社内で飛び交うIT用語に困惑していませんか。上司から「カットオーバー」という言葉を聞き、意味も分からずメモだけ取って、いざ調べようと思っている方に向けて「カットオーバー」だけでなく「カットオーバー」に似た用語も含めて、わかりやすく解説します。
カットオーバーとは?
カットオーバーは、「新しい情報システムを実際の業務で利用開始すること(本稼働)」「新しい情報システムをスタートさせる時点や時期」のことをいいます。
わかりやすくいうと「これからシステムを新たに稼働させていきます」という意味で、IT業界でよく使われる用語です。気になる方もいると思うので、カットオーバーの由来から説明していきます。
カットオーバーの由来
なぜカットオーバーを本稼働という意味で使うのだろうと思った方は多いと思いますので、由来について解説していきます。
森林を伐採して土地を開発する「cut over」が由来
「カットオーバー」は和製英語です。「cut over」とは「木を伐採した」という意味であり、「森林を伐採した土地で新しい仕事を始めること」を指します。徐々に「新たなシステムの稼働をスタートすることや、古いシステムから新しいシステムにバージョンアップすること」を意味するようになりました。
IT業界でよく使われる
カットオーバーはIT用語です。IT業界では既存システムから新たなシステムへの入れ替えやバージョンアップの作業を頻繁に行うため、カットオーバーという言葉がよく使われています。
カットオーバーの意味
開発者側とユーザー側からみたカットオーバーの使い方を深堀していきましょう。
開発者側から見たカットオーバーの意味
開発者側からみたカットオーバーは大きく分けて3つあります。それは「開発の完了」「サービスの稼働開始」「バージョンアップ」です。それぞれ詳しくみていきましょう。
開発の完了
ユーザーが新システムを稼働開始させるということは、新システムを作成した開発者側にとって無事に新システムをユーザーへ引き渡すことができたということです。つまり開発者側にとってカットオーバーとは「開発の完了」を意味します。
サービスの稼働開始
開発者が作ったサービスやシステムを稼働させることをカットオーバーといいます。
バージョンアップ
プログラムを改定する「バージョンアップ」を行う場合もカットオーバーという言葉を使います。たとえば「このプログラムのバージョンアップっていつカットオーバーするの?」と上司に問われたとしましょう。この場合たくさん出てきたカタカナ英語に臆することなく、単にプログラムを改定できる日付を答えればいいのです。
ユーザー側から見たカットオーバーの意味
今度は利用者側からみたカットオーバーの意味についてみていきましょう。
新しいシステムの運用開始
カットオーバーは開発者側にとってはプロジェクトの完了を意味します。それに対し、開発者が作ったシステムをこれから運用していくユーザーにとっては、カットオーバーは新システムの運用開始と言えます。
カットオーバーの使い方
これまでの解説でカットオーバーの意味や由来についてはお分かりいただけたと思います。今度はどのような場合に使うのか、使用する上での注意点はあるのかなどについて確認していきましょう。
カットオーバーが使われるケース
カットオーバーが使われる場面と同義語について説明していきます。せっかく意味を理解しても使うシーンを間違えるとカットオーバーの意味を理解せずに使っていると思われてしまいますので注意しましょう。
Webサイトのオープン
WEBサイトのオープン時にもカットオーバーが使用されます。使用パターンとしては「このWEBサイトのカットオーバーは11月1日です」というのが一般的です。
新システムへの切り替え
既存のシステムから新たなシステムへの切り替え時にもカットオーバーを使います。
カットオーバーの同義語
カットオーバーの同義語は「本番稼働」「本稼働」です。「サービスイン」もほぼ同じような意味で使われますが、微妙にニュアンスが違うので「サービスイン」については後ほど解説します。
使用時の注意点
カットオーバーを使う上で注意点を説明していきます。
海外では通じない
カットオーバーは和製英語です。「cut over」を日本語に訳すと「森林を伐採する」となるので、英語しか話せない方にカットオーバーと言っても伝わらない可能性が高く注意が必要です。
カットオーバーと似た用語
ここまで記事を読んでくれた方は、カットオーバー意味や使い方はわかっていただけたと思います。カットオーバーには、意味が似ているけど微妙にニュアンスが違う言葉があるので、そちらについても覚えておくとよいでしょう。
カットオーバーとローンチの違い
カットオーバーは新たな情報システムの使用をスタートさせる意味です。ローンチは、新商品を発売する、新たなアプリやWEBサイトを公開するという意味で使われています。よく似ていますがローンチは新サービスをお披露目するというニュアンスで使われるシーンが多いです。カットオーバーはバージョンアップの場合も使用しますが、ローンチの場合バージョンアップは新しい商品ではないため使いません。
ローンチは海外でも通じる
ローンチの語源は英語の「launch」です。意味は「進水させる」「発売する」「発射する、打ち上げる」「開始する」です。「発売する」や「開始する」がビジネス上で定着していき、ローンチという言葉がよく使われるようになったと考えられています。
カットオーバーとリリースの違い
リリースとはカットオーバーと同じく新商品、新システムを公開した際に使われます。カットオーバーはIT業界で常用されている言葉ですが、リリースは「新しい音楽アルバムがリリースされた」など世間一般でもよく使われるという点で違いがあります。
Webサイトやサービスの開始
WEBサイトや新サービスをスタートしたときにもリリースという言葉を使います。使用例をあげると「当社のホームページは11月1日にリリースされます」などがあります。
リリースは海外でも通じる
「リリース」とは、英語の「release」をカタカナ化した言葉で、「アルバムやアプリを発売・発表すること」「情報や記事などを発表すること」という意味です。和製英語であるカットオーバーと異なり、海外でも「release」といえば意味は通じます。
カットオーバーとサービスインの違い
カットオーバーとサービスインの違いについて確認していきましょう。
リリースと同義語
サービスインはリリースと同じ意味で使われます。なお、サービスインはIT用語なのでリリースに比べると一般認知度は低いでしょう。
ユーザーに公開するときに使う
「サービスイン」は、「ユーザーに向けて新サービスをスタートさせること」という意味で使われます。カットオーバーと同じくIT業界でよく使われています。カットオーバーとほぼ同じ意味ですので細かくおさえ分ける必要はないでしょう。サービスインは「サービスをインする=サービスをスタートさせる」というように意味を推測しやすいので、カットオーバーになじみのないIT業界以外の方への説明はサービスインを使うとスムーズに会話を進めることができます。
カットオーバーを行うときの注意点
最後にカットオーバーを行うときの注意点について説明していきます。用語の使い方ではありませんが、カットオーバーを行う上で起こりえることなので用語の使い方と合わせておさえておくとよいでしょう。
システムのトラブルに注意
カットオーバーを行う際にさけては通れないのがシステムトラブルです。
カットオーバー時はトラブルが発生しやすい
カットオーバーである新システムへの切り替え時というのはトラブルが発生しやすいといえるでしょう。優秀なエンジニアの方が作ったシステムであっても、カットオーバーするとプログラムにバグがみつかることや、利用者に想定外の使い方をされて対応に追われることが多々あります。
トラブル対応を想定してカットオーバーを行う
カットオーバー時はトラブルが発生するということを頭に入れてカットオーバーを行うことで、アクシデントが生じたときの対応を迅速に行うことができます。