アウトプレースメントとは
企業の「再就職支援」活動を指します。
もとは企業が人員削減をすすめる上で、対象の社員に対して行うものです。
再就職のお手伝いは、専門の外部企業に依頼をして必要な費用も負担します。
解雇の際の手続き、労使間のやりとりなども全て外部企業が代行でおこないます。
他には再就職における面接の指導や、カウンセリングなどにも支援、対応します。
人員削減の対象になった元社員には手厚いサポートとなるでしょう。
アウトプレースメントの目的
アウトプレースメントは米国で1980年頃から生まれたビジネス。そのねらいは【再就職の支援や情報を提供する】ことです。アメリカでは、日本よりも人員削減が頻繁であり、ひとつのビジネスとして発展してきました。
日本ではバブル経済が崩壊した1990年代から始まったとされています。
目的を一言で言えば【再就職支援の対象者への支援】であり、相談を受けたりさまざなサポートになります。
主な目的は以下になります。
●対象者の経済的問題を早めに解決すること。
退職することで収入が途絶えてしまうため、早期に再就職先を見つけるのがポイントとなります。
●退職者へのケアを実施し互いの軋轢を無くすこと。
リストラは企業として致し方なく実施するものです。
その際一方的におこなえば、退職者と軋轢が生まれるのを避けられず、最悪の場合、訴訟にまで発展するかもしれません。
互いが納得して今後を送るためにも、企業は必要充分なケアを求められます。
また日本の企業は、再就職企業を探すこともありますが、米国では一切ありません。
米国と比較すると、日本の方が手厚い支援をする傾向があります。
転職エージェントとの違い
活動費用は、転職エージェントならば求職者本人なので、現在の会社には一切かかりません。ただしアウトプレースメントなら、(リストラをおこなった)今の会社と業者の間で費用が発生します。費用の負担はこの点が大きく異なります。
アウトプレースメントを導入するメリット
アウトプレースメントにおいて、会社側、従業員側の互いのメリットを見てみましょう。
会社側のメリット
●何よりも従業員との摩擦が少ない。お互いに納得できる。円満に解決しやすい。
●企業がしっかりとサポート体制をおこなえば、労働組合とのトラブルを回避できる。カタチだけでなく、親身になって対応することが求められます。
●企業としても、外注業者のアドバイスを受けるのは有益。退職に関してノウハウを学んだり、システムの見直しとなる。
従業員側のメリット
●早期退職を円満に進めてゆける。生活面、経済面において安心を得られる。
●早めの再就職が可能になりやすい。
●履歴書の作成方法や面接のポイントなど、不安な点でアドバイスをもらえる。
●ただの転職でもなく、キャリアアップを果たすことも可能である。
アウトプレースメント導入におけるデメリット
一見、欠点のないようにも思えるアウトプレースメントですが、デメリットも存在しています。見てゆきましょう。
費用がかかる
従業員1人につき、年間で約100万円の費用がかかると言われています。
10人ならば1000万円となり、仮に100人規模のリストラならば1億円もの費用が必要となります。
退職金を支払うよりは少ないとは言え、人員削減が狙いの企業には大きな出費になってきます。もしも非常に経営が悪化している企業ならば、その費用を捻出するすら厳しくなるかもしれません。
必ず再就職できるわけではない
リストラ対象者が全員再就職できるとは限りません。再就職支援が目的であり、再就職の確約ではないのです。この点は、事前に納得しておいてもらう必要があります。
また、退職する従業員には「どんなことでもサポートしてもらえる」とは思わせないことです。充分に支援するとは言え、できることには限りがあります。
最終的には【本人】の行動が決め手になりますので、【線引き】をして、事前の説明と理解をしてもらうのが必要です。
そして、仮に本人のやる気が見られない際は、会社側が利用停止の申し入れをすることもできます。従業員と会社側、両方の歩み寄りが必要です。
アウトプレースメントの導入条件
導入条件としては以下の3つがあります。
①企業の人員削減のための退職であること
まず早期退職制度としてリストラや希望退職になります。
その際、通常の転職や退職は当てはまりません。
②企業がアウトプレースメントの利用を決めていること
次に、企業と退職希望者間で、【企業が利用を決めている】ことがポイントです。
退職者の希望のみでは実施されません。
③人員削減の対象者がアウトプレースメントを希望していること
また、アウトプレースメント実施について労使間での合意があることも条件です。
退職者側が希望しなくても、導入は不可となります。
アウトプレースメントのサービス内容
それではアウトプレースメントのサービスを順に解説します。
①退職者とのカウンセリング
まずはカウンセリングを実施して以下の点を話し合います。
●再就職支援の合意形成実施
●再就職へのスケジュールを確認する
●自己分析を実施(対象者現在のスキル、職歴の調査)
●目標設定をおこなう(希望の職種や業界)
②再就職に向けた各種サポート
次に再就職支援として以下のサポートをおこないます。
●履歴書、職務経歴書の書き方と面接の指導
●選考対策(面接練習、選考スケジュールの確認)
●資格勉強会の実施
●入社手続き(意思確認と交渉など)
●再支援(採用まで進まなければ再支援をおこなう)
③入社後のアフタフォロー
再就職できた後は、人間関係のフォローを実施します。再び早期退職するのを防ぐために、職場先でのストレスや不安を軽減させるケア、カウンセリングをおこないます。
有名な大手アウトプレースメント企業
高い実績を誇る大手5社を紹介します。
①マイナビキャリア
就活で有名な企業です。他社と比較して、対象者の心のケアを第一に考えています。
②パーソナルキャリアコンサルティング
日本で初めにアウトプレースメントサービスを実施した企業です。再就職支援会社として30年以上のキャリアと、5900社以上の支援実績を誇ります。
③マンパワーグループ株式会社
再就職の難しい、40代から50代の支援に強いのがセールスポイントです。
世界で75カ国、地域に2200以上のオフィスを持っています。
日本の2500社以上の企業で、55000人以上のリストラ対象者がサービス活用する安心の実績があります。
④テンプスタッフキャリアコンサルティング株式会社
再就職に役立つ、多彩なセミナーや学習プログラムが特徴です。全国的に展開するネットワークがあります。
⑤ライトマネジメント
非常に高い成果を上げている再就職支援会社です。
350万人以上の支援実績があり、満足度95%、定着率97%を誇ります。特にミドル・シニア層の支援に強いことが特徴です。
まとめ
企業側の都合での人員削減は、自主希望退職者とのトラブル防止が何よりも重要です。
そのためのアウトプレースメント実施は非常に有効です。
退職者への手厚い再就職サポートは、不安や労使間の摩擦を軽減してくれます。
企業と退職者の、お互いが気持ちよく活動できることが将来に影響します。
1人1人にマッチした支援ができること。スムーズなやり取りから再就職のサポートをできるかがアウトプレースメントのポイントとなるでしょう。