ジョブローテーションとは
社員の定期的な部署異動
ジョブローテーションとは、企業内でさまざまな業務を社員に経験させるために、職場や職種を定期的に異動させることです。
日本には古くから存在
ジョブローテーションの歴史は古く、原型は明治時代頃とされています。
企業の多種多様な業務を行う上で、古くから企業に浸透してきました。
現在も多くの企業で採用されている育成のシステムです。
雇用の多様化により目的が変化
人事異動と言っても目的は【戦略的】な面と【計画的】な面に分けられます。
また部署異動や勤務地の異動、同じ部署内での業務や職務内容が異動になるなど種類は多種多様です。
通常の人事異動との違い
通常の人事異動は短期的な戦略
社員の意思とは無関係に通達されるのが通常の人事異動です。
狙いは組織内で社員の役割を変化させるためであり、昇格・降格・転勤などが該当します。
また社員が会社から欠員となる定年退職や解雇なども人事異動です。
欠員補充が異動の理由になる時もあり、短期的な戦略で見通されます。
ジョブローテーションは長期的な戦略
これに対し、ジョブローテーションは長期的な人事戦略と言えます。
長期間をかけての人材育成や能力開発を狙いとし、いずれは会社の発展を支えてゆく人材を育てることです。
ジョブローテーションの目的
ジョブローテーションの目的には、以下の3点が挙げられます。
①人材育成
若手の育成
若手社員の能力開発のため、複数部門の体験をさせるのが主な目的です。
また社員自身の適正を知ることや、将来のキャリア造りの方向性を見ておくためでもあります。
幹部候補者の育成
将来の経営中枢を担う人材を育てるため、複数部門を経験させるのも狙いです。
またスタートアップ企業では、昇進したい社員のモチベーション向上のために実施することもあります。
②ブラックボックス化の防止
ノウハウを継承しやすくなる
人材を一つの部署に長期間固定すれば、業務が属人化するリスクが発生します。
また部署での退職者や休職者が出た場合、人材の補填や業務引継ぎに難航するでしょう。
ここでもジョブローテーションは効果的で、ブラックボックス化を防止できます。
結果的には社員間のノウハウ継承がスムーズにゆくわけです。
業務の質の向上
またジョブローテーションは、部署間の積極的な情報共有ができます。
部署間のコミュニケーションも容易になり、業務の質は向上することでしょう。
③社員のモチベーション維持
マンネリの防止
長年同じ業務に従事していると起こるのが【仕事のマンネリ化】です。
定期的なジョブローテーションは、マンネリ化防止に効果を発揮します。
多角的な視点の形成
特定の部署で長年従事すれば、視野が狭くなって全体を捉えにくいです。
ジョブローテーションの目的は、異なる部署へ移動させて、会社としての新陳代謝アップを狙います。
そうして異なる業務に従事すれば、また多角的な視点を形成できるでしょう。
ジョブローテーションのメリット
それではジョブローテーションのメリットを挙げてみましょう。
企業側のメリット
社員の視野を広げる
様々な業務を経験すれば理解が深まり、多角的な視点を身に着けられます。
また、新しく社員交流をすれば視野を広げることにもなるでしょう。
将来的に重要なポジションを育成するためにも役立つのがメリットと言えます。
適材適所につながる
企業が理想とする人材配置は【適材適所】であるのは言うまでもありません。
しかし新入社員は特に業務適正がわかりにくいもの。
そこでジョブローテーションを実施すれば、その人材の強みや弱みが分かり、適材適所の配置に繋がりやすくなります。
社員側のメリット
人脈の形成
同じ部署にずっと配属されていると、社内の限られたメンバーとしか接することができません。
そこでジョブローテーションをすれば新しい交流が生まれ、より広い人脈の形成が可能です。
例えば他部署との合同プロジェクトなどがあれば、より円滑に進むでしょう。
結果的には社内のネットワーク作りに大いに役立ちます。
経験の蓄積
さまざまな業務を行えば、社員の経験値もどんどん蓄積されます。
特定の部署で偏った能力を発揮するのではなく、多種の業務で活躍できる人材は会社にとっても貴重なものとなるでしょう。
ジョブローテーションのデメリット
ジョブローテーションのデメリットも挙げてみます。
企業側のデメリット
育成コストの増加
育成コストが高くなるのがジョブローテーションの欠点でもあります。
これは、育成のために複数回の移動があり、指導する側の人件費や教材・マニュアル作成の経費などコストが発生するためです。
そして、もしも育成した人材が退職した場合、さらに大きなリスクが発生します。
専門性を高めたい場合には不向き
ジョブローテーションは、社員に「広く浅く」業務経験を積ませるのが狙いです。
そのため各業務の表面的な理解しかできず、深く掘り下げた部分までは習得できない欠点が生じます。
【ジェネラリスト】を育成するものであり【スペシャリスト】は生まれません。
このため、特定分野での【スペシャリスト】を育てるのなら、ジョブローテーションは適していないと言えます。
社員側のデメリット
社員のモチベーション低下のリスク
特定の仕事を希望して入社した社員がいる場合、部署転換により本人の希望以外の部署で仕事をすることになります。
これは時には不満を生んでしまうかもしれません。
場合によっては社員自身のモチベーションを低下させてしまい、退職に繋がるリスクを持っています。
この点を防止するために、企業側が定期的に社員の意識調査や様子を確認するのが重要です。
不慣れな部署での負担
定期的に部署を変えるジョブローテーションは、業務に慣れた頃、また始めから新しいことを覚えなければなりません。
つまり何度も【新人】にならねばなりません。
そして、新しく異動した部署では、戦力になるのに時間がかかります。
社員本人が仕事を追いかけるのが大きな負担になる恐れがあります。
企業はOJTなどの社員サポートを積極的におこない、負担を軽減してあげることが必要です。
ジョブローテーションの導入方法
それではジョブローテーションの導入方法について解説します。
対象となる社員の選定
効果が期待できる人材
ジョブローテーションの目的を明確にしておき、より効果が期待できる人材を選ぶのがポイントです。
人材の特性を見たうえで熟慮して対象者を選出します。
新入社員であれば広い知識と経験の習得を、中堅社員以上ならば会社のキーパーソンを目指すなど、目的を達成可能な人材を選びましょう。
過去のデータも活用
良いジョブローテーションは、社員のこれまでのキャリアが現在・未来へとつながることが理想的です。
社員自身が実感してモチベーションを高く持てるように、過去のデータを活用する必要があります。
過去のデータをうまく活用し、時間とコストの無駄をなくせばよりよい効果を発揮できると言えます。
配属先の決定
対象者の適正を考慮して選定
配属先のニーズを考えて、対象者の適正をもと選定します。
この時、社員のキャリアを無視してはなりません。
会社と社員のお互いがプラスになる配属になるのが理想的です。
実施期間や目標を設定
期間を突然変更することや、目標が曖昧だと本人のモチベーション低下に繋がります。
実施機関や目標をきちんと定めた上でジョブローテーションをおこないましょう。
通常新入社員ならば3~6か月で複数部署を経験させ、ま幹部候補の中堅社員などでは3~5年間かけて行う時もあります。
対象者への説明
ジョブローテーションの意図を明確に
事前にジョブローテーションの意図を明確にして、納得度を確認しておくことが重要になります。
「何のために・なぜ異動するのか」をしっかりと示せばジョブローテーションは必ずや成功するでしょう。
モチベーションを上げ不安を解消
明確な目標があれば本人に不安が起こりにくく、高いモチベーションを維持して進んでゆけます。
モチベーションは重要な要素ですので、常に確認できる体制作りが大切です。
ジョブローテーションの実施
目標の進捗状況を確認
実施後は、定期的に進捗状況を確認するのがポイントです。
配属した後に放置したままではいけません。
状況確認をすることで、現行のままで良いのか、改善点があるかなどを知ることができます。
定期的に面談を行いフォロー
本人と定期的に面談を行い、状況確認をしつつフォローをすることも重要です。
そうすればモチベーションを維持できてパフォーマンスを上がるでしょう。
会社側が程よくフォローをすれば、ジョブローテーションを成功へと導きます。