業務の遂行や事業の新規立ち上げに携わる中、ハンズオンという言葉を耳にする機会があるかもしれません。
本記事ではハンズオンとはどのような意味を持つのか、メリットや成功するためのポイントについて解説します。
ハンズオンとは
まずはハンズオンの持つ意味と目的について確認しておきましょう。
ハンズオンの意味
「ハンズオン」という単語だけ聞くとイメージが分かりにくいかもしれません。ハンズオンの基本的な意味からビジネスにおけるハンズオンのイメージをつかんでおきましょう。
英語の「Hands-on」が語源
ハンズオンは英語の「Hands-on」が語源で、直訳すると「手を置く・加速する」という意味です。
日本語で「加速させるもの」という意味
「加速させるもの」という意味を持つハンズオンは、ビジネスにおいて「M&Aや投資を行った後にマネジメントに深く関与することで、成長を促進させる」といった意味を持ちます。
ハンズオンの目的
投資家や買収企業がマネジメントに深く関与することで、経営陣に新しいアイデアや視点を提供し、業績の向上を目指します。ハンズオンの主な目的は、M&Aや投資後に企業の成長を促進させることです。
新興事業を支援する取り組み
ハンズオンは、新興事業を支援する取り組みとしても注目されており、特に技術的な分野や成長市場において若い起業家たちが才能を発揮している場合に、投資家や企業側がハンズオンで関与することで、事業の成長を促進させられます。
ハンズオンとハンズオフがある
ハンズオンの対極的な言葉がハンズオフです。ハンズオフとは、投資家や買収企業がマネジメントに関与せず事業を自律的に運営させることを意味します。どちらが良いというわけではなく、事業の状況や目的に応じて、適切な手法を選択する必要があります。
ハンズオンの特徴
ハンズオンの特徴は、M&Aや投資により企業を買収した後、積極的な経営支援を行うことです。そのため、買収した企業の経営陣にアドバイスをし、経営に深く関与する場合が多くなります。
ハンズオンの2種類の型
ハンズオンには「新事業展開型」と「経営基盤型」の2種類がありますが、どちらの型でも買収した企業の成長を促すことが主な目的です。
新事業展開型
新事業展開型は、自社の既存事業とは異なる分野に新たな事業を展開する際に、その事業で実績のある買収先と協力して成長を目指すものです。
経営基盤型
自社で行っている既存の事業を強化するために、強化したい分野で実績を持つ企業を買収してハンズオンを行います。
ハンズオンの事例
次にハンズオンをどのような形で行うのかという事例について見ていきましょう。
ベンチャー企業のサポート
ハンズオンの代表的な事例のひとつが、ベンチャー企業のサポートです。新興企業の場合に直面する困難が、経営陣の未熟さによる資金調達や事業展開のノウハウ不足です。ハンズオンは、そのような状況下で経営者や経営陣に直接経営のアドバイスやノウハウ提供を行います。
M&A後に取締役の派遣
M&A後の企業再生においては経営陣の一部交代が必要になる場合があります。その際にハンズオンは経営陣の人事面での支援とともに取締役として現場に立ち、直接経営に関与しながら企業再生を支援します。
ハンズオンとハンズオフの違い
ハンズオンとハンズオフの違いは、経営者や投資家が事業にどの程度介入するかです。
積極的に経営に介入する「ハンズオン」
「ハンズオン」では経営者や投資家が積極的に経営に介入し、現場の改善や業務改革に力を入れます。ハンズオン型の経営者は自ら現場で働くこともあり、直接従業員と接することで現状を把握し改善策を立案します。
企業マネジメントに関与しない「ハンズオフ」
一方、「ハンズオフ」とは、経営者や投資家が企業マネジメントに関与しないことを指します。投資家は事業計画や業績報告など必要最低限の情報を受け取るだけで、企業運営には口出ししません。このため、経営者や社員は自主性を持って事業を運営する必要があります。
ハンズオンのメリットとデメリット
次にハンズオンのメリットとデメリットについて見ていきましょう。
ハンズオンのメリット
ハンズオンのメリットは簡潔に言うと「直接経営に関与することで買収・投資先企業を効率的かつスピーディーに変革できる」という点です。
企業の変革を加速させる
ハンズオンでは経営判断に直接影響を与えられるため、企業の変革を促進し成長を加速させられます。
業務の監督力を向上させる
現場で業務に直接関与できるため、業務の実態を正確に把握し効率的な改善策を提案できる結果、業務の品質向上につながる点もハンズオンのメリットです。
業務のサポートを受けられる
ハンズオンでは現場で業務に関わるため、スキルを持つ社員が業務を直接サポートできます。そのため投資先企業、あるいは投資企業の業務改善や効率化にもつながります。
人材育成につながる
ハンズオンによって効果的な人材育成のノウハウが提供されることで、社員のスキルアップや能力開発につながる場合もあります。
ハンズオンのデメリット
「企業の経営判断や業務改善を加速する」といったメリットの一方で、ハンズオンのデメリットは経営に積極的に介入を行うがゆえに発生するリスクです。
買収先の社員との対立リスク
ハンズオンでの経営改善策に対して買収先の社員が反発した結果、買収先の社員との対立リスクの可能性があります。そのため、事前のコミュニケーションや説明が不可欠です。
関与の度合い次第で経営が行いにくくなることも
関与の度合いが過剰な場合、買収後の経営が行いにくくなることもあります。ハンズオンでの介入が過剰になると、買収先の社員が反発するだけでなく事業承継後の経営判断が遅れたり、決断力が低下したりすることも考えられるため、適切なバランスを保つことが重要です。
ハンズオンを成功させるためのポイント
ハンズオンのメリット・デメリットについて理解したところで、ハンズオンを成功させるためのポイントについて解説します。
明確な目標設定
ハンズオンにおいては、事業についてどのような成果を得たいのかについての明確な設定が重要です。
評価を定量的に
目標を定量的に評価することで、達成度合いを測ることができます。定量的な評価指標を設定することで、目標達成のための具体的なアクションプランを立てられます。
目標を細分化しすぎない
目標を細分化しすぎると、大局的な視野が失われる可能性があります。目標を細分化する際には、大きな目標とそれを達成するためのサブゴールの設定が重要です。
事業への参画
ハンズオンの成功には、事業に深く参画することが必要です。経営陣とコミュニケーションを取り、事業の現状や課題を把握した上での改善案の立案が欠かせません。
事業の実態を知る
事業に参画する前に事業の現状や市場動向を十分に把握することが必要です。事業の強みや課題を把握した上での改善策の立案が重要です。
実現性の担保
目標を設定する際には、現実的な目標を設定することが重要です。また、目標達成のためのリソースや時間、費用の担保が必要です。実現可能性を慎重に検討し、リスクを最小限に抑えることが重要です。
コミュニケーションの重視
ハンズオン成功の鍵の一つはコミュニケーションです。経営陣や社員との円滑なコミュニケーションがなければ、目標の達成は難しいでしょう。
意見の衝突を避ける
ハンズオンにおいては、意見の衝突が起こりやすい状況に陥る場合があります。意見の衝突を避けるためには、お互いに対話をし問題点を共有することが大切です。また、話し合いの中で相手の立場を理解し、自分の立場を正確に伝えることも重要です。
信頼関係の構築
ハンズオンにおいては、信頼関係の構築が非常に重要です。相手との信頼関係が築かれていないと、意見の相違や問題が生じた場合、うまく対処できません。信頼関係を築くためには、相手のニーズを理解することや相手に対して自分自身の姿勢や価値観を示し、信頼感を得るのも大切です。
計画の立案
ハンズオンにおいて、成功するためには明確な計画を立てることが必要です。計画は目標達成のための方針であり、具体的なタスク分担や期限を設けることで目標に向かって効率的に実行できます。
計画を基に組織改革
計画に沿って組織改革を行うことで、組織の効率化や強化が図られます。組織改革には、社員の育成や配置転換、業務の再編成などが含まれます。
リーダーのマネジメントが重要
ハンズオンにおいては、リーダーのマネジメント能力が非常に重要です。目標の設定やチームの方針決定、タスクの割り振り、進捗管理などを行うリーダーの適切な選定はチームの成功に必要です。
検証と軌道修正
ハンズオンのマネジメントにおいて計画を実行する上で最も重要なのが、事業計画に基づいて進めていく際の検証と軌道修正です。
一度では完了とはならない
ハンズオンのマネジメントにおいて、一度計画を策定し実行に移行すれば、それで全てが完了するわけではありません。実際に事業を運営していく上で、様々な課題や変化に直面することが予想されます。そのため、進捗状況を常に把握し、問題点を洗い出し、改善策を検討する必要があります。
不具合を調整
ハンズオンのマネジメントにおいて、不具合が解決されないまま進めてしまうと事業が危機に陥る可能性があるため不具合の修正によって計画と実行の間のギャップを埋めていくことが求められます。都度必要に応じて方向修正することが、ハンズオンの成功には欠かせません。
まとめ
ハンズオンとは、直接経営に参画することで企業変革を加速させる手法です。
ハンズオンは新興事業の支援に有効な手法であり、経営に直接参画することで企業変革を加速できますが、成功するためには明確な目標設定、計画の立案と実行、適切なコミュニケーション、検証と軌道修正が必要です。
また、ハンズオンには、買収先の社員との対立などのリスクも存在します。ハンズオンを成功させるためには、リーダーのマネジメントが重要であり、信頼関係の構築を行いながら課題を解決する実現性を担保した計画を立案し、買収元企業と買収先企業双方の成長を目指して取り組むことが重要です。