プロジェクトファイナンスとは?仕組みとメリット・デメリットも解説

貴方の会社が大規模なプロジェクトを設立する計画があり、貴方もそのメンバーに参加することが確実でしたら、冒頭の「プロジェクトファイナンス」の言葉にピンと来て、当サイトをご訪問いただいたものと思います。

企業のプロジェクト関係では欧州が先駆的な取り組みを実施しており、日本企業も積極的にこれらのプロジェクトに参加するようになっています。そこで得たノウハウを国内で活用することに努めていますが、逆に海外勢が日本の企業をパートナーとしてコンソーシアム(共同企業体)を組織してプロジェクトに取り組みたいという動きがあるようです。国際的なプロジェクトが広がればエネルギーや環境問題など地球が悩まされている問題の解決策が見つかるかもしれませんね。

そこでここでは、プロジェクトファイナンスとはどのようなことを言うのか、その仕組みとメリット・デメリットについても解説しますので、参考にしてください。

プロジェクトファイナンスとは

プロジェクトファイナンスは、ある特定の事業実施を目指すプロジェクトを独立した事業体として認め、そのプロジェクト実施により生み出される収益やキャッシュフローを返済原資とする資金調達方法を言います。

資金調達方法の一種

上述した資金調達方法の一種で、プロジェクトを設立した企業自体とは別組織になります。次の2点を抑えておく必要があります。

プロジェクトの利益が返済原資

 プロジェクトの利益が返済原資になりますので、できるだけ早くプロジェクト活動を開始して利益が生じるようになれば、ステークホルダー(利害関係者)に喜ばれると思いますが、プロジェクトの種類ごとに手続きが異なりますので活動に入るまでの期間がかなり必要になります。

プロジェクトの保有資産を担保とする

プロジェクト設立時に企業が「特別目的会社(SPC)」を組成し、事情があって事業を終了する場合はプロジェクトの保有資産が担保されていますので、返還金に充当されます。SPCを立ち上げた親会社に債務の支払い義務はありません。

コーポレートファイナンスとの違い

プロジェクトファイナンスと似た言葉に「コーポレートファイナンス」があります。その違いは「企業の財務活動の目的」にあります。プロジェクトファイナンスはそのプロジェクトだけを対象にしているのに対してコーポレートファイナンスは「企業全体」が対象になります。

会社単位で価値を評価

 企業自体が自社の事業運営のために金融機関などに融資を申し込むのがコーポレートファイナンスですから融資するに当たっての評価は「会社単位での価値」になります。プロジェクトの設立と実行も企業の事業運営費の中で行われることになります。プロジェクトの運営が順調に進まないと、企業本体の事業にも影響が出ることになります。

プロジェクト単位で価値を評価

これに対してプロジェクトの場合は、プロジェクト単位でその価値を評価されます。そのため、安定的なキャッシュフローを生み出してくれるプロジェクトが主体になります。例えば、社会基盤を建設して長期に運営する事業(空港・発電所・鉄道等)が該当します。

プロジェクトファイナンスの仕組み

プロジェクトファイナンスの仕組みは、冒頭で少し触れましたが、企業が自社事業と切り離したSPC(Special Purpose Company)と呼ばれる「特定目的会社」の設立を最初に行います。

SPC(特定目的会社)を設立

プロジェクト実施に当たってSPC(特定目的会社)を設立する理由は「企業とプロジェクトを切り離し」「リスクの分散を図る」ことにあります。

企業とプロジェクトを切り離し

企業がプロジェクトを別の事業体として設立する場合は、プロジェクト設立後はその企業から切り離され、SPC(特定目的会社)として活動することになります。なお、SPCは不動産関係で多用されますが、ここではプロジェクトの資金獲得の手法にフォーカスして述べます。

リスクの分散

企業から切り離された時点からSPC(特定目的会社)は独立して活動することになりますので、金融機関からの融資も単独で受けることができます。この方式を取ることで、SPCが予測したキャッシュフローを得られなくても親企業は責任を問われることを免れますので、リスクの分散を図ることができます。

SPCにプロジェクトを発注

次の流れとしてSPCにプロジェクトを発注するプロセスがあります。発注を受けたSPCはその実行のために金融機関に融資の申請をします。それを受けて金融機関がプロジェクトの評価を実施します。なお、SPCは特定の資産から生じるキャッシュフローと複数の投資家とを結ぶ導管(「ビークル」とも呼ばれる)の役割を果たすことだけを目的とするため、特定の資産以外の資産の運用は原則として認められず、また、自らが運用機関となることも認められていません。従って、SPC自体の機関構成は簡素化されており、特定資産と余剰資金及び資金調達の管理業務だけを行います。(規定されている最少人員は2人)

金融機関がプロジェクトを評価

評価されるプロジェクトの内容は多種多様です。当然のことですが、各業界や業種などが解決したい問題や課題をプロジェクトのテーマにする傾向が見られます。また、22年4月から東京証券取引所の最上位市場である「プライム市場」に上場する企業は、気候関連財務情報の開示が求められるようになりました。上場企業の経営陣が率先してSDGs等の環境問題に貢献しているか開示することが義務付けられています。

このような背景の中で各金融機関はSPCから申請があるプロジェクトについて評価を実施し、クリアすれば融資を受けることができます。

スポンサーから出資を受ける

また、SPCはスポンサーから出資を受けることもできます。必要な事業資金のうち20~30%はスポンサーが負担し、残りをプロジェクトファイナンスで調達するパターンが一般的と言われています。

プロジェクトの実行

プロジェクトの実行に当たっては、次の2点に留意する必要があります。

売買や委託の契約

SPC自体は事業資金の確保を目的に設立されておりますので、プロジェクトが認められ金融機関等から融資が受けられるとプロジェクトを実行する事業会社との間で調整が始まります。事業会社は数社に上ることが多いので、プロジェクト事業の売買や委託等の調整でかなりの期間を要するのが通常です。

収益を返済に充てる

このプロジェクト実施で収益がもたらされるとそれを原資として返済に充てることになります。

プロジェクトファイナンスのメリットとデメリット

ここではプロジェクトファイナンスのメリットとデメリットについて述べます。

プロジェクトファイナンスのメリット

「プロジェクトファイナンスのメリット」は「大規模な資金調達が可能」「事業会社(親会社)は返済の義務を負わない」ことが挙げられます。

大規模な資金調達が可能

プロジェクトファイナンスは親会社が設立したSPCが主体となって資金調達活動を行います。近年は政府主導で「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」が実施されたことからメガソーラーが各地に設置されております。このようなプロジェクトは収益が確実と思われますので、初期費用が高額でも融資をしてくれる金融機関は認めてくれる可能性が高く、大規模な資金調達が可能になります。

事業会社(親会社)は返済の義務を負わない

プロジェクトが実施され収益が十分得られなかった等の事態になり事業を打ち切る場合に、「SPCを設立した事業会社(親会社)は返済の義務を負わない」などのメリットがあります。

プロジェクトファイナンスのデメリット

プロジェクトファイナンスのデメリットは「資金調達に時間がかかる」「金利が高くなる」ことが挙げられます。

資金調達に時間がかかる

プロジェクトの内容を1件ごとに調査し、リスクの分析や条件交渉等で膨大な時間を要するため「資金調達に時間がかかります」。また、契約行為などで弁護士など専門家の援助も必要になります。

金利が高くなる

プロジェクトの実行期間は大部分が長期になるため固定金利で対応することは難しく、一定期間ごとに見直しが行われるため金利が高くなります。

プロジェクトファイナンスのリスク

プロジェクトファイナンスのリスクとしては、「完工リスク」「操業リスク」「販売リスク」「需要リスク」をあげることができます。

完工リスク

完工リスクはプロジェクトを実行するための設備が予定していた計画通りの準備ができなかったり、建設の難易度が高いためにプロジェクト着手ができないリスクを言います。また、発注した業者が資金不足になったり、技術不足のためにギブアップすることもあります。資金の追加補充や業者の交代などを準備しておく必要があります。

操業リスク

操業リスクは操業が不可能になったり操業率が低下するリスクを言い、プロジェクト会社あるいはスポンサーが必要な能力・経験を有しないことから起こります。・操業経験のあるスポンサーの参画や第3者への委託、専門家による計画の妥当性検証などが必要になります。

販売リスク

販売リスクは、例えば発電した電力を必要なキャッシュフローを生み出すのに十分な量・価格で販売できないリスクを言います。融資期間をカバーする長期契約、スポンサーによる引取保証などが対応策になります。

需要リスク

需要リスクは、事業開始前に予測した需要量に到達しないリスクを言います。

鉄道などは乗客数を対象にしていますので、事故や気象などに左右される可能性があります。最悪なケースでも返済に困らない水準に留めて融資金額を抑えることやプロジェクトが公民連携の事業であれば、公共側にも一定の支援やサポートを求めていく必要があります。

プロジェクトファイナンスの活用

プロジェクトファイナンスを有効活用するには次のような事項をインプットしておくと役に立つと思います。

プロジェクトファイナンスが有効な場合

プロジェクトファイナンスが有効に利用できると思われるのは、「自社で資金調達が難しい場合」「格付けが低い場合」です。

自社で資金調達が難しい場合

会社全体の運営状況評価でスコアが良くないと自社の資金調達が難しくなります。プロジェクトを独立させてプロジェクトファイナンスを申請すれば、認められる可能性が高くなります。

格付けが低い場合

自社の格付けが低い場合も同じです。プロジェクトを独立させて融資を受ける会社は株主や投資家からチャレンジ精神があるので有望視されることが期待できます。

プロジェクトファイナンスの事例

ここでは、プロジェクトファイナンスの事例を紹介します。「エネルギー開発」と話題性がある「ユニバーサルスタジオジャパン」をピックアップします。

エネルギー開発

エネルギー開発では太陽光発電を既に取り上げましたが、その他に法律で定める非化石エネルギー源で永続的に利用できると認められるものは、風力・水力・地熱・太陽熱・大気中の熱その他の自然界に存在する熱・バイオマス(動植物に由来する有機物) が挙げられます。経産省は更に拡大して、雪氷熱・温度差熱・地中熱の利用も提言しています。

欧州では風力利用に注力しており、日本の企業も参加していますので、その成果を土台に海外企業とタイアップして国際的事業展開を図ることが望まれますが、国によって思惑が異なりますので時間がかかるものと思われます。

ユニバーサルスタジオジャパン

「ユニバーサルスタジオジャパン」はご存知でしょうが大阪市にあるテーマパークです。

世界に6つあるユニバーサル・スタジオ・テーマパークスの一つで、ユー・エス・ジェイが所有・運営しています。様々なエリアを設けてそれぞれ特徴のある演出を行い、訪問者に感動を与えてくれます。2012年の訪問者数は970万人で、世界のテーマパーク入場者数の第9位にランクインしています。

プロジェクトファイナンスの将来性

「プロジェクトファイナンスの将来性」については「市場規模の拡大」と「世界的に広まる傾向」があることからニーズが高まることが予測されます。

市場規模の拡大

太陽光発電による電力買取制度を先例として、現在日本では風力発電に注力しています。「再エネ海域利用法」が2018年に制定され、国が一般海域内に促進区域を指定して、既に5ヵ所について事業者選定手続が進行しています。

このほかにも、燃料分野における二酸化炭素を排出しない「水素などの脱炭素燃料の研究・開発」「カーボンリサイクル技術の導入」なども計画されています。

世界的に広まる傾向

現在は欧州がトップランナーとして各国を牽引していますが、地球温暖化による異常気象が食料問題にも影響を及ぼしている現象を世界中が認識し始めていますので、世界的に広まる傾向があります。世界各国が対策を講じることが強く求められる局面に入っています。プロジェクトファイナンスとは異なりますが日本では経産省が蓄電池技術開発を重要視しており補助金制度を設けておりますのでご興味がありましたらご応募されることをお勧めします。


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