経営企画とは?おもな業務と必要な能力を解説

ここでは、経営企画を取り上げて、おもな業務内容と業務を遂行するための必要な能力を解説しますので参考にしてください。

経営企画とは

経営企画については特に決められた定義はありませんが、企業が設立されると必ず「設立目的」があります。その目的実現のために「経営戦略、経営計画、経営組織等を立案してトップマネジメントに提案する機能」というのが一般的です。企業によっては、社長自らがイニシアティブを取ることもあります。

経営企画の概要

現在、経営企画と言う場合は、「中長期にわたる経営計画の管理」をすることと「企業のかじ取り役」になることであると捉えられています。

中長期にわたる経営計画の管理

中長期の期間は企業により異なりますが、3~5年を意味するのが一般的です。「中長期にわたる経営計画の管理」は、この期間に「企業のあるべき姿」を確定し実現しようとするものです。近年は企業の社会的責任が問われるようになっていますので、「社会貢献」「環境保全に対する貢献」「経済的貢献」の3つの何れも犠牲にすることなく追求し、満たしているのが「企業のあるべき姿である」とされています。

企業のかじ取り役

また、経営企画は企業の「かじ取り役」とも言われています。企業を取り巻く環境は目まぐるしく変化しています。昨日まで人間がしていた作業を今日からはITが取って代わる事態がでることも稀ではなくなっています。このような事態を防ぐためには常に状況把握をして正しい対応ができる羅針盤が必要です。経営企画はその役割を果たすと言われています。

事業企画との違い

「経営企画」の業務に対して「事業企画」とよばれる業務があることはご存じと思います。 同じ「企画」でも「経営」と「事業」に分かれていますが、内容には次のような違いがあります。

収益を上げることを目的とする事業企画

事業企画は名称通り各事業の収益をあげることを目的とします。個別事業を発展させることにより収益をあげることを目指しますので、各事業ごとにどうしたら収益があがるか具体的なアイディアを考え実践します。目的達成のために自社が持つ経営資源の配分や外部との連携を図ることもあります。大企業は市場に投入している製品やサービスが多種にわたりますので、それぞれを独立させて連携を図りながら売り上げ増進を図っている企業もあります。

将来のビジョンに向かって進める経営企画

この事業企画に対して経営企画は将来のビジョンに向かって進めるものです。そのため個別事業ごとの視点ではなく、全社的な視点を持つことが要求されます。多くの場合プロジェクト形式が採用され、中長期的な企業の成長戦略などを検討してCEO(最高経営責任者)に提案しますが、時にはCEOから直接検討事項を指示されることもあります。

経営企画のおもな業務

経営企画は担当するのが企業内の1部門であっても全社的に業務を進める必要がありますので処理すべき業務は多岐にわたります。代表的な業務を羅列しますと「経営計画の策定」「経営計画の管理」「新規事業の創出」「経営管理」「経営会議の運営」「その他の業務」になります。この順序で以下にその業務内容を述べます。

経営計画の策定

経営計画の策定では「市場の動向を調査すること」「競合他社の調査をすること」「自社のデータ分析を実施すること」があげられます。

市場の動向を調査

例えば新型コロナの発生で2020年度の業績は企業の56.0%が「減収減益」の見通しを発表しております。逆に同年度の「増収・増益」を見込んだ企業は10.5%になっています。小売り関係の商品が好調だったと言いますので、マスクなどの衛生関係商品が企業運営に好結果をもたらしたものと推測できます。このように市場は生き物ですのでその動向には常に目を光らせて、変調をキャッチしたら直ちに対策を講じて「減収・減益」を最小限に留めることが大切です。市場動向の正しい調査分析と対策実施により「増収・増益」に転換させることも可能になります。

競合他社の調査

マーケット市場で勝ち残るためにはライバル社がどのような活動をしているかを知り、それを上回る方策を打ち出す必要があります。そのため、自社のライバル企業の商品やサービスなどの調査をします。「売上、利益、労働生産性、流通、店舗の立地や売場、来客数、ホームページのデザインや内容」など比較事項は多岐にわたります。

自社のデータ分析

競合他社の調査結果をベースに自社のデータ分析を行うと他社が強みとしている事項や自社の方が進んでいる事項がわかります。それらを分析した上で、自社が先行できる強みを見つけて打ち出すようにします。

経営計画の管理

「経営計画の管理」は「施策の実行」と「PDCAの繰り返し」になります。

施策の実行

全社的なプロジェクトや経営層との連携で自社が目指すべき姿が固まったら、施策として実行します。実行の仕方は社内の各部署と話し合って、新施策に最も関連の深い部署に任せて、経営企画部門はリーダー的立場で関わるか、スタッフに余裕があれば共同で実施すればより共通認識が高まります。

PDCAの繰り返し

新施策の実施方法は、企業が新規事業を実施する時によく採用している「PDCA」の繰り返しになります。PDCAは1950年代に、品質管理の父といわれるW・エドワーズ・デミングが提唱したもので、Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)を繰り返すことで製品の品質をあげる方法で、PDCAサイクルとも呼ばれています。

新規事業の創出

「新規事業の創出」では「ビジネスモデルの検討」を行うこと「消費者のニーズをつかむこと」が求められます。

ビジネスモデルの検討

新規事業の創出は、新たな自社製品やサービスをマーケット市場に投入することですからビジネスモデルを作ることが有益です。しかし、どのようなビジネスモデルを作ったら良いのか迷っている時は、自社が目標とする他社のビジネスモデルを参考にすると、競合他社の比較分析などをしていますので、アイディアが沸いてくると思います。

消費者のニーズをつかむ

また、「消費者のニーズをつかむ」ことも大事です。貴方が働いている企業が全く新しく設立された企業でなければ、消費者が過去に購入された製品やサービスの記録が必ずあると思いますので、貴社が運営されている店舗に出かけて、アンケートをお願いするなど直接会話を心がけたり、ウェブサイトを運営されているのであればメルアドが残っていると思いますので、通販で購入された製品などについて感想や意見を聞くことでも消費者のニーズをつかむことができます。常にコンタクトをとって小さなことでも意見や希望を聞く姿勢を取ることで信頼関係が醸成されニーズの把握につながります。

経営管理

「経営管理」では、「キャッシュフローの把握」や「税金対策」が必要です。

キャッシュフローの把握

キャッシュフローは財務諸表の1つで、その名称通り「現金の流れ」を意味します。他の財務諸表では分からない「手元に現金がいくらあるか」を教えてくれますので、売掛金が多くあり会計上は黒字と思って各種の支払いをした結果、手元には現金が残らないという事態が生じることを防いでくれます。

税金対策

会社を経営している以上「税金対策」は避けて通れません。会社の場合は会社の所得に対して課せられる「法人税」、経営者に対して課せられる「所得税」が主なもので、節税方法もあるようですが専門家でないと無理だと思います。お知り合いの税理士がいれば「顧問税理士」として契約したり、近くに「税理士事務所」があれば相談役として契約の上相談に乗ってもらうのが良いと思われます。

経営会議の運営

経営会議の運営も経営企画の担当になります。業務は「資料の作成」と「株主総会」の実施になります。

資料の作成

取締役会は会社法で役員として定められている役職についている人の会議で開催回数は3カ月に1回以上と定められています。これに対して経営会議は法的な規定はなく任意の会議になりますが取締役や執行役員が中心となって月に1回は開催されています。討議内容も「企業の経営方針」「事業の進捗状況」「実績」などになりますので、それに沿った内容の資料を作成することになります。さらにメンバーが忙しい方ばかりですので、開催に向けた事前調整や会議終了後も議事録を作成し、経営層に報告する業務もあります。

株主総会

株主総会開催についても経営企画が担当します。株主総会の企画・運営、株主や投資家からの質疑応答対策などが必要です。近年はアクティビスト(物言う株主)の活動も報じられていますのでその動向を探り、事前にできる対策があれば案を練って経営層に報告します。 

その他の業務

「その他の業務」としては、「社内規定の考案」や「コンプライアンス対応」などがあげられます。

社内規程の考案

「社内規定の考案」を経営企画の業務として明文化している企業は少ないと思いますが、経営層の頭脳的役割を果たしており社内全体の把握もしておりますので適役と考えられています。

コンプライアンス対応

「コンプライアンス」は法令遵守の意味ですが、近年は企業の社会的責任を重視する傾向にあります。「社内規定の考案」と同様に経営層がコンプライアンス対応をどう考えるかという問題もありますので経営企画が担当するのが妥当と思われます。 

経営企画に必要な能力

これまで述べてきましたことをお読みいただき「経営企画担当になると苦労するな」と思われたのではないでしょうか?ここでは通常言われている「経営企画に必要な能力を取り上げてみます。

論理的思考

第一に「論理的思考ができること」があげられています。例えば、経営企画で新事業を提言する場合は、「データや情報に基づいて」「筋道を立てて考察」した結果でないと説得力に欠けるからです。

データや情報を根拠とする

次のような「論理的思考」のラフスケッチを考えてみました。

「わが社の〇〇店は同地区のH社の店舗に比較して来客者数が毎日ほぼ800名程度多くなりました。」というデータを示すと上層部はその原因を知りたがるでしょう。

筋道を立てて考察

「そこで調査をしましたところ、4月から始めました『自家製パンオール100円コーナー』が大人気で、このコーナーだけで毎日500人以上来て作りたてのパンを買ってくれます。また、すぐそばに10人程度の試食コーナーも設けていますので、学生が飲み物を買ってパンを食べながら談笑したり、子ども連れの母親がパンと牛乳を購入して一緒に食べながら休んでいる姿を見ることができます。」というような報告をすると新たな事業が軌道に乗ったことを認めるのではないでしょうか。

コミュニケーション能力

第二にコミュニケーション能力が必要なことがあげられています。コミュニケーション能力は「他部署の従業員とのやり取り」や「社外の関係者とのやり取り」に必要です。

他部署の従業員とのやり取り

コミュニケーションは、人と人の意思の疎通を図る行為ですが、一番重要なことは「双方向のもの」であることを自覚して行うことだと言われています。そのためにはしゃべる時間の割合が「5対5」か「4対6または6対4」をキープするのが好ましいと言われています。「他部署の従業員とのやり取り」は経営企画担当者の方が立場上優位になりがちですが、謙虚な姿勢で相談すれば有用なコミュニケーションができると思われます。

社外の関係者とのやり取り

社外の関係者とのやりとりはさらに気を使ってしまいそうですが、コミュニケーション能力が高い人は、「言語で自分の思っていることを正確に伝えることができること」「相手の言いたいことを最後までしっかり聞いて理解できること」の資質を持っています。また、非言語で「身振り手振り」「目の動きや表情」「相づち」も有用ですので使うようにすると社外の関係者との関係もフレンドリーな関係が築けると思われます。

サポート精神

第三に必要な能力として「サポート精神を持つこと」があげられます。

縁の下の力持ち的存在

上記の「経営企画」の業務をお読みいただいて随分幅が広いと思われると同時に「縁の下の力持ち的」な業務もあることにお気づきになられたと思います。経営層に提言するなどエリート部門でありながら、時には「裏方に回って会社を支える」必要があります。

裏方に回って会社を支える

経営層を支えるには秘書的な役割も演じます。「裏方を演じているな」と感じるのは月1回ペースで実施する「経営会議」と言います。メンバーは役員クラスの方が多いので、日程調整から始まり、会議で使用する資料の作成、当日の司会、昼食の手配、終了後の議事録作成など大変な作業をこなしています。

その他の能力

必要なその他の能力は「マーケティングの知識」と「経済の知識」です。

マーケティングの知識

取締役会議や経営会議で新規事業を実施することが決定されれば、実市場や通販市場で行うことになりますので、マーケティングの知識は必須です。

経済の知識

上記マーケティングを初め経営関係は経済学の範疇ですので、経済の知識が必要なことはトップランクです。


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