アセスメントが必要な理由とは?各分野における使われ方を紹介

ビジネスパーソンであれば、アセスメントという言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。人事配置をおこなう上で重要なアセスメントですが、実は企業以外でも介護や医療の現場でよく耳にする言葉です。分野ごとにアセスメントの使い方を、わかりやすく紹介していきます。

アセスメントとは

アセスメントとは「人や物事を客観的に評価すること」という意味で使われています。語源は英語の「Assessment」であり、翻訳すると「評価、査定」となります。

アセスメントの目的

自己と他者の評価にズレがあると、スキルアップはおろかモチベーションの低下につながります。また医療や介護の現場においては評価のズレが命にかかわる事故を引き起こす可能性もあります。アセスメントは客観的な基準を用いて人や物を適正に評価することにより、能力の向上や事故を防ぐことを目的としています。

アセスメントの基本的な流れ

アセスメントのプロセスは「情報収集」「分析と推測」「プランの策定・実施」「結果の評価」となります。それでは順を追ってみていきましょう。

情報収集

まずはアセスメントをおこなう対象者または対象の事柄について、アセスメントの判断材料となる正確な情報を収集しましょう。情報収集のやり方を具体的にまとめたのでさっそくチェックしていきます。

①対象者および対象者と接点のある人への聞き込みやカウンセリング

②経歴調査・観察

③第三者機関の適性検査を受けてもらう

④調査用紙を渡し、郵送やメールで返送してもらう

①~④の方法を使って、客観的な情報を集めるようにしましょう。

分析と推測

情報収集の内容をまとめて対象者に何が起こっているか分析し、仮説を立てて推測します。ここで目的や目標を決めるとよいでしょう。

プランの策定・実施

先ほど決めた目的や目標を達成するためのプランを考え、どのようにアプローチするのか、計画を立てて実行します。

結果の評価

実行したプランの結果をみて、評価をおこなっていきましょう。改善点を洗い出し、次のステップの参考にします。適切なフィードバックをおこなうことで、スキルアップにつなげることができます。

各分野におけるアセスメント

アセスメントは各分野でおこなわれています。ここでは「ビジネス」「看護」「介護福祉」「教育」の分野でおこなうアセスメントについて深堀していきましょう。

ビジネスにおけるアセスメント

ビジネスにおけるアセスメントとは「人材アセスメント」とよばれています。人材アセスメントとは客観的に人材を評価し、的確な人事配置をおこなうことをさします。定量的な判断が加味される人事評価や査定とは別の意味で使われています。人材アセスメントは適性検査など客観的な判断基準が用意されていてその結果に基づいて人事配置がされます。

アセスメントの目的とポイント

人材アセスメントの目的は採用時や配属先のミスマッチの防止です。また管理職に適しているかなどの昇進をする際の判断基準になります。いくら優秀な人材を採用しても適切な部署に配置しなければ能力を十分に発揮できません。企業の成長のためにも客観的な判断に基づいた人事配置をおこなうことが望ましいでしょう。

人材アセスメントをおこなう上で、重要なのは評価基準を明確に設定することです。評価基準や項目は企業ごとにさまざまですが、押さえておくべき項目は「思考、行動、態度」の3つです。一つ目の「思考」とは問題解決能力があるかを確認することです。二つ目の「行動」とは集団でリーダー的存在になるのか、周りの意見に耳を傾けるタイプなのかなど行動特性をチェックすることです。そして最後に「態度」とは対象者の価値観を分析することです。

看護におけるアセスメント

看護におけるアセスメントは患者の状態を分析・評価し、看護計画を明確にすることをいいます。

アセスメントの目的とポイント

看護アセスメントをおこなうことで、より詳細な情報を記載したカルテを作成することができるでしょう。また問診・検査などでわかる客観的な数値と、患者本人が抱える痛みや不安などの主観的な情報を分析・評価することで、一人ひとりに寄り添った看護計画を立てていくことを目的としています。

また患者をよく観察することで異常にいち早く気づき、病気の早期発見につながります。

介護福祉におけるアセスメント

介護福祉におけるアセスメントは、こころと身体の状態や普段の生活について情報や要望を集め、評価したものです。これらをまとめたものをアセスメントシートに記入していき、ケアプランを作成していきます。ケアプランを作成する際にケアマネージャーがアセスメントを実施するのが一般的です。

アセスメントの目的

介護福祉におけるアセスメントは、利用者一人ひとりに寄りそったケアプランを作成するためにおこないます。どこまで介助が必要なのかを考え、利用者やご家族の希望を把握するためにアセスメントシートを利用し、介護対象者とその家族が望む生活を形にした介護計画書(ケアプラン)を作っていきます。

アセスメントのポイント

介護や福祉におけるアセスメントは一度おこなえば終わりというものではありません。介護対象者の症状の変化や、その家族の事情が変わったらアセスメントシートを更新し共有するという作業を繰り返すことが重要です。利用者やご家族との会話を増やし、理解することで心身や環境の変化を察知できるようにしましょう。

教育におけるアセスメント

教育におけるアセスメントは、子どもの学習について実態を把握し、適切なフィードバックをおこない、評価することをいいます。

アセスメントの目的

教育におけるアセスメントの目的は、学習を成功に導くことです。子どもが自ら勉強の大切さに気付き、自主的に学ぶ姿勢を身につけるためにアセスメントをおこないます。

アセスメントのポイント

アセスメントのポイントは子どものためにおこなうということを忘れないことです。指導者の価値観を押し付けるのではなく、客観的な評価基準をもとに生徒一人ひとりに適した学習計画を考えながら子どもの自主性を尊重してあげましょう。

内容ごとのアセスメント

これまでは業界ごとに使われているアセスメントについて説明してきました。次はアセスメントと名の付くワード6つを詳しく説明していきます。

リスクアセスメント

リスクアセスメントとはおもに職場でのトラブルを事前に抽出・評価し、除去または低減させることをいいます。就業環境を安全かつ快適に整えるためにおこなわれています。

環境アセスメント

かな暮らしを実現させるために環境破壊をおこなってはいけない。これが環境アセスメントの考え方です。つまり環境アセスメント(環境影響評価)とは、開発事業をおこなうにあたり環境への影響を事前に調査、予測、評価をおこなうことをいいます。また調査結果を公表し、地域住民や団体からの意見を集め、それらをふまえて、環境保全の観点からより良い事業計画を立てていくことが必要です。

テクノロジーアセスメント

急速に進歩する技術が、社会活動や環境に与える影響を総合的に分析・評価をすることをテクノロジーアセスメントといいます。分析した結果、テクノロジーが負の影響を及ぼす場合には、事前に対処していく必要があります。

政策アセスメント

政策アセスメントとは、政策立案をおこなう上で必要性や効果といった視点から評価をおこなうことをいいます。予算や税制のほか、現在おこなっている政策の再検討も対象となり、より必要とされる政策への予算投資につなげることができます。

ヘルスケアアセスメント

ヘルスアセスメントとは、医療用語として使われており、対象者の身体的、精神的、社会的側面から健康を評価することをいいます。

まとめ

「人や物事を客観的に評価すること」という意味をもつアセスメントですが、さまざまな分野で使われていることがわかりましたね。業界ごとにアセスメントのポイントが異なりますが、すべてに共通して気を付けてほしいことがあります。それはアセスメントを一度おこなうだけではなく、変化に応じてブラッシュアップしていくということです。ビジネスにおける人材や看護における患者さんは日々変化し続けています。対象者に変化が生じた場合は、最新の情報を収集し、分析・評価していく必要があります。

対象者のもつ能力の向上や事故を防ぐためにも適正なアセスメントをおこなうことを意識していきましょう。


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