日本の会計年度は国・地方自治体・その他の公共団体が4月1日から翌年の3月31日までと定められていますので、企業も大部分がこれに歩調を合わせています。
従って、今年(2023年)の4月には多くの新入社員が通勤勤務を開始していると思います。通勤が始まると新入社員が悩むことはビジネスシーンで使われているビジネス用語ではないでしょうか?
リモートワークが主体だった昨年と比較すると今年は通勤勤務が増えていますので会議も増えていると思います。先輩や上司から「明日、社内のプロジェクト会議をするので、レジュメを作っておくように」と言われると大学時代に作成経験があってもビジネスでは初めての経験になりますので、戸惑ってしまうと思います。
「レジュメ」という言葉は、フランス語の単語ですが現在は世界中で使われており、使う場面によって意味が異なることがありますので、「レジュメとはどのような意味があるのか、分野ごとに使われる意味や例、ビジネスにおける作成方法」についても解説しますので参考にしてください。
レジュメとは
フランスで使われている単語の「レジュメ」は「résumé」と表記されます。レジュメと言う言葉は世界的に使われている言葉ですので英語表記があるか調べてみたところ、やはり「résumé」となっていました。
レジュメの意味
レジュメの意味を少し古いですが持っている三省堂の仏和辞典で調べると「要約・摘要・概略・大要」という日本語訳が載っていました。
要約・概略を意味する単語が語源
このようなことから、「レジュメ」はフランス語を語源とする「要約・概略」を意味する単語と言うことができます。
採用現場でのレジュメ
英語圏で「résumé」と言う時は「履歴書」や「職務経歴書」を意味することが通常ですが、日本の人材採用現場で使われているレジュメの意味は、採用するに当たってその人が自社にどのような貢献をしてくれるかの判断材料にするため、履歴や職務経歴だけでなく、学生の場合はクラブ活動やボランティア活動あるいはインターンの経験などをレジュメに加えることが求められるようです。転職者の場合は前職における会社への貢献内容になります。
プレゼンテーションにおけるレジュメ
「プレゼンテーションにおけるレジュメ」はプレゼンテーションで発表する内容をまとめたものを言います。レジュメを見ながらプレゼンを聞くことで理解を深めることができます。また、最近はパワーポイントを使用してプレゼンをする人が増えていますので、スライド資料一覧をレジュメとして配布されることもあります。
大学や研究機関におけるレジュメ
「大学や研究機関におけるレジュメ」は「論文や研究内容の要約」を意味するのが一般的です。また、セミナーやゼミなどで実施する研究発表で配布する資料をレジュメと呼ぶこともあります。自分の考察を加えた論文を発表する時にその論文をレポートと言い、レポートの要約をレジュメと呼ぶ人もおります。
レジュメと似た用語との違い
「レジュメと似た用語との違い」として「まとめや要旨との違い」「サマリーとの違い」「アジェンダとの違い」について説明します。
「まとめ」や「要旨」との違い
レジュメは前述しましたようにフランス語で、日本語の意味は「要約・概略・摘要」ですので「まとめ」や「要旨」に近い意味を持ちます。しかし、日本で「レジュメ」と言う場合は、レジュメそのもののイメージが固定化され、次の3つの分野に限定されています。
・ 転職分野
・ 教育分野
・ ビジネス分野
これらの分野で使われる「レジュメ」は、その分野により様式や目的が異なりますので注意が必要です。
サマリーとの違い
サマリーは英語の「summary」をカタカナ語で表現したものですが、英辞郎の訳は、名詞で「要約・要旨・概要・書かれたもの・または話されたことの要点だけを抜き出したもの」と記載されています。これを見ますとレジュメとサマリーは違いがなさそうですが、その使われ方で違いがあります。例えば会議の場合、レジュメは会議でどのような討議を行うか論点を整理して、効率的かつ建設的な会議が実施されることを目的としますので事前に作成して会議の参加者に配布されます。これに対してサマリーは、会議終了後にどのような討議が実施されたのか、その内容を要約したもので、後日参加者に配布されるか、論議の継続性を担保するために、次回会議の冒頭に配布されます。
アジェンダとの違い
「アジェンダ」は英語の「agenda」をそのままカタカナ読みにしたものです。ラテン語が語源とされておりますが英語化されており、国際会議の場合は必ず出てくる言葉です。「検討課題、議題(の一覧表)、会議[協議]事項、交渉議題、議事日程、備忘録」などの意味があります。会議の場合は前述のようにレジュメは「論点整理」でしたが、アジェンダは国際的に使われており「議題」あるいは「議事日程」の意味で使われることが多いです。通常、国際会議場近辺に各国あるいは参加団体用のボックスが用意されていて、事前にアジェンダや関連資料がその中に投入されています。なお、「アジェンダ21」(1992年にブラジルで開催された地球サミットで採択された持続可能な開発を実現するために各国および関係国際機関が実行すべき行動計画)のように単独で使用される時は「行動計画」を意味することもあります。また、日本のIT関係の企業でアジェンダという用語が浸透しているようです。
レジュメの意味は分かりにくい?
日本で活動している外資企業が就職志望者に「レジュメを送ってくださいと連絡したら、自分をアピールするテキスト文が送られてきてびっくりした」という話を聞いたことがありますが、英米人はレジュメを履歴書や職務経歴書の意味で捉えています。日本人同士でもフィールドが違うとレジュメの意味を間違えて捉えることがあります。
意味の受け取り方に注意
そのため、「意味の受け取り方に注意する」必要があります。それを防ぐためには「依頼者のイメージを確認する」ことと「共通認識を持ってレジュメを作成する」ことが要求されます。
依頼者のイメージを確認する
レジュメ作成の依頼を受けたら無駄な作業を防ぎ正確性を期すために、できるだけ早く依頼者に連絡を取って「依頼者のイメージを確認する」ようにしてください。確認する内容は「上記に掲げた教育・転職・ビジネスのどの分野か」「レジュメのスタイルは?」「ひな形やテンプレートはあるか」等できるだけ詳細にヒアリングすると、ある程度依頼者が持っているイメージが分かると思います。それをもとにレジュメの素案を作り依頼者に送るようにします。
共通認識を持って作成する
素案を基に依頼者とやりとりすると次第に認識が一致するようになりますので、共通認識を持って作成作業に取り組むことができます。
分野によって形式が異なる
「分野によって形式が異なること」にも悩まされると思います。それは「着眼点の違い」や「使用目的の違い」があるからです。
着眼点の違い
例えば、教育分野でレジュメを作る時に、「『講義レジュメ』であれば学生が理解しやすいように箇条書きにする」「『論文レジュメ』であれば共有が必要なので定められたフォーマットを使う」「『研究レジュメ』であればその研究をしたバックボーンとなる課題等を冒頭に持ってくる」など「着眼点の違い」を意識して構成する必要があります。
使用目的の違い
「使用目的の違い」も上記と同様で、例えば転職希望者が転職を希望する企業から「貴方のレジュメを提出してください」と言われたら「前の職場で貴方が会社にどのような貢献をしたのか」を問う意味合いが強いと思われますので、確認して対応するようにします。
分野ごとのレジュメの例
ここでは、分野(フィールド)ごとのレジュメの例について述べます。「就職・転職関係」「ビジネスシーン」「教育・研究関係」が対象になります。既に言及ししたものもありますので、「おさらい」として読み流してください。
就職・転職
「就職・転職」関係のレジュメは「履歴書・職務経歴書との違い」を認識する必要があります。
履歴書・職務経歴書との違い
欧米の場合はレジュメと言えば「履歴書・職務経歴書」を意味しますが、日本の場合は自社発展に貢献しくれる人材発掘を主目的とています。そのため、レジュメではむしろ「自己アピール」を中心とすべきです。
自己アピール
会社側が履歴書を要求しているのであれば簡潔に記載して、いかに自分が会社発展に貢献できるか「自己アピール」を中心に記載するようにします。
ビジネスシーン
「ビジネスシーン」におけるレジュメは、「会議での発言を整理」することと、それを「会議の参加者と共有」することを意味します。
会議での発言を整理
「プロジェクト会議」や「関係部門会議」は継続性が求められますので、会議が行われる時はその場面で出された発言を時系列で記録し整理する必要があります。その役割をレジュメが担います。
会議の参加者と共有
そのレジュメに基づきさらに論議を発展させ、最終的に会議の参加者全員が共有することで全社的な継続性が担保されます。
教育・研究
教育・研究の分野で使われるレジュメは「講義レジュメ」「論文レジュメ」「研究レジュメ」があげられます。
講義レジュメ
講義レジュメは、講義で配布されるレジュメで講義内容を要約したものです。教員が作成し授業内で学生に配布するものです。
論文レジュメ
論文レジュメは本や論文の内容を報告あるいはプレゼンする時に使用するレジュメです。講読する本や論文の内容を要約したもので、報告担当の学生が作成し、報告を聞く人に配布します。
研究レジュメ
研究レジュメは研究報告の際に使用するレジュメで、特定のテーマに関して調査・研究したことを要約したものです。報告者、あるいは報告グループが作成して、報告を聞く人に配布するものです。
ビジネスにおけるレジュメの作成方法
ここでは、「ビジネスシーンにおけるレジュメの作成方法」について説明します。
具体的には「フォーマットの利用」「必要事項の記入」「作成時の注意点」になります。
フォーマットの利用
フォーマットの利用では、「ひな型の提供を受けること」「自身でひな型をダウンロードすること」を取り上げます。
ひな型の提供を受ける
もし、先輩社員や上司から「明日の会議のレジュメを作成するように」と言われたら「ひな型がありましたら提供していただけますか?」とお願いしてみてください。必ずあるはずですから提供してくれると思います。会議がプロジェクトですと連結性の把握にも役立ちます。
自身でひな型をダウンロードする
ネットの操作が得意であれば検索して気に入ったひな型をダウンロードする方法も選択肢の1つです。用途別のひな型もありますのでレジュメ作成に適したひな型を選択されることをお勧めします。
必要事項の記入
必要事項の記入では「テーマ」「具体案」「資料の添付」があげられます。
テーマ
テーマは最もふさわしいと思われる「タイトル」を考えてつけます。テキストや報告章のタイトルになります。
具体案
具体案はビジネスシーンにおける様々な具体的例を取り上げるようにします。レジュメですからそれらを簡潔に述べるようにします。
資料の添付
資料の添付は上記具体的例を裏付ける資料として添付します。
作成時の注意点
「作成時の注意点」として「簡潔・的確にまとめること」「顧客向けの場合はデザインも重視すること」があげられます。
簡潔・的確にまとめる
フォーマットなどに記入する際は「内容を箇条書きにするなど」レジュメの観点から分かりやすく記載することを心がけることが大切です。
顧客向けの場合はデザインも重視
顧客向けのレジュメとする場合は視覚に訴えて興味を持ってもらうためにデザインも重視する必要があります。一見して内容が分かるように工夫してみてください。