「あの人は○○のスペシャリストだから」といった評判や、「○○スペシャリスト」といった肩書きがよく使われますが、「スペシャリスト」とは具体的にどういった立場を指すのでしょうか?
本記事ではスペシャリストの意味や必要性とゼネラリストとの違い、獲得方法について解説します。
スペシャリストとは
辞書によるとスペシャリストとは「特定分野を専門にしている・特殊技能をもつ人」「専門家」という意味です。
まずはこの2つの違いをそれぞれ見ていきましょう。
スペシャリストの意味
スペシャリストの意味は「特定分野を専門にしている・特殊技能をもつ人」です。
特定の分野に精通した人材
「スペシャリスト」と聞いて一般的にイメージするのは「ある特定の分野に特化した深い知識がある人材」のことではないでしょうか。
この場合のスペシャリストは知識量を測る具体的な指標はなく、また、知識があれば実務経験が少なくてもスペシャリストとみなされます。
特殊技能を持つ人材
特定の知識とは別に、「特別な機械の操作」「高度・専門的な作業技術」といった特殊技能を持つ人材もスペシャリストです。
専門家の意味
スペシャリストの狭義的な意味は「ある技芸や学問での高度な知識,またすぐれた技能を備えた人」です。
国家資格者
上位の資格には「○○スペシャリスト」と名の付くものが数多くあります。
取得難易度が高く、必要な知識量の多い国家資格を保有している人材もスペシャリストとして扱われます。
実務家や芸術家など
あまり使用する場面はないですが、意味の中に「技芸」とあるように独自の技術を持つ芸術家や工芸家、また実務家(実務を行うだけでなく、その実務に熟達した人)スペシャリストです。
スペシャリストの例
スペシャリストには、資格などで認定されるもの、あるいは高い能力や経験の蓄積があり特定の業界内で汎用性が高いものと、社内独自の技術や業務知識に長けているといった汎用性の低いものに分けられます。
国家資格にもとづくスペシャリスト
高い技術や知識が求められる上、その資格がなければできない業務を持ち誰が見ても明確に「その分野のスペシャリスト」と判断できるのが国家資格の保有です。
その中で特にニーズが高いのが以下の4つです。
医師
医師は患者の病気の診断や治療方針の決定、実際の治療のほかに、症例から原因や治療法が不明な病気の治療方法の発見を行います。
長期間の医学部での勉強に加え国家資格に合格する必要がある、スペシャリストの代表ともいえる職業です。
弁護士
難解で複雑な法律の知識を携え、個人法人問わず依頼人の権利を守ったりトラブルを解決したりする職業である弁護士。
法科大学院の修了、または予備試験の合格でようやく国家資格である司法試験に挑戦する資格が与えられるという、職に就くまでも難易度の高い法律のスペシャリストです。
看護師
医師の決定した治療方針に従い医師のサポートを行うほか、実際に患者の処置やケアを行うスペシャリストです。
看護師も専門課程の教育の後に国家資格を取得し、免許を受ける必要があります。
薬剤師
薬剤師は医師の処方に従って薬剤を調剤します。
患者の症状やアレルギー、薬の飲み合わせや患者からの薬に対する質問への回答など、薬に対する広く深い知識が必要な薬剤のスペシャリストです。
能力や経験にもとづくスペシャリスト
一方、国家資格など明確な指標はなくても、長年の能力や経験にもとづいてスペシャリストと呼ばれるような職業もあります。
技術者
管理側になるのは性格上合わない、直接開発や生産に関わっていたい、といった理由から現場ひとすじで経験年数を重ねた結果スペシャリストになっていたパターンが多いのが技術者です。
自分も現場で作業にあたりながら、同時に後進の指導をしたり進行管理をしたりといったプレイングマネージャ的な立場に立つ技術者も多いでしょう。
研究者
研究を成果につなげるにはある程度時間がかかる性質上、専門の分野を持ち長年研究を重ねることが多い研究者はスペシャリストとしての道に進むことになります。
エコノミスト
官庁や証券会社、研究機関などで国や企業の経済に関する調査研究を行うのがエコノミストです。
今までの経済動向や国際的な背景、業界内の企業の動きなど経済を形成する要素は多く、ことから、経済のエキスパートとして深い知識と情報量が求められます。
アナリスト
エコノミストと似て非なるものがアナリストです。
エコノミストのように金融機関で企業の経営状態や財務状況などを分析し株価を評価する証券アナリストのほかに、収集した大量のデータを分析するデータアナリスト、情報システムの分析を基に改善提案などを行うシステムアナリスト、サイバー攻撃の手法や情報を収集分析するセキュリティアナリストに大別されます。
社内のみのスペシャリスト
どの会社にも、「あの処理は○○さんに聞けば何でもわかる」「あの機械は○○さんじゃないと扱えない」と言われるベテラン社員がいるのではないでしょうか。
国家資格や特殊技術がなくても、同じ業務に携わり続けた結果として社内的なスペシャリストになる場合があります。
特殊な業務の担当者
機械操作やエンジニア、デザイナーなど、専門知識と長年の実務経験を持ち特殊な業務を専門に行っている担当者は社内で替えが利かないスペシャリストとして重宝されるでしょう。
社内独自の手法に精通した社員
特殊な業務の担当ではなくても、社内独自の業務処理に長けている人も社内のスペシャリストとして重用されます。
社内特有の会計処理ルールがあり、業務の専門性が高い経理などもこれにあたります。
スペシャリストとゼネラリスト
一般企業では、各部署を数年単位で異動しながら管理職になるための全体的な業務知識を身につけるというゼネラリスト型の人材育成がまだまだ一般的です。
ここでゼネラリストについても見ていきましょう。
ゼネラリストの特徴
最終的に管理職に就くことが求められるゼネラリストの特徴は、多分野にわたる知識や技術を一通り身につけている点です。
知識や技術が多岐にわたる
ゼネラリストは管理職やチームリーダーなど、全体を見渡し必要に応じて指示を出す関係上、多岐にわたる知識や技術を持つことが必要になります。
日本では古くから主流
終身雇用制度が長年続いた日本では、人材育成期間が長く取れること、出世がステータスとして機能していた価値観により入社後に各部署で経験を積んで管理職コースに上っていくスタイルが主流でした。
スペシャリストとの違い
それでは、スペシャリストとゼネラリストの違いは何でしょうか。
それは知識や技術を縦方向に深めるか、横方向に広げるかの違いと言えます。
汎用性がある
ゼネラリストに必要とされる幅広い分野の知識と全体を把握し連携を取るコミュニケーション力は、どの分野でも活用できるため汎用性があると言えます。
難題の解決は困難
ゼネラリストはスペシャリストと違い、広範な知識や技術を持つ一方で特定分野への深い知識や技術はあまり求められていません。
そのため難題の解決は困難であり、スペシャリストに任せることになるでしょう。
ゼネラリストの例
実際に企業内においてゼネラリストはどのような立場にあるのでしょうか。
企業の管理職
組織内の業務を見渡し、全体的な目的を実現するため必要に応じて指示を出しまとめていく企業の管理職がゼネラリストと言えます。
企業の幹部とその候補生
企業の幹部、またその候補生もゼネラリストとしての能力が必要になります。
優秀なスペシャリストが管理職に向いているとは限らないため、本人も育成する側も適性を見極める必要があるでしょう。
個人事業所の経営者
個人事業主は専門的な技術で起業したとしても、一人で業務のほぼ全ての範囲を動かすうちにゼネラリスト的になる場合があります。
また、専門性の高い業務は部下を雇ったり外注したりも可能なため必ずしも経営者はスペシャリストである必要はありません。
スペシャリストの獲得方法
企業内にゼネラリストは欠かせませんが、事業の競争力強化や終身雇用制度が以前ほど機能していないことから近年はスペシャリストを求める傾向になってきました。
社内でスペシャリストを獲得するためにはどのような方法が考えられるでしょうか。
社内での育成
まず、既に社内におり適性がありそうな社員をスペシャリストとして育成する方法が考えられます。
キャリアパスを企業が用意する
社内の人材をスペシャリストとして育成するためには、内部・外部での研修制度を設けたり専門的な勉強をしやすい体制を整えたりといった、スペシャリストへのキャリアパスを企業側が用意する必要があります。
スペシャリスト枠を用意する
経験を積んだら自動的に管理者に昇格するルートではなく、企業側がスペシャリストコースとして枠を用意する方法もあります。
社内で公募する場合もありますが、熱意や意欲だけでなく知識や技術があるかや成果が出せるかどうかの見極めが必要です。
中途採用
社内で育成する以外には、既にスペシャリストとしての経歴を持っている人材を採用する方法があります。
育成の手間がかからない反面、優秀なスキルを持っている人材を採用するためのコストがかかる、採用後も離職のリスクが高くなる、といった可能性も考えなければいけません。
職業別採用の導入が増えている
近年は中途・新卒採用共に「ジョブ型(職業別)」での採用が増えています。
最初からその分野に興味を持つ人物を採用でき、採用後のミスマッチを防げるというメリットはありますが、採用後に職種を変更するのが難しいというデメリットがあります。
適性を見極めることが重要
しかし優秀なゼネラリストが優秀なスペシャリストになるとは限らず、職種を変更することが難しい職業別採用では本人も育成する側も適性を見極める必要があるでしょう。
まとめ
専門性を上げ成果を出し、企業として競争力を上げるスペシャリストとスペシャリストを取りまとめ企業として目指す方向に導くゼネラリスト、どちらも企業には必要です。
それぞれの人材に適したキャリアパスや体制を提供し、企業の利益のためにも人材の効果的な活用を目指したいものです。