英文経理とは?メリットとデメリット、おすすめの資格も解説

日本の企業に就職して会計・経理関係の仕事をしたいのであれば「簿記検定3級以上」の資格があれば即戦力になることが期待されます。それで就職する前に簿記講座を受講して資格を得てから企業に就職する新卒学生がいます。

企業としても会計・経理関係は企業運営上最重要視していますので簿記検定資格を持っていれば、企業規模にもよりますが大部分は経理部を設けていると思いますのでそちらに配置され経理関係を担当する可能性が高くなります。そして実際に経理部に配置され経理関係業務を3~4年も担当すると「もう一段レベルアップした経理関係の仕事をしてみたいな」と思うかもしれませんね。

特に近年は企業間の取引もグローバル化していますので、外資企業が日本に進出したり、日本の企業が米国などに支店を設けたりすることもあります。

英語が得意な方であれば、一度は「英文経理」に興味を持たれたことがあると思います。キャリアアップとしてチャレンジするのにお勧めできる業務ですので、「英文経理とはどのような業務なのか、メリットとデメリット、おすすめの資格も解説」しますので参考にしてください。

英文経理とは

企業の経営活動の財務上の結果を関係者に報告する目的で作る「貸借対照表・損益計算書・利益処分計算書・附属明細表」を財務諸表と言いますが、それを英文で記載する業務を「英文経理」と言います。

英文で記載する財務諸表

英文で記載する財務諸表が必要な理由は「外資系企業の進出により一般化していること」「日本基準と米国基準に違いがあること」「国際会計基準への統一化」を目指していることにあります。

外資系企業の進出により一般化

経済産業省の2020 年 3 月末の集計によりますと、国内の外資系企業数は 2,808 社で内訳は製造業が489 社、非製造業が 2,319 社となっております。全産業に占める割合は、製造業が 17.4% 非製造業が 82.6%となっています。この数値は全ての国を含んだものですが、外資系企業の日本進出が一般化している現状が窺えます。

日本基準と米国基準

外資系企業の日本進出は日本の産業のグローバル化を促進してくれますので歓迎ですが、米国企業の場合は、双方の会計基準の相違が日本企業側の英文経理事務処理に煩雑さをもたらしています。

米国の場合は英語で定められた会計基準USGAAP (Generally Accepted Accounting Principlesの略)に基づいて経理処理を行いますが、日本の場合は日本基準による会計処理が求められます。そのため、米国へ進出した日本企業の子会社で作成された英文の財務諸表や資料を日本語に翻訳して対応している現状があります。この場面で英語の翻訳力が求められます。

国際会計基準への統一化 

一方各国の会計基準がバラバラで比較が困難なことから、1970年代から統一化が検討されていましたが、1980・1990年代を経て、2000年代に入り、欧州連合(EU)がIFRS(International Financial Reporting Standards:国際財務報告基準)という各国会計の報告基準を作成し、域内上場企業に対して採用を義務付けたことが発端となって世界中に波及し、現在に至っています。日本の企業も欧州の企業と取引が行われていますので、2023年5月末現在IFRS適用済み会社数が255社、適用決定会社が13社に上っています。IFRSは英語で処理されていますので、やはり英語力が求められます。

USGAAPに基づく経理処理

USGAAPのGAAPは「一般に公正妥当と認められた会計原則」を意味しますので、USつまり米国の会計原則は妥当であると認められていることになります。

おもに米国の上場企業で使用

米国の上場企業はこの会計原則に基づいて財務諸表を作成し公開しておりますが、米国の上場企業は世界的に見てもトップ企業ですから、この会計原則は世界的な会計基準とされております。そのため、先述したIFRSとの統合化も検討されております。また、日本企業でも米国証券取引委員会(SEC)に登録していれば、US-GAAPによって財務諸表を公表することが認められています。

日本基準

日本の会計基準は日本の実状に合わせて企業会計基準委員会が設定したものを2001年から使用しておりますが、米国の基準と大きな違いがあるためそのままでは米国で受け入れてもらえず、支店を置くなど企業進出しても停滞する可能性があります。

英文で作成する日本の経理処理

このため、その支店が英文の財務諸表や資料を作成して企業の普及活動をしております。

翻訳して日本基準として使用

また、日本では日本基準を守る必要がありますので、支店が作成した英文の財務諸表や資料を翻訳して日本基準として使用しています。大企業などは初めから割り切って米国基準で作成し米国で上場している所もありますが、日本基準は国内の企業が慣れ親しんでいることもあって人気がありほとんどの企業が使用しています。

英文経理のメリットとデメリット

ここでは英文経理が実施上でどのようなメリットとデメリットがあるのか述べます。

英文経理のメリット

英文経理のメリットとして「国際的な経理処理が身に付く」「英語力が身に付く」「転職先の選択肢が増える」などのメリットがあげられます。

国際的な経理処理が身に付く

英文経理業務に従事することで「国際会計基準」や「米国会計基準」など世界基準の会計知識に触れることができ「国際的な経理処理を身に付ける」ことができます。さらに飛躍したいのであれば、BATICと呼ばれる国際会計検定を受けたり、米国の公認会計士資格にチャレンジする道もあります。

英語力が身に付く

英文経理は毎日が英語中心の業務ですから、「英語力が身に付く」ことはもちろんのこと日本における英文経理のスペシャリストになることも可能です。

転職先の選択肢が増える

経理の実務能力と英語力も高い人材は希少価値とされております。日本企業の海外進出あるいは海外企業の日本進出で欠かすことができない人材だからです。このような人材は売り手市場で「転職先の選択肢が増えます」。

英文経理のデメリット

上述しましたように、英文経理のメリットは多いですが、グローバルな活動が求められるため、次のようなデメリットもあります。

海外時間に合わせた勤務が必要

例えば転身を決心して米国法人の日本支社などに就職した場合、活動は米国の本社が優先されますので、緊急案件が入った時は夜中でも支社が対応する必要があります。「海外時間に合わせた勤務が必要」なことを自覚しなければなりません。

文化の違いが休日に反映

また、「文化の違いが休日に反映」しますので、日本の「ゴールデンウイーク」のようにまとめて休日を取ることができません。例えば米国を例にとると、連邦政府が定める休日は11日でその他に各州が定める休日があります。各州は国と同じような権限を持ちますので、連邦政府が定める休日でも守らない州があります。日本のような休日制度は期待できませんので知っておく必要があります。

英文経理に必要なスキル

英文経理に必要なスキルは「英語力」「会話スキル」「会計スキル」があげられます。

英語力

英会話が得意な人でも業務の内容が専門的なことですので、英語力は「ビジネス英会話レベル」で、「英文の根拠資料を読み取る力」が必要になります。

ビジネス英会話レベルが必要 

ビジネス英会話レベルは、英語の4技能と言われる「Listening、Reading、Writing、Speaking」の能力が高く、ビジネスシーンで交渉に支障がなく、ビジネス文書の作成ができる程度を言います。日本ではTOEICの点数を重視する傾向がありますので仮に置き換えてみますと、内容がそれほど専門的でなければ700点以上と言われています。

英文の根拠資料を読み取る力

また、「英文の根拠資料を読み取る力」も要求されます。例えば、外資系企業の日本法人に就職した場合、英文の契約書などを一字一句点検したり、自分で作成することもあると思います。正確に理解できないで契約を締結し会社が損害を被るような事態を生じさせないようにする必要があります。

求められる英語力を事前に確認

希望する就職先が見つかったら、どの程度の英語力が必要なのか「求められる英語力を事前に確認」するようにします。企業によって求めている英語力のレベルが違うことがあります。

また、交渉事が多いので自分から積極的に話しかけてコミュニケーションを取ろうとする人が歓迎されるようです。

会計スキル

英文経理ですから「会計スキル」も要求されます。そこで「気を付けるべきこと」と「事前準備が必要」なことを述べます。

国内の会計関連資格は通用しない 

現在、経理部などに所属して経理や財務関係などを担当されている方は、簿記関係などの資格をお持ちだと思いますが、国内の会計関連資格は国外で認知されていませんので通用しないことを知っておいてください。 

米国会計基準の学習が必要

そのため米国などで英文経理として活躍するには「米国会計基準の学習が必要」になります。

学習するには、教材として「長谷川 茂雄氏が執筆した『米国財務会計基準の実務第11版』が最新版として発売されています。」日本語ですので原則的なことを理解するのに役立ちます。

英文の財務諸表を読み取る力

上述しましたが、財務諸表は「貸借対照表・損益計算書・利益処分計算書・附属明細表」を言います。英文で記載されたこれらの「財務諸表や関連資料を正確に読み取る力」も要求されます。

英文経理と関連する資格

英文経理と関連する資格として「米国公認会計士」「国際会計検定」があげられます。日本では簿記検定資格が通用するように、海外で通用する資格を持っていると転職の選択肢が広がりますのでこの2つについてご紹介します。

米国公認会計士

米国の各州が認定する資格として米国「公認会計士」があります。各州が認定していますので米国内であれば通用する資格です。それに加えて、カナダ・メキシコ・南アフリカ・オーストラリア・ニュージーランド・香港・アイルランドなどと「相互承認協定」が結ばれていますので、これらの国や地域ではライセンスとして通用します。

通称「USCPA」

通称「USCPA」と呼ばれていますが、これは「U.S. Certified Public Accountant、米国公認会計士」の略です。国際ビジネス資格の中でも最高峰と言われており、会計の専門家がこの資格の下に多種多様な仕事をこなしています。医師・弁護士と並ぶ3大国家資格ですので、合格すれば未来が開けます。

NASBAによって試験を実施 

試験はNASBA(全米会計委員会)が管理して世界の各地で実施しています。

日本でも受験可能

日本でも受験可能ですが、受験場所は「東京の御茶ノ水ソラシティ」と「大阪の中津センタービル」の2箇所のみになります。

公認会計士としてのキャリアアップ 

ぜひ、公認会計士としての資格を得ていただきたいと思いますが、公認会計士になるための試験には会計や業務における周辺知識であるIT関係の知識を問われることもあります。

 IT関連の知識も必要

近年のIT関係、特にAIに関する進歩は目覚ましいものがありますので、情報整理をして試験に臨むことをお勧めします。

合格率は約50% 

合格率は約50%と言われています。(2022年におけるUSCPAの科目別合格率の平均は52.8%です)

国際会計検定

もう一つキャリアアップに向けてチャレンジをお勧めしたいのは「国際会計検定」です。

国際会計検定は通称BATICと呼ばれていますが「Bookkeeping and Accounting Test for International Communication」の頭文字を取ったものです。主催は商工会議所で英語での会計処理能力を測るものです。通常の検定試験は一定の基準を定めてその基準に達しないと「不合格」として落とされてしまいますが、BATICはTOEICと同じ方式を取っており、例えば、1000点満点のスコア制を採用してスコアの数によって受験者の能力を定めるのが特徴です。

英文簿記の理解が必要

この検定で良い点数を獲得するには「英文簿記の理解が必要です。」日本の簿記検定資格をお持ちでしょうからおわかりいただけると思います。

国際会計基準の理解が必要 

日本特有の会計基準と異なり国際会計基準は世界共通の会計基準ですから必ず読んで理解しておく必要があります。

4段階の称号を授与

「検定後に授与される4段階の称号は次の通りです。

1 コントローラレベル(スコア880~1000)

国際会計理論と国際財務報告基準を理解している。

日商簿記1級程度の知識がある。

2 アカウンティングマネジャーレベル(スコア700~879)

国際会計理論と国際財務報告基準の基本を理解している。

日商簿記2級程度。

3 アカウンタントレベル(スコア320~699)

英語で会計帳簿の記帳と管理ができる。

日商簿記3級程度。

4 ブックキーパーレベル

英語の会計取引を理解できる。

日商簿記3級程度。


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