「オフショア開発」「オフショア投資」など、ビジネスや金融で「オフショア」を選択肢に入れることが増えていますが、一体どういった意味で使われているのでしょうか?
この記事ではオフショアの意味やメリットデメリット、成功のポイントについて解説していきます。
オフショアの意味とは?
オフショアは主に金融業界やIT等ビジネスの場において使われることの多い用語ですが、業界によって異なる意味で使用されます。
「岸から離れる」が語源
オフショアという単語は off(離れる)-shore(岸)が語源とされており、「離れた場所で何かする」という意味を持っています。
「海外」という意味で使われる
陸から離れた場所、つまりオフショアは「海外」を指します。オフショアには複数の意味がありますが、その多くは海外や海関連です。
例えばサーフィンの用語でもオフショアが使われています。
事業のグローバル化
ビジネスにおいては、海外という意味からグローバル化と密接に関わっています。特に昨今では企業の海外進出が目立ち、それに伴いオフショアという文字を多く見かけるようになりました。
ビジネスにおけるオフショア
ビジネスにおいて、オフショアとは企業の行っている生産事業を海外に委託、もしくは移管すること(オフショアリングとも呼ばれる)で利益を上げる行為を指します。
海外で事業を展開
オフショアは海外で、単純作業やシステム制作等様々な業務を行います。
似たような言葉にアウトソーシング(業務委託)があります。
これは国内外を問わず使用されますが、オフショアは国外の場合のみです。
おもに発展途上国を指す
海外と一口に言っても、委託先は発展途上の国になることが多いです。例えば日本のオフショア先は中国が多くを占めています。
オフショアの目的
オフショアは経営や事業の効率化が主な目的であり、それにより事業拡大や会社自体の発展が期待できます。
コスト削減
オフショアによって、企業は人件費をはじめとする諸々のコストを軽減できます。海外を上手く活用しコスト削減を図ることがビジネスにおいてのオフショアの大きな目的の一つとなります。
物価の安い地域で操業
特に途上国は物価が先進国に比べてかなり低く、予算内での必要資材の確保が容易になるといった利点があります。
人件費の削減
海外諸国によっては、既存の拠点よりも人件費が大幅に安くなり事業や会社経営にとって有利に働きます。
業務の移管や委託
オフショアの対象とする業務を移管するか委託するかも検討すべきポイントです。
それぞれの違いは次の通りです。
海外子会社を設立
移管というのは、単純に業務を依頼するのではなく子会社の設立などで業務に対する権限や責任を移すことを表します。
海外に新たな拠点を設けるため資金の出資や人材確保をしなければなりませんが、ある程度移管先に指示や管理を行うことができます。
現地企業に委託
オフショアは海外の現地企業への業務委託も指しますが、委託内容は多岐に渡ります。
例えば事業のうち、単純作業の部分のみを委託する場合もありますし、技術的に自社が不可能なもの(業務管理システム等)の製作、導入という重要なものを委託する場合もあります。
業界ごとのオフショア
冒頭でオフショアには複数の意味があると説明しました。ここでは、よく使われる業界として金融業界とIT業界におけるオフショアについて紹介します。
金融業界のオフショア
金融においても、やはりオフショアは海外を対象として用いられる単語です。
これに加え、租税回避地(タックスヘイブン)と呼ばれる概念が深く関わってきます。
海外での金融取引
金融のオフショアは一般に税制優遇のある「租税回避地」が使用されます。租税回避地はルクセンブルクやモナコといった一部の国々や地域が該当し、海外企業の間で金融取引が活発に行われています。
税制上の優遇措置もあり
租税回避地は途上国やモノカルチャー経済の国々に多く、経済発展のためあらゆるサービスやモノの課税が著しく低く設定、あるいは撤廃されています。
IT業界のオフショア
オフショアはIT業界においても大きな役割を担っています。
海外の企業を活用して開発を行う「オフショア開発」といった手法もあり、日本では今後一層耳にする機会が増えるでしょう。
国内の人材不足を反映
近年、日本のIT人材は不足しているという見方が強いです。
技術面で対応ができない企業の助け舟として、オフショア(海外委託)をするということが時代の流れとなっています。
勤勉な海外の人材を活用
また、IT分野においては海外のほうが優秀な場合もあります。
特にIT技術が発達しており委託先としても選ばれやすいインドでは第二外国語である英語が話せることと向上心の強さといった国民性を強みとしており、国内で探すよりも能力もあり勤勉な海外の人材を活用することが増えています。
オフショアのメリットとデメリット
ここまでオフショアとは何か、業界ごとの違いやその内容について取り上げてきました。
ここで改めてオフショアのメリットとデメリットについても説明します。
オフショアのメリット
オフショアのメリットは大きく分けて「コスト削減」と「優秀な人材確保」の2つです。
コストが削減できる
まず、どの業界においてもオフショアの大きなメリットにコストの削減があります。
人材を確保できる
企業内、もしくは国内で要求に合う人材を確保するというのが難しい場合でも海外を活用することで人材確保の範囲が広がります。
オフショアのデメリット
一方で、オフショアにはデメリットがあることも確かです。
ビジネスでオフショアを行うにあたって意識しておく点があります。
言葉の壁がある
異国である以上、どうしても言語の違いはあります。
技術の進歩で翻訳機能も発達しているとはいえ、それだけでは不十分です。加えて目に見えない文化の違いから思わぬ問題が起きることもあるでしょう。
管理が行き届かない
更に、委託にせよ移管にせよ、離れた場所や人々に業務を任せる、または取引を動かすことになるため管理が難しくなります。
ネットワークによってある程度は対処可能ですが、リアルタイムで指示が通らないことや、トラブルが知らされない、気付けないというリスクは大きいです。
オフショアとニアショアの違い
オフショアの他にニアショアという用語もあります。オフショアと近い関係であることは予想が付くと思いますが、その違いについて説明します。
ニアショアとは?
業務委託を行うという点はオフショアと同じですが、ニアショアは海外を活用しないということが挙げられます。
海外ではなく国内地方都市へ委託
ニアショアは、首都圏から離れた国内の地方都市への業務委託をします。
首都圏は人件費などの費用面全般が高く負担が大きいため、比較的安価な地方へ委託することによってコストの削減を図ります。
目的はオフショアと共通する
委託先が海外か国内かという違いはありますが、コスト削減がオフショア・ニアショア両方の大きな目的になっています。
ニアショアのメリットとデメリット
やはりニアショアにもメリットとデメリットが存在しますが、オフショアと比べ小さいものとなります。
ニアショアのメリット
ニアショアのメリットは、オフショアにおけるデメリットがないことです。
言語の壁や管理の困難性を気にする必要がなく、オフショアと同様のメリットを享受できることが大きなメリットです
ニアショアのデメリット
反面、オフショアにあるメリットが薄まるというのが最大のデメリットです。
地方都市への委託でのコスト削減効果は、海外への委託と比べると少なくなります。また、地方への委託・移管では人材確保の問題は解決しづらいです。
オフショアを成功させるポイント
オフショアにはメリットと同時にデメリットがあります。
デメリットに対処できればリスクは下がります。
オフショアを成功させるにあたって考えられる問題を取り上げます。
費用対効果
ビジネス上なるべく赤字や薄利は避けたいところです。
オフショアは有用ですが、利益を上げるためには起こるであろう課題を抑えていく必要があります。
コストに見合った成果
言語の壁や管理の難しさがあるオフショアでは、コミュニケーションの行き違いから思った成果が出ないことがあります。移管・委託する際は内容を明確にすり合わせることが必要になってきます。
人材の質を確保
委託や移管で実際に動くのは人である以上、性格や能力が業務に適しているか見定める必要があります。
コミュニケーション
異文化というのは、目に見えない水面下のところまで私達に染み付いています。
オフショアを検討するのであれば外国人の方と業務や課題を共有できるレベルでのコミュニケーションが必要です。
お金と直接関係ないため軽視されがちですが、円滑な業務遂行のためには肝要なポイントです。
管理体制の確保
特に移管の場合、海外に子会社を設けるというのはハイリスクでもあります。管理ができずに問題を起こしたとなれば、責任を問われるからです。報連相を徹底するだけでなく、国の違いを意識して移管先と緊密に話し合うことが重要だと言えます。
異文化の理解
相手の文化を知識として身に付けることが、理解に役立ちます。
例えばITに強いと取り上げたインド人は、待ち合わせ一時間遅れても気にしないほど時間にルーズと言われていますが日本人からすれば非常識のレベルでしょう。個人にせよ企業にせよ、すり合わせるのに努力が必要な箇所かもしれません。
まとめ
オフショアについて解説しました。
グローバル化が進む現代で、この用語はますます一般的になることでしょう。
しかし多くの企業がオフショアを採用するに伴い、今までの主だった委託先の国でも人件費が上がるなど状況も変化しており、一概に利益を上げる効果があるとは言い切れなくなっています。
自社にとってオフショアを利用するメリットとデメリットどちらが大きいか、この記事を検討の参考にしてみてください。