キャッシュ・フローとは?目的やメリットとともに作り方も解説

コロナは日本の企業にも大きな影響をもたらしています。コロナ対策の製品製造で業績を大きく伸ばした企業がある一方で、資金不足に陥り企業活動をストップせざるを得ない状況に追い込まれて倒産した企業もあります。中には帳簿上は黒字なのに事業運営に必要なキャッシュが不足し、倒産に追い込まれた「黒字倒産」の例も報告されています。

このような事態を防ぐために、キャッシュ・フローを知ることはとても有益と思いますので取り上げて「その目的やメリットとともに作り方」も解説します。

キャッシュ・フローとは

キャッシュ・フローは英語のcash flow を日本語の読み方で表現したものですが、キャッシュは「現金」フローは「流れ」の意味があります。

キャッシュ(お金)の流れ

キャッシュ(お金)の流れを常に把握しておくことで、手元に現在いくら現金が残っているか知ることができますので、企業活動でとても重要なことです。次に2つの例を取り上げます。

現金の収入と支出

企業活動をしていて、商品を販売すると現金で支払われることがあります。一般的な商店は現在もこのスタイルが多いと思います。この場合は、それが収入となり手元にキャッシュを保管できます。そして、材料代などを請求されると保管していたキャッシュから支払います。

「現金の収入と支出」が明確に分かります。 

手元にある現金を把握

収益に計上されるが後払いになる「売掛金」などがある時は現金収入が後になりますので現金の収入と支出が一致しませんが、そうでなければ「手元にある現金を常に把握」することができますので、安定した資金運営をすることが可能です。

お金の流れを可視化する

企業運営をしていれば常にキャッシュを手元に用意していれば安心です。そのためには「お金の流れを可視化する」必要があります。お金の流れが可視化できれば、製品やサービスを販売してその結果得た収入と材料費・人件費・光熱水費等々支払いした金額が分かりますので、現在保有するキャッシュがどのくらいか算定できます。

この場合、収入と支出は次のように呼ばれます。

収入は「キャッシュイン」

収入を意味する「キャッシュイン」は英語で「cash in」です。in はこの場合副詞で「の中に」の意味がありますので、「現金が入ってくる」という意味で収入になります。 

支出は「キャッシュアウト」

逆に支出の場合は「キャッシュアウト」で英語は「cash out」です。out もやはり副詞でいろいろな意味で使われますが、この場合は「外へ」の意味で使われています。  

キャッシュ・フローの目的

キャッシュ・フローの目的は「キャッシュ・フローと利益の違い」を把握することにあります。 

キャッシュ・フローと利益の違いを把握

具体的に例示します。 

利益は現金の動きと時間差がある

一般的な小売業は顧客に現金と交換で商品を売りますので、現金の動きは単純で売上額すべてが収入額になります。キャッシュ・フローと利益に違いは生じません。

これに対して、企業同士で取引する時はほとんどが掛け売りになります。例えば、A社がB社に100万円の製品を納品した場合、B社が即現金をくれれば良いですが、掛け売りだとA社は利益として帳簿上は計上できますが現金での支払いは1カ月以上も後になることがあります。利益は現金の動きと時間差がありますので、キャッシュ・フローに違いが出てしまいます。この例の場合はキャッシュ・フローは▲100万円になります。100万円ほど現金が不足していることになります。

このことを承知していないと手元の現金が不足して支払いに困る可能性があります。     

キャッシュ・フローで手元にある現金が分かる

上記のように、キャッシュ・フローでマイナスが出る時は、他に収入の予定がないと現金が手元にありませんので支払い請求に対応することができません。利益を上げていても倒産する可能性が生じます。「キャッシュ・フローでチェックすれば手元にある現金が分かります」ので、緊急の支出が生じた時は倒産を防ぐため金融機関などからの借り入れを迫られることもあります。 

キャッシュ・フロー計算書の作成

キャッシュ・フロー計算書の作成でどのようなことが分かるのか、具体的に見てみます。

お金の動きを知る

キャッシュ・フロー計算書は会社の資金であるキャッシュ(預金等を含む)を常に追いかけていますので「お金の動きを知る」ことができます。現在手元にいくら現金があるか分かり、例えば支払予定額が手元の現金を超える場合は、金融機関等からの借り入れや投資家による投資などで事前に準備できます。キャッシュがないために倒産するような事態を防ぐことができます。

企業の支払い能力を把握

キャッシュ・フロー計算書は、企業資金の増減を可視化する機能もありますので、「企業の支払い能力を把握」することも可能です。

キャッシュ・フローの重要性

2000年3月期から金融商品取引法で開示が義務付けられた「キャッシュ・フロー計算書」は、第3の財務諸表と言われています。この制度が設置されてから次に述べる課題解決に役立っています。

利益が出ていても倒産することがある

「キャッシュ・フロー計算書」については後述しますが、計算書の登場で利益が出ていても倒産することが防げるようになっています。

手元にある資金の不足

「キャッシュ・フロー計算書」によって資金の流れが可視化されますので「手元にある資金不足」が早期に分かり対策を立てることが可能になります。

特に起業時のキャッシュ・フローが重要

起業する時は綿密な事業計画と予算を立てると思います。初めから豊富な資金をもっていれば資金計画に余裕ができますが、そうでないと起業資金調達にも悩まされます。起業時は人材・施設・設備・備品類・各種保険金等々予想しなかった支払いが出てくる可能性があります。支払い資金が枯渇すれば、「起業と継続経営」の目的が水泡に帰します。キャッシュ・フロー計算書を作成して常に支払資金を確保することが求められます。

上場企業では作成を義務付け

このキャッシュ・フロー計算書の作成を上場企業は義務付けられています。上場企業に限定したのは、上場企業は大規模なところが多いので、倒産すると社会的な影響が大きいためと言われています。株主を始めとするステークホルダー等に対する対応に留まらず、人員整理などで従業員が職を失ったりします。

非上場企業でも作成するメリットは大きい

他方で規模がそれほど大きくない非上場企業はキャッシュ・フロー計算書の作成は義務付けられていません。倒産しても社会的な影響は大きくないので、「自己責任で処理しなさい」ということなのかもしれませんが、会社を発展させるためには、すぐ使えるキャシュを常時確保していることが必須ですので、多少手間はかかりますが「非上場企業でも計算書作成のメリットは大きい」と言えます。

キャッシュ・フロー計算書とは

キャッシュ・フロー計算書は、財務三表の一つで、会社におけるお金の流れを把握するために作成するものです。 

財務三表の一つ

財務三表とは「キャッシュ・フロー計算書」「損益計算書」「貸借対照表」を言います。

いずれも企業の財務状況を可視化する役割を担いますが、「キャッシュ・フロー計算書」は会社のお金の流れや現在の所有状況を明らかにしますので、最重視されています。  

現金の所有状況を示す

キャッシュ・フロー計算書は、損益計算書や貸借対照表にない役割を果たしていますので、資金繰りや倒産防止などで存在感を発揮しています。 

三種類の項目にまとめられる

キャッシュ・フロー計算書は次の「三種類の項目にまとめられて」います。

  1. 営業活動による生じるキャッシュ・フロー
  2. 投資活動による生じるキャッシュ・フロー
  3. 財務活動による生じるキャッシュ・フロー

財務状況の見極めに重要

キャッシュ・フロー計算書は「財務状況の見極めにも重要」です。例を挙げてみます。  

利益が出ているのに資金不足になることも

貸借対照表を見ると前期と比べてどの程度利益がでているかは分かります 。しかし、キャッシュの具体的な流れは把握できません。貸借対照表では利益が出ているのにキャッシュ・フロー計算書がないために資金が不足していることに気が付かないで、支出の場面で資金を直ちに補填するため奔走する事態が生じることがあります。キャッシュ・フロー計算書の登場でこのようなことは防ぐことができます。   

資金不足の原因の見極め

 キャッシュ・フロー計算書によりキャッシュの出入りが系統的にわかりますので「 資金不足になった原因を見極める」こともできます。以後の資金確保改善に活かすことができます。

キャッシュ・フロー計算書の項目

キャッシュ・フロー計算書の項目は、大別すると「営業キャッシュ・フロー」「投資キャッシュ・フロー」「財務キャッシュ・フロー」の3つになります。 

営業キャッシュ・フロー

営業キャッシュ・フローは本業の営業活動に伴うキャッシュ・フローで、最初に表示されます。次のような意味合いがあります。 

本業の収入と支出

会社の本業部分の収入と支出が記載されますので、企業活動が順調かどうかの判断基準になります。次に述べる「投資キャッシュ・フロー」や「財務キャッシュ・フロー」に属さないものはすべてこの項目になります。本業の収入部分は捕捉しやすいですが、支出部分は本業に関わる全ての支出(材料費・人件費・広告宣伝費・税金・保険金等々)が対象になりますので、十分なキャッシュを有していることが求められます。 

プラスであれば本業が好調

上記のような構成になっていますので、全ての支出を控除しても本業のキャッシュ・フローがプラスであれば、本業は好調であると判断されます。

投資キャッシュ・フロー

会社を成長させるために、どれだけ投資しているかを知ることができるのが「投資キャッシュ・フロー」です。

設備投資や株式取得など

具体的には「設備投資や株式取得など」が投資キャッシュ・フローに該当します。何も投資しないでプラマイゼロは会社が安定しているように見えますが、そのような状態では会社の発展は望めません。

マイナスが望ましい

投資活動によりマイナスの方が積極的に投資をして会社をさらに成長させようとしていると評価されます。  

財務キャッシュ・フロー

会社の資金調達状況を知ることができるのが「財務キャッシュ・フロー」です。

借入によってプラスとなる

金融機関等からの借り入れや投資家からの出資でプラスになります。本業以外でキャッシュを得た場合は、この財務キャッシュ・フローに分類されます。借り入れが実現すればプラスになります。

返済によってマイナスとなる

当たり前のことですが、キャッシュに余裕ができ返済すれば、財務キャッシュ・フロー上はマイナスになります。

キャッシュ・フローによる評価の例

ここでは、キャッシュ・フローによる評価の例を見てみます。

優良企業

優良企業の評価基準は次の通りです。

営業キャッシュ・フローはプラス

先述しましたが、優良企業と評価されるには、キャッシュ・フローで判断する場合、本体部分である「営業のキャッシュ・フローがプラスである」ことが必要です。プラスであれば営業で得た収入が、その収入を得るために使った費用すべてを支払っても手元にキャッシュが残っている状態ですから「優良企業」の評価になります。

投資と財務はマイナス

逆に投資と財務はマイナスになるのが通常です。企業をさらに発展させるために、設備投資などをするからです。

成長中の企業

成長中の企業とキャッシュ・フローの関係を見てみます。

投資に多くの資金を投入

成長中の企業は投資に多くの資金を投入する必要があるため、金融機関や株主からの投資を受けたりします。

借入も多く財務がプラス

借入額が多くなりますので、キャッシュ・フローでは財務がプラスになります。

衰退中の企業

衰退中の企業はどうでしょうか。

優良企業と逆のパターン

優良企業と逆のパターンになります。本体の営業活動のキャッシュ・フローはマイナスになります。

借入が多いので財務がプラス

企業活動を継続するには金融機関などから融資を受けて補填する必要がありますので、借り入れが多くなり、財務がプラスになります。


AD