シェアードサービスとは?目的や活用方法、メリットとデメリットも解説

日本では3,350企業以上がいずれかの企業グループに属していると言われています。しかも、これらグループ企業の再編や再構築が急速に進んでいるようですので、近年の厳しい企業経営環境の中でグループ企業の経営力の更なる強化を目指しているものと思われます。

グループ企業を発展させるためには「シェアードサービスを上手に取り入れていく」ことが成否のカギを握ると思います。そこで「シェアードサービスとはどのようなものか」「その目的や活用方法」「活用するメリットとデメリット」についても述べますので、是非参考にしてください。特に中間管理職の方が知っておくと会社貢献の晴れ舞台に続く道になるかもしれません。 

シェアードサービスとは

グループ企業は最低でも2つ以上の企業から構成されています。グループですからそれぞれの企業の事業内容はある程度関連があると思います。しかし、分かち合うという意味のシェアードサービスに最も適している業務は、各企業の本業部分ではなくそれを支える「人事・法務・経理・財務・総務」等に加えて最近は多くの企業にとってなくてはならないIT部門も該当すると思います。これらの間接業務は「コーポレート業務」と呼ばれていますが、各企業間の共通項ですから改革しようと決意すれば、1か所に集約して検討することができます。

コーポレート業務の集約

グループ企業はこの「コーポレート業務の集約」をして検討し、統合化をしたりしてグループ企業の経営強化と効率化を実現しようとしています。統合化するに当たって次の2つのプロセスを経る必要があります。

グループ企業の業務を集約

「グループ企業の業務を集約」して各企業が実施している業務を洗い出し、比較検討することで重複している業務やそうでない業務が分かります。それをベースにして「重複している業務をどのように統合化するか」「重複していない業務をどう扱うべきか」必要性の有無も含めて検討することです。

複数の事業部の業務を集約

事業部は企業収益の本体部分ですが、グループ企業の場合は事業内容も似通っている可能性があります。新しい発想の下に統合化できれば、生まれ変わった企業として顧客に認識され、社員のモチベーションも向上することが期待できます。「複数の事業部の業務を集約」して統合化を検討すると本業部分でも思わぬ発想がひらめくかもしれません。

BPOとの違い

BPOと言う言葉をご存じと思いますが、「Business Process Outsourcing」

のイニシャルを取った略語です。次にシェアードサービスとの違いを述べます 。 

BPOは外部委託する

BPOは「アウトソーシング」ですから専門の外部機関に業務を委託することを意味します。委託する内容は「業務のプロセス」ですので委託契約する時に決めることになると思いますが、中途半端な業務内容だと両社が困りますので「企画・設計・運営・実務」等を全面委託することになると思います。  

シェアードサービスは社内で行う

これに対して「シェアードサービスは社内で行う」ものです。各グループ企業の業務内容を洗い出して経営力強化のための方策を検討しますので委託業務にはなじみません 。 

シェアードサービスの目的

シェアードサービスの主要目的として「経営の強化」と「コスト削減」をあげることができます。以下にこれらの目的について述べます。

経営の強化

「経営の強化」はシェアードサービスの最大目的です。その目的実現の手段として、先述しましたがグループ企業がそれぞれ行っている本業をバックアップする業務を1つにまとめることで省力化を図ることができ、経営の強化につなげることができます。

業務の効率化

業務を1つに集中化することで業務の効率化も実現します。例えば4つのグループ企業で構成される企業であれば、その業務に関わるスタッフは1人で済みますので残る3人は別の業務につくことができ、全体的な業務の効率化に貢献することになります。集中化した業務がコーポレート業務であれば、印刷機等の設備・施設や人手も少なくて済みます。 

グループ企業全体に波及効果

業務の集中化は「グループ企業全体への波及効果」も期待できます。グループ企業と言ってもおそらくこれまで業務関係、特にコーポレート業務に関しての交流は行われていなかったと思います。集中化を検討することになりグループ全体の交流が生まれ、経営の強化の意識が共有されるようになります。また、コーポレート業務を平準化するなど技術面での向上も期待できますので、グループ企業全体への波及効果は大きいものがあります。

コスト削減

シェアードサービス導入の目的の1つに「コスト削減」もあります。この目的達成のため次の2つをあげることができます。

人件費と設備運用

同じような内容の業務を各企業グループが実施していたのを1か所に集中させるわけですから、操作するスタッフは1~2名で済みますので人件費を削減することができます。また、設備は新設する必要があり一時的に経費が膨らむかもしれませんが、運用が軌道にのれば継続費用は激減します。

費用対効果の向上

業務集中化の検討が始まるとグループ企業社員間で業務の議論が行われます。各企業におけるノウハウを基本とした専門性の高いやりとりになりますので相互啓発になるとともに業務の平準化が実施されるなど「費用対効果の向上」が

期待できます。また、集中化により必要な設備・機器関係は最小限で運用できますので、全てのグループ企業が使っていた設備・機器類は不要になります。

シェアードサービスのメリットとデメリット

シェアードサービスのメリットとデメリットも知っておくと実施段階で役に立つと思いますので触れておきます。

シェアードサービスのメリット

シェアードサービスのメリットとして、「人件費の削減」と「管理体制の強化」をあげることができます。

人件費の削減

「人件費の削減」については前述しましたが、業務の集中化で同じような業務をグループ内で担当していたスタッフの業務がなくなります。他の業務にそのスタッフを活用することになりますが、人件費の削減という観点からは目的を達成したと言うことができます。

管理体制の強化

シェアードサービスに基づく業務の集中化は、その過程で業務プロセスの集約と統一化の検討が実施され、業務内容も透明化しますので内部牽制が働きます。

そのため、従来行われていたかもしれない「なれあい」が排除され、結果として「管理体制の強化」につながります。ガバナンスが実行しやすくなります。

シェアードサービスのデメリット

「シェアードサービスのデメリット」としては、「多くの調整とコストが必要」なことや「間接部門の縮小による弊害」があげられます。

多くの調整とコストが必要

各企業グループの業務を洗い出して「見える化」し、調整するには大変な労力と

コストが必要です。大企業だとグループ企業が多くなり、独自の方法で処理している企業もありますので調整が難航する可能性が高くなります。調整力が高い

経営陣にリーダーシップを発揮してもらう必要があるかもしれません。

間接部門の縮小による弊害

間接部門は法務などそれぞれの分野の専門家がスタッフになっていることが多いので間接部門が縮小されると問題が発生した時に対応できないという弊害がでる可能性があります。十分な対策を練っておく必要があります。

シェアードサービスの活用方法

シェアードサービスの活用方法として、「子会社化」する方法と本社の「一部門化」して切り離さない方法があります。

子会社化

「子会社化」は人事・法務・経理などのコーポレート業務を一括管理するために、シェアードサービスを本社から切り離し、「シェアードサービスセンター」と呼ばれる「子会社」を設立することです。次のようなメリットがあります。

人件費の削減に有効

子会社は別法人となりますので、本社にとっては人員削減になり人件費の削減になります。

業績を数値化しやすい

シェアードサービス自体の売り上げやコストが明確になり業績を数値化しやすくなります。

本社の一部門化

「本社の一部門化」は、コーポレート業務を子会社にせずに、本社にその機能をおいて運用することを言います。次のような特長があります。

スムーズに移行できる

大きな組織変更が必要ありませんので、スムーズに移行できるメリットがあります。本社スタッフがそのまま対応できますので移行時の混乱も避けることができます。

大きな改革には不向き

本社にコーポレート業務を残す運用になり、大きな改革とは言えません。

このスタイルを取っている企業は30%に留まっています。

業務別のシェアードサービス例

ここでは、「業務別のシェアードサービス例」を紹介します。シェアードサービス例として「人事業務」「総務業務」「経理業務」「IT関係業務」があげられます。

人事業務

人事業務では「給与・賞与」と「福利厚生」の例をあげてみます。

給与・賞与

グローバルコンサルティングファームとしてコンサルティングの世界的な発信をしている(株)アビームコンサルティングの2007年に発表したレポートでは、「給与・賞与」計算では約9割のグループ企業がシェアードサービスに移行しています。

福利厚生

上記と同じレポートですが、「福利厚生」については、7割以上がシェアードサービスに移行しています。計算や日常的な相談などのルーティン業務には相性が良いようです。

総務業務

総務業務では、「設備・備品管理」と「社内連絡」が主体的業務になります。 

設備・備品管理

設備・備品は会社資産ですから台帳を作成して厳重に管理する必要があります。

総務の業務が統合化されると管理する備品が相当数に上りますのでデータベース化する必要があるでしょう。また、各グループ企業から寄せられる発注依頼にも対応する必要があります。きちんと管理できれば無駄がなくなり経費節減につながります。「設備・備品管理」についてのシェアードサービス導入例は設備管理・資産管理」「オフィス・施設管理」などに見受けられます。

社内連絡

どの組織でも他の部門に属さないことは総務部門に回してくるのが通例です。総務部は「全社的なコミュニケーション管理」を実践するために常に情報発信する「社内連絡システム」を構築すると良いと思います。社内連絡についてのシェアードサービス導入例は「メール・社内便業務」に見受けられます。

経理業務

シェアードサービス導入後に企業スタッフが担当するのは「経理関係業務」では「一般会計」業務と「債務管理」関係の業務を担当するのが一般的です。

一般会計

簿記の知識があれば、グループ企業でも経理関係を担当したことがあると思いますが、「一般会計」は毎日のように発生する取引の仕分けと会計ソフトを使って記帳する業務が主体になるでしょう。各月の利益等を計算して報告する月次報告書の作成なども担当することになると思います。アビームコンサルティングの報告では「一般会計」は7割強の企業がシェアードサービスを導入しています。   

債務管理

債務管理では、グループ企業が抱える債務の把握と取引先を始めとする債権者への代金支払いまでを担当することになるでしょう。債務管理についての導入例もアビームコンサルティングのレポートでは7割強になっています。 

IT業務

IT関係業務では、「ハードウエアの管理」「ソフトウエアの管理」「アプリケーションの開発と運用」「ネットワークの管理」などの業務をシェアードサービスが担う例を

述べます。

ハードウエアの管理

IT関係の業務を1か所に集中した場合、それぞれのグループ企業が使っていたハードウェアがまちまちであることが予測されますので、そのことを考慮したハードウェアを選択し管理することになります。グループ企業がそれぞれ違ったハードウェアを利用していると調整に苦労することになります。 

ソフトウエアの管理

「ソフトウェアの管理」もハードウェアと同じことが言えます。特に他のグループ企業との差別化を目指して違ったソフトウェアを使っているときはその扱いをどうするか協議して処理することになります。

アプリケーションの開発と運用

システムの統合化を機会にIT関係を一新する考えも出てきた場合は「アプリケーションの開発と運用」の問題が発生しますので、ITに高度の知識を持つスタッフを確保し対応させることになります。

ネットワークの管理

情報システムが構築され一本化された時は、各グループ企業のスタッフがいつでも最新の情報が得られるように社内ネットワークを作り管理していくことになります。今日まで高い評価を受けていた情報システムが、新しいシステムの登場で明日には陳腐化することがありますので、ITの世界はやりがいはありますが本当に気をつけることが要求されます。 

件数は分かりませんが、上記IT業務についてもシェアードサービス導入例が報告されています。


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