当期純利益とは?活用方法や分かること、注意点も解説

当サイトをご訪問頂きありがとうございます。就職してマーケティングを実施している企業の会計・経理部門などに配属されますと、まず簿記の知識が必要になりますね。企業経営活動の財務上の結果をステークホルダーに報告したり、株主総会が迫ってくれば決算報告をする必要がありますので、財務三表と呼ばれる「貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書」などの作成を経営上層部から指示されると思います。「当期純利益」は1年間の経営活動で得られた純利益ですから前述の財務三表を初めその他の要素も取り入れて算定しなければなりません。

そこでここでは、「当期純利益とはどのようなことなのか、その活用方法や注意点も解説」しますので、貴社の純利益向上に活用していただければ幸いです。

当期純利益とは

ここでは、「当期純利益とは」について定義的な説明をいたします。内容は「当期純利益の概要」と「その他の利益との違い」になります。

当期純利益の概要

冒頭の「当期純利益の概要」では「企業の最終的な純利益」であること「企業の収益性の指標」であることがあげられます。

企業の最終的な純利益

企業がその事業活動で生まれる利益は5つあります。それらの利益がそのまま企業の純利益としてカウントできれば、その企業の繁栄は申し分ないと思います。しかし、営業利益は次の計算式によって算出されます。

営業利益=総売り上げ-売上原価-販売費-一般管理費 

これに対して当期純利益は次の計算式を使って算定します。

当期純利益=営業利益+営業外収益-営業外費用+特別損益-税金(法人税・事業税・住民税)

この計算式で算定すると最後にプラスかマイナスの数値が残ります。そのプラスの数値が「企業の最終的な純利益」になります。残念ながらマイナスになった場合は「純損失」になり、企業の事業活動は何らかの原因で停滞したと言うことができます。

企業の収益性の指標

事業活動はその時の政治・経済・社会情勢等により出だしは順調で利益を得ていた事業が急激に不調になり倒産に追い込まれたりします。例えば、帝国データバンクの発表ではコロナ禍による全国累計倒産件数は2023年9月末で6,761件確認していることを公表しております。この例を見ると、その時の政治・経済・社会情勢等の変化がビジネスの世界にも影響を及ぼし、純利益が▼になるなど「企業の収益性の指標になる」と言えます。常にビジネス環境の変化に留意して対応することが、純利益を生み出すキーポイントになりそうです。

その他の利益との違い

「その他の利益との違い」では、「売上総利益との違い」「営業利益との違い」「経常利益との違い」「税引前当期純利益との違い」について解説します。

売上総利益との違い

「売上総利益との違い」は、売上総利益の計算が「売上高-売上原価」で算定したもので、人件費や税金等の控除が行われておりませんので、当期純利益とは言えません。

営業利益との違い

「営業利益との違いは」営業利益が本業の総売上から売上原価、販売費、一般管理費を差し引いて算出される利益ですから、当期純利益を算定する前のベースになる利益と言えます。

経常利益との違い

営業利益が上記の方法で算出される利益に対して、経常利益は経常的な収益や費用をそれに合算して合計した数値になります。本業以外の例年発生する収益や費用(受取配当金・受取利息等)が含まれた数値になります。経常利益の計算式は「営業利益+営業外収益-営業外費用」になります。

税引前当期純利益との違い

税引前当期純利益は、ある会計期間における事業活動で生じた利益額を言います。本業の営業活動の利益に営業外損益や一時的な特別利益と特別損失までが含まれます。この額から「法人税・事業税・住民税」が引かれると「当期純利益」になります。

当期純利益から分かること

ここでは、「当期純利益からどのようなことが分かるのか」について述べます。大枠でまとめると「企業の収益性」「包括利益」「利益剰余金」になります。

企業の収益性

「企業の収益性」では「企業の実態を知ること」「経営の健全性が分かること」「利益圧縮」について述べます。

企業の実態を知る

「企業の実態を知る」には経営分析が必要ですがその一つに「収益性分析」があります。収益性分析は売上高総利益率や売上高経常利益率などの指標を使って分析できますので、自社や他社の実態を知ることが可能です。ROA(Return On Assets)と呼ばれる「総資本利益率」は企業に投資された資本がどれだけ効率良く利用されているか判断する尺度になりますので、収益性を分析するのに適していると言われています。

経営の健全性が分かる

ROAを使って経営の健全性を見てみましょう。

総資本利益率(ROA)は次の計算式で算定できます。

当期純利益÷総資産×100=総資本利益率

A社とB社がともに700万円儲けた場合に、上記の計算式で算定すると総資本利益率の高い方が資本の効率的運用をしていることになりますので、「経営の健全性も高い」ことが分かります。

利益圧縮

「営業利益」で利益が出ていて当期純利益も好調な数字が期待できると思っていると、当期純利益が極端に減少したり損失になるケースがあります。借入金が過大過ぎて利息の支払いに対応せざるを得ない状態などがあげられます。いわゆる「利益圧縮」状態になるわけですが、その原因をきちんと分析することで企業の実態を把握することができます。更なる利益増大を目指して借り入れを行なうのであれば一時的な「利益圧縮」が生じてもトータルで健全な経営が確保できるように計画することが望ましいと思われます。

包括利益

「包括利益」は2011年に連結財務諸表に記載することが定められて、義務付けられたものです。会計基準では「特定期間の財務諸表において認識された純資産の変動額」と定義されています。少し砕いて言いますと「貸借対照表における期首と期末の差」になります。包括利益算定の数式は次の通りです。

包括利益=当期純利益+その他の包括利益

ここで言う「その他の包括利益」は含み損益、つまりまだ確定していない損益を意味しています。この「包括利益」では「繰延ヘッジ損益」「為替換算調整勘定」「有価証券評価差額金」について述べます。

繰延ヘッジ損益

「デリバティブ」という言葉をご存じと思いますが、日本語では「金融派生商品」と呼ばれており、「派生」と付いているように、株式や債券、為替などから派生した金融商品です。この商品を取引に使うことを「先物取引・オプション取引・スワップ取引」などと呼んでいます。これはヘッジ対象のリスクを減少させるために実施されており、これを「ヘッジ手段」と呼んでいます。例えば、変動金利を固定金利と交換すると金利が変動するリスクが生じますが、そのリスクを減らす目的で行われる金利スワップ取引がヘッジ手段となります。ヘッジ対象とヘッジ手段の損益を「損益計算書」に計上する時期が一致しないことがあります。その場合は、ヘッジ対象から発生する損益が判明するまで繰り延べることを「繰延ヘッジ損益」と言います。ヘッジ手段から発生した損益は各決算期末に損益計算書に計上せず、繰延ヘッジ損益として、貸借対照表の純資産の部に計上します。(ヘッジ【Hedge】は「回避」を意味する英語で、ヘッジ取引は現物の価格変動リスクを、先物取引などを利用して回避する取引を言います。)

為替換算調整勘定

「為替換算調整勘定」は、貴社が外国に子会社や営業所等を設置している時の為替換算の調整を言います。子会社等を設置していれば、財務諸表の換算手続きが必要になります。決算時の為替相場で換算される資産および負債項目の円貨額と、資本項目の取得時または発生時の為替相場で換算される円貨額との差額の調整を言います。

有価証券評価差額金

「有価証券評価差額金」は、売買目的で保有する有価証券・満期保有目的の債権・子会社及び関連会社の株式以外の有価証券・合資会社や合同会社の出資、あるいは持ち合い株等に該当する時価評価の差額金を言います。貸借対照表の純資産の部に記載する勘定科目があります。

利益剰余金で構成

「利益剰余金」では「貸借対照表に記載すること」および「当期純利益との関係」について述べます。

貸借対照表に記載

「利益剰余金」は企業が活動で得た利益のうち、分配せずに社内で積み立てたお金を言いますが、「貸借対照表に記載」することになります。株主資本の一部として純資産の部に記載します。また、利益剰余金は「利益準備金」と「その他利益剰余金」で構成され、「その他利益剰余金」はさらに「任意積立金」と「繰越利益剰余金」に分類されています。

当期純利益との関係

利益剰余金は「当期純利益」が積み重なったものを言います。

当期純利益の活用方法

これまでに「当期純利益」についてかなり触れましたが、ここではおさらいの意味も含めて「当期純利益」の活用方法について述べます。内容は「当期純利益の計算」「分析方法」「売上高当期純利益率」「自己資本利益率」「純資産利益率」になります。

当期純利益の計算

「当期純資産の計算」をするに当たって企業活動を通じて得られる利益の流れを把握しておくと理解しやすいと思いますので整理してみます。

  1. 売上総利益:本業のサービスや商品によって稼いだ利益で「売上原価」を差し引いた額
  2. 営業利益:本業の利益で販売管理費を差し引いた額
  3. 経常利益:毎年経常的に行う活動に伴う利益で営業外損益を差し引いた額
  4. 税引き前利益:税金を除くすべての事象を反映した利益
  5. 税引き後利益:税金を差し引いた最終利益(当期純利益)

利益が生じる局面は5つあると先述しましたが、上記のようになります。

経常利益から差し引く

上記のまとめから「経常利益から差し引く」のは営業外損益になります。営業外損益は法人の本業以外の活動で生じた収益と費用の差を言います。経常的に生じる性質のものであることも条件になっています。

特別損失と特別利益

「特別損失と特別利益」については定められた判断基準がありません。このため、企業ごとに判断して計上していますが、「特別損失」はその期だけ発生した例外的な損失、「特別利益」もその期だけ特別な要因によって発生した利益を言います。

分析方法

分析方法は「売上高利益率の計算」をすること及び「総資本利益率の計算」をすることで分析します。

売上高利益率の計算

売上高利益率は「売上総利益÷売上高×100」で得ることができます(売上総利益は上記の利益のまとめを参照してください)。企業の本業における利益率ですから、他社と激烈な競争をしている以上、他社との比較をして自社の売上高利益率が劣っていればその原因を分析し、改善策を講じるようにします。

総資本利益率の計算

「総資本利益率の計算」は次の計算式で求めることができます。

事業利益÷総資本×100=総資本利益率

本業の儲けである営業利益と受取利息などの合計が事業利益で営業外利益は加えません。また、総資本は自己資本と他人資本の合計です。総資本利益率は、総資本をどれだけ効果的に運用し、利益を確保しているかを計る財務指標の一つとして使われています。

売上高当期純利益率

売上高の何パーセントが利益として残っているかを示す数値を「売上高当期純利益率」と言います。計算は「当期純利益÷売上高」で求めることができます。

経営状況の変化が分かる

「売上高当期純利益率」の算出により、企業の活動が最終的にどの程度資産の増加に結び付いたかが分かります。経年の「売上高当期純利益率」を調べると経営状況の変化が分かります。調べた結果、全ての年で右肩上がりであれば、経営がとても安定している企業と言うことができます。もし、落ち込んだ年があれば、その原因を分析して今後の経営戦略に活かすようにします。

利益として残っている売上高

また、「利益として残っている売上高」が多いほど効率的な事業運営が行われていることを意味します。

自己資本利益率

「自己資本利益率」も企業の経営効率を測る指標の一つとして使われていますが、自己資本を「元手」に1年間にあげた利益を見るものです。元手となる自己資本は、純資産の部合計から新株予約権と非支配株主持分は除外します。計算方法は次の通りです。

当期純利益÷自己資本×100%=自己資本利益率

算式中の自己資本は前期及び当期の株主資本の平均値です。

資金の有効活用度が分かる

「自己資本利益率」は、企業が自己資本に対してどれだけの利益を生み出したのかを表す指標です。「自己資本利益率」が高いほど資本をうまく使って効率良く稼いでいる会社だと言えます。低いほど経営効率の悪い会社だと見られますので経営戦略の練り直しが求められます。

資本金に対する当期純利益の割合

「資本金に対する当期純利益の割合」は、投資家が投資した資本に対し企業がどれだけの利益をあげているかを示す重要な財務指標です。計算式は「自己資本利益率=当期純利益 ÷ 自己資本 × 100」となります。

純資産利益率

当期純利益の純資産(新株予約権を除く)に対する割合を「自己資本利益率」と呼んでおります。従って、「純資産利益率」は「自己資本利益率」とも言えます。株主が投資した資金と過去の収益のうち内部留保していた資金により、どの程度の利益をあげているかを見る尺度になります。

企業の資本有効活用度が分かる

この利益率から「企業の資本有効活用度が分かります。」利益率が高ければ、株主から提供された資金が有効活用されていると言えます。

企業の資産を有効活用しているか

純資産利益率が高ければ「企業の資産を有効活用しているか」という株主の関心事にも応えることができます。株主にいくら配当するかという問題もありますが、資産の有効活用ができていれば、株主は引き続き投資意欲をかきたてられるでしょう。

当期純利益の注意点

当期純利益は最終で差し引かれる税金控除後の額ですから、残った額が高ければその企業の運営は申し分ないと考えますが必ずしもそうではありません。当期純利益に関する注意点に触れておきます。

プラスでも経営状態が良いわけではない

「プラスでも経営状態が良いわけではない」と言うと最終利益のはずなのに「なんで?」と思われると思います。

特別利益を含む

例えば、本業以外で固定資産の売却を行った場合の「固定資産売却益」や「投資有価証券売却益」「前期損益修正益」などが「特別利益として含まれる」からです。

本業で得た収入を重視

そこで企業運営が上手く行っているかどうかの判断は「本業で得た収入を重視する」必要があります。そのためには、営業利益がプラスかどうかを確認することです。ここがマイナスだと「本業で稼げていない」ことを意味しますので、早急な改善対策を検討しなければなりません。

本業での利益を確認

「本業での利益を確認」するには、「営業利益の確認」と「経常利益の確認」をして順調であれば、特別利益に依存せずに十分な利益を出しており健全な企業運営がされていることを確認できます。

営業利益の確認

利益の流れで取り上げましたが「営業利益の確認」は、本業の利益から販売管理費を差し引いた額になります。

経常利益の確認

「経常利益の確認」は、毎年経常的に行っている活動に伴う利益で、本来の儲けである営業利益に営業外収益を加え、営業外費用を差し引いた額になります。


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