クラウドソーシングとは?仕事内容やメリットとともに利用方法も解説

入社するとある程度の時間を取って新入社員研修をしてくれる会社は約4割と言われていますが、ワーケーションが多いようです。1カ月位期間をとって会社の理念や方針あるいは経営戦略などを学ぶことができると体系的にメモライズできますので、自分が置かれている立場や役割がある程度わかります。しかし、いきなり現場に入り、先輩から「君が担当する業務は会社にノウハウがあまりないのでクラウドソーシングを利用して業務委託することになった。頑張ってくれよ。」と言われたら「僕は何をすればいいんだろう?」などと戸惑うと思います。産業界は、学生時代の成績争いよりシビアな世界ですから他社より一歩でも先行するため経営努力をしています。クラウドソーシングを利用することもその一環です。ここではクラウドソーシングについて取り上げていますので「業務委託」などで悩んでおられたら是非参考にしてください。

クラウドソーシングとは

クラウドソーシングは英語の「crowd sourcing」をそのまま日本語のカタカナ読みにしたものです。crowdには「群衆」、sourcing には「調達」の意味がありますが、英和辞書ではそのまま「クラウドソーシング」と日本語化しています。意味として「目的達成のために、インターネットで様々な人の助けを借りること」という説明がついています。気になったので英語による語源を調べてみました。

その結果は次の通りです。

「2006年にWire誌の記者であるJeff Howe 氏がその記事の中で作った造語で『群衆』と『アウトソーシング』を組み合わせて【必要な知識・商品またはサービスを得るために大勢の人に頼る方法】」であることが分かりました。

また、クラウドソーシングが外部の力を借りて委託することがありますので、似ていると思われる「統合報告書」や「有価証券報告書」との違いを整理してみました。

「統合報告書」は投資家や世間にアピールすることを目的とした資料で、「企業理念」「価値を作り出すための考え方」「事業戦略」などを主体として作成されますが、自社がノウハウを持たなかったり、不十分な部分があります。グループ企業ですと補完し合えますが単独の企業の場合はできませんので他社と業務提携をして補完し合うケースが目立ちます。しかし、近年はクラウドソーシングに注目して、その運営組織が提供するサイト上で発注者として参加してフリーランスの優秀な人材を確保しようとするケースが増えているようです。運営組織側も企業の発注者が増えますので歓迎し、企業に参加を呼びかけてもいます。この場合は全て運営組織の管理の下で進めることになります。

また、有価証券報告書は金融商品取引法で上場企業等が事業年度ごとに提出が義務付けられている企業の運営状況報告書です。財務局長・上場証券取引所に提出後は公開されますので誰でも見ることができますが、投資家等が投資の判断材料として使っているのが大部分ですので、クラウドソーシングとは役割が異なります。  

それではここからクラウドソーシングとはどのようなものなのか説明します。

インターネット上で業務を発注

クラウドソーシングの利用者数はどの位いると思いますか?中小企業庁の2013年度の資料では、クラウドソーシングサイトの会員数が91万6千人となっています。もっと新しい年度の数値がないか調査したところ、クラウドソーシングを運営している(株)クラウドワークスの会の登録者数が2017年末に152万人という数値がありました。これは発注者も含めた数値ですので、受注者数は150万人程度と推計されています。コロナ感染症や働き方改革などでテレワークや副業を認める企業も増加していますので、現在は受注者の数がもっと多数に上ることは確実です。

それにしてもクラウドソーシングの運営組織は、考え方によっては150万人の社員を有しているわけですから、従業員数で日本トップのトヨタ自動車の約36万4500人をはるかに超えた大組織ということが言えそうです。 

クラウドソーシングで特徴的なことは次の2点です。

不特定多数のワーカーに発注できる

「不特定多数のワーカーに発注できる」ことがクラウドソーシングならではの特徴と言えます。できるだけ多くの人からの応募を期待する場合は、募集者の立場で運営組織にインターネットでコンタクトしてアカウントを取り、事務局の指示に従って募集内容や報酬などが決まれば、募集システムに載せてくれます。そのシステム内で応募者とやりとりして、適切と思われる方を選定し、やはりシステム内で契約を結ぶことになります。

ニーズに合ったワーカーに依頼できる

発注者はクラウドソーシングを通じて受注を希望される方があらかじめ自分のプロファイルを登録することになっていますので、そのプロファイルを確認して分からないことがあればシステム内のメール機能を使って応募者本人と会話ができますので、ニーズに合ったワーカーに依頼することができます。

クラウドソーシングサイトを仲介

上述しましたが、発注者と受注希望者は運営組織が用意するクラウドソーシングサイトを通じて契約交渉を進めることになります。システム外での交渉は原則として認められておりません。業務進行上で一部システム外で実施したい場合は、事務局の承認を得る必要があります。

簡単な仕事から専門的な仕事まで幅広い

受注希望者が150万人以上も登録しておりますので、仕事は「簡単な仕事から専門的な仕事まで幅広い」フィールドの仕事に対応してくれます。運営組織の1つであるクラウドワークスの例を見ても受注者募集の段階でジャンルは一応分けているようですが、発注者の要望に沿って仕事の内容を分かりやすく記載していますので、仕事探しで困ることはありません。「簡単な仕事から専門的な仕事まで幅広い」ですので、自分が希望する案件を見つけることができると思います。

副業で利用するワーカーも多い

クラウドワークスが2022年9月に実施したアンケート調査結果からの推計では、副業経験者と副業意向者を合算した“潜在副業人口”は4,089万人に達すると言います。内訳は副業経験者33.6%で、そのうち「現在副業をしている人が19.8%」「過去に副業経験がある人が13.8%」です。また、「副業未経験だが副業意向がある人は26.0%」でした。

2021年の総務省統計局による「労働力調査」では、日本の労働人口は6,860万人といいますので約6割の人が副業でクラウドソーシングの利用を考えていることになります。

クラウドソーシングの仕事内容

ここではクラウドソーシングにはどのような仕事の依頼があるのかその内容を見てみます。

簡単な作業

今まで受注の経験がなかったり、あってももう一段上の仕事を引き受けるのを躊躇している人には「データ入力」や「アンケート・口コミ投稿」がお勧めです。

データ入力

ほとんど単純作業になりますが、発注者から依頼された入力原稿を間違わないようにワードやエクセルなど指定された媒体に入力する作業です。スマホで処理できる案件も多数あ

ります。

アンケート・口コミ投稿

例えば,在宅ワークに関するアンケートに協力したり、試供品を試して感想を口コミ投稿するなどがあげられます。口コミ投稿では特に飲食店関係で参考にする人が多く、行くかどうか決める時に半数以上の人が参考にしているそうです。

専門的な作業

専門的な作業では「プログラミング」「Webデザイン」「ライティング」が求人関係の主流になっています。

プログラミング

プログラミング関係ではほとんどの言語で募集が行われています。例えば、クラウドワークスでの募集数が多い言語の7位までの順位は「C#・C++・PHP・Go・JavaScript・Python・Ruby」となっています。しかし、人気が高い言語は競争が激しくなりますので、単価が逆に安くなるようです。

Webデザイン

クラウドワークスの場合はWebデザイン関係はホームページの制作が圧倒的に多くなっています。その他にもLPページ制作など様々な募集が行われており、件数は常時1万件を超えています。

ライティング

ライティングの種類はYoutubeやTikTok、アニメ、MVにも及び250種類以上ありますので発注者と受注者のマッチングに苦労すると思われますが、募集の文章作成が分かりやすく書かれています。ブログ記事や広告記事の作成案件がダントツです。初心者案件も用意されていますので、受注希望される方はチャレンジしてみてください。

クラウドソーシングのメリット

クラウドソーシングのメリットは発注者としての企業側のメリットと受注者としてのワーカーのメリットもありますので分けて述べます。

企業側のメリット

企業側のメリットとしては「人材の確保」「コスト削減」「組織のスリム化」「従業員のモチベーション向上」「事業のスタートに有利」などのメリットがあります。

人材の確保

クラウドソーシングには高度な専門的知識をもったフリーランスの技術者が多数いますので応募してくれれば優秀な人材を確保することができます。

コスト削減

自社の弱い部分を委託することにより、自社職員に時間をかけて育成するよりはるかに低コストで済みコスト削減になります。

組織のスリム化

委託した職務の人員は張り付ける必要がなくなるので組織のスリム化ができます。

従業員のモチベーション向上

外部の優秀な人材との交流で刺激を受け従業員のモチベーションが向上します。

事業のスタートに有利

事業をスタートするに当たって足りないところを補完することができますので

有利な状況で事業のスタートをすることができます。

受注者側のメリット

受注者側のメリットとしては「勤務時間に縛られない」「フリーランスでも活動できる」などのメリットがあります。 

勤務時間に縛られない

時間による報酬制でないかぎり、納品期限は設定されますが勤務時間の拘束はありませんので勤務時間は自分で自由に決めることができます。

フリーランスでも活動できる

時間的な制約を設けるにしても条件交渉を行い合意の上で契約締結しますので、フリーランスでも活動できます。

クラウドソーシングのデメリット

クラウドソーシングのデメリットも発注者の企業側と受注者のワーカー側の双方に発生することが予測できます。

企業側のデメリット

企業側のデメリットとしては、「企業秘密の漏洩リスク」「人材育成の遅れ」「業種によっては活用しにくい」などがあります。

企業秘密の漏洩リスク

企業運営活動の一部を委託するにしても、企業運営は一連の流れの中で関わり合いをもちながら活動していますので、受託者に企業秘密を話さざるを得ない場面も想定されます。

委託する場合は必ずNDA契約(秘密保持契約)を締結するようにします。

人材育成の遅れ

委託した部分の業務については、自社職員は進行状況のチェック程度に留まると思いますので、この部分での人材育成は遅れてしまいます。

業種によっては活用しにくい

商品やサービスの開発業務などは長期にわたるため進捗管理が難しい業務になり活用しにくいと思われます。

受注者側のデメリット

受注者側のデメリットとしては、「収入が安定しない」「評価を受けにくい」ことなどがあげられます。

収入が安定しない

原則として案件ごとに報酬額が決められ、インターネット上での交渉などを通じて合意し

た上で契約を締結することになりますので「収入が安定しない」と言えます。フリーランスの方が多いので、1社~2社の案件を専属で請け負っている例もあります。

評価を受けにくい

クラウドワークスの例を取りますと「評価システムがありますが、発注者とのコミュニケーションが十分取れなかったためか低評価になり、不満の投稿をしている例などが見受けられます。」

クラウドソーシングを利用する手順

発注者がクラウドソーシングを実際に利用するにはどのような手順を踏めばよいか説明します。

登録と公募

案件について公募を希望する時は、最初にクラウドソーシングの運営組織のサイトを訪問して登録することが必要です。

クラウドソーシングサイトに登録

サイトが見つかれば登録するメルアドを使って発注者登録をします。クラウドワークスの場合はトップページになります。登録申し込みが完了すると登録したメルアド宛にクラウドワークスから「新規会員登録を完了してください」というメールとURLが送られてきますのでそのURLをクリックするとユーザー情報を登録する画面が現れますので入力します。必要項目全てを入力し誤りがないか点検してから「会員登録を実行する」をクリックして完了です。

依頼したい業務を公募

依頼したい業務を公募する場合は業務内容を公開して応募者を待ちます。

応募者の中から依頼したい人を選定

期限までに応募された人の中から依頼したい人を選定して、運営組織内のインターネット

を使い条件交渉をします。

業務の委託と検収

業務の委託先が決定した後のプロセスは次のようになります。

応募者と契約

クラウドワークスの仲介により委託することを決定した応募者と契約を締結します。

クラウドソーシングサイトに代金を預託

報酬額の支払いを担保するためクラウドソーシングサイトに代金を預託します。

納品物の検収

成果物が納品されたら発注者が検収します。

クラウドソーシングサイトから受注者に代金支払い

修正等の問題がなければ預託したクラウドソーシングサイトから受注者に代金が支払われて契約が完了します。


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