本記事では主にIT業界などで飛び交う「ベンダー」についての意味と類義語・関連用語、使用例についてわかりやすく解説します。IT業界の基本知識として、この記事を読んで用語の意味をおさえておきましょう。
ベンダーとは
ベンダーとは商品やサービスの供給元や販売者を指す言葉であり、IT業界でよく使用されます。ここでは基本的な意味について見ていきましょう。
ベンダーの意味
自動販売機のことを英語で「vending machine」と言います。つまりベンダーは「vend(販売)する人」いった意味を持ちます。
供給元や販売者を指す
ベンダーは製品やサービスの供給元や販売者を指します。製品やサービスの利用にあたってはベンダーとの契約内容に基づいて取引が行われるのが一般的です。
行商という意味の英単語が由来
ベンダーという用語は、英語の「vendor」が由来とされています。「vendor」には、「行商人」や「露天商」を意味する言葉が含まれており、IT業界においては、製品やサービスを提供する企業が「販売者」として扱われることから、この語が使われるようになりました。
IT業界で使用されることが多い
ベンダーはIT業界でよく使われる用語ですが、IT業界では多様な製品やサービスの形態があるため一口にベンダーといっても色々な種類があります。
製品やサービスを直接販売する
ベンダーは、製品やサービスを直接販売するのが一般的です。自社製品や他社製品の販売、保守・運用サービス、カスタマイズサービスなど多様な業務を担います。
IT業界以外でも広く使用されている
マーケティングや一般の商取引などでも供給元や販売者をベンダーと呼ぶことがあり、IT業界以外でも広く使用されています。
ベンダーに関連する用語
次に、ベンダーに関連・類似した用語についても理解を深めるために押さえておきましょう。
メーカー
メーカーは、製品を製造する企業を指し製造業者や製造元とも呼ばれます。
製造業者や製造元
自社ブランドの商品を製造し、ベンダーを通して販売を行うのがメーカーです。販売はベンダーに任せ製造に特化することで、生産に企業の資源を重点的に投入できるのがメリットです。
ベンダーと区別されないケースも
また、製品を製造したメーカーがそのまま直販する場合など、ベンダーと区別されない場合もあります。
サプライヤー
サプライヤーは、「supply(供給)する人」という意味で、顧客に商品を供給する役割を持つ企業です。
企業へ商品を供給する
顧客に提供するもので、自社で取り扱っていない商品や部品・サービスを仕入れる仕入れ元がサプライヤーです。サプライヤーは企業に商品を提供します。
ベンダーとの違い
ベンダーとサプライヤーの違いは、商品の供給先です。ベンダーは、企業・個人関わらずその商品を使用・消費する消費者に対して商品を提供します。一方、サプライヤーは商売としてその商品を扱う企業への商品の提供が主な業務です。
ユーザー
「ユーザー」とは、ある商品やサービスを使用する人を指します。IT業界においては主にソフトウェアやアプリケーションを使う人を指し、その場合はエンドユーザーと呼ばれます。
ベンダーの対義語
「ベンダー」の対義語としては、「ユーザー」の他にも、「クライアント」「顧客」といった言葉があります。ベンダーとは対照的に、ユーザーやクライアントは、商品やサービスを使用して利益を得ます。
商品やサービスの使用者
ユーザーは、その商品やサービスを直接的に利用する人たちであり、企業が提供する商品やサービスの最終的な利用者となります。企業は、商品やサービスを使用するユーザーのニーズや要望を理解し、それに合った商品やサービスの提供が求められます。
ITベンダーの例
ITベンダーとは、情報技術分野において製品やサービスを提供する企業のことです。大手IT企業から中小規模のベンチャー企業まで色々であり、さまざまなIT製品やサービスを提供しています。その中でも代表的な例をいくつか挙げてみましょう。
システムベンダー
システムベンダーは、企業や組織に対してシステムを販売する企業のことです。
システムの販売
システムベンダーは、企業の業務プロセスの効率化やコスト削減の実現を目的としてシステムを販売します。システムの販売においては、顧客に合わせた最適なシステムを提供し、導入後の保守やサポートの提供も行います。
月額課金制が多い
近年はシステムの販売において月額課金制を導入しているベンダーが多く、導入初期費用を抑えることができるため中小規模の企業でも導入しやすくなっています。
ハードウェアベンダー
ハードウェアベンダーとは、パソコンやスマートフォンなどの家電製品を製造・販売する企業のことです。
家電製品やPC等を販売
ハードウェアベンダーは、一般顧客に対してはスマートフォンやパソコン、家電製品などのハードウェア製品を販売しています。また、企業に対してはパソコンのほかにサーバーなども提供しています。
消費者が最も接する機会が多い
スマートフォンやパソコン、家電製品といったハードウェアベンダーが販売する製品は、消費者が最も接する機会が多いです。ハードウェアベンダーは常に新しい技術やデザインを取り入れ、消費者のニーズに合った製品を提供することが求められています。
ソフトウェアベンダー
ソフトウェアベンダーは、主にコンピューターソフトウェアを開発・販売する企業のことです。
ソフトウェアの販売
ソフトウェアベンダーは、企業や個人が使用するソフトウェアを販売しています。例えば、オフィスソフトやグラフィックソフト、会計ソフトなどです。
業務の効率化に貢献
ソフトウェアベンダーが提供するソフトウェアは、業務の効率化に大きく貢献しています。例えば、オフィスソフトは文書作成や表計算、プレゼンテーションなどの作業を効率的に行え、セキュリティソフトはウイルスや不正アクセスからデータを保護できます。さらに、クラウドサービスやSaaSは、データの共有や業務の効率化に大きく貢献しており、ソフトウェアベンダーは常に新しい技術やサービスを提供しています。
シングルベンダー
シングルベンダーは、特定のメーカーの製品のみを販売します。
特定のメーカーのみ対応
シングルベンダーは、特定のメーカーの製品のみを扱っています。そのため、そのメーカーの製品を購入する場合は、シングルベンダーからの購入が必要です。例えば、Apple製品を購入する場合は、Apple StoreやApple製品を取り扱うシングルベンダーからの購入が必要です。
製品同士の互換性がある
シングルベンダーは、特定のメーカーの製品のみを扱っていますが、その製品同士は互換性を持つ場合が多いです。例えば、Apple製品を扱うシングルベンダーは、iPhoneとMacの間でのファイル共有などが容易にできます。また、同じメーカーの製品を扱うことで、サポートにも強みがあります。
マルチベンダー
マルチベンダーとは、複数の企業の製品を取り扱うベンダーのことを指します。
複数の企業の製品を扱う
マルチベンダーは、複数の企業の製品を扱っています。同じ種類の製品でも複数のメーカーのものから選択できるため、顧客は自分に合った製品を選べます。また、競合するメーカーの製品を扱っているため価格競争が起こり、安価な価格で購入することができる場合もあるでしょう。
製品同士の互換性が課題
マルチベンダーは、複数の企業の製品を扱っているため、製品同士の互換性がない点が課題です。製品の互換性がない場合、製品同士の連携がうまくいかない場合があります。
システムインテグレーター
システムインテグレーターとは、顧客のニーズに合わせたシステムを企画から設計・開発・導入・保守まで一括して行う企業のことです。
システムの企画から保守まで行う
システムインテグレーターは、システムを導入する顧客に対してシステムの企画から保守まで一貫して行います。システム開発の最初の段階でシステムの要件定義や設計を行い、システムの開発や構築・導入を行います。
システム導入後にもサポート
システムインテグレーターは、システム導入後にもサポートを提供します。システムの導入後に生じた問題や運用後の顧客からの要望にも対応し、最適なシステムの提供を行い顧客のビジネスを支援します。
ITベンダー以外のベンダー
次にITベンダー以外のベンダーについても見ていきましょう。
開発ベンダー
開発ベンダーとは、システムやアプリケーションなどの開発と販売両方を行う企業のことです。
開発と販売の両方を担う
開発ベンダーは開発と販売の両方を担います。顧客のニーズに合わせて開発したシステムやアプリケーションを、自社の営業チームを通じて販売することが多いです。
IT業界では開発ベンダーが多い
IT業界においては、販売においても専門知識が必要になってくるため、顧客のニーズの聞き取りから開発まで一貫して行える開発ベンダーが多く存在しています。
セキュリティベンダー
セキュリティベンダーは、セキュリティ関連の開発と提供を行う企業です。
セキュリティ関連の開発と提供
現在では、クラウドやモバイルデバイスの普及により、新たなセキュリティ課題が生じており、セキュリティベンダーは、これらの課題に対応するための製品を提供することが求められています。具体的にはウイルス対策ソフトやネットワークセキュリティ、パスワード管理ツールなどです。
トレンドマイクロ等が代表的
トレンドマイクロは、日本を代表するセキュリティベンダーの一つで、ウイルス対策ソフトやネットワークセキュリティ製品などを提供しています。シマンテックやマカフィーなども大手セキュリティベンダーです。
まとめ
ベンダーは製品の開発や販売を行う企業のことであり、特にIT業界においては重要な役割を担っています。また、ビジネスにおいてはベンダーの活用により効率的な業務プロセスの実現やコスト削減、競争力の向上などが期待できます。例えば、システムインテグレーターを活用することで、自社の業務に適したシステムの企画から保守まで一貫したサポートを受けられます。また、開発ベンダーの活用により自社開発に必要なリソースを削減することができます。
既製の商品だけ購入するのか、あるいは開発から依頼するのか、自社の業務や予算に合わせたベンターの活用方法を検討したいところです。