ファイナンスリースとは
ファイナンスリースの意味
リース取引の1つ
「リース」とは英語で「賃貸借」を意味し、リースの取引には「ファイナンスリース」と「オペレーティングリース取引」の2種類があります。
ファイナンスリースとは、企業などが希望する物件や設備を企業に代わってリース会社が購入し、それを企業に貸し出す賃貸借契約のことです。
設備の導入や販売促進の手段
ファイナンスリースは設備の導入や、設備等商品の販売促進手段のひとつであり、
キャッシュで設備や商品を購入するには予算が足りない、または資金に余裕がない時に有効です。
例えば企業で使用するパソコン、工作機械、理化学器、医療機器、商業設備や社用車に至るまであらゆる分野の設備が対象になります。
ファイナンスリースは企業の強い味方といえるでしょう。
ファイナンスリースの特徴
現代の企業にとって不可欠であるファイナンスリースには、中途解約が禁止などのルールがあります。
以下6点の特徴を解説します。
①契約の対象者は借主が選ぶ
取引全体としては、ユーザー(借主)・リース会社(貸主)・販売主(売主)の3者が関与します。
契約の対象物は借主が選定し、借主指定の販売店からリース事業者が購入してリースをおこなうものです。
ユーザーとリース会社の間にはリース契約が、リース会社と販売主の間には売買契約が結ばれることになります。
②フルペイアウト
「フルペイアウト」とは、会計処理上でリース取引を区分するときの要件のひとつになります。
借主はリースした資産の全額分プラス利息などの諸費用を支払うことになりますが、リース物件を使用することでリース会社は利益を得て、借主がリース物件の使用コストを負担するリース取引です。
リース事業者がリース料として回収するのは、リース物件の購入金額と取引にかかる費用の全部であり、借主が負担をします。
③中途解約の禁止
借主から申し出て中途解約をすることは原則として禁止です。
もしも何らかで中途解約となれば「残り期間のリース料またはそれに相当する違約金を一括支払いすること」が定められています。
④物件の保守と修繕の義務
リース物件の保守と修繕の義務は借主負担であり、リース会社は責任を負いません。
⑤瑕疵担保責任について
借主は物件の「瑕疵担保責任」を負いません。
これは、もしも物件の隠れたキズ(購入時に明らかになっていないもの)等があった場合に、借主に対して販売店側が負う責任(契約解除や損害賠償)などがないことです。
⑥滅失と毀損について
借主が物件の滅失や毀損の危険負担を負います。
ファイナンスリースの分類と流れ
ファイナンスリースの分類
ファイナンスリースは2種類に分類され「所有権移転」と「所有権移転外」になります。
所有権移転ファイナンスリース
これはリース契約上の諸条件に照らし、リース物件の所有権が借り手に移転すると認められるものを言います。
リース期間が終わったら、その資産をリース会社からもらうことが可能であり、つまりはローンを組んで購入したのと同じです。
所有権移転外ファイナンスリース
ファイナンスリース取引で、所有権移転以外のものになります。
こちらはリース期間が終わっても、リース会社から資産をもらえません。
契約を続けるには再度リース料を払うか、資産を受け取るには別に買取費用が発生することになります。
日本のリース取引では、所有権移転外ファイナンスリース取引が大半です。
所有権移転外ファイナンスリースの例として、社用車や工場の工作機械などが当たります。
これらは、最終的に返還しても貸主がその後再利用(他に貸したり売ったり)することが困難です。
なぜならリース会社にとっては必要ではなく、企業が購入した資産に過ぎません。
つまりは、実際に購入して使用するのと同じであり、リース料の総額は高額になります。
ファイナンスリースの流れ
ではファイナンスリース取引までの流れを7ステップで解説し
てゆきます。
①設備の選択
まずは設備利用者が、導入する設備を選びます。
②契約の締結
次に契約手続きをおこない、リース業者と連絡を取って見積もりや審査をします。
ここでは設備利用者が借主、リース業者を貸主、そして販売主は売主となります。
③物件の引渡し
借主が物件を検収したらリース開始です。
④代金の支払い
借主が売主へ物件代金を支払います。
⑤リース期間
設備が稼働し始めたら収益が発生します。
借主はリース料を貸主へ支払い、貸主はリース期間中のリース料金を請求、保険付保、固定資産税の申告と納付をおこないます。
⑥リース期間の終了
リース期間終了は、貸主から借主へ3か月前に連絡、その際に契約期間終了後の取り扱いを決定します。
⑦契約満了の処理
借主は再リース契約延長か返却化を決定し、返却の際は貸主が二次市場への売却か廃棄化を選択して終了です。
所有権移転ファイナンスリースの概要
所有権移転ファイナンスリースに該当する条件
所有権移転ファイナンスリースとは、実質の分割払い購入であり、物件の所有権は借主に移ります。
以下の条件のどれかに当たれば、ファイナンスリースです。
物件の所有権について
リース期間中か終了後のどちらかで、物件の所有権は借主に移る約束であること。
物件の買い取りについて
物件のリース期間中か終了後で、借り手がタダ同然の価格で買い取れる約束であること。
他の者と取引しないこと
物件は借り手のためだけのものであり、他の者にリースや売却は出来ません。
所有権移転ファイナンスリースの経理処理
扱いとしては、借り入れをして分割払いをするのと同じになります。
リース開始時
リース開始時はリース物件(資産)価格が資産計上されて、それと同額のリース責務(負債)が増加します。
料金支払い時
分割払いでの「リース債務」が減少しますが、同時に利息である「支払利息」が発生します。
そしてその分の資産である「現金・預金」が減少します。
減価償却
またこれ以外にリース資産についての減価償却費が発生します。
減価償却費とは「事業用資産に設備投資した際、その額を複数年に渡って費用として計上すること」です。
所有権移転外ファイナンスリースの概要
所有権移転外ファイナンスリースに該当する条件
所有権移転外ファイナンスリースとは、所有権移転ファイナンスリースでの条件を「満たさない」ものです。以下が条件となります。
物件の所有権について
リース期間中・終了後のどちらかに、物件の所有権が借主に移る約束になっていない。
物件の買い取りについて
リース期間中・終了後のどちらかで、借主が物件を買い取れる約束になっていない。
借り手のためだけの特注品ではないこと
物件は借主だけの特注品ではなく、他者にリースしたり売却したりすることが可能です。
所有権移転外ファイナンスリースの経理処理
原則として、リース開始時や料金支払い時の経理処理は「所有権移転ファイナンスリース」と同じになります。
リース開始時
「リース資産」価格が計上されて、同じ額の「リース債務」という負債が増加します。
料金支払い時
分割払いでの「リース債務」が減少して、利息である「支払利息」が発生します。
同時に、その分の資産である「現金・預金」が減少します。
減価償却
所有権移転ファイナンスリースと同じく、リース資産についての「減価償却費」が発生します。
ただし「リース期間定額法」という方法であり、リース期間を通じて同じ額をずつ償却するものです。
減価償却の方法には「定率法」と「定額法」があり
定率法・・・毎年同じ率(%)ずつ減価償却費に計上。最後の年度に1円だけ残す。
定額法・・・毎年同じ額(%)ずつ減価償却費に計上。最後の年度に1円だけ残す。
一般的には、定率法が早い時期での減価償却費を計上できるので有利とされます。
最後に例外として、中小企業の場合を挙げておきます。
「リース期間が1年以内且つ総額が300万円以内ならば、普通の「賃貸借」として扱われる」のです。
賃貸借のメリットは、リース物件の価格を資産として計上する必要がないこと。
リース料支払いの際に費用として計上すれば良いので、経理や税務処理が容易になる点が挙げられます。
平成19年以前は広く認められていたのですが、平成20年からは現在のように中小企業のみのケースになっています。