当サイトをご訪問いただきありがとうございます。「貸借対照表」にご興味がおありのようですので、企業の経理部門に所属していて日常の会計業務や決算業務に従事されているか、経理関係の業務がお好きでこれから就職する職場で活躍するために、事前学習をされているものと思います。「貸借対照表」は企業が決算報告をする時に必ず添付する必要がある重要なものです。
そこでここでは、「貸借対照表とはどのようなものか、特徴や記載内容、分析のポイント」についても解説します。参考になると思いますので役立ててください。
貸借対照表とは
初めに、貸借対照表とはどのようなものか「その概要と特徴」について述べます。
貸借対照表の概要
「貸借対照表の概要」を一言で述べますと「企業のある一定時点における資産状況を表したもの」と言うことができます。別名で「バランスシート」とも呼ばれています。
一定時点における資産状況
「ある一定時点」とは、通常「決算日」を言います。決算日の翌日から新たな事業年度が始まりますので、現在進行している事業年度の最終日になります。日本企業の傾向として決算期は3月、9月、12月が多いと言われています。
実際に国税庁のデータを見ますと、決算期を3月にしている企業が一番多く、全体の18.3%、次いで9月が10.9%、12月10.4%となっております。
日本の中央官庁や地方公共団体などの公的機関はほとんどが新年度は4月1日からです。
3月期が決算期になりますので、その影響を受けているものと思われます。また、海外の企業は一般的に12月を決算期としていることが多いので、日本企業でも海外の企業と取引している企業は、12月を決算期にしているものと思われます。
9月を決算期としている企業が多いのは、3月が監査法人または税理士にとって繁忙期に当たることや社内外の業務のピークとかぶらないようにしているためと言います。
この決算日時点で、売掛金がいくらあるのか、借入金はいくらあるのか、どの程度の利益を得たのかなど、その会社の財政状態を一覧表にしたのが貸借対照表です。
別名「バランスシート」
貸借対照表は別名「バランスシート」と呼ばれますが、これは英語の[balance sheet]からきた言葉です。
貸借対照表を見ていただくと分かりますが、一覧表の左側に資産が記載され、右側は負債と純資産が記載されていて、両者の合計が一致してバランスが取れていることに由来しています。
貸借対照表の特徴
貸借対照表の特徴は「財務三表の一つであること」「決算時に作成するものであること」「資産・負債・純資産を記載していること」があげられます。
財務三表の一つ
金融商品取引法で上場企業などに作成が義務付けられている書類は「財務諸表」と呼ばれておりますが、その中で「貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書」の3つを特に「財務三表」と呼んでいます。貸借対照表は決算書の中でも最も重視されている書類です。
決算時に作成
「決算時に作成」が義務付けられている貸借対照表は、決算日時点における企業の財政状態が記録されていますので、その内容分析を実施することで企業の財政上の安全性を確認することができます。
資産・負債・純資産を記載
貸借対照表では「資産・負債・純資産を記載」することになっています。
貸借対照表をご覧になると分かりますが、左側は「資産」右側は「負債・純資産」となっています。
「資産」は企業が調達した資金が現在どのように運用されているかを示し、「負債・純資産」はその資金をどのように調達したかを示しますので、左右の合計額は常に一致するようになっています。
ここからは、貸借対照表の中で使われる項目について説明します。
貸借対照表の資産に関する記載
貸借対照表の左側になる資産の記載では「流動資産」と「繰延資産」が対象になります。
流動資産
流動資産は「現金」「普通預金」「当座預金」「受取手形」「売掛金」「有価証券」「短期貸付金」「棚卸資産」と多種にわたります。以下順次述べます。
現金
「現金」と言うと円やドル等の通貨が頭に浮かびますが、それら以外でもすぐに現金化できるものという基準で考えられています。「他人振り出しの小切手」「郵便為替証書」「配当金領収書」「期限が到来している利札」なども現金と同じ扱いになります。
普通預金
普通預金の他に定期預金・通知預金などに預けられている額を含みます。
換金性が高いので、期末時点での全ての合計額をまとめて表示します。
ただし、預金でも一定期間引き出しが制限されているものは含みません。
例えば、満期日が設定されている定期預金は、1年基準は適用し、1年を超えるものについては「投資その他の資産」の「長期性預金」として、貸借対照表上に表示します。
当座預金
当座預金は、企業が小切手の振り出しなどで使う口座ですので当然現金と同じ扱いになります。
当座預金は利息がつきませんが、元本は全額保証されます。
受取手形
「受取手形」は当座預金の後に続く項目です。
商品やサービスは既に提供しており、それに伴いその代金の支払いを約束する証券です。
「受取手形」という勘定科目を使用します。
債権(資産)として記録します。
売掛金
「売掛金」も受取手形と同じように商品やサービスは提供済みですので、その代金を受け取る権利となります。
勘定科目の規則では、貸借対照表の資産に売掛金として記録しておくのは支払いを受けるまでで、お金を受け取ったら権利が喪失しますので、資産から記録を消去する処理をします。
有価証券
「有価証券」は、流動資産または固定資産に区分表示することになっています。
その判断は1年ごとになります。売買目的有価証券や、期末日後1年以内に満期が到来する社債などは流動資産に表示。
それ以外は固定資産の部の投資その他の資産に「投資有価証券・子会社株式等」として表示します。
短期貸付金
短期貸付金は返済が1年未満の貸付金を言います。
貸付先は取引先や企業内の役員あるいは従業員の場合もあります。
貸付けを事業として行っていない時は、仕分けの勘定科目は「貸付金」になります。
棚卸資産
「棚卸資産」とは、事業者が最終的に販売することを目的に仕入れたものを、決算時に所有している資産を表します。
製造業の場合は、その商品の他に保管されている製品、製造を目的に保管している仕掛品や半製品、原材料などが含まれます。
土地・建物は固定資産として扱うのが通常ですが、土地・建物の販売を業とする不動産会社は「棚卸資産」として扱います。
繰延資産
繰延資産とは、既に支払い済みまたは支払い義務が確定し、サービスや品物の提供を受けていて、その効果が将来にわたって影響を与える費用のことです。
貸借対照表の「資産の部」に計上されますが、実際に現金化はできません
支出効果1年以上の資産
繰延資産は品物やサービスの提供を受けていて、その効果が将来にわたって影響を与える費用であるという条件がついていますが「支出効果1年以上の資産」になります。具体例をあげると「開業費」や「開発費」が該当します。
この例を見ると「費用に分類されるべきではないか」と思われますが、将来に向かって効果があることから、一時的に資産として計上することが認められています。
計上後は概ね3年から5年で償却することで費用化をします。
現金化はできない
従って「現金化はできません。」
貸借対照表の負債に関する記載
貸借対照表の負債に関する記載は「流動負債」と「固定負債」の2つに分類されます。
流動負債
「流動負債」は、企業活動の本業に関わる支払債務や1年以内に支払期限が到来する債務を言います。
会社の短期的な安全性や支払い能力を示す経営指標でも用いられます。
流動負債は「買掛金」「支払手形」「短期借入金」「未払金」「預り金」が対象になります。
買掛金
「買掛金」は商品やサービスの対価として後で支払う債務です。
後払いの信用取引で行われる掛け取引に使用される勘定科目になります。
将来的な債務ですので貸借対照表では「負債」になります。
支払手形
商品やサービスの提供を受け、支払代金として約束手形を振り出す、買掛金の支払いとして約束手形を振出す場合には「支払手形」という勘定科目を使用します。
会社にとって約束手形の振出しは後日代金を支払う義務であり、債務(負債)として記録されます。
短期借入金
「短期借入金」は返済期限が決算日の翌日から1年を超えない範囲に設定された借入金です。
借り入れた金額は「流動負債」に計上します。
未払金
「未払金」は、商品やサービスを購入したが、現時点では代金の支払いが完了していないときに使われる勘定科目です。
単発的な取引から発生した債務が対象です。
未払金は勘定科目の「負債」に属しており、貸借対照表の貸方側に表示されます。
預り金
「預り金」は給与支払時に企業が社会保険料や税金を控除した場合は一時的に預かって従業員にかわり支払います。 控除してから支払うまでの期間に使う勘定が「預り金」になります。
固定負債
「固定負債」とは「1年以上返済する負債」で「借入金」や「社債」などが該当します。
1年以上返済する負債
「固定負債」は貸方の負債の部のひとつです。
支払期限の到来が1年以上も後となる負債ですから1年以上返済する負債になります。
社債、長期借入金等の長期金銭債務、退職給付引当金等の長期性引当金、その他繰延税金負債等が該当し、どの負債も履行時期の到来が1年を超えるものを指します。
借入金や社債
「借入金や社債」の他に、退職給付引当金等の長期性引当金、その他繰延税金負債等が該当します。
貸借対照表を分析するポイント
ここでは、「貸借対照表を分析する場合のポイント」について述べます。ポイントは「流動比率」「当座比率」「自己資本比率」「固定比率」の4項目になります。
流動比率
「流動比率」は、流動資産の流動負債に対する割合を言います。企業の短期的な債務の支払能力を見る尺度と言われています。
流動資産と流動負債
「流動資産」は1年以内に現金化が予定される資産を言い、流動負債は1年以内に支払いを要する負債を言います。
計算方法
計算方法は次の通りです。
(流動資産-棚卸資産)÷流動負債=流動比率 (流動資産-棚卸資産は当座資産になります。)
当座資産を多く保有していると流動比率の値が大きく、流動資産の保有が少ないと値も小さくなります。
一般的に流動比率が200%を超えていれば、その企業運営は安全と言われています。
逆に100%を割るようだと企業運営が厳しい状況であると判断されます。
当座比率
「当座比率」は流動負債に対して当座資産をどのくらい保有しているかを示す数値です。
流動資産に含まれる当座資産
流動資産は、貸借対照表の決算日の翌日から1年以内に現金化できる資産および企業の通常の営業サイクルの中で発生した資産をいいます。
棚卸資産は在庫を意味しますので、当座資産は流動資産の中でも短期間で簡単に現金化できる資産(現金・預金、売掛金、受取手形、有価証券等)を言います。
計算方法
計算方法は次のようになります。
(流動資産―棚卸資産)÷流動負債=当座比率
通常、当座比率が100%以上であれば、短期債務返済能力は十分あり「財務安全性が高
い」、100%未満だと短期債務返済能力が不十分と判断されます。
自己資本比率
自己資本比率とは「総資本における自己資本の比率」を言います。
総資本における自己資本の比率
常識的に考えて総資本における自己資本の比率が高ければ高いほどその企業運営は安定していると思われますが、実際にはどうでしょうか?
計算方法
自己資本の比率を算定する計算方法は簡単で次の数式で算出することができます。
【自己資本÷総資本】=自己資本比率
やはり自己資本比率が高ければ高いほど企業運営は安定します。
高ければ他人資本からの借り入れをしなくて済みます。
一般的に自己資本比率の目安は30%と言われています。
30%に達していないと借入金返済に追われて、企業の安定した運営に支障が出る可能性があります。
固定比率
固定比率とは固定資産に対する自己資本の比率を言います。
固定資産に対する自己資本の比率
「固定資産に対する自己資本の比率」は、自己資産である純資産で固定資産がどの程度まかなわれているかを知ることができる尺度になります。
計算方法
計算方法は次の通りです。
【固定資産÷純資産】×100=自己資本の比率
固定比率が低いほど企業運営の安定性が高いと言われています。
返済期限のない自己資本で固定資産を得ておけば、借入金で調達して返済に追われることもなく、企業運営が安定します。
(終わりにひとこと)
大企業の経理財務部門は大部分が「日商簿記2級以上」の資格者を求めているようです。