プライベートブランドとは?意味やメリット、開発する際の注意点も解説

コロナ感染症がやっと落ち着いてきましたが、この2~3年は各企業の浮き沈みが激しかったと思います。コロナ対策関係業務にすぐさまシフトさせてコロナ発生前より収益を増やした企業がある一方で、資金調達が続かないで倒産した企業は全国で5,117件に上っています。(帝国データバンク調査:2020年4月から2023年2月9日までの倒産累計)

業種別に見ますと、上位は「飲食店」(743件)、「建設・工事業」(639件)、「食品卸」(263件)、「食品小売」(209件)となっていますので、食品関係が圧倒的に多く、コロナ感染症は食品関係業種を直撃していることが分かります。

しかし、多くの飲食関係の売り上げが50%以下に落ち込む中で、当初は同様な状況にあった店舗が1年後にトータルの収益で46億円の黒字を確保した企業があります。その原動力になったのが、店舗経営と並行し実行していた「テイクアウト・デリバリー」の強化でした。

とにかく、「座して待つ」よりは「活路を求め行動することが必要」という会社の理念がうかがえます。

このような事例に啓発されてか、近年は「プライベートブランド」に挑戦してみたいという企業が増加しています。プライベートブランドは地域密着型で規模が小さくても運用できメリットが多いですので、ここで取り上げてみます。競合他社との厳しい競争に勝ち抜く方策として「プライベートブランド」の設立をご検討中の方は、是非参考にしてください。

プライベートブランドとは

小売店・流通業者・卸売業者などは自分たちが開発した商品などは持たないのが通常ですが、地域に密着した活動をしていると顧客がどのような商品を望んでいるのか分かりますので、そのニーズに対応するため製品開発をすることがあります。こうして誕生した商品を「プライベートブランド」と呼んでいます。

プライベートブランドの意味

「プライベートブランド」のプライベートは英語の「private」をカタカナ読みしたものです。

「private」を名詞で使う時は「兵卒・米陸軍の上等兵・米海兵隊の一等兵」など軍隊関係の意味をもちますが、形容詞として使われる時は「個人用の・自分用の・私的な・自分だけが持つ」などの意味で使われています。電車待ちを利用して駅ナカの店などに入ると「PB製品」などの表示がされていますので見かけたことがあると思います。Pは「private」Bは「brand」の略です。

独自に展開する商品

「プライベートブランド」のネーミングが「自分用の」あるいは「自分だけが持つ」という意味があり、その商品を使っているカスタマーの自尊心をくすぐったり、「こんなものを作れないかしら」と提案すると気持ちよく取り組んでくれるなど、従来の小売業者とカスタマーの関係とは異なる親近感と「商品の独自性」で両者が結ばれるようになっています。

現在は多くの小売店が導入

企業間の競争は熾烈ですから1社が先行実施して売り上げを伸ばすなど成功すると、他社が追随するのは当然です。しかし、「プライベートブランド」の場合、顧客の要望に応えるには、商品を開発するプロセスが必要になります。本来ならカスタマーの依頼やニーズを把握し、新商品の企画から販売まで一貫して実施したいところですが開発は不得手ですので、近年は開発部分だけOEMに委託してその他のプロセスは自社が実施するというスタイルを取る企業が増えています。そのほかにも商品の開発だけは製造会社に依頼する方法を取るなどして、多くの小売業者がPB商品の導入をするようになっています。(OEMは他社ブランドを製造すること、もしくはその企業を言います。)  

他のブランドとの違い

「プライベートブランド」に関連して似たようなブランドがありますので、その違いについて触れておきます。

ストアブランドとの違い

「プライベートブランド」と「ストアブランド」との大差はなく、同じ範疇に入ると言う説がありますが、厳密に見ますと異なります。プライベートブランドは顧客のニーズに基づき必ず商品開発を行いますが、ストアブランドは小売業者などが扱っている商品に改善を加えた商品であり「商品開発」というプロセスは経ずに市場に投入されているものを言います。

ナショナルブランドとの違い

プライベートブランドはナショナルブランドとも異なります。ナショナルブランドは「全国民的な」という意味を持つナショナル(national)が示すようにその名を全国に知られた有名なブランドです。そのため、プライベートブランドを扱っている小売業者も販売しています。プライベートブランドからスタートした小売業がナショナルブランドになる可能性もありますので、これから参入を予定している企業に期待しています。

プライベートブランドのメリット

プライベートブランドにはどのようなメリットがあるのか見てみます。

小売店のメリット

小売店のメリットとしては、「製造コストを抑えられる」「流通コストも抑えられる」「利益率が高い」「消費者の意見を取り入れやすい」等のメリットがあります。以下順次見てみます。

製造コストを抑えられる

自社開発製品ですから、最初から予算を立ててその範囲内で製造コストを抑えることができます。一番心配な商品開発はその部分だけ製造業者やOEMに委託してその他のプロセスは全て自社執行にすることができます。

流通コストを抑えられる

新商品販売に絶対的自信があれば初めからマーケット市場に大々的に投入することも考えられますが、そうでなければ自社近辺で様子見的に投入して顧客の反応をみるべきです。顧客へのアンケート調査などを実施して評判が良ければ徐々に販売エリアを拡大することで、通常は高額になる流通コストを抑えることができます。

利益率が高い

また、プライベートブランドは基本的には顧客のニーズ調査を行い、その調査に基づいて商品開発を進め、価格も自由に設定できることから、利益率が高いと言われています。

消費者の意見を取り入れやすい

ニーズ調査の段階、あるいは商品完成後でも顧客である消費者の意見を聞いて商品の改善を図ることができますので「消費者の意見を取り入れやすく」顧客の満足度が高くなることが期待できます。

メーカーのメリット

実際に商品を製造するメーカーのメリットとしては、次のようなことをあげることができます。

受注した分だけ製造できる

プライベートブランドの商品を発注する企業は、事前に顧客とのコンタクトを深めて売れる量を推定しますので確実性が高いと言えます。したがって、受注する企業は在庫管理を心配することなく「受注した分だけ製造する」ことに専念できます。

工場の稼働率が向上する

しかも、従来からあるプライベートブランドの商品が消費者のニーズに基づき改善されたことや原材料の高騰から食品を中心とするPB商品の製造が2000年代後半から今日まで増大し続けていると言います(水野清文氏の研究論文:PB 商品の需要拡大が製造企業に与える影響から)。このため、工場の稼働率も向上しています。

ノウハウを共有できる

委託側のメリットは上述しましたが、委託を受けて製造する側のメリットとしては、商品開発に伴う製造の技術向上やノウハウを得ることができます。また、自社にない技術が委託側にあれば、その技術移転指導を受けたり、企画や販売のノウハウも委託側から学び共有することができます。

広告効果が期待できる

PB商品の製造委託を受けた製造者はそのことをPRすることで消費者から注目されるようになります。「あの製造者はどんな商品を作ってくれるのかな」「自分が希望したアイディアは取り入れてくれるのかしら」など商品を早く見たい衝動に駆られ抜群の宣伝効果を期待できます。しかもPB商品には製造所名を記載することになっています。

消費者のメリット

消費者にとってのメリットとしては「安く購入できる」ことや「商品に関する要望が通りやすい」ことをあげることができます。

安く購入できる

PB商品は一般的に「安く購入できます」。その理由は、PB商品の製造にかかる費用は外部委託すればその分支払う必要がありますが、小売店でのみ販売することを目的に作られた商品であるため、宣伝費などは使わなくても済むからです。また、大手スーパーが独自ブランドとしてPB商品を売っている場合は、発注する段階で計画性を持ってオーダーするとともに大量発注することで製造コスト削減の努力をしています。

商品に関する要望が通りやすい

PB商品を提供する小売店などの企業と顧客の関係が緊密になり、企業側が「聞く耳」を持って顧客の要望を聞きその実現に努力している結果、「商品に関する要望が通りやすくなっている」と推測できます。

プライベートブランドのデメリット

PB商品のメリットを述べましたが、デメリットもあることを知っておく必要があります。

小売店のデメリット

小売店のデメリットとしては、次のようなことがあげられます。

売れ残りをメーカーに返品できない

 小売店が自社のブランドとして販売市場に出すわけですから納入された商品については管理責任があります。消費者の意向や希望と販売店の経験から売れる数量を推定してメーカーにオーダーし、売れ残った場合はメーカーに返品できませんので発注数量は正確に算定することが求められます。保管場所などのスペースなども考慮する必要があります。

小売店がクレーム・サポート対応する必要がある

近年のPB商品は以前のような「安かれ、悪かれ」ではありませんが、少しでも欠陥があるとクレームがきます。また、商品に関する問い合わせなどもきますので、サポート対応ができる体制を整えておくことが必要です。

メーカーのデメリット

メーカー側のデメリットとしては、「自社商品の販売枠が減る可能性」や「短期間で撤退の可能性」があることです。

自社商品の販売枠が減る可能性も

小売店がPB商品を販売し人気を集めるようになるとメーカー側が自社製品として卸していた商品の売れ行きが悪くなりますので、販売枠が減る可能性が出てきます。

短期間で撤退の可能性も

メーカー側としては、小売店のPB商品は地域に限定されているので自社製品への影響は少ないだろうと思って対策を講じないと、小売店のPB商品がSNSなどで拡散され短期間で自社製品販売から撤退せざるを得ない可能性も出てきます。

消費者のデメリット

消費者のデメリットとしては、「商品の選択肢が減る」「お気に入りメーカーの商品が買えなくなる可能性がある」などのデメリットがあります。

商品の選択肢が減る

小売店が販売するPB商品は限定された地域内になります。消費者は小売店のPB商品と全国的に有名なブランドから選択していたと思いますので、商品の選択肢が減ることになります。

お気に入りメーカーの商品が買えなくなる可能性も

選択肢が少なくなると長いこと使い慣れていたお気に入りメーカーの商品が買えなくなる可能性があります。

プライベートブランドを開発する際の注意点

プライベートブランドの開発はPB商品を市場に出した時に消費者から「大歓迎されるかそっぽを向かれるか」のカギを握っています。どのような点に注意すべきか述べます。

製造者の適正

商品の開発を依頼する製造者が適正であるかどうかを判断するのが第一関門になります。

判断基準は次の2点を特に重視することをお勧めします。

得意な分野か

同じ製造者でも得意な分野と不得意の分野あるいは未経験の分野があります。自社が作りたいものを基準に過去の実績やヒアリングあるいは関係者の評判などを参考にすると良いでしょう。

十分な技術を有しているか

自社が開発を目指す商品のイメージの詳細を説明して、作製可能かどうか率直に話し合ったほうが良いでしょう。過去に実施した開発商品のサンプルがあれば見せてもらえればおおよそのレベルが分かると思います。

小ロット生産の可否

商品開発を初めて依頼する場合は小ロット生産が可能か聞いておくようにします。

最初はテスト的に生産

小ロット生産が可能であれば、最初はテスト的に生産してもらい、積み上げていけばより良い結果が得られます。

価格が良心的か

足元を見られて法外な委託費を支払うようになっては全体の予算計画に影響が出ます。委託する前に見積書を取って価格が良心的であるか検証するようにします。

品質管理

最近、企業のデータ改ざんの事件が明るみに出て専門技術を有する方々の中にもコンプライアンスを守れない方がいることを暴露されてしまいましたが、「品質管理」は企業の存続に関わることもあります。次の2つの事項は必ず確認するようにしてください。 

規格や基準を取得しているか

例えば食品に関する法律は次の7つが関係します。

  • 食品衛生法
  • 食品表示法
  • 食品安全基本法
  • 食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律
  • HACCP支援法(食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法)
  • 食料・農業・農村基本法
  • 流通食品への毒物の混入等の防止等に関する特別措置法

食品のPBを計画しているのであれば、これらの法律に抵触しないようにする必要があります。PB商品の内容に応じて関係する法律を調べ対応するようにしてください。

管理体制は整っているか

PB商品は在庫管理から顧客のクレームまですべて自社が対応することになりますので、しっかりした管理体制を構築するようにしてください。


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