「起業をしたい!でもそのためのノウハウがわからない…」
そして、創業に関することをいろいろ調べて、「インキュベーション」というサポート・サービスが気になっているのではないでしょうか。
本記事では、インキュベーションの意味や種類、受けられる支援や実際にある施設などについて詳しく紹介します。
インキュベーションの意味
インキュベーション(incubation)という言葉そのものは、「卵などが孵化する」という意味ですが、ビジネスにおけるインキュベーションは、「起業および事業の創出をサポートするサービスや活動」という意味で使われています。
そのため、ビジネスインキュベーションとも呼ばれています。
新規事業を支援するシステム
ビジネスにおいてインキュベーションは、新規事業の立ち上げを支援するシステムとして注目されています。
米国発祥の支援サービス
インキュベーションを提供する団体や組織のことをインキュベーターと呼びます。インキュベーターの起源となったのは、1959年に米国で設立された「BataviaIndustrial Center」とされています。
ここでの取り組み方法で結果が出たため、インキュベーションが全世界に普及していくことになりました。
バブル期以降に国内でも定着
日本では、1999年に日本新事業支援機関協議会が設立され、普及活動や人材育成が行われたことで、インキュベーションが普及してきました。
インキュベーションの目的
では、新規事業の立ち上げを支援するインキュベーションはどのような目的で行われているのでしょうか?
起業後の長期的な支援
インキュベーションの目的の一つとして「起業後の長期的な支援」が挙げられます。インキュベーションでは、起業前後の支援を通して、企業が長期的に存続できる体形や仕組みを獲得することを目指しています。
特に、日本では欧米諸国と比べて起業家や創業期の企業を支援する取り組みが少ないため、起業する前に諦めてしまうケースや、起業後早期に廃業するケースが少なくありません。
こうしたケースを防ぐために、長期的な支援が求められているという背景があります。
地域経済の発展
また、インキュベーションの目的として、広義での「地域経済の発展」が挙げられます。
新しいアイデアを持った新規企業を支援することにより、事業・雇用が拡大され、地域経済の発展につながることになります。
インキュベーションの種類
続いて、インキュベーションの種類について紹介していきます。
ビジネスにおけるインキュベーション
ビジネスにおけるインキュベーションは、既存事業型とベンチャービジネス型の2つの種類に分けることができます。
既存事業型
既存事業型は、既存の事業から新しい試みを目指していくインキュベーターを指します。
ベンチャービジネス型
ベンチャービジネス型は、全くのゼロから新しい取り組みを始めるインキュベーターを指します。
運営主体による違い
運営主体による分類では、民営型と公営型に分けることができます。
民営型
民営型は、民間企業が設置、運営しているインキュベーターです。
公営型
公営型は、国や地方公共団体、またはその関連の団体が設置、運営しているインキュベーターです。
インキュベーションのメリットとデメリット
では、インキュベーションを利用することにはどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか?
インキュベーションのメリット
まずは、インキュベーションのメリットについて紹介します。
資金に乏しい起業家も起業できる
インキュベーションを利用すると、起業のために必要な専門的な施設・設備を低額の費用で利用することができます。
そのため、資金に乏しい状況であっても起業することができます。
起業の手間とリスクを軽減する
インキュベーションでは、インキュベーションマネージャーから様々な支援を受けることができます。
起業や事業拡大、事業の成長についての豊富な知識・経験を持つインキュベーションマネージャーからサポートを受けることによって、効率的に起業を行うことができ、手間やリスク等を軽減することにつながっています。
インキュベーションのデメリット
インキュベーションには、前述のようなメリットだけでなく、以下のようなデメリットもあるので、留意しておきましょう。
自由度が低い
インキュベーションでは、レンタル形式であらかじめ用意された施設・設備を利用するので、自由に設備等を選択することができません。
そのため、自分が利用したい最新の設備等がある人にとっては、この自由度の低さがデメリットになります。
支援者側の人材不足
起業を包括的にサポートできるインキュベーションマネージャーの人材が不足しています。
特に、ソフト面でのサポートでは起業家が思うような支援を受けられないケースが見られます。
こちらはインキュベーションを提供する企業側の課題でもあるため、今後改善されると十分なサービスが受けられるようになるでしょう。
インキュベーションとベンチャーキャピタル・エンジェル投資家との違い
起業の支援という面では、インキュベーション以外にも、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家といったものも存在します。
では、インキュベーションは、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家とは何が違うのでしょうか?
インキュベーションとベンチャーキャピタルの違い
まずはベンチャーキャピタルとの違いについて見ていきましょう。
ベンチャーキャピタルは資金を支援する
ベンチャーキャピタルは、ベンチャー企業に出資して株式を取得し、将来的に出資した企業が上場したタイミングで株式を売却し、利益を得る投資会社等を指します
そのため、ベンチャーキャピタルが支援するものは「資金」が中心となります。
インキュベーションはノウハウも支援する
それに対して、インキュベーションは資金だけでなく、設備やソフト、起業におけるノウハウなども支援します。
そのため「起業のための資金や設備、ノウハウも欲しい」という起業家にとっては、インキュベーションが適しています。
インキュベーションとエンジェル投資家の違い
続いては、インキュベーションとエンジェル投資家との違いについて見ていきましょう。
エンジェル投資家は企業に投資する
エンジェル投資家は、ベンチャー企業に投資を行う個人投資家を指します。
そして、日本においてベンチャー企業への投資を活発化させるために、ベンチャー企業に投資を行った個人投資家に対して税制上の優遇措置を行う制度としてエンジェル税制が設けられています。
インキュベーションは設備もサポートする
ベンチャーキャピタルとの違いで説明したように、インキュベーションは資金だけでなく、設備やソフト、起業におけるノウハウなども支援します。
そのため、「開業後の資金が足りない」という企業にとってはエンジェル投資家が適していますが、「起業のための資金や設備、ノウハウも欲しい」という企業にはインキュベーションが適しています。
インキュベーションの使い方
次に、「インキュベーション」という言葉の使い方や、派生した用語などを紹介します。
創業支援の意味としてのインキュベーション
インキュベーションを「創業支援」という意味で捉えて、以下のように使用することがあります。
インキュベーションを受けて新規事業の立ち上げ
起業家はインキュベーションを受けて新規事業を立ち上げます。
インキュベーションによる資金調達
インキュベーションによって資金を調達することができます。
インキュベーションから派生した用語
インキュベーションから派生した用語には、以下のような言葉があります。
インキュベーションプログラム
インキュベーションプログラムは、新規事業の創出を目的とした創業を支援するサービス・活動のこと(インキュベーションと同義)、またはその支援計画を指します。
インキュベーションモデル
インキュベーションモデルは、インキュベーションの実例をもとにモデル化したものを指します。インキュベーションは、分野ごとに違いがあるので、実例に基づいてプロセスなどを理解するために使われています。
インキュベーションの施設
起業家の創業を総合的に支援する施設をインキュベーション施設と呼びます。
最後に、日本に設置されているインキュベーション施設の中から、代表的なものを2つ紹介します。
さがみはら産業創造センター
さがみはら産業創造センターは、1999年に設立された、神奈川県相模原市を所在地とするインキュベーション施設です。
主な以下の支援を行っています。
創業・創業準備
創業・創業準備の支援として、会社設立登記など手続支援、新事業開発支援、事業計画の策定、事業性の分析などを提供しています。
品質・製品管理 / カイゼン
品質・製品管理、カイゼンとして、品質・原価・納期など生産工程の改善、ISOの取得などの支援も提供しています。
東京コンテンツインキュベーションセンター
東京コンテンツインキュベーションセンターは、東京都中野区にある、コンテンツ・クリエイティブ関連産業に特化したインキュベーション施設で、以下の特徴を持っています。
アニメやゲームなどに特化したインキュベーション
アニメ、ゲーム、映画などのコンテンツ・クリエイティブ関連産業に特化して、創業・起業支援を行っています。
充実したプログラムを提供
レンタルオフィス機能、インキュベーション機能、コミュニティ機能が一体となっており、コンテンツ・クリエイティブ領域に詳しいインキュベーターの支援を受けることができます。
恵まれた環境の中で、経営強化支援、事業力強化支援、日常支援、アクセラレーションプログラム(事業加速)などの充実したプログラムを受けることができるのが特徴です。
まとめ
インキュベーションを活用すると、起業時、開業後に適切な支援を受けることができます。
起業の経験がない起業家にとっては、起業のリスクや不安を軽減することができる便利なサービスです。
起業を考えている方は、インキュベーションのメリット、デメリットを吟味したうえで、様々なインキュベーション施設を比較して、利用を検討してみてください。