バイオベンチャーとは?定義や活躍状況、最新の傾向も解説

バイオベンチャーについてご存じでしょうか?株式投資やニュースで注目を浴びることもあり、名前だけなら聞いたことがあるかもしれません。

本記事では、バイオベンチャーにおける定義や近年の活躍、動向を主軸に解説していきます。バイオベンチャーについての基本的な知識をおさえ、時事の理解や事業提携などにおいて役立てていきましょう。

バイオベンチャーとは

バイオベンチャーという名称から、なんとなく生物や環境を利用して行う事業というイメージはつきますが、具体的にはどういった企業を指すのでしょうか。

バイオテクノロジーを活用する企業

バイオベンチャーとは、バイオテクノロジーを基盤に、食品、医療、製薬等の方面で活躍する企業を指します。

生物の持つ能力を応用

バイオテクノロジーは、生物が元来持つ特性や能力を駆使し、人間の実生活に有益になる製品、システムを作成することが基本的な目的です。

手段・対象として事業を展開

生物の持つ能力を応用して開発した製品を手段に事業、つまりビジネスとして商用展開しようと試みているのがバイオベンチャー企業です。

バイオテクノロジーとは

バイオテクノロジーを実際に言葉で説明するとなると難しいのではないでしょうか。一体どのような意味なのか見ていきましょう。

バイオロジー(生物学)とテクノロジー(技術)の合成語

バイオテクノロジーとは、元々はバイオロジー(生物学)とテクノロジー(技術)という別々の単語でした。「生物の特性を」「技術として」利用するという点から統合され、バイオテクノロジーという合成語が生まれました。

医療や食料関連で貢献

バイオテクノロジーは理系分野にあるような技術を使用し、医薬品や健康食品として社会貢献を担っています。これら2分野は共に従来の技術では解決が難しい問題に直面しており、バイオテクノロジーが解決に一役買う可能性が期待されます。

バイオベンチャーの歴史と定義

バイオベンチャーはここ数年にできた言葉ではなく、比較的短くはありますがある程度の歴史を経て現在に至ります。ここではその流れについて触れていきます。

バイオベンチャーの歴史

バイオベンチャーの発端は1976に創業された米ジェネンテック社であり、新型のインスリン剤を遺伝子工学で完成させたのがきっかけでジェネンテックは一躍大企業となり、バイオベンチャーというブランドを作りました。これを皮切りに、多くのベンチャー企業がバイオ関連に参入しています。

1999年に政府が基本方針を策定

日本では、1999年に政府が「バイオテクノロジー産業の創造に向けた基本方針」を策定しています。その中で新バイオ産業は約25兆円の市場規模と見込んでおり、「研究開発の充実」「産業化プロセスの強化」「国民理解の浸透」について述べられています。

近年の目覚ましい発展

また、国が「国立大学を独立行政法人として認可する」と決定したことにより、研究成果や技術が民間へと移りやすくなりました。それと同時に大学発のバイオベンチャーも増加し、近年の発展につながっています。

バイオベンチャーの定義

バイオベンチャーの明確な定義は政府が設けておらず、代わりに一般財団法人であるバイオインダストリー協会が定義を設けています。

バイオテクノロジーを手段・対象として事業展開

第一の定義は、前提として「バイオテクノロジーをビジネスの手段として事業展開する企業であること」です。

設立から20年未満

次に、バイオベンチャーを名乗るには設立20年未満である必要があります。JFC(財務省管轄の機関)の定義では「設立数年程度」をベンチャー企業と回答していますが、製薬など長期間の研究が必要になるためかバイオベンチャーではより長い期間が定義されています。

製造業の場合は従業員300人以下

また、製造業を主軸とした形態の場合は、「資本が3億円以下」「従業員が300人以下」であることが条件となっています。これは、中小企業庁が提言した中小企業の定義と同一です。

研究開発・製造・コンサルティングを事業とする

そして、実際に研究開発や製造などをその会社で実施している必要があります。バイオ関連製品を輸入して代理販売したり他社へ委託したりするだけではバイオベンチャーにはあたりません。

身近なバイオベンチャー

バイオベンチャー自体、あまり聞く機会が少ない言葉のため我々の日常生活にそこまで関係のないように思えるかもしれません。ですが、既に身近なところでバイオベンチャーは普段の生活に関わりを持っています。

発酵食品の開発

味噌やヨーグルトなど、あらゆる所で販売されている発酵食品は、微生物や細菌の働きにより作られています。

発酵自体、バイオテクノロジーの一種でありこれらの新規開発はバイオベンチャーの得意とするところでしょう。

遺伝子組み換え作物の生産

「遺伝子組み換え」というと納豆やトウモロコシを思いだす方が多いかもしれませんが、それ以外にも遺伝子組み換え作物は市場に多く出回っています。人間用だけでなく、遺伝子組み換えしたイチゴが動物薬として試用されるケースなども一例です。

バイオエタノール

トウモロコシやサトウキビを発酵させて生産するバイオエタノールも同様です。バイオエタノールは化石燃料の代替として、環境維持の面から有望視されています。

再生医療

これまでの医療は、重度疾患などに対しては阻害薬や拮抗薬を使用してこれ以上の悪化を防ぐ、という方法が主流でした。一方、再生医療では臓器を構成する細胞の増殖や移植を行う実験を試みるバイオベンチャーもあります。

バイオベンチャーの活躍状況

ここからは、現在のバイオベンチャーの動向について、企業数やどんな分野で活躍しているかについて見ていきます。

1000社以上が設立

科学技術振興機構のリポートによると、2019年4月時点の協会の調査ではバイオベンチャーに該当する企業は2010社にのぼり、かなりの数字であることが分かります。

最も多い医療分野

バイオテクノロジーは遺伝子工学や細胞科学等を包括した多義語で活用分野も広いですが、やはり特定の部分にのみ作用する拮抗薬や阻害薬の作成といった医療分野に関するものが最も多いです。

ITや介護関連なども

高齢化社会における介護課題やヘルスケアに取り組むバイオベンチャー企業もあります。人工知能やIoT技術、センシング技術などを駆使して、高度な医療機器やヘルスケア機器、介護支援システムの開発や、新薬・治療法の研究開発などを行うほか、生体情報や医療データを収集・解析・活用し個別に最適化された介護の提供を可能にすることを目指しています。

上場企業はごくわずか

科学技術振興機構の調査によると、バイオベンチャーに該当する企業のうち上場している企業は全体の3%未満であり、未上場の企業が大半であるのが実態です。

多額の資金調達が必要

既存の医薬品に比べ、バイオ医薬品の開発には長期にわたる膨大な治験と研究が必要とされており、それに伴い多大な資金が必要になります。

創薬関連企業に期待

一方で、上場しているバイオベンチャー企業の半数以上が創薬関連企業です。創薬事業の成功への高い期待から資金調達がしやすいことがうかがえます。

潜在的な可能性

バイオベンチャー企業への期待が高まっている背景は、現在世界的に起きている問題に対する解決策への潜在的な可能性です。

コロナ禍によるワクチン開発

バイオベンチャー発の薬の強みは特異性(特定の症状にのみ集中的に作用する)にあります。コロナ禍においても既存薬とは異なった角度から貢献できる可能性があり、国内バイオベンチャー企業がワクチン開発に乗り出しています。

食糧危機の対策

バイオテクノロジーには近頃取り沙汰される食糧危機への解決も期待されており、ニュースでも近頃取り上げられるようになってきました。食料関連の研究を行うバイオベンチャーの中には、超高たんぱく質を含有する栄養補助食品を開発している企業もあります。

バイオベンチャーの新しい動き

こうした発展がみられる中、近年バイオベンチャーに新たな動きがみられるようになりました。

大企業の参入

一つに、バイオベンチャーと製薬大手との提携が挙げられます。製薬大手は多額の契約金をバイオベンチャー側に支払っており、膨大な研究コストに対する資金援助の見返りとしてのノウハウの共有や事業拡大が狙いです。

M&Aの活発化

また、製薬・開発コストに加えて薬として正式な認証を得るにも数年かかるため、創薬には企業体力が求められます。そのため、一部ではM&A(企業同士の合併)が盛んに実行されているのが現状です。

医療分野の大規模化

医療分野の大規模化も大きな変化といえるでしょう。企業提携や設立されたバイオベンチャーの多さから、開発される薬種やヘルスケアの手法も多彩になっています。

成功の兆し

バイオベンチャーは、元は海外発の業界ということもあってか日本はやや後れをとっているとの評価でした。しかし、成功の兆しがみえてきたこともまた事実です。

海外の後塵を拝していた業界

日本初のバイオベンチャー業界が海外に比べ後進性が高いというのは、人材育成や資金援助が不足しているのが原因だという指摘もあります。

新薬開発に成果

現在では大学発ベンチャーが複数上場し、新薬、新成分の開発に成功している企業M&Aや企業提携の推進により、その成果がさらに増加するかもしれません。

まとめ

バイオベンチャーとは、遺伝子解析や細胞治療などの最先端の技術を活用して新たな治療法や医薬品の開発によって事業拡大を目指し市場に参入するスタートアップ企業のことです。

近年バイオベンチャー企業は従来限界があった医療や薬剤開発において新たな価値を生み出し、投資家からも注目を集めるようになっています。特に、新型コロナウイルスの流行によって、バイオテクノロジーに関する需要が高まっており、大手企業との協業やM&Aなど、さまざまな取り組みが行われています。

バイオベンチャー企業は、環境、医療、食料等欠かせない分野の発展に大きく寄与しており、今後も最先端の技術を活用した研究や開発に取り組み、社会のニーズに応えていくことが期待されています。


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