コングロマリットとは?意味や効果、注意点も解説

「現在の主力事業である市場が今後縮小する傾向なため別の業種に参入したい」、あるいは「業績が順調なので更に異業種にも手を広げたい」というとき、自社にそのノウハウがない場合に検討されるのが企業のコングロマリット化です。

この記事ではコングロマリットについての基礎知識と効果的なコングロマリットのために必要なポイントや注意点について解説します。

コングロマリットとは

ここではまずコングロマリットの基本的な意味とビジネスにおいてどう使用されているかについて理解しておきましょう。

コングロマリットの意味

コングロマリットは大まかに言うと「集まって固まる」といった感じのイメージの単語で、ビジネス以外では地質学でも使用されています。

「巻きつける」という意味のラテン語が語源

コングロマリットは「巻きつける」という意味のラテン語が語源で、そこから英語での「Conglomerate」の「丸く固まった」「集団になった」といった意味を持っています。

集合体や集塊を表す

コングロマリットは集塊あるいは集合体を表し、地質学では「礫(れき)岩=固められてできた岩石」という意味で使用されています。

ビジネスでのコングロマリット

コングロマリットの「集まって固まる」というイメージが、ビジネスではどのような意味で使われているのでしょうか。

異業種で構成される複合企業

ビジネスでは「コングロマリット=異業種で構成される複合企業」という意味で使用されます。

狭義には同業種の企業体も含む

コングロマリットの構成は元々異業種であることが前提なのですが、同業種で構成されている場合にも呼ばれることがあります。

コングロマリットの効果

コングロマリットの効果はプラス面、マイナス面両方あります。

それぞれについてみていきましょう。

コングロマリット・プレミアム

コングロマリットによって企業の価値が上がる効果のことで、主な効果は競争力の強化やグループ内での顧客の囲い込みなどです。

プラスのシナジー効果

異業種がコングロマリット化することにより、グループ全体の利益の向上や企業イメージ向上による優秀な人材の確保を始めとする良い影響を相互に与える効果があります。

株価などが上昇

また、コングロマリットによる企業のリスクオフやプラスのシナジー効果が出ることに期待して企業価値の評価が上がり株価が上昇する場合もあります。

コングロマリット・ディスカウント

コングロマリット・プレミアムとは逆に、コングロマリットによって企業の価値が下がってしまう効果を意味するのが「コングロマリット・ディスカウント」です。

マイナスのシナジー効果

シナジー効果はプラスに働くとは限りません。

経営資源の分散や経営の複雑化による連携不足などで事業間の相乗効果が上手く発揮されないと規模の大きさが逆効果となり経営の統制が取れなくなります。

株価などが低下

マイナスのシナジー効果が起きた結果、経営状態が悪化したと判断され企業価値の評価が下がると株価が下落してしまい上がりにくくなってしまいます。

コングロマリットのメリット

主なメリットは「異業種間の良いシナジー効果の発生」と「経営リスクの分散」の2つです。

シナジー効果の発生

コングロマリットでは、新たに異業種に1から参入することなく異業種の顧客や独自のノウハウ・技術を得られます。

そのため異業種間での良いシナジー効果の発生が期待できます。

ノウハウの共有

グループ内に優れたノウハウを持つ部門がある場合、他の部門にそのノウハウを共有できることがメリットです。

新たな優れたノウハウを取り入れることによる既存の事業の拡大に加え、現在のノウハウとのかけあわせで違う事業への参入の可能性も広がります。

技術力の向上

また、ノウハウだけでなく技術の共有により企業全体の技術力が向上することで、生産性あるいはサービスの向上の他に、今までの課題が解決するといった可能性も出てきます。

経営リスクの分散

コングロマリットのもう一つのメリットが情勢の変化や新事業立ち上げなどに対する経営リスクの分散です。

新事業を主力として育てられる

企業の主力事業が1つである場合、新たに事業を立ち上げる場合その事業が採算化するまでのリスクは高くなります。

複数の事業を行い1つの事業のウエイトが少なくなれば、その分新事業を立ち上げるリスクが少なくなり時間をかけて新事業を育てる余力ができます。

時代の流れに対応

国際情勢や時勢の流れによる顧客層のニーズの変化によって、関連する事業の業績が急転することは避けられません。

そういった場合でもグループ内に異業種を内包することで、注力する事業を変更するなど変化に対応する力が得られます。

コングロマリットの注意点

もちろんコングロマリットには注意すべき点もあります。

次にコングロマリットにおける注意点についてみていきましょう。

短期戦略には不適

業績向上に即効性を求めるのであればコングロマリットは適した方法ではないでしょう。

コングロマリットは異業種間でのプラスの相乗効果で中長期的に企業を成長させる戦略です。

即効性は期待できない

コングロマリットでは既に実績のある異業種を引き入れることにより短期間で新規分野に進出できます。

しかし異業種間のシナジー効果が表れるには時間を要するため、即効性はあまり期待できないでしょう。

中長期的な戦略が必要

シナジー効果が発生するには時間がかかることに加えて、新事業が育つにはある程度時間がかかります。

どの分野に注力し経営資源を投入するのか、もし新事業が不採算のままである場合どのラインで撤退するのかといった中長期的な戦略が必要となってきます。

適切なコミュニケーションが必要

また、コングロマリットによりグループ規模が大きくなると企業の経営体制を管理する仕組みであるコーポレートガバナンス低下の問題が起きやすく、情報や経営方針が全体に伝わるような適切なコミュニケーションが必要です。

異業種間の連携不足

特に異業種間のコングロマリットでは他分野の業界内での前提や基礎知識が不足している場合が多いため、グループ内で連携を取るのが難しくなり思うようなメリットを享受できない場合があります。

綿密な意思疎通が必要

異業種間の連携不足を避けるためには情報・方針・課題について部門間で共有するとともに、新しいノウハウに対しても積極的に受け入れる姿勢を整える必要があるでしょう。

企業価値の低下

コングロマリットにおいて一番避けたいのが企業価値の低下です。

企業価値が下がり株価が下がれば資金調達が難しくなり、新事業にかける経営資源の不足が懸念されます。

マイナスのシナジー効果

異業種による構成で経営リスクを分散できるメリットがある一方、いずれかの業種において社会的に問題が発生した場合や業績が悪化した場合、グループ内の他業種にも多大な悪影響を及ぼす可能性も考えられます。

共倒れになる可能性も

マイナスのシナジー効果によって考えられるのが、共倒れになるという可能性です。

業績が悪化した事業に経営資源を割いてしまったり、ある事業での悪い評判やイメージが他の事業に波及したりした結果グループ全体の業績が悪化してしまう懸念があります。

コングロマリット型M&Aの方法

M&A(企業の合併・買収)を用いてコングロマリットを行うのがコングロマリット型M&Aです。

資本提携

資本提携とは複数の会社間で経営権を取得しない程度の割合で株式を取得し提携する関係のことです。

経営権が移転しないので厳密にはM&Aにはあたりませんが、効果に重なる部分があります。

業務面と資金面で協力

資本提携には経営権はないものの、お互いの企業に出資する資金面、技術やノウハウを共有する業務面で協力関係を構築します。

持ち株比率は1/3以下が一般的

資本提携では、買収や合併と違い相手先の業績が悪化した場合でも影響が少なく済むのがメリットです。

経営への影響が出ないように、持ち株比率は1/3以下にするのが一般的です。

買収

他の企業の経営権を取得できる、過半数程度の株式を取得し子会社化する方法が買収です。

吸収合併の前段階として行われることもあります。

被買収会社を子会社化

自社で新規に事業を立ち上げるより実績のある企業を子会社化した方が、経営資源の節約と採算化が早い点がメリットです。

強い結束を形成

子会社化により経営資源を活用できる、また経営権を持ち完全に子会社化することで経営を管理統合しやすくし強い結束を形成できます。

合併

買収によるコングロマリットが別企業として構成されるのに対し、複数の企業を1つにする方法が合併です。

合併には吸収合併と新設合併があります。

吸収合併

吸収される側の全てを吸収する側の企業が引き継ぎ、吸収される側の企業はなくなるのが吸収合併です。

会社の規模が拡大する、新設合併に比べ手続きが少ないといったメリットがある反面、吸収した側の従業員と吸収された側の従業員間で軋轢が起こり業務に支障が出たり、ひいては吸収された側の従業員の離職に繋がったりするデメリットに留意が必要です。

新設合併

複数の企業が合併消滅し、全てを引き継いだ新企業を創るのが新設合併です。

企業間が対等なまま合併できるメリットの反面、手続きやコストの負担が大きいといったデメリットがあります。

まとめ

コングロマリットにはグループ内の経営リスクの低減や経営資源の活用、新規事業への展開の可能性がある一方で、グループ全体の業績や株価が悪化してしまう危険もはらんでいます。

良いシナジー効果を発揮するために、お互いの足りない部分を補えるような相手企業の選定と適した時期や方法をよく検討することも大切です。


AD