり、一過性の商品・サービス販売により利益確保を図るものではないと言うことができます。

マーケティングの理想

先人が残している「マーケティングの理想」に関する名言を知っておくと、貴方がこれからマーケティングで苦労した時に思い出して前向きな気持ちになれると思います。ここでは2人ご紹介します。

フィリップ・コトラーの言葉

フィリップ・コトラーは1931年生まれで米国イリノイ州出身の経営学者です。

現代マーケティングの第一人者として知られ「マーケティングの神様」とも言われています。数多くのマーケティングに関する名言を残しておりますが、ここでは顧客に関する名言をご紹介します。

「私たちの製品やサービスに満足だけでなく、喜びすら覚えた顧客は、同じニーズを持つほかの顧客に製品を推奨してくれる。さらに、新製品を【ともに作り出す】ことを望む顧客や企業を招き入れることも期待できる。そうした顧客は製品の共同制作者という意識を持つ」

マーケティングにおける顧客の位置づけを正確に言い表した名言だと思います。

ピーター・ドラッカーの言葉

ピーター・ドラッカーは、1909年にオーストリアのウィーンに生まれ、フランクフルト大学卒業後、経済記者、論説委員を務めます。しかし、卓越した「先見の明」があったため、ヒットラーが権力を手に入れることを予測し、以前にインタビュー記事で批判的なことを書いたため迫害されることを恐れ英国に逃れます。実際にヒットラーが権力を手に入れるとドラッカーの記事等は全て焼かれて(梵書処分)しまいます。

英国では証券アナリストや経済学者として活躍し、1937年に米国に移住します。

米国では1939年にファシズムの起源を分析した処女作 『経済人の終わり』を刊行。この中でナチスがヨーロッパのユダヤ人を抹殺する道をたどらざるをえなくなることやヒットラーとスターリンが条約を結ぶことを予言。その半年後に独ソ不可侵条約の締結、そしてユダヤ人虐殺が始まっております。

米国での執筆活動は精力的に行われ、1942年に刊行された「産業人の未来」は、よりよい社会への改革の道を模索したものとして、ドラッカー社会学の原点となっています。

自動車産業の最大手であるGMの経営改善に関わるなど様々な活動を行い、その都度深い洞察力に基づく提言を書物として刊行しています。そして1954年に刊行した「現代の経営」上下巻で初めて「マネジメント」が提言され誕生、その後の「マネジメント・ブーム」の発端になっています。

あまりにも強烈なバックボーンをもっていますので前置きが長くなりましたが、現在でも通じる名言を2つご紹介します。

  1. マーケティングの理想は、販売を不要にすることである。

    顧客を理解して製品やサービスを顧客に合わせ、おのずから売れるようにすることを理想としています。
  2. 企業の目的は、顧客を創造することである。

    企業の目的と言うと通常は企業利益の最大化と考えますが、そうではなく顧客を創造することを最も重視すべきであると言っています。

名言などで顧客がいかに重要であるか分かりましたが、ここではマーケティングの基本について述べます。

マーケティングの基本

マーケティングの基本では、まず「対象となる顧客の設定をすること」「顧客に届ける価値を決めること」「顧客に提供する手段を決めること」があげられます。

対象となる顧客の設定

「対象となる顧客の設定」では「セグメンテーションをどうするか」及び「ターゲットをどこに絞るか」が求められます。

セグメンテーション

「セグメンテーションは」英語の「segmentation」をそのままカタカナ読みしたものですが、

日本語で「区分」という意味があります。マーケティング分野で使う時は「市場に存在する不特定多数の顧客をさまざまな切り口で分類し、特定の属性ごとにグループ化する」意味で使われています。投入しようとする製品やサービスがある時に、その対象市場の潜在顧客のニーズや特性に応じてグループ分けするのが一般的です。

ターゲティング

上記のセグメンテーションを実施すると開発した製品やサービスを「どの層を対象にPR活動をすれば最も効果的であるか」予測がつきますのでターゲットを絞ることができます。これが俗にいう「ターゲティング」です。商品やサービス開発をするに当たって、初めからターゲットを絞っていることもあります。ターゲティングを実施するに当たっては次の4項目を考慮することが効果的と言われています。イニシャルを取って「4R分析」とも言われています。

  1. 優先順位(Rank):自社の経営戦略に照らして、重要度によって優先順位をつけること
  2.  規模の有効性(Realistic):十分な売り上げや利益を確保できる規模か
  3. 到達可能性(Reach):自社のプロモーションや製品等を届けられるか
  4. 測定可能性(Response):セグメントの規模・購買力・特性等を明確に測定できるかまた、マーケティング後の反応も測定できるか

マーケティングを実行するに当たって常に上記のようなことを考慮する必要性があることは、やりがいと同時に1人では無理なので、プロジェクトを作ることが求められると思います。

顧客に届ける価値

マーケティングで企業が販売するモノやサービスに対して顧客がコストを払っても良い適正な価格だと考える価値のことを通常「顧客に届ける価値」と言っております。ここでは「ベネフィット」と「他社との差別化」について述べます。

ベネフィット

「ベネフィット」は英語の「benefit」のカナ読みですが日本語では「有益・恩恵・利益」等の意味があります。マーケティングで使われる場合は、製品やサービスを購入した時に、その製品やサービスが宣伝する特徴や利点だけでなく、顧客が期待する「具体的な価値や結果」をもたらしてくれたかどうか、いわゆる「満足度」がベネフィットの判断基準になります。満足度が高ければ、リピーターがどんどん増え、ヒット商品になる可能性が高くなります。

他社との差別化

近年はマーケティングを成功させる手法が開発されていますので、おそらく貴社も「他社との差別化」に悩まされているかもしれません。自社製品に他社が真似できない圧倒的な強みがあれば別ですが、苦労して開発し自信をもって市場に投入した製品やサービスが、半年もすると類似製品が出回るような厳しいマーケティング環境になっています。覚悟を決めて取り組む必要があります。

「他社との差別化」を図る方法として「VRIO分析」がありますので、覚えておくと役に立つと思います。この分析方法は「Value(経済的価値)」「Rarity(希少性)」「Inimitability(模倣困難性)」「Organization(組織)」のイニシャルを取ったものです。

  1. Value:「経済的価値」
    市場投入する製品やサービスが顧客への価値創出につながっているか、あるいはそれらがあることで利益創出につながっているかという観点で判断します。
  2. Rarity:「希少性」
    投入する経営資源が市場において希少性の高いものかという基準で判断します。希少性が高ければ、他社が用意するのが困難になります。
  3. Inimitability:「模倣困難性」
    競合他社が簡単に模倣できるかどうかという基準で判断します。模倣が困難であれば、自社製品が長期にわたり優位を保つことが可能になります。
  4. Organization:「組織」
    上記の「VRI」で評価してきた経営資源を組織全体で有効活用できているかという判断に基づき評価します。

以上の評価が高ければ、「他社との差別化」ができていると言えます。

顧客に提供する手段

上記の「VRIO分析」は企業側の目線で分析したものですが、「顧客に提供する手段」は逆に顧客側の目線で捉える必要があります。米国のノースカロライナ大学のロバート・ラウターボーン教授が提唱した「4C分析」がありますのでご紹介します。

この4C分析では「顧客価値」「コスト」「利便性」及び「コミュニケーション」をあげております。

顧客価値

Customer Value (顧客価値)は、その商品やサービスを購入することで顧客がどのような価値を得ることができるかという視点で分析することです。顧客は便利さか、楽しくなるのか、高額な商品なので優越感を抱くのかなど様々なことが考えられます。売り手側が意図しないことに顧客が価値を置く場合もあります。

コスト

Cost (コスト)では、商品やサービスの価格が顧客にとって妥当なのかを考えます。また、コストには金銭面の負担だけではなく、その商品やサービスを購入するための時間的、心理的負担も含まれます。購入するに当たって他社との価格比較でかなりの時間を費やすことがありますね。

利便性

Convenience(利便性)は、商品やサービスの入手のしやすさを表しています。顧客がその商品やサービスを簡単に購入できるかを考えます。例えば、店舗を構えている場合は営業時間やアクセス、オンラインストアの場合はウェブサイトの使いやすさや決済手段の選択肢の多さが挙げられます。

コミュニケーション

Communication (コミュニケーション)では、企業と顧客の間でコミュニケーションが取れているかを考えます。「企業は顧客が望んでいる情報を届けていることができているか」「顧客は商品やサービスに対する声を企業に届けていることができているか」を重視します。

以上の4C分析は顧客目線ですから、自社製品などに関わり合いがある顧客にアンケートやコミュニケーションなどを通じて把握する必要があり、本音を引き出すのに工夫を要します。

マーケティングの種類

マーケティングの種類は「マス・マーケティング」「ダイレクト・マーケティング」「インバウンド・マーケティング」に分類することができます。

マス・マーケティング

上記の「顧客の設定」ではセグメンテーションを実施しましたが「マス・マーケティング」はそれをせずに「すべての顧客を対象とした画一的なマーケティング活動」を行うものです。

不特定多数の顧客が対象

従って、「不特定多数の顧客が対象」になります。近年は顧客を重視した販売活動が行われていますが、1900年初頭からオイルショックによるインフレが世界を直撃した1970年代まではマス・マーケティングが全盛の時代だったと言われています。当然、企業目線での販売ですが、それでも多くの企業が大きな利益をあげることができました。

マスメディアを利用して宣伝

「宣伝もマスメディアを利用」したもので、テレビ・ラジオのコマーシャル、新聞・雑誌の広告が中心でしたので「マスコミ4媒体」などと呼ばれていました。

これらの媒体は現在も使われており、例えば、住居の近くにスーパーがあれば、新聞折り込みなどで特売日を知らせてくれるなど、自社販売商品のプロモーションに使われています。

ダイレクト・マーケティング

ダイレクト・マーケティングは、ダイレクト(直接)という言葉が示すように、企業が直接顧客に働きかけて商品やサービスの購入を促すものです。

顧客に直接販売する

1対1の関係でコミュニケーションが進められますので、顧客に合ったアプローチが可能になります。インターネットの普及がこのダイレクト・マーケティングを促進させたと言うことができます。

インターネット通販やテレビショッピング

現在はどの企業もインターネット通販に注力しており、アマゾンを筆頭に楽天やヤフーなどが有名ですが、インターネットの操作が苦手な高齢者の方々は、テレビショッピングやカタログを送ってもらい選択するカタログ販売を利用しているようです。それでも1対1の関係でコミュニケーションを進めるスタイルに変わりはありません。

インバウンド・マーケティング

これまでに述べてきた広告・宣伝等を積極的に行い顧客を獲得する手法はアウトバウンド・マーケティングと呼ばれていますが、その対極にあるのがインバウンド・マーケティング(inboundは入ってくるという意味)です。

顧客からのアクセスが主体

つまり、宣伝・広告などに関係なく、見込み顧客が自ら懐に飛び込んでくれるスタイルですので、インバウンドという言葉が使われています。

SEO対策とコンテンツマーケティング

近年の消費者は企業側から発せられる情報が多いので、ウンザリしています。そこでSEO対策をした上で初めから役に立つコンテンツを公開すれば、見込み顧客の目に留まりアクセスしてくれる可能性が高くなります。それを契機にコンタクトが取れるようになれば、自社製品に興味を持ってもらい、コミュニケーションを取りながら最終的に顧客になってもらうことができます。時代の変遷とともに販売戦略も高度化していることが窺えますね。

マーケティングの基本戦略

おさらいの意味も含めて、ここでは「マーケティングの基本戦略」について述べてみたいと思います。流れとしては「環境の分析」「ターゲットの特定」「目標設定」「広告と宣伝」になります。

環境の分析

ビジネス環境の分析では「内部環境」と「外部環境」について分析します。

内部環境

内部環境の分析では、顧客数・売上高・他社と比較した場合の自社の強みや弱みを明確にすることです。上述した「4R分析」を参考にしてください。

外部環境

外部環境分析では、自社が所属する業界の市場規模・成長率・顧客の平均購入金額等があげられます。競合他社が販売している商品やサービスの特徴も分析しておきます。

ターゲットの特定

ターゲットの特定では、「顧客の属性」「顧客行動特性」が対象になります。

顧客の属性

顧客の年齢・性別・地域・職業などで分類したものを顧客属性と言います。一生を通じて変わらない性別・生年月日・出身地などの静的なものと職業・居住地・趣味嗜好など動的なものに分けて把握するようにします。

顧客の行動特性

顧客はそれぞれニーズが異なり、それに伴い購買行動も異なりますので、その行動特性を把握しておくとターゲットにした際に役立ちます。

全体的なことでは、ターゲットの決定は商品やサービスを投入する地域によって「若者・中年・高齢者・女性・事務職・肉体労働者」等々ニーズが異なりますので、考慮する必要があります。

目標設定

「目標設定」では「売上の向上」と「ブランディング」の問題があります。

売上の向上

「売上の向上」を図るにはきちんとした目標設定が必要です。入社して間もなかったり人事異動で営業部門に配置されたばかりだと目標設定するにしてもどうしてよいか分からないと思いますので上司や先輩などにアプローチして教えてもらいながら経験を積むようにすると良いでしょう。社内にプロジェクトがあれば積極的に参加することをお勧めします。また、「売り上げの向上」は企業戦略に関わることですので、他の部門と連携して貴社の方針を確認すると良いでしょう。社史を紐解くこともお勧めです。

ブランディング

製品やサービスが「ブランド」として社会的に認知されるまでの行程を「ブランディング」と言いますが、ブランディングでは「コンセプトの設定」が要求されます。コンセプトが社内で浸透して共有化されるとブランド誕生の道が開けてきます。ブランドと関係ないかもしれませんが、2023年のプロ野球セ・リーグの優勝は阪神タイガースが圧倒的な力を見せて勝ち取りました。「優勝」と言うとプレッシャーがかかるので「アレ」に変えて戦ったそうですが「アレ」は正にコンセプトだったと思います。阪神の優勝だけで経済波及効果は969億円といわれています。WBCで日本が優勝した時の654億円を大きく上回っております。ブランディングで良いアイデアをどんどん提案してください。

広告と宣伝

いよいよ貴社の商品やサービスをマーケットに投入する段階になりました。失敗せずに目標とする売り上げを達成するには効果的でできるだけ費用がかからないキャンペーンを実施するようにします。そのためには、「費用対効果の分析を行った上」で「広告手段の決定」をすることをお勧めします。

費用対効果の分析

費用対効果の分析には次のようなツールがありますので、目的に応じたものを利用されると良いでしょう。

  1. ROAS 「Return On Advertising Spend」
    かけた広告費に対して、どれだけ売上をあげることができたかを%で表す指標。

    広告経由の売上 ÷ 広告費 × 100(%)の計算式を使い、広告費1円でいくら売り上げたか算定する。
  2. ROI 「Return On Investment」
    投資利益率と呼ばれ、かけた費用に対して、どれだけの利益があったかを%で表す。

    指標利益 ÷ 広告費 × 100(%)の計算式を使用して算定する。
  3. CPA「Cost Per Acquisition」
    一人の新規顧客を獲得するのにかかったコストで、数値が低いほど費用対効果が高いと判断。

    コスト ÷ コンバージョン数で算定する。コンバージョンは成果数を意味する。

広告手段の決定

広告手段の種類よって売り上げが大きな影響を受けることがありますので、広告手段の決定は慎重に検討する必要があります。2022年にインターネットを使った販売額が従来の4大マスメディアによる販売額を追い越しておりますが、それぞれ特徴が異なりますので、よく研究されて投入する製品やサービスにマッチする手段を選択するようにしてください。


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