シックスシグマとは?意味と基本ステップ、メリットも解説

シックスシグマ(Six sigma)という手法をご存じでしょうか。

現代社会で用いられるようになった用語で、企業改革、特に顧客満足度に深く関わっているものです。

本記事では、その詳細な意味や具体的な方法などを紹介します。

シックスシグマとは

シックスシグマは、端的に言えば経営管理の方法の1つです。

製造業、サービス業などで採用されているケースがあり、有名どころだとソニーが導入しています。

シックスシグマの語源

「シックスシグマ」という名前だけではいまひとつ何を意味しているか不明ですが、実はれっきとした由来をもっています。

統計学の標準偏差が由来

元々、製造業で用いられることを目的として用いられてきた用語です。

「シグマ」はギリシャ文字σですが、これは統計学においての標準偏差(一集団内の無数の値が、全体的に平均値からどれだけ離れているかを示す指標)を表します。

シグマレベル6が6σ(シックスシグマ)

ここでいう「σ」は「Kg」や「mm」といった単位と同じような扱いです。

シックスシグマというのは6σ、この範囲に収まらないのは10億分の2という非常に小さな数です。

つまり「シックスシグマに収まらないのは極めて低い確率である」ということになります。

フレームワークとしてのシックスシグマ

シックスシグマは一企業によって生み出されたシステムです。

経営管理の洗練化という目的から、業務の基礎、骨子となるように作られています。

1980年代にモトローラが開発

元をたどると、IC関連の製造を営む米モトローラ社のエンジニア、ビル・スミスが1980年代に開発した経緯を持ちます。

GEが品質管理のために導入

モトローラ社が編み出したこの手法は、後に大手電機メーカーのGE(ゼネラル・エレクトロニック)社が導入し、品質管理の向上、発展が行われました。

シックスシグマの意味

シックスシグマの基本的な由来を解説しましたが、ではより具体的にはどういった意味で用いられているのでしょうか。

それには、製造会社で作られたということが関係しています。

100万回に3、4回のエラー

製造業には、常に安定し品質がぶれない製法が求められます。とはいえ、大抵の製品ではエラー(不良品)がどうしても発生します。

この確率を「100万分の3か4」にまで減らす目標のスローガンとしてシックスシグマは用いられてきました。

品質改革のためのシステム

ここからも分かるように、シックスシグマは基本的に製造工程における品質管理の安定化、並びにその改革を主目的とします。

シックスシグマの基本ステップ

シックスシグマはいくつかのステップに分かれます。

独自に派生したものもありますが、基本的にはDMAIC手法、「Define(定義)→Measure(測定)→Analyze(分析)、Improve(改善)、Control(管理)」というステップに基づいた方法です。

ここからは、シックスシグマを目指すための具体的な方法について解説しましょう。

定義

最初に行うのが最初のDefine、つまりシックスシグマを適用する対象となる課題の定義です。

顧客の声が起点

課題を定義するにあたって、VOC(Voice of Customer、顧客の声)に挙げられた意見、CTQ(Critical to quality、VOC発生の要因)を参考にします。

数値目標の設定

VOCを基に改善すべき課題を決定し、具体的な数値目標を設定します。

測定

次段階のMeasureは現状の良し悪しを知ることが目的です。抽象的なものよりも、数字による具体的な設定が重要です。

まずは現時点がどのような状態であるかを知るため、ヒストグラムなどを利用した数値測定を行います。

データの取得

課題に関連するプロセスのデータを複数収集します。

取得したデータを基に業務プロセスを可視化し、問題点を洗い出すためです。

プロセスマップの作成

既存の業務工程をチャート化したプロセスマップの作成は重要事項です。

主観や思い込みと実態に乖離があり非合理的な箇所が見つかるケースも考えられます。

分析

そしてAnalyzeでは、先ほどで集めたデータやプロセスマップのより深い分析をしていき、原因を突き止めます。

問題の原因究明

前段階で浮き上がった問題点について、なぜこうなったか?という原因の究明を分析によって解き明かしていきます。

各種ツールの使用

分析には多彩なツールが用いられます。考えられる種類としては次のようなものがあります。

・特性要因図(現在の結果である特性が、結果をもたらすのに影響を与えた要素である要因によりどう誘発されたかを図式化するツール)

・PFD (Process Flow Diagram、作業者個々人の業務の取り組み方を簡易図に書いて

比較、問題点の共通理解をしやすくなる手法)

改善

細部までの分析並びに主要な原因を知った上で次段階のimproveに移行することで、ようやく明確な改善案を出していくことが可能です。

費用対効果の計算

上記までのデータ測定、分析で得た結果から、いくらかの案を策定していきます。

プロセス自体を変更するとなれば相応の費用が掛かる可能性もあり、改善案を採用した場合の費用対効果についても考慮せねばなりません。

新プロセスの試験

羅列した改善策のなかから、効果的であると判断した改善案を試験的に実施し、新規のプロセスマップに基づいた業務は指標の改善に有効であったかを評価します。

管理

試験による検証で有効な良い結果が生まれた場合、それを定着させることが最後のcontrolでの目的となります。最終的には、代替された新プロセスを常態化させていきます。

新プロセスの導入

効果的であったプロセスを正式に導入、それに従い管理体制等の変更も行います。

変更により別の問題点が起きないか、課題は解決できたかの確認が必要です。

測定の継続

新プロセスの導入後も、新たな課題の表出や顧客の評価が変わることもあります。

対応する更なる改善案を練るためにも、特に実施間もない時期は引き続きの測定が必要です。繰り返していくことで、より高位のプロセスへ発展できるかもしれません。

シックスシグマのメリット

シックスシグマは数多くの企業で採用されていることからも分かるとおり、製造業に限らずメリットは非常に大きなものとなります。

活用できる業種が多い

シックスシグマの「既存プロセスの可視化とそれに対する改善」というのは業界問わず応用が利く手法です。

製造業の品質管理だけでなく、顧客満足度の改善プロセスにも適用できます。

製造業の品質管理が基本

とはいえ、やはりシックスシグマを使用する中心は製造業でしょう。

元々品質管理を目的とした定義という点もそうですが、プロセスマップや各種データによる分析は直接的な効果をもたらします。

総合的な顧客満足の実現に有効

課題を設定する段階で顧客の意見を取り入れているため、シックスシグマによる業務プロセスの改善は結果的に顧客満足度の向上につながります。

客観的な評価を獲得できる

次に挙げられるのが、客観的な評価をできるというメリットです。

客観的なデータは業務改善に懐疑的な相手に対する新プロセス導入の根拠となります。

中立的な判断

複数の具体的な数値データを基にした分析であるため、偏見や主観によらない中立的な判断が期待できます。

論理的な判断

同時に、必要ではないが慣例的といった工程の除去にも貢献できます。

問題点やプロセスの可視化によって、現行の業務について論理的に評価、判断できるためです。

人材育成につながる

さらに、シックスシグマの実行によって、業務に携わる人々にも良い影響があることが考えられます。

リーダーシップの形成

重要なのが、「課題を提起し、達成に向けて動いた」という経験です。

この経験によって仕事に対する積極性を養い、将来的に部下の育成、また今後のプロジェクト実行の際にリーダーシップとして発揮できる可能性が高いです。

業務意識の向上

業務意識の向上も期待できます。日々取り組んでいる自身の業務がより改善できた、という経験は上昇志向を生み、更に無駄を省くようにと意識を変えられるかもしれません。

シックスシグマの関連用語

ここではシックスシグマに関連する用語をいくつか解説していきます。

VOC

VOCとはVoice of Customer、つまり顧客の声を指します。

集めたVOCを基に課題と後述するCTQを探っていきます。

顧客の声

アンケートやレビューなどによって、当事者側からでは分からない意見を収集分析して課題の提起に活用します。

課題を定義するための基準

VOCは現状の課題を定義するための基準となるものです。

そのため偏りがなく一定量のVOCを集めることが必要です。

改善だけでなく、新たなニーズに気付くこともあるでしょう。

CTQ

CTQはCritical to qualityのことで、つまり品質の評価に影響する大きな要因という意味です。

VOCを置き換え

収集したVOCから改善すべき課題を決定し、その課題の改善が客観的に分かる具体的な数値目標に落とし込みます。

最終的な課題

VOCの背後にある顧客の要求から、最終的には「定量的(数値的に)見て顧客の要求を達成できていない要素」を課題とします。

ブラック・ベルト

ブラック・ベルトとはシックスシグマのプロジェクトに置けるリーダー的ポジションを指します。

シックスシグマの活動の中心人物

メンバーへの指示や総合的な意思決定、最終責任を担う存在であり、文字通りシックスシグマの活動の中心人物です。

専門的な技能を持つ人物を認定

シックスシグマプロジェクトの中心となって行うブラック・ベルトには、由来である黒帯からも分かるとおり専門的な技能が求められます。

DMAIC手法などを学び、専門機関で資格を取得した人が認定されます。

まとめ

本記事ではシックスシグマについて解説しました。

シックスシグマは生産性や品質向上といった直接的要素だけでなく、人材や外部評価といった間接的な要素にまで効果があるものであり、規模に関わらず取り入れることができる手法です。

また、発展したもので無駄を省くことに重点が置かれたリーンシックスシグマという手法もあります。

シックスシグマを業務の改善に役立ててみるのはどうでしょうか。


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