プロダクトミックスとは?企業ごとの活用例、手順とポイントも解説

当サイトをご訪問頂きありがとうございます。今年は久しぶりに各企業で対面式の入社式が行われたようで、NHKの報道では8割以上と言いますので、コロナ禍も収まりつつあるようです。また、民間の予測では定期昇給を含む賃上げ率が2.85%まで上昇したと言います。これでいくらかサラリーパーソンの「財布のひもが緩むのでは」と思っていたら、2023年2月の全国消費者物価指数(INPC)上昇率は0.56%、過去12カ月の伸び率(年率)は7.62%となっておりますので、賃上げも物価上昇に飲み込まれてしまいそうです。

物価が上昇すると商品が売れなくなる可能性がありますので、企業は販売価格を抑えようと努力されています。それでも物価上昇圧力は強く4月以降も商品の値上げが続くようです。少しでも役に立つかなと思い、「プロダクトミックス」というマーケティング手法をとりあげますので、参考にしてください。

プロダクトミックスとは

プロダクトミックスは英語の「Product Mix」を日本語読みにしたものです。「Product」は製品・生産品・生産物などの意味があり、「Mix」は混合・構成などの意味がありますので、プロダクトミックスは「企業生産物の組み合わせ」という意味で理解できます。 

製品のラインアップ

プロダクトミックスを説明する際によく使われる言葉に「製品のラインアップ」があります。

ラインアップの英語の表記は「line up」と書きますが「一列に並べる、列に加わる」などの意味があります。製品の場合は「品揃え」の意味で使われることが多いです。ちなみに野球の場合は「ラインナップ」と発音し、「打順」を意味します。

製品のラインアップは、次の2点に配慮して対応する必要があります。

多様な消費者ニーズに対応

マーケティングではまず「消費者のニーズ」を把握することが第一です。しかし、近年は消費者のニーズも多様化しています。ベビーブーマー時代の「大量生産・大量消費」時代は終わっています。経産省が2022年1月に出した「新しい市場ニーズへの対応」を討議する資料では各世代の消費行動の特徴を次のように分析しています。

1 ベビーブーマー世代

消費はイデオロギー、三種の神器など、時代性を実感する消費行動

2 X世代(1960~79年)

消費は社会的地位、高級品やブランドなどステータスを表現する消費行動

3 Y世代(1980~95年)

消費は、「モノ消費」より「コト消費」学び、旅行等、豊かな人生への消費行動

4 Z世代(1996~2012年)

消費は個性の主張 倫理的で所有にこだわらない 徹底的なリサーチをする

国民の消費行動がこのように多様化しているなかで、どの世代にフォーカスするのか判断が求められます。

企業の戦略で決まる品揃え

マーケティングにおける「品揃え」は各企業が経営戦略を発揮することができるステージになります。その戦略を決める前に、企業のビジョンを考えることをお勧めします。企業のビジョンは経営層が考えるものと思われているかもしれませんが、新入社員でも就職した企業が10年後は「日本で製品の売上額がトップの会社にしたい」というような抱負があると思います。

その抱負を整理・肉づけして具体的な目標にすると「ビジョン」になります。ビジョンは企業のあるべき姿、つまり「ゴール」です。社是として掲げている企業もあります。このゴールに到達する方法として「どのような戦略が良いか」を検討することになります。この2つの軸があいまいだとマーケティングは失敗する可能性が高くなります。「困難が伴うかもしれないが、今回は若いZ世代を対象にしてみよう」と決まればその戦略を全社的に討論し、その結論に沿った「品揃え」を実施すると良いでしょう。 

企業の規模で異なるプロダクトミックス

「競争地位」という言葉をご存知でしょうか?産業界は業種によって異なることがありますが「大企業・中小企業・零細企業(ニッチェ企業)等」などに分類されるのが一般的です。これらの企業がマーケット活動する中で、マーケットシェア・経営資源の保有量や質・業界内の立ち位置などによってクラス分けされることを「競争地位」と言います。

仕分けかたは「リーダー」「チャレンジャー」「ニッチャー」「フォロワー」の4つになります。業界内でのポジションに応じて企業が取るべき戦略目標を提示しています。

リーダー企業のプロダクトミックス

リーダー企業は資金力・技術力・多様な販売チャネルなどを活かしてオールラウンドの対応ができますので、効果的なプロダクトミックスを取り入れております。ただ、競合他社との間では自社の特色を出したり、差別化に苦労しています。

チャレンジャー・フォロワー企業のプロダクトミックス

チャレンジャー企業は、リーダー企業が強化していない地域や製品分野でシェアを奪ったりシェアの小さい企業をターゲットにしてそのシェアを奪ったりして成長をめざしていますので、その過程で商品の差別化や価格設定を低く抑えることが必要な場合がありますのでプロダクトミックスを活用することが多いです。

フォロワー企業が収益性を高めるには、リーダー企業が目指さない中低価格志向の市場をターゲットにしている傾向がありますので、ここでもプロダクトミックスが有効活用されています。

プロダクトミックスの例

プロダクトミックスの例として、ここでは「自動車業界」「パソコン業界」「飲料業界」を取り上げてみます。

自動車業界のプロダクトミックス

「自動車業界のプロダクトミックス」については「トヨタ自動車」と「SUBARU」を取り上げます。

トヨタ自動車

製品のラインアップは企業の販売戦略により異なりますが、トヨタ自動車の場合はプロダクトミックス手法を上手に運用しています。車種は、セダン・クーペ・SUV・ミニバン・ステーションワゴン・軽など豊富に取り揃えており、セダンだけでも10種類以上あります。

また、ユーザーの属性を考慮し、高級車・大衆車・商用車のすみ分けもして、オールラウンドのマーケティング展開をしています。他方でトヨタ自動車の連結子会社である日野自動車は、バス・トラックに特化した自動車メーカーですので、見事なラインアップと言えます。

SUBARU

SUBARUは「2030年死亡事故ゼロ」をコンセプトに3つ目のアイサイトを搭載するなど安全性を重視した戦略が好評です。また、プロダクトミックスを活用したことが赤字回避につながったことを公言しています。

参考までにSUBARUの営業利益を見ますと2021年度第1四半期の連結決算は、売上が前年同期比39.0%増の6352億円、営業利益が295億円の黒字(前年同期はマイナス157億円)、当期利益が185億円の黒字(前年同期はマイナス77億円)と黒字経営を保っております。コロナ等で自動車産業が苦戦している中で健闘していると言えます。

パソコン業界のプロダクトミックス

「パソコン業界のプロダクトミックス」については、「Apple」「Lenovo」「DELL」をとりあげます。

Apple

Appleは現在iOS/iPadOS向けのアプリについて、同社運営の「App Store」の利用を義務付けており、アプリ内で利用するコンテンツへの追加課金についても、基本的にはApp Storeを経由したアプリ内課金の利用を必須としています。このことを問題視した公正取引委員会がヒアリングなどの調査をしておりますが、機種の独自性と優秀さなどから現在はトップランナーです。それでも前機種を購入した顧客が買い替えの時期に入っていますので、これらの顧客の引き留め策を検討しているようです。プロダクトミックスを活用して部品交換を行い価格をできるだけ抑える方法などの案が浮上しているそうです。

Lenovo

IDC Japanによりますと、2020年7~9月の国内シェアは、レノボ/NEC/富士通グループが44.7%のシェアを獲得したといいます。2020年4~6月の40.9%から3.8ポイント上昇したことになり、トップの座を揺るぎないものとしています。しかもブランド別シェアでは、レノボ・ジャパンがトップシェアを獲得しているそうですので中国パワーの凄まじさを感じます。人気の秘密は「耐久性が高い」「 ノートパソコンの品揃えが豊富」「ThinkPad」が人気」「セール割引率が高い」ことにあるようです。中国発のためセキュリティ問題や操作上のトラブルがかなり寄せられていますが、世界シェアでも第1位ですから驚きです。 人気商品があり、品揃えが豊富で耐久性があり、割引率が高ければ顧客が関心を寄せるのは当然ですね。

DELL

「特に力を入れているのが、デル テクノロジーズとしてのマーケットミックス・プロダクトミックスです。デル テクノロジーズが誕生して日が浅いため、日本には、デルのプロダクトを使っているがEMCプロダクトを導入していないお客様、反対にEMCを導入しているがデルを使っていないお客様が、まだ多くいらっしゃる。すでにお付き合いがあるお客様の中に、ホワイトスペースがかなり潜んでいるわけですね。これが、私たちのビジネスチャンスと捉えています。デルとEMCのプロダクトをミックスしながら、こうしたマーケットにアプローチしていけば、私たちはこのホワイトスペースを早急に埋めることができるでしょう。具体的には、私たちは今から2023年にかけて、ビジネスを大幅に拡大することを目標に置いています。そのために現在、人材の採用を進めている真っ最中なんです。いまお話ししたように、既存のお客様が持つホワイトスペースを一刻も早く埋め、ビジネスを少しでも早く拡大したいんですね。それには、社外の優秀なタレントを採用することが最良手だと考えています。」

以上はデル株式会社人材採用部長 田和 健介氏がDellの総合的戦略についてインタビューを受けた時の一部をピックアップして記載したものです。Dell社の将来性が期待できます。

飲料業界のプロダクトミックス

飲料業界のプロダクトミックスについては「サントリー」「アサヒ」「キリン」「サッポロ」の4社を取り上げます。

サントリー

サントリー社で現在特徴的なことは、インターネット上でノンアルコール飲料について首都圏の20~60代男女約3万人を対象に調査を行い、ノンアルコール飲料市場は今後も市場規模が拡大することを確信、2種類のノンアルコール製品の増産を決定したことです。定番商品の「オールフリー」と内臓脂肪を減らすという機能性を持たせた「からだを想うオールフリー」がそれです。秋の健康診断季節までに機能性を持たせた「からだを想うオールフリー」のキャンペーンを展開する予定と言います。普段当たり前のように飲む飲料水が内臓脂肪を減らしてくれ、動脈硬化や血栓のリスクを防いでくれれば助かりますね。 

 アサヒ

アサヒ飲料で現在特徴的なことは、従来の自社製品中心のマーケティングを「顧客中心」

にシフトさせたことと2022年3月29日にビールの「新生ジョッキ缶」を発売したことです。顧客中心にしたことは「とにかくお客様に喜んでもらえるような製品を提供したい」という意味合いが込められています。また、「新生ジョッキ缶」は、スーパードライが有名になりすぎて新製品の開発に進むことに逡巡があったためと言います。「製品開発は、常に前向きに取り組む必要がある」という教訓になります。

キリン

ビールで「一番搾り」のヒット商品をもつキリンは「世界一おいしい飲み物をつくる」をコンセプトとしてビールだけでなく「大規模カテゴリー」の構築にチャレンジしています。飲料水関係だけでも15種類以上がラインアップされています。キリンホールディングスとしてグループ企業が世界で事業展開をしており、今後もプロダクトミックスを重ねながら発展していくものと思います。

サッポロ

「乾杯をもっとおいしく」をスローガンに掲げるサッポロビールが現在一番注力しているのが「サッポロ生ビール黒ラベル」です。

「黒ラベルからお送りするキャンペーンやコンテンツでより深い黒ラベルの世界を存分にお楽しみください。」というプレゼンテーションの下に、パーフェクト黒ラベルが飲める店やイベントが紹介されています。聖地の銀座にも進出していますよ。

プロダクトミックスの手順

ここからは「プロダクトミックス」の手順について述べます。

重視する点

プロダクトミックスの手順の中で「重視する点」は「製品に一貫性の視点を持つこと」

と「部品の共有などの関連性」を知ることです。

製品に一貫性の視点を持つ

「プロダクトミックス」は前に述べたように「製品の組み合わせ」ですから、その組み合わせに統一感がないと顧客の印象を悪くして、購買行動に移ってくれずマーケティングの目標である「売り上げの最大化」を失することになる恐れがあります。製品には常に一貫性の視点を持つことが要求されます。

部品の共有などの関連性

「部品の共有などの関連性」を把握することも重要です。例えば、自動車を製造する場合、車の種類によって使う部品が異なります。それでも同じラインであれば共有できる可能性があります。常に部品の共有化を頭において生産活動に利用すると、コストを削減することができます。

プロダクトミックスの分析

プロダクトミックスを取り入れる場合は、中途でその分析をすることも必要です。

「利益追求をする」「コストカットをする」という問題だけでなく「新製品の開発をする」際にも重要です。

利益追求とコストカット

利益追求とコストカットは常に一体的なものであると考えられていますが、例えば新たなプロダクトミックスを利用することで付加価値産業を考えたり「ニッチェ市場」をターゲットにすることでコストカットが必要ない局面が生まれることがあります。ポジティブ思考で新分野のビジネスを考えてみましょう。

新製品の開発にも有効

上記のような発想は「新製品の開発にも有効」です。事前準備としてできるだけ多くの顧客と知り合いグループ化してニーズ把握に努めたり、ニッチェ市場を徹底して調べるようにします。

図表の利用

図表の利用は「製品の特長を理解する」「プロダクトミックスを視覚的に理解する」「製品同士のバッティングを避ける」ことに役立ちます。

製品の特長を理解

実物そっくりの「図」があればすぐにその特長がわかります。

プロダクトミックスを視覚的に理解

プロダクトミックスについてテキストで説明を受けてもイメージがわきませんが、図表だと視覚的に理解できます。

製品同士のバッティングを避ける

一覧表になっていれば、製品同士のバッティングがあればすぐ分かります。

プロダクトミックスのポイント

プロダクトミックスのポイントとして「営業利益」と「限界利益」を取り上げます。

営業利益と限界利益

営業利益と限界利益の違いは、限界利益は固定費が引かれていないのに対して、営業利益は固定費が引かれていることです。そのため、営業利益が赤字でも限界利益は黒字になることがあります。営業利益が黒字にならないとプロダクトミックスを実行した意味がありませんので次のような措置を取ることがあります。

変動費・固定費の回収

売り上げ高から変動費を差し引いた残額(限界利益)で固定費を回収するという考え方です

赤字の製品を改善

アイテム統廃合の促進、値戻し・値上げ、外製化、原価低減などが改善につながります。

統廃合も検討に

アイテムの統廃合を検討する考え方です。

採算性の高い製品を優先

採算性の高い製品へ販売移行し、アイテムの統廃合も必要です。

時間当たりの利益

時間当り限界利益率の高いことが求められます。

営業評価基準の見直し

営業評価基準は、商談の金額の大きさや顧客が大口であったかなどを評価の基準にするものです。

生産基準の設定

生産基準は収益の認識基準のひとつで、販売される前に、生産段階で生産の終了した分につき収益計上する基準です。


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