ビジネスにおいて設備や環境は重要な要素であり、作業効率や生産性、顧客満足度や従業員の働きやすさなどに大きな影響を与えます。ファシリティマネジメントはこれらの要素の最適化によって高いコストパフォーマンスを目指し、企業の業績向上に導くために欠かせないものです。
この記事では、ファシリティとは何か、その重要性や使用例、ファシリティマネジメントの方法について解説します。
ファシリティとは
まずはファシリティの基本的な意味と、その中でもビジネスにおける意味についておさえておきましょう。
ファシリティの意味
ファシリティとは、英語で「施設」や「設備」などの意味を持つ単語です。
「施設」や「設備」などの意味を持つ英単語が由来
ファシリティという言葉は、ラテン語の「facilitas(容易さ、便利さ)」が語源であり、英語で「施設」や「設備」などの意味を持つ単語が由来です。
実体を持たない「便利なもの」などの意味も
また、ファシリティには実体を持たない「便利さ」や「便宜」、「器用さ」といった意味もあり、カードキーで開く施設システムもファシリティの一つと言えます。
ビジネスにおけるファシリティ
ファシリティは基本的に「施設」や「設備」といった意味ですが、ビジネスにおいての意味合いは「資産」「資源」に近いものです。
企業の業務に関わる資産
ビジネスにおけるファシリティとは、企業の業務に関わる資産を指します。具体的には土地建物・業務に必要な機器やシステムなどです。
第四の経営資源とも言われる
近年では、ファシリティは人的資源、物的資源、財務資源に続く「第四の経営資源」と言われています。コストパフォーマンスが高い経営を行うため、企業のファシリティを管理・運用する「ファシリティマネジメント」が必要とされています。
ファシリティの使用例
企業活動の基礎となるファシリティは、様々な場面で活用されています。ここでは、前述の「ファシリティマネジメント」を始めとするファシリティの使用例について解説します。
ファシリティマネジメント
施設を活用した経営活動を「ファシリティマネジメント」といい、事業を支える4分野の1つと言われています。
施設を活用する経営活動
ファシリティマネジメントは、施設を活用する経営活動という意味です。これには施設の設計・建設・保守改修・運用・管理・維持などが含まれます。
事業を支える4分野の1つ
ビジネスにおける「事業を支える4分野」として、「人的資源」「財務」「マーケティング」のほかに「ファシリティマネジメント」も挙げられます。
ファシリティマネジメントの適切な実行により、効率的なビジネス運営が可能です。
ファシリティマネジャー
経営戦略に基づき、ファシリティマネジメントを行うのがファシリティマネジャーです。
ファシリティマネジメントの担当者
ファシリティマネジャーは施設の維持管理や運用に関する業務を担当して、企業の業務に必要な最適な環境の提供に貢献します。
経営戦略に基づいた運用を行う
施設や設備、ITシステムなどの管理・運用を担当し、経営戦略に基づいた運用を行います。具体的な業務としては予算の作成や設備の保守・管理、施設の改修や新築計画などです。
ファシリティサービス
ファシリティサービスは、ビジネスのスムーズな運営に必要不可欠なものであり、ファシリティマネジメントの一環として位置づけられています。
設備の維持管理
ファシリティサービスとは、ファシリティマネジャーが担当するセキュリティ対策や清掃やエネルギー管理、照明の管理設備の維持管理といった実業務です。ファシリティの状況を適切に把握し、適切なタイミングでの保守・改修の実行で安全かつ効率的な業務運営を支援します。
ITシステムのサービスを提供
ファシリティサービスには施設面での管理のほかにも、サーバー管理やネットワークシステムの選定やレイアウトといったITシステム全般の保守・管理を行うITファシリティサービスがあります。
ファシリティマネジメントとは
ファシリティについて概要をおさえたところで、ファシリティマネジメントについてもう少し詳しく見ていきましょう。
ファシリティマネジメントの定義
公益社団法人 日本ファシリティマネジメント協会によると、ファシリティマネジメントの定義は「企業・団体等が組織活動のために、施設とその環境を総合的に企画、管理、活用する経営活動」です。
経営基盤の1つ
企業の方針に基づき経営にとって最大のコストパフォーマンスでの運用を目指す「ファシリティマネジメント」は、「人的資源」「財務」「マーケティング」と同様にビジネスにおける「事業を支える4分野」の要素であり経営基盤の1つです。
設備を有効活用して経営を行う方式
ファシリティマネジメントにおいてはファシリティ(土地・建物・構築物・設備等)すべてを適切に管理・運用し有効活用した経営を行うことを目的とします。
ファシリティマネジメントの目的
ファシリティマネジメントの主な目的は「固定資産の活用」「投資コストの削減」「将来的なニーズへの対応」「社会貢献」の4つです。
固定資産の活用
ファシリティマネジメントの目的の1つが、企業や施設が所有する固定資産の活用です。適切な設備のメンテナンスや改修により設備の寿命を延ばしたり、設備の効率的な使用やレイアウトの最適化などにより生産性を向上させたりといった取り組みによって、固定資産の価値を最大化し収益性を向上させられます。
投資コストの削減
施設や設備の適切な管理や維持により、修理や交換のためのコストを削減したり設備の寿命を延ばしたりできるため投資コストを削減できます。
将来的なニーズへの対応
また、将来的なニーズへの対応もファシリティマネジメントの目的の1つです。設備のアップグレードや改修によって、将来的な需要や規制に対応できます。
社会貢献
ファシリティマネジメントにより施設や設備の環境負荷を最小限に抑えられる、社会貢献の一環という側面も持っています。施設や設備の設計・運用において環境保護に配慮し、持続可能な社会の実現に寄与します。
ファシリティマネジメントの方法
ファシリティマネジメントの実行プロセスは大きく分けて「計画の立案」「プロジェクト管理」「管理に対する評価」「問題点の改善」の4段階です。
計画の立案
第一段階は計画の立案です。このプロセスでは、設備の現状を正確に把握し、経営戦略に合わせた設備の改善や活用方法を検討して中長期的な計画を策定します。
設備の現状を把握
計画の立案には、設備の現状を正確に把握することが欠かせません。そのため、設備の状態や使用状況を評価するための調査や診断を実施します。このプロセスでは、設備の老朽化や不具合箇所の把握、保守管理費用の評価などが重要です。
経営戦略に合わせる
ファシリティマネジメントでは、経営戦略に基づいた設備管理が求められます。具体的には事業目的や競合環境、将来のニーズを踏まえた設備の改善や導入といった活用方法を検討します。
プロジェクト管理
立案した計画に応じたオフィスの構築や移転、設備の改修や売却などのプロジェクト管理が必要です。このプロセスでは目的やスケジュール・予算・リスク管理などを考慮して、プロジェクトを計画し実行します。
オフィスの構築や移転
オフィスの構築や移転には、計画・設計・コスト管理・現場管理・品質管理などが必要です。特にオフィス移転は、スムーズな移行を実現するために設備や業務プロセスの変更可能性も含めた事前の計画と準備が欠かせません。
設備の改修や売却
また、設備の改修や売却など、必要に応じて修繕・更新や処分を行い最新かつ最適な状態を維持することが求められます。
管理に対する評価
ファシリティマネジメントにおいて、計画やプロジェクトの成果について評価を行うのは非常に重要です。評価の目的は課題の発見と今後の計画への活用です。
計画の達成度を評価する
ファシリティマネジメントの評価方法の一つに、計画の達成度を評価する方法があります。計画に掲げた目標を達成できたかどうかを評価して課題点を洗い出し、達成できなかった目標について再度計画を見直します。評価によって問題点を解決するための改善策を考え、次の計画に活かせます。
従業員の意識調査
従業員の意識調査を通じて従業員が抱えている問題点を発見し改善策を立てられるほか、従業員によるフィードバックは職場環境の改善にもつながります。
問題点を改善
評価が完了した後は、問題点の検証と改善のプロセスです。改善策には短期的な改善策から長期的な改善策までさまざまなものがあります。改善策の実施後には再度評価を行い、改善策が効果的かどうかの確認が必要です。
検証して次に活かす
検証で問題点が明らかになった場合、改善策の立案と実行が求められます。ここで重要なのは改善策が単なる対症療法でなく、原因を突き止めて根本的に解決し同様の問題が再発しないようにすることです。
PDCAサイクルを繰り返す
最終プロセスとして、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Act(改善)から構成されるPDCAサイクルを繰り返すことでファシリティマネジメントは改善を続けます。問題点や課題を特定し改善点を見つけ、改善を行うPDCAサイクルの繰り返しにより設備の維持・管理・改善が効率的に行われ、結果的に企業の経営効率を高められます。
まとめ
ビジネスにおけるファシリティとは、企業の物理的な環境や土地建物・設備などの固定資産を指し、企業の経営と利益向上を支える重要な要素の1つです。
適切なファシリティマネジメントによって生産性や効率性の向上・コスト削減・安全対策の強化などが期待できるほか、顧客や従業員の満足度の向上にもつながります。ファシリティマネジメントにおいてはPDCAサイクルを通じた絶え間ない改善の継続が重要です。また、従業員の意識調査の実施により現場の声を取り入れた施策を行うことができ、より効果的なファシリティマネジメントが実現できます。
社会人として、自分が働く会社のファシリティが適切に管理されているかどうかを意識することは重要です。また、ファシリティマネジメントに関わる立場になった場合には、適切なファシリティマネジメントの実践によるビジネスの効率化や改善への貢献が求められます。