入社して1年も経てば会社内で使われているビジネス用語は大部分が理解でき自分も適切な用語を使ってプロジェクトなどで能力を発揮できるでしょうが、入社当時は社内で使われているビジネス用語から理解する必要性を痛感すると思います。中には難解な言葉やいろいろな意味があって理解しにくい言葉もあります。「スキーム」という言葉もその1つと思われます。一般的には「計画」などの意味で使われることが多いですが、ビジネス用語として幅広い意味で使われていますので、間違った使い方をしないように「スキームとはどのようなことを言うのか」「その意味や使い方」さらには図にすると理解しやすいので「スキーム図の作り方」についても解説しますので参考にしてください。
スキームとは
日本のビジネス用語として定着している「スキーム」という言葉、英語のスペルにしては珍しいと思い、最大の語彙を誇るWEB 専用辞書「英辞郎」で調べて見ました。
スキームの意味
英辞郎でスキームには多種多様な意味があることが分かりました。
名詞として「(体系的な行動の)計画・構想」「悪だくみ・陰謀・策動」
「(体系的な)配置・配列・組み合わせ」「図表・図解」「英国政府が行う政策・プログラム」「天体図」などが搭載されていました。
動詞としても使われますが、ほぼ同じ意味で使われています。ビジネス英語として使われる一方で、「悪だくみ、陰謀」など悪い意味でも使われています。米国内ではスキームという言葉をネガティブな意味で使われることが多いので、米国内の人とビジネスの取引をする時は、こちらから「スキームという言葉は使わないようにすること」というサジェスチョンがありますので気を付けてください。
ギリシャ語を語源とする英単語の「scheme」
「(scheme)はギリシャ語を語源とする」ことが分かりましたので、ギリシャ語でどのような意味があるのか調べたところ「枠組みを持つ計画」という意味
でした。やはりビジネスに関連する用語ですので、ギリシャは近年自国の財政破綻問題でEU内を騒がせましたが、ビジネスについての先進性があります。
枠組みを持つ計画
「枠組みを持つ計画」とはビジネスの世界では相当具体的な事業計画と言えます。一般的には「プラン」も事業計画と言われますが、プランは枠組みを持つほどの具体性はありません。そのため「このような計画をして実行したらわが社が発展するに違いない」と提案しても、スキームの観点からはアイディア程度に受け止められてしまいます。
ビジネスにおけるスキーム
「ビジネスにおけるスキーム」は「計画性を伴う仕組み」と「構想を実現するための計画」と言うことができます。
計画性を伴う仕組み
企業が事業を行うには必ず目的があります。その目的実現のために「いつまでに何をするか」綿密な計画を立てて実行しているはずです。ビジネス会議で「わが社はこのような製品を市場に出したら成功するのでは」と提案するのもプランの1つですが、スキームとは言えません。また、枠組みや仕組みを漫然と作成するだけでもスキームとは言えません。「綿密な計画性を伴った仕組みづくり」をすることがスキームの1要件となります。
構想を実現するための計画
また、スキームは「構想を実現するための計画」でもあります。例えば、企業が現在実施している事業は、その背景に何らかの構想があり、その構想を目的化して実現するために詳細な実施計画を練り、その過程で必要な枠組みや仕組みも組み入れて実現させたと思います。以上のようなプロセスを経て実現する計画を「ビジネスにおけるスキーム」と言っています。
スキームの使い方
ここでは、「スキームの使い方」について述べます。
企業運営をしていく場合は事業運営を初め資金調達など様々な過程をクリアする必要があります。例えば、「事業運営」「資金調達」「返済」「M&A」「販売」「運用」「投資」等があげられます。
「スキーム」という言葉は単独で使われることもありますが、「事業スキーム」「資金調達スキーム」など上記の例示した業務内容との組み合わせで使われるのが通常ですので、その区分に従い述べます。
事業スキーム
事業スキームは「事業の計画や構想に基づいた仕組みや枠組み」と具体的な「仕入れ・生産・営業に関する計画」で構成されるのが一般的です。
事業の計画や構想に基づいた仕組み
「事業の計画や構想に基づいた仕組み」では、次のようなことが言えます。
企業が現在実施している事業は実施する前に目的があり、その目的実現のため具体的かつ綿密な計画を立てています。その過程で必要な枠組みや仕組みも入れ込んでいます。
「勉強になるから事業スキームを作ってみないか」と上司から言われた場合は、チャンスと思って取り組んでください。
自社事業の歴史などを調べて、どのようなプロセスで現在に至っているのか分析することをお勧めします。
仕入れ・生産・営業に関する計画
また、事業推進に当たって必要な「仕入れ、生産・営業」に関する計画を具体化するために、誰が担当するのかなどの項目も入れたりしています。少なくともこの程度の整った事業計画でないと事業スキームとは言えません。
資金調達スキーム
「資金調達スキーム」は資金調達の方法を決めるスキームで次のような任務を担います。
金融機関などから資金を調達する計画や仕組み
新規事業を起こしたり事業拡大に向けた設備投資をするなど資金が必要な時は、その確保策を検討することが要求されます。「資金調達スキーム」は、その綿密な計画を担当します。「金融機関などから資金を調達する計画や仕組み」を定めること、融資を受けるに当たって「事業計画書」の提出が必要になった時、金融機関が融資をしても問題ないと思うような長期的な事業計画を作成することなどの任務を担います。
事業計画書の提出が必要
金融機関からの融資を受ける場合は事業計画書の提出が必要になります。前述しましたように事業計画書作成の場合は特に注意する必要があります。事業計画書は金融機関だけでなく公的機関からの借り入れや補助金申請などにも使えます。
返済スキーム
返済スキームの役割も重要です。資金を金融機関などから融資して貰えば必ず返済しなければなりません。次の2点は特に重視する必要があります。
返済計画の策定
金融機関等から借り入れした場合は、返済金が多すぎて事業運営に支障が出るような事態は絶対に避けるべきです。売掛金の状態なのに収入と捉えて返済金に充てるような返済計画の策定をすると返済時期がきて支払い現金がなく、いわゆる「黒字倒産」になってしまいます。借り入れをする際にきちんとした「返済計画の策定」をしておけば後々まで安心した事業運営ができ、金融機関との信頼関係も高まります。
返済に伴うリスクを軽減する
返済計画の策定は「返済に伴うリスクを軽減する」ことにもなります。分不相応な借り入れをすると返済時に返済資金が不足し破産することもあり、その企業の信用は一気に低下します。そのようなリスクを避けるようなスキームを計画することが求められます。返済計画の策定担当は「返済原資の明確化」「直近のキャッシュフロー計算書作成」「損益計算書に基づく返済能力の確認」することなどを念頭に策定すると安定した企業運営を確保できると思います。
M&Aスキーム
M&Aは「Merger and Acquisition」の略語で「(企業などの)合併吸収、合併と買収」を意味します。従ってM&Aスキームは「企業の買収や合併に伴う計画」であり具体的には「株式の譲渡」と「事業譲渡」があります。
企業の買収や合併に伴う計画
企業運営が順調であれば倒産することはあまりありませんが、昨年のコロナに関連する倒産件数(法人及び個人事業主)は帝国データバンクの調査で4840件となっています。
そのうち法的整理が行われたのが4515件です。法的整理は破産手続き・会社更生法適用・民事再生法適用・特別清算です。最も多かったのは飲食店の712件でした。順調な経営をしていた企業でもコロナの大流行で倒産してしまう企業運営の難しさが分かります。
企業運営の難しさを知ってもらうために倒産に関するニュースを取り上げましたが、本題である「企業の買収や合併に伴う計画」はかなり活発に実施されています。(株)レコフデータの調査ではM&Aの件数が2017年に3,000件を突破し過去最高を記録しています。事業規模や事業領域を拡大し売り上げを伸ばすためにM&Aを活用していることが推測できます。
株式譲渡と事業譲渡がある
M&Aの実施方法には「株式譲渡と事業譲渡」があります。中小企業庁のウェブサイトを参考に「株式譲渡」と「事業譲渡」の違いを述べます。
株式譲渡は、譲り渡し側の株主が譲り受け側となる企業に対して保有する対象会社の発行株式を譲渡するやり方をいいます。株主が入れ替わるだけで、会社そのものに変更はありません。従って、原則として対象会社の資産負債、従業員、契約関係、許認可関係をすべて、譲り受け側が引き継ぐことになります。
これに対して事業譲渡は、対象会社の事業の全部または一部を買い手に譲渡するやり方です。株式譲渡とは異なり、会社の法人格すべてを引き継ぐのではなく、資産や負債等を個別に特定して引き継ぐことになります。
そのため、債権債務や従業員との雇用関係など、相手方がいる契約関係は当然には承継されず、相手方の同意を取ったり契約をやりなおしたりする必要があります。
引き継ぐ対象を特定することができるという上記の性質を生かして、買収目的として都合のよくないもの(例えば訴訟で係争中の案件等)を分断して条件交渉を有利に進められるというメリットがあります。
販売スキーム
企業が設立目的に基づいて製造した商品や開発したサービス等を販売するに当たっては、戦略を立てて行い成果を得ていると思いますが、それをさらに前進させるために再検討する枠組みや仕組みを「販売スキーム」といいます。
販路拡大する計画の再検討
「販路拡大する計画の再検討」に当たっては、過去の実績として得た顧客データや口コミなどを参考に自社分析を行い、問題点を明らかにして、商品の販売数や顧客数の増加方策を検討することが販路拡大につながります。
顧客満足度の向上を目指す
「顧客満足度の向上を目指す」には、顧客のニーズ把握を重視すること、インターネットを活用して自社製品のアンケート調査をすること、顧客を囲い込むような会員制度をつくること等々販売スキーム担当がアイディアを出し合って検討することが必要です。
運用スキーム
「運用スキーム」はおもに金融業界で使用されるもので、資産運用の提示などを行います。
おもに金融業界で使用される
運用スキームは顧客の資金運用の関心を高めるために、「おもに金融業界で使用されている」手法です。顧客の資金運用の理解度が進めば投資してくれる可能性が高くなりますので 図表などを利用して運用スキームによる資産運用の仕方などを説明します。
資産運用の提示
顧客の理解が進んだと判断される段階で「資産運用の提示」をします。実際の運用状況について運用スキームを使い、「一定期間における運用資産の増減グラフの提示」「将来的なリスク」「新たに選択可能な投資」等について説明を行い資産の活用を促します。
投資スキーム
「投資スキーム」も金融業界で利用されているもので「金融商品の選択をサポート」することが目的です。
金融業界で使用される
投資スキームも運用スキームと同じように金融業界で使用されています。投資スキームの場合は、投資が利益につながるための枠組みや仕組みを意味しています。
金融商品の選択をサポート
投資スキームが提供する枠組みや仕組みを利用して、どのような商品を選択し、どのような配分にすれば良いのかアウトラインが分かりますので金融商品の選択をサポートしてくれます。
スキームの作り方
「スキームとは何か」その意味や内容について述べてきましたが、理解を深めるには自分でスキーム図を作ることが一番有効です。スキーム図作成に当たって整理すべき事項を述べますので、ぜひチャレンジしてみてください。
スキーム図の作成
スキーム図は図解により全体的な計画を分かりやすくする目的で作成するものです。タイプがいくつかありますが、ここでは代表的な「樹形型」「相関型」
「フロー型」を取り上げます。
樹形型・相関図型・フロー型など
「樹形型」はそのネーミング通り樹の形をしたスキーム図です。組織や思考がスキームの中心になりますが、それに関係するような事項が派生する時に使われます。矢印などを活用して企業内の「組織体制・連絡系統」などを図で示し、カネ・情報の流れを明確にします。企業の組織図をイメージすると分かりやすいと思います。
「相関型」のスキーム図は様々な関係者がいる時にその関係性を一覧図で示すことで、それぞれの役割を知ることができます。企業間で取引をしている場合にも利用できます。
「フロー型」のスキーム図は時系列で説明する時に使われます。時間経過に伴う状態変化、新人物登場などのケースでも利用できます。
用途に応じて使い分ける
上述した3種のスキーム図は「用途に応じて使い分ける」ことができますのでそのメリットを十分活かしてください。例えば「樹形型は事業スキームや評価スキーム」「相関型は販売スキームや事業スキーム」「フロー型は販売スキームや運用スキーム」が向いています。
要点の整理
スキーム図を提示しただけで関係者に理解してもらえることがベストですから、
「要点の整理」を目的に次の項目に取り組んでください。
スキームの関係者を書き出す
スキーム図を作成する時は経営資源であるヒト・カネ・モノ・情報を明確にすることが求められますがヒトが中心になって動いていますので、最初に「スキームの関係者」を書き出すようにします。
やり取りされる情報やモノを書き出す
次に書き出すのは「やり取りされる情報やモノ」の最新情報です。
情報やモノの動きを整理
情報やモノは事業の進捗状況に伴い変動しますので、スキーム図における現在の状況を把握することができます。
記入事項の整理
スキーム図作成の最終チェックとして記入事項の整理をして確認します。
重複箇所を確認
スキーム図は見てすぐ理解できることが基本ですから「重複箇所」がないか確認してあれば削除します。
不可欠な情報に絞る
最終チェックとして「不可欠な情報に絞られている」ことを確認します。