インセンティブの意味と目的
インセンティブという言葉を知っていますか?ビジネスシーンではよく耳にする言葉ですね。
その意味は「報奨」「奨励」や「刺激」です。周りから与える刺激のことであり、狙いは従業員や組織のやる気を引き出すことになります。
語源は「励ます」という意味のラテン語
インセンティブのスペルは「incentive」。これは「励ます」の意味を持つラテン語「incentivus」が語源になります。
働く動機や意欲につながるもの
また、行動を起こす目的としての「動機」や「誘因」の意味もあります。基本的に「動機づけ」が良く使われます。
仕事の結果に応じた報酬
日本において、インセンティブは、報奨金やボーナスといった成果報酬を表すのが一般的で、仕事の目標やノルマを達成した際に与えられるものとして取り扱われています。
ビジネスにおけるインセンティブ
ビジネスにおけるインセンティブは、従業員にやる気を起こさせる刺激、動機づけとして使われています。
金銭的インセンティブ
金銭的インセンティブは、報奨金や特別なボーナスの支給、昇給等を通して従業員にやる気を起こさせる取り組みを指します。
金銭以外のインセンティブ
金銭以外のインセンティブは、社内での表彰や昇格、昇進など心理的な面で従業員にやる気を起こさせる取り組みが挙げられます。
インセンティブとよく似た用語との違い
インセンティブの意味と良く似た用語にモチベーションがあります。
インセンティブとモチベーションの違い
どちらも意味は同じ「動機づけ」ですが、「どこから発生しているか」が異なる点です。
モチベーションは内発的動機づけ
自分発で行動を起こす、内発的な動機づけがモチベーションになります。これに対して
インセンティブは外発的動機づけ
であり、自分発でなく外部からの刺激で行動を起こすのがインセンティブです。
インセンティブと歩合の違い
どちらも同じく報酬ですが、インセンティブは「目標を達成すれば支給されるもの」です。それに対して歩合は「実績から一律の割合で支給されるもの」という点が異なります。
歩合は一律の割合で支給される
例えば歩合では、「契約を1件取れば1件あたり○万円を支給する。」といったものになります。
インセンティブは目標達成によって支給される
それに対してインセンティブでは、「目標を達成すれば報奨金として○万円を支給する。」といったものになります。
インセンティブの種類
インセンティブの種類は、大きく分けて『金銭的インセンティブ』と『金銭以外のインセンティブ』に分けることができます。
金銭的インセンティブ
金銭的インセンティブは、物質的インセンティブとも呼ばれ、ビジネスにおいて広く一般的に使用されています。
給与やボーナスとして支給
金銭的インセンティブとして給与やボーナスを支給する場合は、一時的に支給する「インセンティブ手当」や「報奨金」、「特別ボーナス」といった名称の手当やボーナスとして支給することが多いようです。
現金以外では株券や商品券などもある
金銭的インセンティブは、現金以外の「ギフト券」や「商品券」、「旅行券」、「株券」などで支給することもあるようです。
金銭以外のインセンティブ
金銭以外のインセンティブには、種類がたくさんありますが、代表的なものとして評価的インセンティブが挙げられます。
評価や表彰などのインセンティブ
評価的インセンティブは、人事考課での評価、全社員の集まった場で表彰などを制度として実施します。
昇進や抜擢などのインセンティブ
また、評価的インセンティブには地位的評価として、昇進や昇格、抜擢などを実施することも挙げられます。
インセンティブのメリットとデメリット
それではインセンティブ制度のメリット・デメリットを見てみましょう。
インセンティブのメリット
インセンティブ制度を導入するメリットとして、従業員の「目標を達成すること」に対するモチベーションアップを図ることができる点が挙げられます。
達成目標が明確になる
インセンティブ制度を設ける場合、事業に対して「達成すべき目標」を定め、その目標に対しての達成基準とインセンティブの内容を設定します。そして、インセンティブ制度の運用する段階までに、各部署の数値管理を細分化し、客観性の確保や厳密な管理を行うことになるので、事業経営にとってもプラスの要素となります。
従業員の意欲向上につながる
目標達成に対するモチベーションアップは、裏を返すと「仕事ができてもできなくても同じ給与」という不満を防止することにも寄与します。「成果を上げた従業員には報酬が与えられる」というシンプルでわかりやすい、やる気の出る制度は、従業員の意欲向上につながります。
インセンティブのデメリット
インセンティブ制度を導入するデメリットは、目標の達成状況により月々の給与に差が出てしまい、従業員の生活への影響や精神的な負担が発生してしまうことです。
従業員のストレスになる場合がある
インセンティブを受けるためには、目標を達成しなくてはいけません。成果を上げ、目標を達成している従業員にとっては嬉しい制度である反面、目標を達成できない従業員にとっては、ストレスを感じてしまうケースがあるようです。
チームワークを乱す可能性がある
例えば、個人で目標を達成することでインセンティブを受けられる場合、自分の成果を出すために同僚の顧客を奪うような従業員がでてしまうかもしれません。また、チームごとに取扱商品が違うためインセンティブの内容が違う場合には、達成状況によっては不満が生まれ、チームワークが乱れてしまう原因にもなり得ます。
インセンティブを取り入れた制度
基本給とは別の報酬を支給
インセンティブ制度を取り入れた場合、目標を達成したタイミングにだけ報奨金等を支給することになります。
それでは、具体的にどのような基準で金銭的インセンティブを支給しているケースがあるのか、例を見ていきましょう。
目標達成に応じてボーナス支給
インセンティブの基準として、「ノルマ達成」や「目標達成」に応じて、ボーナスを支給するケースが多いようです。
また、「目標の達成」、「目標の大幅な達成」など、ノルマや目標の達成状況に応じて金額に差をつけて運用しているケースもあります。
業績に応じてボーナス支給
インセンティブの基準として、「会社の業績」に応じて、ボーナスを支給するケースもあります。
会社の業績に対してのインセンティブだけ設定する場合には、個人が目標を達成すれば支給する場合と違って、会社や部門の業績に寄与する行動・成果を求めることになり、動機づけが弱くなる傾向があります。
マーケティングにおけるインセンティブ
企業のマーケティング活動においてもインセンティブが使われています。
ここでは「インセンティブ・プロモーション」と「売り手と買い手それぞれのインセンティブ」について説明します。
インセンティブ・プロモーション
インセンティブ・プロモーションとは、従業員や販売員、流通業者へ報奨を与えることや、消費者へ景品をつけることで販売を促進する方法を指します。
売り手と買い手それぞれのインセンティブ
インセンティブ制度を売り手側と買い手側に分けて考えると、売り手側のインセンティブは「セールスインセンティブ」や「トレードインセンティブ」、買い手側のインセンティブは「消費者インセンティブ」と呼ばれています。
セールスインセンティブは、販売、営業の担当者を対象に、目標の売上を超えた場合に報奨金を支給することで販売を促進する方法です。
トレードインセンティブは、流通業者や小売業者を対象に、一定の取引量や金額に応じて割引等を行うことで販売を促進する方法です。
消費者インセンティブは、消費者を対象に、商品の割引セールや購入金額に応じた懸賞応募権などを行うことで販売を促進する方法です。
インセンティブ導入のポイント
インセンティブを企業に導入するポイントを解説します。
企業を活性化することが大前提
インセンティブ制度を導入する狙いは「企業の活性化」です。そのためには、適切かつ公平な目標の設定と、目標を達成することに対して魅力を感じる報奨を設定することが重要になります。
公平な目標の設定
同じ報奨に対して、特定の部署には達成しやすい目標になっているなど、他の部署との達成の難易度に違いがあると狙ったインセンティブが発揮されないだけでなく、逆効果の恐れもあるため注意しましょう。
無理のない目標の設定
目標は達成が容易すぎず、かつ困難すぎないものを設定しましょう。適切な目標設定は、仕事に対するモチベーションアップにつながりますが、「達成することは無理だ」と判断されるとインセンティブを導入する効果が得られません。
リスクの把握と対策
インセンティブを導入する際は、メリットだけを想定せず、デメリット(リスク)も考慮しましょう。
想定されるリスクを事前に把握
インセンティブを導入したことによるリスクとして以下のような点が挙げられます。
- 目標を達成した一部従業員のみが恩恵を受けるという不満
- 個人、チーム間の連帯意識が欠ける
- インセンティブを考慮した結果、給与が低下する
把握したリスクに対しての防止柵
結果を強く求めることは、企業を成長させるのに不可欠なことです。ただし結果を求めすぎて、従業員が離れるのは避けるべきでしょう。
先程挙げたリスクに対する防止策として以下のようなことが挙げられます。
- 適切な目標を設定する。
- 業務内容を考慮して達成の評価基準を設定する。
- 評価基準は、定量・定性の基準を設定する。
- 個人だけでなく、チーム、部署に対するインセンティブを設定する。
- 社会情勢を考慮した給与とインセンティブの報奨を設定する。
定期的な検証
インセンティブを導入した場合、中長期に渡って検証を行い、改善を進める必要があります。
導入する際には、どれくらいの頻度で、どのような効果があったのか、確認し、改善活動に繋げてゆきましょう。