「生産管理ツール」とは?
「生産管理ツール」とは、製造業の現場における情報を管理し、QCD(品質、コスト、納期)の最適化を図るITツールです。
「生産管理ツール」といっても、生産数や生産期間などを管理するだけではありません。最適な在庫数を検出する「在庫管理」や、スケジュール通り製造が進んでいるかをチェックする「工程管理」、製品の不具合がないかを確認する「品質管理」など、生産管理ツールにはさまざまな機能が含まれます。Excelなどでは管理しきれない情報を管理するための複雑な機能が備わっていて、生産活動の手助けを行います。
「生産管理ツール」にはどのようなタイプがある?
生産管理ツールには、大きく分けて「クラウド型」「パッケージ型」「オンプレミス型」の3つのタイプがあります。
クラウド型
「クラウド型」はインターネットを介して利用する生産管理ツールです。ネット環境さえあれば場所を問わず利用でき、パソコンだけでなくスマートフォンからもアクセスすることができます。
また、クラウド型の生産管理ツールはシステム開発会社のサーバーにアクセスし使用するため、ソフトやサーバーの購入の必要がありません。そのため、他のタイプよりもコストを抑えて利用できる他、システムのバージョンアップも基本的に開発会社に任せることができます。
パッケージ型
「パッケージ型」は、既に販売されているソフトをパソコンにインストールして使用する生産管理ツールです。自社開発ではないため即時導入できる他、開発にかかるコストを抑えることができます。
一方で、バージョンアップについては手動で更新作業をする必要があり、インストールしたパソコンのみでしか使用できません。
オンプレミス型
「オンプレミス型」は、自社サーバーにソフトをインストールして利用する生産管理ツールです。社内のパソコンであれば、どのパソコンからでもシステムが利用できます。また、企業独自の機能を追加するなど、利用しやすいようにカスタマイズも可能です。
一方で、サーバーの購入費や開発費など、導入時の費用や手間が発生します。
「生産管理ツール」の選び方は?
生産管理ツールを比較する際のポイントは、大きく分けて3点です。
機能面
生産管理ツールを比較する際のポイント1つめは、「自社にとって必要な機能が備わっているか」です。
「納期の遅れが生じるのを防ぎたい」場合にはスケジュール管理の機能が搭載されている製品を選ぶ必要があります。ひとえに生産管理ツールといっても、ツールによって搭載機能はさまざまです。必要な機能に優先順位をつけ、必要機能がより多く搭載されている製品を選びましょう。
サポート面
生産管理ツールを比較する際のポイント2つめは、「サポート体制」です。
生産管理ツールのサポート体制は、「ツール導入時のみのサポート」や「長期にわたって運用までのサポート」など提供会社によってさまざまです。生産管理ツールを初めて導入する場合や、利用に不安が感じられる場合は、随時メールやチャットでサポートをしてくれる製品を選ぶのがおすすめです。
費用面
生産管理ツールを比較する際のポイント3つめは、「費用」です。
生産管理ツールを初めて導入する場合は安い製品を選びがちです。しかし、費用を気にするあまり必要な機能が十分備わっていないものを選んだり、不具合に対処できなくては元も子もありません。
生産管理ツールを選ぶ際は、予算内でさまざまな製品の比較とシミュレーションを行ない検討しましょう。
「生産管理ツール」比較検討時の注意点は?
生産管理ツールの比較検討にあたり、導入目的を明確にすることが重要です。
自社の目的に一番合ったシステムを導入することが何よりも大切だということを常に念頭に置きましょう。
生産管理ツールは生産活動における課題を解決し、作業効率を上げるためにあります。目的に合わない生産管理ツールで、逆に手間を増やしてしまっては意味がありません。
導入目的を明確にしたら、現場も含め関係者に目的を共有しましょう。関係者が目的を理解しておくことで、導入後のスムーズな運用に繋がります。
主要な「生産管理ツール」の一覧
「i-PROERP3」(株式会社DigitWorks)
おすすめ対象者
中小規模の部品加工業者
主要機能
見積、工程進捗管理、受注・出荷管理、在庫管理、仕入・買掛・支払管理
特徴
個別受注・多品種少量生産に特化。ライセンスフリーで、何台にインストールしても追加料金がかかりません。生産に関わる情報がシステム上で一元管理できるため、作業ロスや無駄の削減に繋がります。
初期費用、月額費用、その他費用
パッケージ費用:2,500,000円
※別途、導入費用・オペレーション指導が必要
無料プランの有無、無償トライアルの有無
無
サポートの有無
有(操作指導、マスタセットアップ支援)
「TECHS-BK」(株式会社テクノア)
おすすめ対象者
多品種少量型の部品加工業者
主要機能
受注管理、作業指示&実績管理、発注管理、仕入管理、在庫管理、売上管理
特徴
ExcelやEDIのデータ取込機能により入力作業を削減。受注から売上までを一元管理できます。図面参照機能も搭載されており、過去図面も簡単に引き出せます。
初期費用、月額費用、その他費用
別途問い合わせ
無料プランの有無、無償トライアルの有無
別途問い合わせ
サポートの有無
有(サポートメンバーによる質疑応答・トラブル対応、稼働状況診断)
「FutureStage」(株式会社日立システムズ)
おすすめ対象者
個別受注生産、繰返し生産を行っている中小企業
主要機能
販売管理、生産管理、輸入・輸出管理、購買管理、在庫管理
特徴
「個別受注生産管理」「繰返し生産管理」「ハイブリッド生産管理」と業態にあわせた3つのモデルを用意。最短3日でのスピード導入が可能です。
初期費用、月額費用、その他費用
別途問い合わせ
無料プランの有無、無償トライアルの有無
別途問い合わせ
サポートの有無
有(導入支援サービス、質問回答、費⽤対効果を考慮したソリューション提案)
「TPiCS-X」(株式会社ティーピクス研究所)
おすすめ対象者
複数の生産形態が混在している企業
主要機能
帳票発行機能、実績管理、在庫管理、原価管理、支払管理
特徴
量産繰返生産、個別一品受注生産などさまざま生産形態の混在管理が可能。英語・中国語・ベトナム語に対応し、国内外問わず利用できます。
初期費用、月額費用、その他費用
・f-MRP製番システム:1,500,000円
(繰返生産システム、製番管理システム機能が含まれる)
・繰返生産システム:1,000,000円
・製番管理システム:1,000,000円
無料プランの有無、無償トライアルの有無
無
サポートの有無
有(電話・メールでの質問回答)
「J WALD」(株式会社シナプスイノベーション)
おすすめ対象者
受注生産と見込生産が混在する工場を持つ企業
主要機能
生産管理、原価管理、販売管理、購買管理、在庫管理
特徴
1つのシステム上で複数拠点、さまざまな工程の生産管理が可能。会計システムと連携もでき、仕訳情報から生産管理システムの情報まで簡単に確認が可能です。
初期費用、月額費用、その他費用
別途問い合わせ
無料プランの有無、無償トライアルの有無
別途問い合わせ
サポートの有無
別途問い合わせ
「生産管理ツール」導入のメリット、デメリット
生産管理ツール導入のメリットは、主に3点です。
1つめは、無駄の見える化です。生産管理ツールを利用することで、受注から販売までの全体工程が見通せるようになります。結果、無駄な作業を省けたり、状況に合わせて人員や設備を適切な場所に配置できたりと、効率的に生産を進められます。また、管理ツールに入力された過去実績を閲覧することで、改善点をより見つけやすくなります。
2つめは、人為的なミスを減らせる点です。現場において、いくら熟練のスタッフでも人間である以上ミスが起きる可能性は否めません。そこで、品質チェックなどをツールで行ない、機械化することでミスを減らすことができます。
3つめは、生産管理ツールの導入によって各部門との連携が取りやすくなる点です。企業によっては、「生産管理部門」や「販売管理部門」など担当部門が細かく分かれている場合もあります。効率よく作業を進めるには、各部門が状況を把握していることが不可欠で、生産管理ツールの導入で、お互いにリアルタイムで状況のチェックができ、各部門の連携が取りやすくなります。
このように、導入によって生産活動を効率的に進められる生産管理ツールですが、一方でデメリットも存在します。
生産管理ツールのデメリット1つめは、ランニングコストがかかる点です。手作業やExcelなどでの生産管理と比較すると、生産管理ツールには安くない費用がかかります。
しかし、生産管理ツールによって無駄な設備や手間を省けた場合、長期的に見れば全体のコストを抑えられる可能性もあります。生産管理ツールの効果を出すために、導入時は利用のシミュレーションをよく行ない、5年、10年と長期的に利用することを見据えて製品を検討しましょう。
2つめは、生産管理ツールの導入で、逆に現場の負担が増える可能性がある点です。業務効率化を目的に生産管理ツールを導入したものの、逆に入力の手間が増えてしまった、というケースはよくあります。現場の混乱を防ぐためにも、生産管理ツールを導入する際は現場の意見をよく聞き、数ある製品の中から適切なものを選ぶことが重要です。また、製品導入後も状態を確認し、必要な機能があれば追加を検討するなどして改善に努めましょう。
まとめ
いかがだったでしょうか?
上手く利用することで多くの利益をもたらす生産管理ツールですが、機能が多い分しっかりと検討をする必要があります。これを機に生産管理ツールを導入し、是非自社の業務の効率化を進めてみてください。