ユニバーサルデザインとは?意味や定義、目的や導入例も解説

当サイトをご訪問頂きありがとうございます。近年は企業の社会貢献が求められたり、日本でも急激な気候変動がめだつようになり、SDG’s関連の業務にも政府が貢献することを求めていますので、貴社もそれらに協力する方針をお持ちで当サイトをご訪問いただいたものと思います。ユニバーサルデザインはこれまでにない発想ですので世界の国々が実践すれば、どこの国を訪問しても「住みやすい国である」ことが実感できるようになります。ここでは、ユニバーサルデザインの意味や定義、目的や導入例もピックアップしておりますので、是非参考にしてください。

ユニバーサルデザインの意味

ユニバーサルデザインは「普遍的なデザイン」という意味があります。また、「デザイン(design)」には「製造物や建造物などの設計図・見取り図」あるいは「部品などの配置」なども入り、ユニバーサルデザインという言葉は幅広く使用されています。

「普遍的な」という意味の英単語が語源

ユニバーサルデザインは英語の「universal design」を日本語のカタカナ読みにしたものですが、Web 専用辞書の英辞郎で調べても日本語訳は「ユニバーサルデザイン」になっております。その説明でカッコして「〔障害者・高齢者に限らず〕誰にとっても使いやすい設計[仕様・形状・構造]」と記載していますので、ユニバーサルデザインと呼ばれている制度・製品・施設・設備等々を我々は知らないで使っているかもしれません。ユニバーサルデザインという言葉を分解して「ユニバーサル」で検索すると名詞として「普遍的特性」、形容詞として「全世界の、世界共通の」と言う意味が搭載されていますので、「普遍的な」という意味の英単語が語源であることが分かります。

すべての人が利用しやすいデザイン

ノンステップバスに乗って駅近くのバス停で下車すると駅までの歩道が整備されているのに気付きます。目が不自由な方のために設置された「点字ブロックが駅まで設置されている」「車椅子が必要な方のために駅までの通路は段差がない」という風景をよくみかけます。障害をもつ人ともたない人が平等に生活する社会を実現させる「ノーマライゼーション」の考え方を具現化したものと言うことができます。さらに駅への通路を進むと駅の改札口近くに出ることができる大きなエレベーターの乗り場に着きます。このエレベーターは全ての人が利用できます。車椅子の人や乳母車の人がいれば乗れる空間を作ってくれる人たちがいます。エレベーターが動き始めて、改札口に近い場所に到着すると車椅子でも楽に通過できる幅が広い改札口があります。ご経験がおありでしょうか?

この駅は「すべての人が利用しやすいデザイン」になっていることが分かります。

ユニバーサルデザインの定義

地方自治体なども市民啓発のためにユニバーサルデザインの定義をのべて、実際にとりいれた施設や設備などを紹介している市区町村が増えつつありますが、国における推進の中心となる国土交通省はユニバーサルデザインを次のように定義しています。

「ユニバーサルデザインはあらかじめ、障害の有無、年齢、性別、人種等にかかわらず多様な人々が利用しやすいよう都市や生活環境をデザインする考え方」としております。

この考え方に沿って都市や生活環境をデザインするには「利用者の視点を重視する」ことや「制度や構造などに広い意味を持たせる」ことが必要です。

利用者の視点を重視

デザインされた「制度・施設・設備・製品」等はそれを利用する全ての人が快適に使えるものであることが要求されます。それを実現するには「利用者の視点を重視」する必要があります。「障害があっても」「高齢者から子どもにいたるまで」「性別に関わりなく」「人種にも関わりなく」すべての人が快適に使えるように試作段階から広範囲の人による体験を積み上げていくことになります。

制度や構造など広い意味を持つ

試行錯誤を積み重ねて完成した制度や施設・設備・製品などはそこで終了するのではなく更なる快適性を求めて発展し続けることが大切です。ユニバーサルデザインは完成しても更なる快適性を追求するため「制度・構造物や製品などに広い意味を持つ」ことを知っておく必要があります。

ユニバーサルデザインの歴史

どのような経過でこのような考えかたが生まれたのか知っておくと役に立ちますのでユニバーサルデザインの歴史を振り返ってみます。

デンマークのノーマライゼーション

厚生労働省は「ノーマライゼーション」について「障害のある人が障害のない人と同等に生活し、ともにいきいきと活動できる社会を目指す」という理念であると述べています。このノーマライゼーションという理念は福祉国家として世界に名を知られている北欧のデンマークから発祥したものです。

第2次世界大戦が終わり世界がやや落ち着きを取り戻し始めた1950年代に、知的障害のある子どもを持つ親たちが知的障害者施設内で非人間的な扱いを受けていることを知り、その状況を改善する運動を始めました。それを受けた行政官のN・E・バンク-ミケルセンが「どのような障害があろうと一般の市民と同等の生活と権利が保障されなければならない」という考え方を提唱し、1959年にデンマークの法律として成立したのが始まりです。

人権を重視する国ならではの対応の速さです。

米国のADA

このような考え方は1973年に米国で制定されたADA法に反映されています。

ADA法の正式な名称は「障害をもつアメリカ人法」と呼ばれ、障害を持つアメリカ人法(Americans with Disabilities Act : ADA)」と「リハビリテーション法(Rehabilitation Act)」から構成されています。障害者に対する総合的な施策として連邦政府の国家的責任を明確に打ち出しております。1例をあげますと、「連邦政府の資金を受けている州及び地方自治体のプログラムやサービス等に対して平等のアクセスを障害者に提供する義務がある」とする規定があります。

このように、行政側は障害者のノーマライゼーションを進めますが、ユニバーサルデザインの定義で述べたような考え方は、既に故人になられておりますが、「ユニバーサルデザインの父」と言われるロナルド・メイス教授です。

メイス教授の提唱

ノースカロライナ州出身のメイス教授は9歳の時ポリオに罹患し、以後は車椅子生活を余儀なくされます。ノースカロライナ州立大学で1966年に建築学の学位を取得して卒業しますが、車椅子だと図書館などへのアクセスも制限されて苦労したそうです。そのような経験が動機となって初めから誰もがアクセスできる施設や設備を作るべきだと提唱するようになります。その考え方が現在のユニバーサルデザインにつながっています。

日本にも浸透

日本にユニバーサルデザインの考え方が伝わったのは1990年代の前半でした。

その頃は企業も余裕がありましたので、ハード整備面でこの考え方を受け入れ整備を進めたといわれています。(「UD」はユニバーサルデザインの略語ですのでそのマークがあればユニバーサルデザインです)

その契機となったのが、1964年に東京でパラリンピックが開催されたことでした。車椅子以外の障害を持つ選手も参加し、我が国の障害のある人々の社会活動参画を促すという大きな成果をあげております。2020年のパラリンピックは「2020行動計画を作成するなどユニバーサルデザインの考え方を取り入れた運営がされております。  

バリアフリーとの違い

ユニバーサルデザインとバリアフリーとの違いは「物理的な障壁の除去にとどまらないこと」「ユニバーサルデザインは社会的・心理的障壁にも適用されること」にあります。

物理的な障壁の除去にとどまらない 

バリアフリーは、例えば車椅子であれば歩道の段差をなくす、目に障害がある場合は点字ブロックを設置するなど物理的な障壁を除去することで対応する考え方ですが、ユニバーサルデザインは「障害の有無、年齢、 性別、人種等にかかわらず多様な人々が利用しやすいよう都市や生活環境をデザインする」考え方です。

社会的・心理的障壁にも適用

「障害のない人を前提に作られた社会的制度や仕組みは障害のある人にとって心理的にも社会的にも障壁になりうる」と考えられており、ユニバーサルデザインはその対応にも有効であるとされています。

ユニバーサルデザインの目的

ユニバーサルデザインの一番大きな目的は「すべての人が安心して暮らせること」を実現することです。

すべての人が安心して暮らせること

すべての人が安心して暮らせることを実現するためには「利用しやすいデザイン」を考案したり「物理的な障壁以外にもこの考えを反映させる」必要があります。

利用しやすいデザイン

例えば、ユニバーサルデザインの考えをもとに企業が製造・設置した自動販売機の特徴を見ますと次のようになっています。

1 商品選択ボタンが低い位置にもある

2 商品の取り出し口が従来の販売機より高い所にある

3 コイン投入口やおつり取り出し口が受け皿になっている

4 低位置メニュー機能により低位置からも選びやすい

などの特徴があります。パーフェクトではありませんが、身体状況が異なっても扱いやすいように工夫されています。

物理的な障壁以外にも反映

物理的な障壁のみならず、社会的、制度的、心理的なすべての障壁に対処するという考え方を言います。また、施設や製品等については新しいバリアが生じないよう誰にとっても利用しやすくデザインするという考え方も含まれます。

ユニバーサルデザインの7つの原則

ユニバーサルデザインを導入する場合は「公平性・自由度・単純性・明確さ・安全性・負担の少なさ・空間性」の7項目をクリアする必要があります。

公平性

全ての人が公平に利用できることを意味します。例えば、「自動ドアがある」「階段には手すりがついている」「歩道には段差がない」などが該当します。

自由度

施設などを使う時に選ぶことができる自由を意味します。例えば、「施設に階段・エスカレーター・エレベーターが併設されている」「多機能トイレがある」などが該当します。

単純性

使い方が簡単で直観的に分かることを意味します。例えば、製品で言えば「手に持っただけでシャンプーかリンスかが分かる」「洗面台で蛇口に手を向けただけで水が出てひっこめると止まる」などがあげられます。

明確さ

明確さは欲しい情報がすぐ分かることを意味します。例えば、駅のホームの案内表示が「多言語やひらがな」で対応している、あるいは案内の「アナウンスも多言語である」などが該当します。

安全性

安全性は使用時に心配なく使えることを意味します。例えば、危険防止機能がついている家電などが該当します。最近は電子レンジなど多くの家電に危険防止機能がついています。

負担の少なさ

使用する時に体への負担が少なく無理なく使えることを意味します。例えば、「水道のレバー」や「レバーハンドル式のドア」が該当します。

空間性

空間性は十分の大きさや広さが確保されていることを意味します。例えば、「多機能トイレ」や「手のひらで押しても使える電気スイッチ」などが該当します。

SDG’sとの共通点

SDG’sは地球の温暖化を防ぐために「だれ一人取り残さない」ことをコンセプトに17の目標を掲げていますが、「質の高い教育」「不平等の撤廃」「住み続けられるまちづくり」の3つの目標で「ユニバーサルデザイン」と共通点があります。

質の高い教育

SDG’sの目標4は「質の高い教育をみんなに」と題して、国籍や性別、経済力などに関わらず、すべての人が学べる環境を整えることを掲げています。

不平等の撤廃

・目標10は「人や国の不平等をなくそう」と題して「性別・年齢・障がいの有無・国籍・人種・宗教・難民・性的マイノリティなどさまざまな不平等を克服して多様性を認め、すべての人が活躍できる社会を目指すことを掲げています。

住み続けられるまちづくり

・目標11は「住み続けられるまちづくりを」と題して、過密化や大気汚染やゴミ問題、格差の拡大、犯罪などの問題の深刻化を克服して、「誰もが暮らしやすい街づくりを目指す」ことを掲げています。

いかがでしょうか?いずれも先に述べたユニバーサルデザインと共通点があることが分かると思います。

ユニバーサルデザインの導入例

日本でもユニバーサルデザインの考え方を取り入れた施設や製品が急速に増えていますので、代表的なものをいくつかご紹介します。

公共施設

公共施設関係では「自動ドア」「自動販売機」「ピクトグラム」「センサー式蛇口」などをあげることができます。

自動ドア

江戸時代の笑い話に「殿様がふすまの前に立つと家臣があけてくれるので自動的に開くと思いこんでいた殿様が、戦が始まり家臣がいなくなってふすまに頭をぶつけた」というのがありますが、自動ドアはユニバーサルデザインの代表的な例と言えます。最近はタッチ式のものもありますが、小さなお店でも導入していますので普及率が一番高いと思われます。(サーチしたところ毎年10万台以上売り上げており普及率は世界一でした。「全国自動ドア協会の現況から」)

自動販売機

自動販売機につきましては代表的な例を先述しましたが、ユニバーサルデザインを導入しているものを3つ紹介します。

1 ジャパンビバレッジユニバーサルデザイン機

2 伊藤園ユニバーサルデザイン自動販売機

3 Acureイノベーション自販機

です。

ピクトグラム

ピクトグラムは英語の「pictogram」をカタカナで読んだものです。日本語では「絵文字」

「象形文字」などと呼ばれ、何らかの情報や注意を示すために表示される視覚記号を言います。ユニバーサルデザインの1つで、どんな人でもわかりやすく、一目で理解して正しく行動することができるよう促すために使われます。言葉に代わる伝達手段として、コミュニケーションツールの役割も担います

センサー式蛇口

センサー式蛇口はユニバーサルデザインのコンセプトそのものを表現している器具で手に障害がある人や握力が弱い人だけでなく、一般の人も清潔な手を保つのに役立っています。

生活用品など

生活用品関係でユニバーサルデザインの考え方を取り入れた例として「シャンプーのボトル」「両開きの冷蔵庫」「利き手を問わない文房具」「紙幣」などがあげられます。

シャンプーのボトル

花王の製品で、シャンプーのボトルにギザギザ状の刻みがつけられたものがありますが、触っただけでシャンプーかリンスか判別できるようにつけられたものです。目が不自由な人はもちろん、そうでない人も洗髪中は目を閉じていますので助かります。

両開きの冷蔵庫

両開きの冷蔵庫もユニバーサルデザインの考え方を取り入れているものが多く販売されています。冷蔵庫は基本的に家族全員が利用しますので、両開きにすることで子どもから高齢者まで苦労しないで中の食品や飲み物等を取り出すことができます。例えば、一番下にあったコンプレッサーを上に持ってきて品物を入れる容量を増やすと同時に中身が見えるような配置にしています。特に高齢者は野菜を好んで使いますので、野菜室を中央に配置して楽に取り出すことができるようにデザインするなどUDの精神が色々なところで活かされています。  

利き手を問わない文房具

ユニバーサルデザインの精神は文房具にも及んでいます。これまでは右利きの文房具が中心でしたが、例えば、左利きでも楽に使える定規、手の力が弱い人でも使えるハサミなど子どもや高齢者でも使える文具が増えています。

紙幣

ユニバーサルデザインの精神が紙幣にまで及んでいることをご存じでしょうか?現在の紙幣でも目の不自由な人が触って分かるようになっていますが、2024年に出回る新しい紙幣はマークの配置がそれぞれ違うため、触っただけでどんなお札か分かり易くなるそうです。また、肖像の透かしが入る部分の位置がお札の種類によって変わるそうです。紙幣ごとにホログラムの形状や位置も変え、紙幣をよく使う人でも違いがわかりやすくなったといいます。さらに、数字の大型化もされているそうです。

(参考:新1万円札は渋沢栄一、新5千円札は津田梅子、新千円札は北里柴三郎と図柄が大きく変わります。)


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