トレーサビリティとは?意味やメリット、取得方法と関連用語も解説

商品の信頼性を上げる方法のひとつとしてトレーサビリティがあります。

商品を生産して販売したら終わりとするのではなく消費者の手元に届くまでを明らかにすることで、信頼性のほかに商品の品質向上や顧客満足度につなげるためのアプローチです。

本記事ではトレーサビリティの意味や関連用語、メリットや取得方法について一通り解説していきます。

トレーサビリティとは

それではトレーサビリティの基本的な意味と必要性について見ていきましょう。

トレーサビリティの意味

一度は聞いたことはある「トレーサビリティ」ですが、基本的にどういった意味なのでしょうか。

trace(追跡)とability(可能性)からなる造語

トレーサビリティとは「trace(追跡)+ability(可能性)」、つまり「追跡可能性」という意味の言葉になります。

追跡可能であることや、そのシステム

どういうことかというと、生産過程から消費者の手元に届くまで商品が追跡可能であるということと、追跡を可能にするためのシステム全体を指す言葉です。

トレーサビリティの必要性

トレーサビリティは消費者の安心を得るだけでなく、トラブルが起きた際にその効力を発揮します。

不具合やトラブル対策

商品の販売を続けていけば、商品の不具合やトラブルが発生するのは避けられません。

トレーサビリティの導入は不具合やトラブルを速やかに解決する助けになります。

迅速な原因究明

流通の過程が普段から明らかになっていれば、不具合やトラブルの原因を迅速に究明できます。

問題に対して速やかに解決を行えれば、消費者の信頼を大きく下げるのを避けられます。

トレーサビリティの考え方と活用

トレーサビリティにも考え方と活用法がいくつかあります。

目的に合わせた方法を活用できるように違いを理解しておきましょう。

トレーサビリティの種類

次にトレーサビリティの4つの種類について説明していきます。

追跡する方向あるいは追跡する過程が外部か内部かによって分けられます。

トレースフォワード

商品の不具合が判明し既に出荷してしまった対象商品を回収したい場合などに、問題のある製品がどういったルートでどこに出回ったか、流通の過程に沿って(=フォワード)追跡するのがトレースフォワードです。

トレースバック

トレースフォワードとは逆に、出荷した製品に不具合が発生した場合に、どの工程で不具合が起こったか、どのロットで発生したかを「消費者→生産者」の方向でさかのぼって(=バック)追跡するのがトレースバックです。

チェーントレーサビリティ

商品流通の過程において、原材料→生産→加工→流通→販売といった流れを追跡できるようにしたのがチェーントレーサビリティです。

「トレーサビリティ」と言う場合、一般的にはチェーントレーサビリティのことを指します。

内部トレーサビリティ

企業内や工場などで、部品の仕入れ→組み立て→検品→出荷(納品)といった過程の追跡を行うのが内部トレーサビリティです。

トレーサビリティとブロックチェーン

トレーサビリティのシステムを支えるブロックチェーンという仕組みがあります。

情報の共有をスムーズにすると共に、過程に関わる人間が一目で商品の追跡ができる点が主なメリットです。

商品に関する情報を記録

ブロックチェーンを用いる場合、今まで作業に関わる人間が個々に紙に記録していた作業履歴や商品に関する情報をネットワーク上に記録します。

ネットワーク上で共有

ネットワーク上に記録された商品データは関係者に共有されます。

トラブルが発生した場合にもデータをたどり速やかに原因を特定できるほか、データの安全性も守られます。

トレーサビリティのメリット

概要がわかったところで、トレーサビリティのメリットについて見ていきましょう。

メリットには「リスク管理」「品質向上」「顧客満足度の向上」「信頼性の獲得」などがあります。

商品のリスク管理

メリットとしてまず挙げられるのが商品のリスク管理の強化です。

問題発生時の原因特定

商品に問題が発生した時、トレーサビリティが確立していれば速やかに原因を特定でき、損害の拡大を抑えられます。

手間やコストを削減

問題の原因を迅速に特定できれば、原因特定にあたる人的労力とコストが削減できます。

商品の品質向上

二つ目のメリットが、製造過程での責任の明確化、問題への対策の容易さによる商品の品質向上です。

製造過程での責任を明確化

トレーサビリティによって製造作業の過程が全体に可視化される最大の効果は、製造にかかわる個々の責任の明確化です。

また、現場管理もしやすくなり商品の全体的な品質向上につながります。

問題発生時にも対策しやすい

問題が発生した場合に原因を速やかに特定できれば、対策も立てやすくなります。

問題の発生から対策までが容易になることで問題の先送りが防げ、品質を改善しやすい環境作りにつながるでしょう。

顧客満足度の向上

三つ目のメリットが顧客満足度の向上です。

人は未知のものに対して不安を感じやすいため、商品の製造過程についての情報を開示するだけでも消費者の安心感につながります。

生産者の情報が伝わる

スーパーの野菜などで、生産者の顔写真があるだけで安心して購入したことがないでしょうか。

特に食品において、生産者の情報が伝わると安心感から購入行動につながりやすくなります。

商品に対する安心感

生産者の情報が明示されていれば、消費者は「生産者情報を開示しているのであれば問題のある商品を生産してはいないだろう」「生産者が商品に自信を持っているのだろう」といった安心感を持ちます。

顧客からの信頼獲得

最後に挙げるメリットが、顧客からの信頼を獲得できる点です。

商品の製造から消費者に届く過程を把握するということは、商品製造や企業の姿勢を顧客に対してアピールしやすくなります。

きめ細かな製造過程をアピール

特に高価格帯の商品において、原材料の選定や工場での生産過程をきめ細かく発信することで「品質にこだわっている」という印象を消費者に与えられるという効果があります。

透明性のある経営

商品の製造過程についての情報を提供することで、消費者は「この企業は公表しても問題ない過程で商品を製造している」という、商品ひいては企業に対する信頼感を持ちます。

トレーサビリティの取得方法

ここまでは主に製品トレーサビリティについて解説してきましたが、次に、主に製造業界で使用される計量トレーサビリティとその取得方法について解説していきます。

計測器の基準を定めて世界中でやり取りする部品の品質を一定ラインに保ち、製造する製品の品質を安定させるために必要なのが計量トレーサビリティです。

計測器を所有している場合

まずトレーサビリティを取得するための計測器を所有している場合の方法について考えていきましょう。

自力で校正を行うことは難しい

計測器を所有していても、使用者が自分で公正を行うのは難しいと言えます。

その場合、計測器の校正を実績のある専門の校正業者に依頼する必要が出てきます。

実績のある校正業者に依頼

校正業者に依頼する場合、問題になるのが「校正を依頼している間の測定はどうするか」です。

実績のある校正業者を選定するのはもちろんですが、校正の納期がどのくらいかかるかのほかに、代替機を手配してもらえるかも確認しておいた方がよいでしょう。

計測器を所有していない場合

計測器を所有していない場合は、計測器の購入あるいはレンタルが必要です。

計測器を購入して校正業者に校正を依頼するか、校正済みの計測器をレンタルするかは計測器の使用期間に応じて決定します。

計測器をレンタルする

校正済みの計測器をレンタルすれば、校正業者に依頼する手間とコストを抑えつつトレーサビリティも取得できます。

使用期間が短い場合はレンタルの方が良いでしょう。

計測器を購入する

短期間の使用である場合、計測器を購入するとコストがかかってしまいます。

使用期間が長い場合に計測器の購入を検討するのが良いでしょう。

トレーサビリティの関連用語

最後に関連する用語を押さえつつ、トレーサビリティに関する理解を更に深めていきましょう。

校正証明書

校正証明書は、校正業者が校正を行った計測器であることを証明する書類です。

校正の結果を記録

校正証明書は、計測器の校正結果、つまり構成を依頼した計測器の値と基準となる値との関係が記録された書類であり校正が完了した際に計測器の返却と共に添付されます。

トレーサビリティの証明

校正証明書によって、校正が確かに行われたというトレーサビリティの証明にもなります。

トレーサビリティ体系図

対象の計測器の基準から国家標準の基準まで追跡したものがトレーサビリティ体系図です。

機器の経路を表示

トレーサビリティ体系図とは、機器同士の比較の繰り返しにより測定対象の計測器から国際的な基準まで追跡できることを示したものです。

基準を明確にする

トレーサビリティ体系図では、測定対象の機器から国際標準の機器までの全ての経路にある基準や機器が明確にされ経路の追跡ができます。

試験成績書

校正証明書、トレーサビリティ体系図と合わせて発行されるのが試験成績書です。

検査成績書とも呼ぶ

試験成績書は検査成績書とも呼ばれ、校正証明書と一体化して発行される場合もあります。

検査結果と合否判定を表示

検査成績書には校正を行った対象機器の検査条件や検査結果、合否判定などが記載されます。

まとめ

主に食品流通業界において行われていたトレーサビリティですが、近年は製造業をはじめとする分野に広がっています。

トレーサビリティには品質向上、トラブル時のリスク低減、顧客満足度の向上といったメリットがある反面、システム構築にコストがかかる、また導入コストがかかる割に短期的な目に見える利益につながらないため導入の同意を得るのが大変というデメリットもあります。

しかし消費者の意識の高まりや、IT化によりスピードを求める傾向から今後トレーサビリティの重要性はますます高まるのではないでしょうか


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