アウトソーシングとはどんな業務形態?メリット・デメリットを分かりやすく解説

「このIT関係は、わが社にはノウハウがあまりないので、アウトソーシングにしたよ。」などという話を時々聞くことがあります。近年はますます企業間の競争が激しくなり、効率的な企業運営をしないとすぐに同業他社に後れをとる事態になることが背景にあるものと思われます。 

そこでここでは、アウトソーシングについて取り上げ、その業務形態やメリット・デメリットを分かりやすく解説しますので参考にしてください。

アウトソーシングとは何か

アウトソーシングは英語の(outsourcing)をそのまま日本語読みにして使用していますが、英辞郎(翻訳者グループが作成したWeb用辞書)の日本語訳は「外注、外部委託、社内の業務を外部の専門会社に委託すること」としています。

近年はほとんどの方が「アウトソーシング」という言葉を使っていますので、そのままでアウトソーシングの意味を理解されているようです。

アウトソーシングの意味

念のため、アウトソーシングの意味を英語版のウィキペディアで調べますと「アウトソーシングあるいは外部委託とは、従来は組織内部で行っていた、もしくは新規に必要なビジネスプロセスについて、それを独立した、専門性の高い別の企業等の外部組織に委託して、労働サービスとして購入する契約である。」と解説しています。

アウトソーシングが必要となる理由

アウトソーシングが必要となる最大の理由は業務内容の増大による人材不足です。少子化で若い層の働き手が少なくなる一方で企業の業務内容は複雑化・増大化傾向にあります。どの企業もコアとなる業務がありますのでそれに注力したいと思っています。しかし、現実は「働き方改革」などで労働時間が減少しています。新入社員を多く採用して育成し、自社完結で製品やサービスを市場に送り出すことが困難になっています。自社事業でアウトソーシングに切り替えることができる業務があれば切り替えて、コア業務に集中させようと考える経営者が増えていることもあります。

アウトソーシングと派遣の違い

アウトソーシングと似ている形態に「派遣」があります。その違いを契約関係で見た場合、派遣は「労働派遣契約」になります。派遣を受け入れる企業と派遣会社間で労働派遣契約を結びます。人材自体を提供するサービスが派遣ですので、その人材が実際に業務に従事すると、対価である給与等は派遣会社に支払われます。派遣会社はそこから社会保険料等の必要経費を差し引いて派遣社員に給料を支払います。

これに対してアウトソーシングは、「請け負った業務や成果物」への支払いになります。したがって、契約はアウトソーシングを利用する企業と提供する企業間で締結され、支払いもこの二企業間で行われます。

アウトソーシングのメリット

このアウトソーシングを企業が利用すると「業務の効率化・品質の向上」「組織の縮小化」「人件費・固定費用の削減」を図れることがメリットとされています。

なぜなのか見てみましょう。

業務の効率化・品質の向上

自社事業を点検するとコアとなっている事業以外で、かなり人手を取られている事業が必ずあるはずです。企業経営をしていると、顧客のニーズに応えるため人手不足になり、人材補充を続けてしまい組織が肥大化してしまうからです。一度組織自体を見直して、外注しても問題がないと思われる業務を洗い出して見てください。

それからその事業をアウトソーシングすることを検討します。近年は多種多様なアウトソーシング企業があります。アウトソーシング企業は「その道の専門家」を保有していますので、こちらの希望にそった専門家を配置してくれます。例えばIT関係で自社社員に基礎から勉強させてシステムを構築させようとすると、最短でも1年半程度は必要と言われています。アウトソーシングによる専門家は優秀な人材が多くいて即戦力ですので、短期間で構築してくれます。専門的なノウハウを持つとともに、最新のツール等の研究もされている方が多くいます。

「自社業務の効率化を図ることができる」とともに、「品質の向上」が期待できます。

組織の縮小化

 上述したことなどを参考に2~3の業務をアウトソーシングすれば、かなりの人材が浮き、肥大化した「組織の縮小化」が実現します。縮小化と言うと会社が小さくなって後退したような印象を受けますが、「企業業務を分散化」させ、それで浮いた人材を本当に必要と思われる業務に充当すると言うことです。「コア業務」に充当すれば、企業競争力が強化され、競合他社を大きくリードすることができます。

人件費・固定費用の削減

アウトソーシングは「成果物の提供」が目的で契約しますので、契約に基づき自社に来て作業をする人材がいても人件費・固定費を支払う必要はありません。従来のパターンですと新入社員として採用した人材を一から育てるために、人への投資が必要と考えられていましたが、アウトソーシングはその必要がありません。そのため給料や残業代あるいは社会保険料等の固定費用を払う必要がなくなります。自社の直接雇用より「人件費・固定費を節約」できるメリットがあります。

アウトソーシングのデメリット

アウトソーシングは、以上のようなメリットに対して、次のようなデメリットがあることも承知しておく必要があります。

自社に技術や知識を残しにくい

アウトソーシングを利用すると、業務の効率化や高い専門的な成果物を得ることができますが、自社が苦労しながら積み上げたものではありませんので、自社の情報や技術に関するノウハウが育たないというデメリットがあります。アウトソーシング会社と連携を密にして、できるだけ成果物の内容を把握しておくように努めておくと、アウトソーシング会社がサービスの提供から撤退したり、会社が破綻しても慌てないで済みます。

コア事業以外の状況が分かりにくい

企業は通常「ガバナンス」と言って企業の業務を一体的に管理しています。アウトソーシングを利用するとその部分が抜けてしまいますので、全体的な事業の内容や進行が把握しにくくなります。ガバナンスが弱体化するわけですが、それを防ぐためにアウトソーシング企業の業務の「可視化」や上述したような緊密な連携を図るための積極的なコミュニケーションが必要です。

情報漏洩のリスクがある

アウトソーシングすることで、その委託内容によっては、自社の企業秘密や社員等の個人情報などを共有することがあります。そのため、アウトソーシング会社の情報管理がしっかりしていないと情報漏洩のリスクがあります。アウトソーシング会社を選定する時は、この点を含めて何を委託するのか、過去に情報管理で問題があったことはないか、現在のセキュリティ対策はどうか、社員に情報漏洩しないことを徹底しているか等確認した上で決定すべきです。

必ずしもコスト削減にはならない

自社業務のいくつかをアウトソーシングすれば必ず「コスト削減になる」ということにはなりません。アウトソーシング会社が示した委託費が高額だったり、提案してきた内容が魅力的なので採用して実行しようとすると、これまでの企画を一から練り直す必要が出てきたりします。委託費については常に変動する要素があることを知っておく必要があります。

インソースとアウトソースの判断基準

インソースという言葉が出てきましたが正式には英語の「insourcing」でアウトソーシングの対義語です。「社内調達化」などと訳されていますが、主にITのシステム開発や運用などのフィールドでアウトソーシングを利用していた企業が、自社に取り戻すことを意味します。IT関係の発展が目覚ましくどの企業もその動向に関心を持っているようですのでこのような流れが出てきたと思われます。

ここではアウトソーシングの利用について述べてきましたので、その延長線上でどのような業務がアウトソーシングに適しているのか述べます。

主に次の3つの業務がアウトソーシングと相性が良いと言われています。

  1. IT関連事業:ITの進歩が目覚ましく自社内の人材でシステム開発・構築するには時間と手間がかかるため 
  2. 商品の製造・販売:他社ブランド製品の製造を代行するOEMが増加しており商品の製造・販売することをメインとする企業に好都合であるため
  3. 店舗型ビジネス:複数店舗の原価管理や在庫管理ができるので実店舗経営が必要な管理業務に対応できるため

次に企業の日常活動全体を俯瞰してアウトソーシングすることができると思われる業務を挙げてみます。

コア業務とノンコア業務

コア業務は自社の稼ぎ頭で企業秘密なども扱いますので自社業務とすべきです。

ノンコア業務であれば、アウトソーシングにすることが可能と思われます。

専門業務と一般業務

専門性や機密性がある業務は、他社に知られると模倣されたり悪用される可能性が高いのでアウトソーシングは避けるべきです。事務などの一般的な業務はアウトソーシングを積極的に考えると良いでしょう。

主なアウトソース業務

企業が現在実施している業務でアウトソーシングに向いていると考えられるものを列挙します。(現にアウトソーシング化されているものを含みます。)

  1. 経理・総務・法務などの管理事務
  2. コールセンターやカスタマーサポートの電話対応
  3. 店舗や倉庫での在庫管理やパッキング業務
  4. 社内ネットワークやシステム構築
  5. 社内のマニュアル化したルーチン業務
  6. テーマに基づく社員教育
  7. 顧客のデータ移動

等がアウトソーシングに適していると考えられます。他にもあると思いますので、自社事業の流れを思い浮かべながら検討することをお勧めします。

アウトソーシングの種類

アウトソーシングにはどのような種類があるのか述べます。

BPO

BPOは英語の「Business Process Outsourcing」のイニシャルを取ったものです。

ビジネスのプロセス(一連の行為)をアウトソーシングすると言っても分かりにくいと思いますが、企業の業務を一括してアウトソーシングすると言うことです。例えば、今まで人事部の一部の業務をアウトソーシングしていたのを、人事部の全ての業務を一括してアウトソーシングできるようになりますので、その企業は人事部を置く必要がなくなります。それで浮いた人材を重要なコア業務などに従事させて自社の経営資源を最大限活用することができます。  

ITO

ITOはインフォメーション・テクノロジー・アウトソーシング「Information Technology Outsourcing」の頭文字を取ったものです。IT関係に特化したアウトソーシングです。具体的には企業の「パソコン管理」「ヘルプデスク業務の支援」「開発済みのシステム運用」「社内のセキュリティ運用」「サーバー等の運用・管理」などを請け負って活動します。

KPO

KPOは新しいアウトソーシングの1形態で、欧米を中心に2000年代の初めごろから急速に使われるようになっています。KPOは「Knowledge Process Outsourcing」のイニシャルを取ったもので、「知的生産活動のアウトソーシング」と訳されています。このサービス提供専門機関は主としてインドや中国に拠点を設けて、全世界を対象に24時間対応可能な体制で活動しています。高いレベルの業務を引き受けることから顧客の評判が良く、事業規模の拡大が顕著であると言われています。

例えば、チェコの自動車部品メーカーの財務状況の評価を依頼されてから24時間以内で実施して報告したり、香港のビルメンテナンス業者の適正評価とコスト削減分析を48時間以内で実施し提言するなど通常では考えられないスピードで対応してくれるそうです。

日本でこのサービス提供機関を利用したトータルの金額は2008年時点で約89億円規模ですので非常に少ないと言えます。原因は日本の商慣習や日本語の特異性などにあるようですが、利用すべきアウトソーシングの1つとして注目する必要があります。

アウトソーシングの業務形態

アウトソーシングには様々な業務形態がありますので、参考までに取り上げてみます。

シェアードサービス

シェアードサービスは複数の会社や事業部で構成されるグループ企業が、人事・労務、総務・庶務、経理・財務、情報システム部門などの間接部門の機能を1か所に集約して合理化を図るものです。シェアードは英語の「shared」を使っており「共有の、共用の」などの意味があります。

クラウドソーシング

クラウド(crowd)は英語で「群衆・仲間・大勢の人」などの意味、ソーシング(sourcing)は外部からの「調達」の意味で使われています。

働き方改革でテレワークや副業などが認められるようになりましたが、クラウドソーシングはインターネットを使って企業等が不特定多数に業務発注する形態を言います。発注する業務は多種多様です。代表的な例としては、ウェブ関係では「プログラミング・記事のライティング・デザイン・ホームページ作成」等

動画編集や音楽制作などの発注も見受けられます。受注を希望する人も様々でフリーランスの専門家から副業希望者あるいは初心者までいます。不特定多数を対象とするため発注者の意図にそぐわない成果物が納入されることがあり、マッチングに難点があります。

システムインテグレーション

インテグレーション(integration)は「統合化・一体化」などの意味がありますので、システムインテグレーションは「システムの統合化」の意味で使われています。通常はSI(エスアイ)などと言われています。顧客からの依頼を受けて、業務内容の分析を皮切りに、システムの企画・立案、プログラム開発、ハードとソフトウェアの選定・導入、完成したシステムの保守・運営までを総合的に行います。

コ・ソーシング

コ(co)は接頭語で「共同の、共通の」の意味があります。したがって、コ・ソーシングは委託する業務について依頼主も一緒になって共同で実施する形態を言います。依頼主の企業にもノウハウが残るメリットがあります。

マルチソーシング

マルチ(multi-)は英語の連結語で「多くの、複数の」の意味があります。したがって、企業がアウトソーシングするに当たって特定の1社に限定せず、業務の種類に合わせて委託先を選定する契約形態です。1社だけだと不得意な業務が含まれてしまう恐れがあります。

オフショアアウトソーシング

オフショアは英語で(offshore)ですが、形容詞で「海外の、外国の」という意味で使われています。したがって、オフショアの場合は委託業務の全部もしくは一部を外国に委託するということになります。これに対してアウトソーシングは社内業務を国内、外国を問わず社外の企業に委託することを意味します。混同しそうですが、オフショアの場合は人件費などのコストが安価で済むため利益率が高く、選択する経営者が増えているようです。

まとめ

アウトソーシングはこのように多様な形態があります。企業の業務がグローバル化している現在、それに対応するため最善策を模索した結果、複雑化した側面もあると思われます。アウトソーシングの上手な利用は「経営資源」の有効活用につながると思いますのでこれからも研究されることを期待しております


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