貴方は「シンギュラリティ」と言う言葉をご存じでしょうか?もしご存じなら「シンギュラリティという説」が自分の将来に影響する可能性があるのか知りたくてこのサイトを訪問してくれたものと思います。
この「説」は科学者たちの空想ではありません。急速に進む人工知能(A I)の進歩が人間の能力を超え人間が制御できなくなったときにどのような世界になるのか、近未来の状況を直視した「仮説」と言うことができます。そこで今回は「シンギュラリティとは何なのか?」「その意味や社会に与える影響とは?」また、「発生する要因」についても解説します。
コロナ禍で苦労して就職した現在の職業が2045年頃は不要になっているかもしれません。
とにかく、その内容を知っておくことをお勧めします。
シンギュラリティとは
シンギュラリティは英語の「singularity」を日本語読みしたものです。[singularity]という言葉自体は宇宙の初期状態であるビッグバンを説明するときに既に使われていました。「ビッグバンは『特異点』である」という文章がビッグバンの説明の中にあります。
シンギュラリティの意味
ここで使われる「シンギュラリティ」は「人工知能(A I)が人間の知能を超えて制御
が効かなくなった時にどのような世界になるのか」という仮説と思われていました。
しかし、人工知能の進歩があまりにも早いので現在は「いつどのようなことが起きるのか」
予測の局面での論議になっています。
「特異点」と訳される英単語が語源
「singularity」を英和辞典で引くと天文学の分野で「特異点」という訳があります。
先述のビッグバンの延長線上で捉えられているものと思われます。
ここで説明する人工知能(AI)関係でも「特異点」という言葉が使われており語源になっています。
特異点とは「一般的な基準が当てはまらない」ことを意味します。人間が支配していた人工知能が、逆転して人間が支配されるようになることは考えもしなかったことですので、まさしく特異点ということができます。
おもに数学や物理で用いられる
特異点という言葉は数学や物理で使われています。例えば数学では、「これまでの数学の枠内で定義できないことを特異点」と呼びます。物理学では宇宙物理学において「ブラックホール内には特異点が存在する」などと用いられています。
テクノロジーの進歩による技術的特異点
この特異点について人工知能では「技術的特異点」と呼んでいます。テクノロジーの進歩が予想したより急速であり、それに伴い人工知能が人間の知能を上回る時期がより加速化することが確実となっています。
人工知能が人間の知能を超える時点
人工知能を利用した製品が次々と市場に出回っています。しかし、現在日常生活の中で目にするのは自動掃除機やおしゃべりロボットなどに留まっていますので、自分たちの仕事が人工知能に奪われるなどという感覚はありませんね。でも、近未来に約49%の仕事が人工知能で代替できるという研究結果が発表されています(野村総合研究所とオックスフォード大学の共同研究)。このような具体的な研究結果を突きつけられると、「人工知能が人間の知能を超える時点」ではどのようなことが起こるのか人間としては不安になります。
社会生活の変化
第一にあげられるのは人工知能に取って代わられる業務に従事していた人たちが失業してしまうことです。上述した人工知能が人間の代替をするようになると約半分のビジネスパーソンがジョブレスになってしまいます。人間がビジネスとしてやることは人間でなければできないようなことに限定される可能性が高くなります。
他方で仕事をしなくても給料がもらえるベーシックインカム制が導入されることなどが提唱されており、人工知能の発展は私たちの社会生活を一変させる可能性があります。
シンギュラリティが与える影響
シンギュラリティが起きた場合に社会に与える影響はどのようなことでしょうか?
人間が実施していたことを機械がやってくれるのですから様々なことが起こると思います。
例えば、大量な失業者が出ますが、商品の生産に人件費がかかりませんので、安価で購入できるようになります。命に危険が及ぶような業務は機械がやってくれますので労災が減少します。失業者が増えますので、企業の買い手市場になり人手不足が解消されます。長時間労働がなくなり生活に余裕ができます。ちょっと想像しただけでもシンギュラリティが与える影響の大きさが分かります。
シンギュラリティの起きる時期は?
どのような人物かは後述しますが、レイ・カーツワイル博士の説では次のような時期推測をしています。
2045年に起きる説
2045年にはシンギュラリティが起きることを唱えています。人工知能が完全に人間の知能を上回ることを意味しますので、大変な社会変動が予測されます。ここ数年で囲碁・将棋・チェスでプロとして最高位を極めた方々が人工知能に敗れるというニュースに接すると、特化型の人工知能にはもうその時がきたのかと愕然とします。
2029年には人工知能が人間に追いつく
2045年説を唱えているカーツワイル博士は、同時に2029年には「人工知能が人間に追いつく」ことも唱えています。現在人間を驚かしている人工知能はほとんどがある目的を持った特化型です。まだ追い詰められた緊迫感はありませんが、画像認識・音声認識・自動翻訳などの進歩を見ますと2029年には人工知能が人間に追いつくという説もリアルに聞こえます。ただ、シンギュラリティが目指しているのは人間と同じような思考をする汎用型の人工知能です。汎用型の人工知能がカーツワイル博士が唱えるようなペースで進化した場合にどのようなことが起こるのか見てみます。
職業の変化
人工知能の進化に対して一番人間が心配するのは職業の変化だと思います。次のような変化が起きることが予測できます。
消失する職業の増加
人工知能ができるような職業は消失する運命にあり、その職業の種類数も増加すると言われています。具体的には、レジ係・銀行員・タクシー運転手・警備員などがあげられています。また、現在人工知能が活用されているのは、チャットボット・書類選考ツール・PR効果測定ツール・農業関係などです。
新たな職業の出現
失われる職業がある一方で、新たな職業が出現することも期待されています。例えば、データ解析が得意な人工知能を活かして新たなアイディアを出す「データ・ディテクティブ(探偵)」や人工知能を使ったゲノム研究で治療を可能にする「ゲノム・ポートフォリオ・ディレクター」あるいは人工知能と協同作業を行う「管理者」など新たな分野の職業が出現する
ことが期待できます。
医療への影響
人工知能がもたらす医療への影響は素晴らしいものがあります。最近特に注目されているのはオンライン上で行われる遠隔診療です。予約・診療・支払い・薬の処方まですべてがオンラインでできますので、新型コロナの診療でも活躍したようです。医療分野では人工知能が果たす役割がどんどん拡大していくと思われます。不老不死や若返りなどで話題になっていることを2つ取り上げます。
人工臓器
人工臓器による治療が可能になることが期待されています。現在は他の人の臓器提供を受けなければ治療できませんので不安な状態に置かれていますが、人工臓器ができるようになればいつでも手術ができますので患者さんにとって朗報です。現在はマイクロチップを埋め込む治療やテクノロジーを活用して脳波で義手を動かすことができるような段階に進んでいますので、人工臓器が登場するのが案外早いかもしれません。
人体の改造
最終的には人工臓器・人工器官が登場して、定期的に交換することで若返ったり不老不死が実現することまで語られています。
プレ・シンギュラリティとは
2045年にシンギュラリティが起こるという説を紹介しましたが、シンギュラリティは突然起こるのではなく、2029年頃その前段階であるプレ・シンギュラリティが起こると推測されています。
シンギュラリティの前段階
プレ・シンギュラリティ(pre-singularity)の(pre)は接頭語で「前の」という意味がありますので、シンギュラリティの前段階という意味になります。シンギュラリティは人間の知能を完全に追い抜いた状態ですが、その前段階でも様々な事象が発生することが推測されています。
社会的特異点とも言われる
シンギュラリティが「技術的特異点」と言われるのに対してプレ・シンギュラリティは「社会的特異点」とも言われています。このプレ・シンギュラリティの時は激しい社会的な変動が起きる可能性があるためと思われます。
2030年に起きる説
シンギュラリティが起きるのは2045年頃と言われていますが、2030年に起きるという説を提唱している人がいます。300年前の産業革命で蒸気機関の登場、その後70年前にコンピューター登場による情報通信革命、30年前はインターネット革命が起こっています。今後はこのような革命的な事象が影響しあいながら次々と発生することが予測され、プレ・シンギュラリティで経験する社会変動を経て2030年にシンギュラリティに到達すると言います。
スーパーコンピューター開発者が提唱
この説を提唱しているのは日本初のスパコン開発で有名な斎藤元章氏(PEZY Computing 代表取締役社長)です。斎藤氏は将来的には次世代の人工知能(AI)と次世代のスーパーコンピュータ(スパコン)が連携することで、エネルギー、衣食住、医療・福祉、安全保障等、全ての社会課題が解決できる」と語っています。しかし、その前に、プレ・シンギュラリティと呼ばれる事前の大きな社会変動が起きるとも述べています。斎藤氏が提唱する内容を見てみます。
社会の仕組みが大きく変化
プレ・シンギュラリティで最初に解決されるのは「エネルギー問題」だと言います。
「小型熱核融合炉」の商品化や大阪市立大学で研究している「人工光合成」さらには蓄熱技術の進化でエネルギーが無償になりエネルギー問題が解決するので社会の仕組みが大きく変化するといいます。
人類の生活に多大な影響
次に解決できるのは「食料問題」と「衣食住に関わるあらゆる課題の解決」でエネルギーが無料になるので、現在使われている「食物工場」を参考に大規模化した食料工場を作り、穀物・果物の生産や肉や魚の蓄養も可能になり食料問題が解決する。このように次々と取り組んでいけば最終的には住宅も無料になり「人類の生活に多大な影響」を及ぼすことができると提唱しています。
プレ・シンギュラリティによる変化
プレ・シンギュラリティは人間にどのような変化をもたらすのか見てみます。
社会的変化
社会的な変化では、「労働が必須ではなくなる」こと「福祉が充実すること」が提唱されています。
労働が必須ではなくなる
これまでは生きるために労働していましたが、食料問題が解決し、衣食住は無償で提供されるようになりますので、労働が必須ではなくなります。
福祉が充実する
誰もが無償で「エネルギー」「生活必需品」「衣食住」を得ることができますので、まさしく「福祉社会の実現」になります。
経済的変化
経済的な変化では、「通貨が不要になる」こと「エネルギーが無償になる」ことが提唱されています。
通貨が不要になる
「エネルギーが無償になる」ことを手始めに生活上で必要なことはほとんど無償になりますのでお金を持ち歩く必要がなくなり「通貨が不要」になります。
エネルギーが無償になる
先述しましたように「エネルギーが無償になる」ことが「プレ・シンギュラリティ」
の出発点になります。
人類の変化
人類の変化としては、「高度な健康管理が可能になる」こと「若返りが可能になる」ことが提唱されています。
高度な健康管理が可能になる
体内にナノポットを注入して「記憶や思考・健康管理」など高度な健康管理が可能になります。
若返りが可能になる
人工臓器が用意されているので、例えば、自動車の部品を交換する感覚で古くなった臓器を交換し若さを保つことができるようになります。
シンギュラリティが実現する要因
シンギュラリティが実現する要因としてムーアの法則をあげることができます。
ムーアの法則
「ムーアの法則」は経験則から半導体の進歩をまとめたもので、「半導体回路の集積密度は1年半から2年で2倍となる」というものです。
「インテル」の設立者が提唱
この法則を発見し提唱したのは米国の半導体企業で最大手のインテルの共同創業者であるゴードン・ムーアでした。
半導体の処理能力の向上
ムーアは半導体が年々進化してどんどん小さくなり、計算能力も飛躍的に向上していることに目を付け、1965年に「ムーアの法則」を提唱しています。
収穫加速の法則
「収穫加速の法則」はシンギュラリティを支えるもう一つの理論でカーツワイル博士が提唱したものです。ムーアの理論を裏付けるバックボーンの役割も果たしています。
カーツワイル氏が提唱
カーツワイル氏の本名はレイモンド・カーツワイルといい、米国で発明家・思想家・未来学者・実業家など多彩な肩書を持って活動しています。人工知能については特に強い関心を持っており、前述のように2045年には人間が人工知能に追い越される、つまりシンギュラリティが実現することを予測しました。そのカーツワイル氏が提唱したもう一つの理論が「収穫加速の法則」です。
テクノロジーの発展が加速する説
「収穫加速の法則」は、「テクノロジーの発展が加速する」という説です。日本では「科学技術は指数関数的に進歩する」と置き換えられて説明されることが多いです。「指数関数的に」と言われると戸惑いますが「1つの革命的な事象が発明されるとそれに関連するあらたな事象が加速度的に出てくる」と言う意味で捉えるとわかると思います。いずれにしましても、斎藤氏が提唱するプレ・シンギュラリティが、あと数年でどのような社会変動をもたらすのか、注目していただきたいと思います。