「動画配信システム」とは?
動画配信システムとは、従業員やセミナー参加者などの限られた視聴者に向けて画像や動画コンテンツを配信するツールです。最近では、動画を利用した社内研修や教育コンテンツ販売などで、企業での需要が高まってきました。
無料の動画配信サービスといえば「YouTube」が有名ですが、YouTubeは無料で利用できる分、セキュリティ面への不安が否めません。一方、有料の動画配信システムはセキュリティも安全な点に加え、期間やユーザーを限定した配信も可能です。
「動画配信システム」にはどのようなタイプがある?
ひとえに「動画配信システム」といっても、製品によって動画の配信方法は大きく「ダウンロード配信」と「ストリーミング配信」に分かれます。それぞれの配信方法を理解し、自社に適した配信方法を持つ製品を選ぶのが重要です。
ダウンロード配信
配信方法が「ダウンロード配信」の場合、視聴者は動画コンテンツをパソコンやスマートフォン、タブレットなどのデバイスにダウンロードして視聴します。ダウンロード配信のメリットは、動画をダウンロードすればオフラインでも視聴できる点。例えば社員向けの教材を配信する場合、社員は電車移動中などの空き間時間に動画を閲覧できます。一方、ダウンロードによってスマートフォンやパソコンのデータ保存容量を圧迫してしまう点がデメリットといえるでしょう。
ストリーミング配信
配信方法が「ストリーミング配信」の場合、視聴者はストリーミングサーバから直接動画を視聴します。ダウンロード配信と違ってデバイスに動画を保存しないため、ダウンロードの手間や容量圧迫の心配がない点がメリットです。ただし、通信環境によって動画の読み込みが遅くなってしまったり、画質が悪くなってしまったりといった危険性も。なお、ストリーミング配信は、さらに「オンデマンド配信」と「ライブ配信」に分かれます。
オンデマンド配信
ストリーミング配信の内「オンデマンド配信」は、録画されている動画を配信する方法。近年では、テレビドラマの見逃し配信でもこの方法が見られます。オンデマンド配信は日時や場所を問わず、視聴者の好きなタイミングで閲覧できる他、早送りや巻き戻しといった機能も利用可能です。
ライブ配信
ストリーミング配信の内「ライブ配信」は、撮影している動画をリアルタイムで視聴者へ配信する方法。インスタグラムやTwitterなどのライブ配信をイメージするとわかりやすいでしょう。企業では、オンラインセミナーや会議で利用される場合が多いです。ライブ配信はリアルタイムならではの臨場感が得られる他、チャットやコメント機能を利用して視聴者と配信者がコミュニケーションを取れる点が魅力です。ただし、一度に接続する人数が多いほどサーバに負荷がかかり、安定した配信ができなくなる可能性も否めません。また、安定した通信環境を作るため、同時接続数に応じて料金が高くなるパターンが多いです。
「動画配信システム」の選び方は?
機能性
動画配信システムを選ぶ際は、まず、どんな機能がついているかをチェックしましょう。製品によってはメイン機能となる動画配信だけでなく、以下のような機能が含まれるものもあります。
- 動画や商品の販売機能
- 動画制作、編集機能
- 動画閲覧に関するアクセス解析機能
ただし、機能が多いほどもちろん料金は高くなり、企業によっては不要なコストがかかってしまう可能性もあります。あらかじめ必要な機能を洗い出しておき、目的や用途にあった機能がついている製品を選びましょう。また、将来的に使いたい機能が増える可能性も考慮し、「カスタマイズできるか」「後から機能を追加できるか」に着目するのもおすすめです。
ストレージ(保存容量)
動画はテキストファイルや静止画よりもデータ量が多いため、保存容量の確認は欠かせません。製品によって、最大保存容量や一度に視聴可能な接続数が異なります。再生時間が長い動画を頻繁にアップロードする場合、なるべく容量が大きいシステムを選びましょう。保存容量が足りないと、そもそも動画をアップロードできなかったり、動画が低画質で保存されてしまったりする危険性があります。
セキュリティ
動画配信システムを選ぶ際は、「動画の不正利用対策があるか」「情報漏洩を防ぐ対策がされているか」などのセキュリティ性もチェックしましょう。アップロードした動画を悪用されないように、通信の暗号化をしているシステムを選ぶのがおすすめです。特に、動画コンテンツを販売する場合は、会員登録や課金など視聴者の個人情報を扱うため、セキュリティ性が高いものを選びましょう。なお、「ストリーミング配信」タイプの製品は、端末にデータが残らないため比較的セキュリティレベルが高いです。
サポート体制
特に初めて動画配信システムを利用する場合は、サポート体制の確認も重要です。導入したばかりは「動画がアップロードできない」などの問題が起こる可能性も。トラブルが起きた場合に、すぐにサポートを行ってくれるのか、有料なのか無料なのかもあわせて確認しておきましょう。
料金体系
動画配信システム導入の際は、料金体系についての確認も重要です。動画配信システムの料金体系は、月額課金や一括課金など製品によってさまざま。初期費用はもちろんランニングコストも確認し、費用対効果がよいものを選びましょう。なお、企業によっては動画配信システムだけでなく、動画を撮影するための機材や編集用ソフトが必要になる場合もあるので、あわせて費用を計算するのがポイントです。
オンプレミス型かクラウド型か
動画配信システムには「オンプレミス型」「クラウド型」の2つのタイプがあります。それぞれの特徴を理解し、自社に合った製品を選びましょう。
オンプレミス型は社内に構築したサーバを利用するタイプで、セキュリティ性が高くカスタマイズしやすい点がメリットです。ただし、自由度が高い分クラウド型と比べてコストがかかるのがデメリット。また、一からシステムを構築する場合は、社内に専門知識を持っている人材がいないと難しい場合があります。
対して、クラウド型は外部サーバーにあるシステムに動画をアップロードして使用するタイプです。複数のデバイスから利用できるため、社内外問わず多くの人へ動画を見せたい場合におすすめです。また、オンプレミス型と比べてコストが抑えられる点も魅力。一方、オンライン環境でないと動画の編集ができない点や、カスタマイズしづらい点がデメリットです。
操作性
実際にシステムを触ってみて、操作しやすいかどうかをチェックするのも重要です。機能が豊富なシステムでも、実際に使いこなせなければ意味がありません。なにより、実際に操作する担当者が利用しやすいシステムを選ぶのが一番です。製品によっては、一定期間トライアル期間を設けている場合もあるのであわせて確認しましょう。
「動画配信システム」比較検討時の注意点は?
動画配信システムを選ぶにあたり、事前に利用目的や必要機能を整理しておくのが重要です。例えば、導入目的が「社内への研修動画配信」なのか、「ユーザーへの動画コンテンツ販売」なのかによって必要な機能は大きく異なります。また、動画を視聴する人数が多いのであれば、通信性に優れた製品を選ぶべきです。あらかじめ利用目的や必要な機能を整理しておくことで、スムーズに製品を比較検討できます。
主要な「動画配信システム」の一覧
「P-stream」(pepex株式会社)
・おすすめ対象者:動画配信に特化したシステムを求める企業
・主要機能:ストリーミング配信、PC・スマートフォンなどマルチデバイス対応など
・特徴:広告表示などの機能を排除し、動画配信に必要な機能に特化。
ストリーミング配信で動画コンテンツのダウンロードや複製を防げます。
・初期費用、月額費用、その他費用:
スターターパック 初期費用30,000円 月額9,800円
スタンダードパック 初期費用30,000円 月額24,800円
エンタープライズパック 初期費用30,000円 月額74,800円
ボリュームパック 初期費用30,000円 月額198,000円
・無料プランの有無、無償トライアルの有無:無
・サポートの有無:無
「MOOGA」(株式会社ワンジュウゴ)
・おすすめ対象者:シンプルかつ安全な動画配信システムを求める企業
・主要機能:ストリーミング配信、チャプター機能、IPアドレス設定、特定ユーザー限定配信
ユーザー視聴動向分析、複数動画一括アップロードなど
・特徴:シンプルで利用しやすい管理画面で、初めての動画配信システム導入でも安心。
IPアドレスで動画視聴に制限をかけられ、セキュリティ性も抜群です。
・初期費用、月額費用、その他費用:
ライト 月額15,000円
スタンダード 月額30,000円
プレミアム 月額50,000円
プラチナ 月額100,000円
※追加オプション 容量追加:10GBあたり月額5,000円
ID追加:100IDあたり月額10,000円
・無料プランの有無、無償トライアルの有無:有(30日間)
・サポートの有無:有(電話、メールでの問い合わせ)
ビジュアモール ムービーライブラリ」(ソフトバンク株式会社)
・おすすめ対象者:視聴人数が多く、安定した動画配信を求める企業
・主要機能:専用アプリからの動画投稿、マルチデバイス対応、動画・資料同時表示、
評価・コメント機能など
・特徴:専用ポータルサイトからの視聴で安全に動画共有可能。
同時接続1万以上に対応し、海外への配信もできます。
・初期費用、月額費用、その他費用:
基本パッケージ mini 初期費用30,000円 月額40,000円
基本パッケージ 初期費用30,000円 月額100,000円
基本パッケージ Z 初期費用30,000円 月額350,000円
LIVEパッケージ mini 初期費用30,000円 月額100,000円
LIVEパッケージ 初期費用30,000円 月額200,000円
LIVEパッケージ 初期費用30,000円 月額300,000円
※追加オプション 容量追加:50GBあたり月額15,000円
ID追加:100IDあたり月額8,000円
流量追加:1TBあたり月額35,000円
ライブ配信追加:1CHあたり月額30,000円
・無料プランの有無、無償トライアルの有無:有(最大2か月間)
・サポートの有無:有(動画マニュアル・FAQ・専用ヘルプデスクへのお問合せフォーム)
「ULIZA」(株式会社PLAY)
・おすすめ対象者:動画配信に関わる業務全般のサポートを受けたい企業
・主要機能:配信プラットフォーム提供、視聴者分析、チャットツールなど
・特徴:配信プラットフォームの提供に加え、配信機材の提供や専門スタッフによる配信運用など
利用企業を全面的にサポート。初めて動画配信システムを導入する企業も簡単に利用できます。
・初期費用、月額費用、その他費用:別途問い合わせ
・無料プランの有無、無償トライアルの有無:有(30日間)
・サポートの有無:有(サポート窓口によるメール問い合わせ)
「viaPlatz」(NTTテクノクロス株式会社)
・おすすめ対象者:セキュリティがしっかりしているシステムを探している企業
・主要機能:視聴者設定、2段階認証、簡易動画編集、視聴ログなど
・特徴:パブリッククラウド型、プライベートクラウド型、オンプレミス型の3タイプで提供、
パスワードと認証コードによる2段階認証で、セキュリティ対策も万全。
・初期費用、月額費用、その他費用:
ベーシック 初期費用50,000円 月額40,000円
プロフェッショナル 初期費用50,000円 月額80,000円
プレミアム 初期費用50,000円 月額120,000円
※追加オプション 書き込み・ディスカッション機能 月額20,000円
理解度確認テスト・アンケート 月額20,000円
※上記はパブリッククラウド型の費用。その他のタイプは別途問い合わせ。
・無料プランの有無、無償トライアルの有無:有(1か月間)
・サポートの有無(ある場合、サポート内容の概要):無
「動画配信システム」導入のメリット、デメリット
メリット1:内容が伝わりやすい
動画配信システム導入のメリットは、まず、内容が伝わりやすい点です。動画は文章よりも伝えられる情報量が多く、細かな表現も伝わりやすい点が特徴。例えば商談の成功事例を紹介する場合、文章でまとめるよりも実際の商談風景を映像で流した方が見ている側もわかりやすいでしょう。動画配信によって、多くの人に細かい部分を共有しやすくなるのが動画配信システム導入の魅力です。
メリット2:各拠点へも一度に情報共有ができる
次に、各拠点へスピーディーに情報共有できる点です。特にいくつもの事業所を構える企業の場合、情報を伝達するのにタイムラグが起きてしまう場面もあるでしょう。動画配信システムを利用すれば、離れた場所へも直接会っているような感覚で情報共有できます。
メリット3:実際のセミナー開催よりも手間やコストが抑えられる
セミナーなどを開催する企業の場合、実際に人を集めて開催するよりも手間やコストが抑えられる点もメリットです。セミナーを開催する場合、講師のスケジュール調整や会場の確保など多くの手間が発生します。一方、オンラインセミナーであれば、主催側も参加者もタイミングや場所を気にせず参加できます。また、実際の会場よりも動画なら人数制限を設けにくく、より多くの人に見てもらえる可能性があるのも魅力でしょう。
デメリット1:コミュニケーション性に劣る
動画配信システムのデメリットとして、コミュニケーション性に劣る点が挙げられます。動画だと、配信側は相手に内容が届いているかがわかりにくく、一方通行のコミュニケーションになりがちです。対策としては、ライブ配信を用いてチャットやアンケート機能を活用するなど、参加者の反応がわかりやすい仕組みにするのがおすすめです。
デメリット2:コストがかかる
動画配信システム導入において、コストがかかってしまう点はデメリットとして挙げられます。導入の際は初期費用だけでなく、ランニングコストもきちんと計算して製品を選ぶのが重要です。多くの機能がついている製品は魅力的ですが、結局使わないのであれば意味がありません。きちんと必要な機能を見極めて、自社にあった製品を選びましょう。