コモディティ化とは、企業間での商品販売競争で発生する問題です。
現代社会では珍しくなく、企業側が対処しなければならない課題となっています。
本記事では、コモディティ化の概念やその問題点を取り上げ、その解決法についてまとめました。
コモディティ化とは
コモディティ化とは、ブランドや製造元によって生み出される同種製品の差が少なくなっていくことです。大抵の製品というのは、他社の製品にない強み(掃除機で例えるなら静音性が高い等)によって差別化を図ります。
しかしコモディティ化の状況では製品ごとの強みが薄れ、消費者からみると違いがよくわからない状態になります。
コモディティの意味
コモディティは英語のcommodityが由来で、便利だが平凡なものといったイメージの単語です。
企業によって差異があるはずの商品が、どれも似たようなものにしか見えなくなってしまうということです。
「利便性」を意味するフランス語が語源
また更に元をたどると、古フランス語 commodit(利益)に端を発しています。
ここから利便性というニュアンスを持ち始め、英語となった今でも日用品という意味合いでも使われています。
カール・マルクスにより定義
またコモディティ化は、マルクス経済学内で使用された言葉でした。
マルクスは「経済価値の同質化」と定義しており、つまりコモディティ化とは汎商品化(価値が下がり全て一般的な商品と化す)ということです。
コモディティ化の影響
マルクス経済学の観点からも述べられていますが、コモディティ化によって価格競争が起き価格が低下します。
消費者の経済的負担が軽くなるというメリットの反面、デメリットが多く生じます。
商品の差がなくなる
一般的、共通なものへと各製品が収束していくことで、消費者の側から見ると商品の差がほとんどなくなります。
市場価値の低下
また、本来の価値が大幅に減る、つまり価格の低下が予想されます。
商品の差が一見して購入の決め手にならなければ一番わかりやすい「値段」を指標として値下げ競争が起きるのは必然であり、コモディティ化になれば市場価値の低下はまぬがれないでしょう。
コモディティ化の原因
コモディティ化という用語がすでに広く知られているように、この現象は珍しくなく、また
ある程度明確な原因というのも判明しています。その多くは、グローバル化や技術の発展が主に関係しています。
情報の氾濫
現代ではインターネットが普及しています。
膨大な情報が容易に集まり、他社の技術の情報から、「〇〇社のこの製品がよく売れている!」といったことまですぐ分かってしまいます。
売れる商品の要素が分かれば、当然同様のものを自社でも作りたいと考えるでしょう。
技術を模倣しやすくなった
現代では、他社の商品の仕組みや何が使われているかといった情報を得ることも可能になり短期間で技術を模倣できるようになってきています。
ビジネスモデルの情報も漏洩
商品自体の技術情報より漏洩しやすいのが独自のビジネスモデルです。
一度漏洩すれば、他社は開発コストが少ない分最初の商品より安く提供でき、その結果利益を奪われてしまいます。
技術の向上
近年では世界的に技術レベルが上昇しています。
製品の高機能・高品質化は消費者にとってはうれしいことですが、他方でコモディティ化を進める要因となっていることにも注目しなければなりません。
技術水準が全体的に向上
パソコンや冷蔵庫が出た当時は、新商品として独自のブランドを築くことが出来ていました。ですが模倣、研究が進むにつれその技術も一般化しました。全体の技術向上はできましたがその分コモディティ化のスピードも加速していると考えられます。
商品やサービスの均質化
企業としては、損失を出したくないという理由から既存の人気のある製品やサービスに似た仕組みの商品を世に出すことがあります。
こうなると市場に出回るモノはどこをとっても違いが生まれない、という事態になりかねません。
海外製品の流入
グローバル化によって、海外からの低価格で高性能な製品が大量に流入するようになったこともコモディティ化の一因となっています。
圧倒的に安い海外製品
海外は人件費の低さや資源の潤沢さなどにより、国内より商品を安価に生産できます。
そのため国内商品を仕入れるより海外から大量に輸入し販売したほうが多大な利益が得られます。
価格競争が激化
海外製品の大量流入の結果、国内製品は低価格な海外製品と戦うため激しい価格競争をせざるを得ません。
価格重視の開発で一層均一化も進み、ブランド力や独自性が失われるケースも起こります。
コモディティ化の問題点
原因をみればわかるとおり、コモディティ化は現代社会では起きる可能性が高いです。
そして、これは企業として大きな問題点を持っています。
利益率の低下
ありふれた日用品、例えば鉛筆やノートといったものは適当に買う人が多いでしょう。
安価で、しかも製品ごとの違いというのがほぼないからです。
商品のコモディティ化は最終的に低価格化を引き起こし、利益率の低下につながります。
価格競争により低価格化が進む
鉛筆を買おうとしたとき、大抵の人は安いものを選びがちです。機能が少なく、ありふれたものは商品ごとの差が主に値段しかないからです。
仮に掃除機のような多少高い製品であっても、消費者にとって明確な差がなければ鉛筆と同じです。
企業が消費者を振り向かせるには、価格を下げるしかなくその結果起こるのが価格競争による低価格化です。
価格以外の優位性をつけにくい
コモディティ化で商品の均一化が進む以上、消費者にとって商品間で価格がもっとも可視化しやすい差になるため、低価格化もあいまり商品に価格以外の優位性をつけにくくなります。
商品の差別化が困難
差別化しようとするならば、デザインや形状、もしくは追加の新機能などを付加する必要が生まれます。
しかし仮にこうした要素を付け加えたところで大きな効果を得られるとは限りません。
オリジナリティの追及が困難
仮に形状の美しさや持ち運びやすさを売りにした掃除機があるとします。
確かに商品として差別化できているように思えますが、しかし消費者が真に買う目的は「ごみを吸う」の一点につきます。
そして、肝心の吸引機能は、技術水準の向上で差異が少なくなる一方であり「掃除機」としての差別化は難しくなります。
消費者に伝わる優位性がなくなる
付加価値を高めようとして差別化を図っても、その差別化のポイントが消費者のニーズとは合致していない場合、消費者に伝わる優位性は失われます。
コモディティ化を防ぐ対策
コモディティ化の問題点が分かったところで、自社の商品のコモディティ化を極力防ぐ対策はどういったものが考えられるでしょうか。
商品の付加価値の強化
付加価値に需要が生まれにくい製品は難しいですが、基本的なものとしては付加価値自体を増加させるという手法があります。
他社に真似のできない付加価値の追求
まず「独自性を貫き通す」という手があります。例えば扇風機というなんとも差別化しにくい製品に、「自然の風に極限まで寄せる」というコンセプトの扇風機がヒットした例があります。
オリジナルの発想、ニッチなニーズの発見は難しいですがその分真似できる企業は少ないです。
希少性の追求
時計等がそうですが、同機能で競合より売るために、希少性、つまりレアですごい=価値があると顧客に感じさせる手段もあります。
「このブランドの製品は価値がある」という意識、あるいは「限定少数生産」といったワードなどに消費者は惹きつけられます。
営業活動の強化
コモディティ化によって商品に差がなくなってくると、商品以外の要素も購入の決め手となってきます。
特に高価な製品において、人々が持つプラスのイメージも購入の重要な要素となってきます。
そのため広告や営業活動が非常に重要です。
他社との差別化をはかる
広告などを用いたブランド戦略やイメージ戦略で他社との差別化を図る手段もあります。
例えば「スターバックス」はコーヒーの美味しさよりおしゃれな雰囲気やイメージの良さを重視して選んでいる人がおそらく多いでしょう。
顧客の目線に立ったマーケティング
自社の人間にとっては良く理解している商品や知識であっても、顧客目線では理解できなかったりそもそものニーズとずれが生じたりする場合もあるでしょう。
広告や商品説明の段階から工夫し、わかりやすい説明に変える、あるいはニーズをとらえるなど顧客に寄り添う姿勢も重要でしょう。
コモディティ化から脱却する方法
主な原因となっている情報のスピードや技術の向上が続く限り、コモディティ化の傾向は今後も続くでしょう。
次にコモディティ化から脱却する可能性について挙げてみましょう。
あえて価格競争を避ける
消費者が購入するものは、価値があると思った商品です。
低価格とはあくまでその一指標にすぎません。
そのため商品の価格以外に価値を持たせる方法があります。
高い付加価値を持たせる
先ほどの扇風機の一例もそうですが、顧客によっては高価であっても欲しい、と思えるような商品を開発することも重要です。
アフターサービスの充実
保証期間や返金というのも直接的な付加価値ではありません。
しかし人間は一般的にサービスや商品を購入して後悔することをなにより避ける習性があります。
返金・返品や保証、メンテナンスといったサービスはそういった消費者心理に有効です。
体験型のマーケティング
また、目に見える物理的、あるいは便利という機能的な付加価値以外に我々人間の感性を利用する、という戦略も考えられます。
ストーリー性を導入
各種サービス系の企業が取りがちな手法ですが、広告用のCMやプロモーションにストーリー性を持たせ、付加価値とはまた別方向で消費者に印象付けるというやり方も存在します。モノに対して感情移入させる体験を通すということになります。
感動や楽しさを提供
体験型の手法は、感動や楽しさといった感情と商品のイメージをリンクさせることにより、商品本体以外のところに独自性を与えて差別化する目的を持って行われます。
SNSを利用したマーケティング
現代社会ではツイッターやインスタグラムといったSNSが広く日常に普及しており、ある程度ターゲットを絞ることができるためSNSを活用したマーケティング手法も有効です。
顧客との距離を縮める
顧客は企業側のアカウントの発信に対して、自由にコメントができる場合が多数です。
要望や感想、告知といった内容で定期的に消費者と交流できれば、心理的距離は近づきやすいはずです。
また、イメージキャラや「中の人」といった名物キャラを用いて話題を起こすことで商品ブランドの認知度を上げ心理的に差別化する手段がよく用いられています。
固定ファンの獲得
SNSにより、いわゆるファンが獲得できるかもしれません。例えば自分の意見が直接言え、それにたいしリアルタイムで反応がある点は魅力的です。
また、固定ファンの宣伝によりさらなるファンの獲得や商品の認知度アップにもつながります。
まとめ
本記事ではコモディティ化について解説しました。
コモディティ化はいまやほとんどの販売業で直面する問題だといわれており対策は今後とも必須となっていくはずです。
とはいえ会社の規模や商品によって、全ての解決策を実施できるわけではありません。
どの部分で差を付けてコモディティ化から脱出し利益率を上げるか、よく検討する必要があるでしょう。