ペンディングとは?例文による使用例の紹介や注意点も解説

英語で「業界用語」の意味で使われる言葉に「バズワード(buzzword)」というのがありますが、その他の意味として「キャッチフレーズ・スローガン・もったいぶった言葉」などの意味で使われることもあります。また、特定の業界内だけで使われて他の業界では意味が分からない言葉として「ジャーゴン(jargon)」が使われたりします。

二者択一の質問を貴ぶ(たっとぶ)英米国でもビジネス関係では用語に気を使っているようです。その1つに「ペンディング(pending)」があります。この「ペンディング」という言葉が日本のビジネス・ワールドにフィットしているようですので、企業に初めて就職した方は先輩から「その件はペンディングにしよう。」と言われると、何となく「先送りかな?」と想像はつくかと思いますが、正確な意味は分からないかもしれませんね。ペンディングは使い方によってビジネス遂行上でメリットがありますが、使い方を誤ると恥をかくこともありますので取り上げます。例文による使用例の紹介や注意点も解説しますので参考にしてください。

ペンディングとは

グーグルが提供するオックスフォード辞典で調べてみますとペンディングについての定義は「決定もしくは合意(解決・裁定・和解・調停等を含む)待ちの状態を言う」となっていました。(awaiting decision or settlement.原文の一部)

ペンディングの意味

また、日本のウェブ英和辞典「英辞郎」でペンディングについて調べると「未決の、中ぶらりんになっている」という和訳がでていますのでペンディングは「ぶら下がる」という意味の英単語が由来と言うことができます。

「ぶら下がる」という意味の英単語が由来

英辞郎には「ぶら下がる」以外にも「未決の、未決定の、決着のつかない、審理中の、保留中の、決着がつかない」などの意味が記載されています。

「未解決の」「保留中の」などの意味を持つ

このような状況から判断しますと、日本語は豊かな表現が沢山ありますので、例えば「未解決の」は「決まらない・未決着の・解決しない・未決の」などの言葉で言い換えたり、「保留中の」は「繰り延べ中・引き延ばし中・見合わせ中」などの言葉で言い換えることはできますが、ペンディングの意味を含めて正確な言い換えをすることはかなり難しく思われます。このような事情や外来語であることも含めて、ペンディングがそのままカタカナ読みにして使われているのではないかと思われます。

ちなみに日本におけるペンディングの由来を調べたところ、「ペンディングという言葉は、もともと英語の(pending)が由来となっており、英語の(pending)には『ぶら下がる』という語源がある。そこから転じて『未解決の、保留の、宙ぶらりんになっている』などの意味を持っている」

という説明がありました。すぐ結論出すのを躊躇した時に使える便利な言葉です。 

ビジネスにおけるペンディング

「ペンディング」という言葉を最近はたまに日常会話でも聞くようになりましたが、ビジネスシーンでは会議をしていて議長などがまとめに入る時に「それでは、この案件についてはペンディングにさせていただきます。」と言うのをよく耳にします。

「保留」「先送り」などを意味する

この場合は、その案件は「保留にする」あるいは「先送りする」という意味で使われています。

マイナスイメージを避ける目的もある

例えば会議をまとめるに当たって議長が「この案件は『保留にさせていただきたいと思いますがいかがでしょうか?』」と提案するのと「この案件は『ペンディングにしたらいかがでしょうか ?』」と提案するのを比較すると、ペンディングの意味が分かっていれば後者の方が前向きと捉えることができます。ビジネスを進展させるには「マイナスイメージを与えることはできるだけ避けたい」という目的でペンディングが使われることもあります。

ペンディングの使用例

ビジネスシーンでプロジェクトなどを組織して会議をしている時に「ペンディング」という言葉の使い方を誤るとビジネスに影響することがあります。ここではペンディングの使用例を取り上げてみます。

基本的な使い方

基本的な使い方として「ペンディングにする」「ペンディングになる」「ペンディング状態」「ペンディング中」「ペンディング事項」の5例を取り上げます。ビジネスシーンで使う時の参考にしてください。

ペンディングにする

ビジネス会議などで「ペンディングにする」と言う場合は、発言者の意思が強く反映されることになりますので言い方に細心の注意が必要です。会議出席者の大部分がペンディングの意味を知っていると思われますので丁寧な口調はもちろん「ペンディングにする理由」「いつ頃までか」「ペンディング中の対応」「結論判明後の対応」などを説明することで単なる先送りではないことを理解してもらえます。

これはあくまでも仮定のストーリーですが、例えば、A社とB社が企業連携で連絡会議を設立し検討している時に、独占禁止法に抵触する可能性があるので説明するよう公正取引委員会から求められたとします。

【適切と思われる対応法⇒議長提案】

「本日も両社による熱心なご討議をいただき本当にありがとうございました。お陰様で企業連携についての大枠が次回のミーティングで提案できるものと思っておりますが、関係当局から独禁法に抵触する部分がないか確認するため説明を求められております。そのため両社から2名ずつ代表を選出して対応したいと考えております。つきましては、この問題が解決するまで、この連絡会議をペンディングにさせていただきたいと存じます。代表にご選出いただいた4名で対応策を練って皆さんにお知らせさせていただくと同時に、当局のご了解がいただければ直ちにこのミーティングを再開したいと考えております。以上ご提案させていただきます。」 

このような提案をすれば、ペンディングの理由と今後の進行が分かりますので、納得してもらえると思います。

ペンディングになる

「ペンディングになる」と言う場合は、発言者の意思ではなく客観的な情勢報告と考えられます。前に仮定したストーリーの延長線上で考えると次のような対応が適切と思われます。

【議長の報告と対応法の提案】

「公取委への説明を3回程させていただきましたが、前例がなく時間をかけて慎重に判断したいという意向が示されております。このまま両社で企業連携に向けて突っ走ると『ペンディングになる』可能性が高くなりますので、しばらく様子見の時間を設けたいと思いますがいかがでしょうか?」

ペンディング状態

「ペンディング状態」もやはり客観的な状態の確認になりますが、その状態を突き破って新たな局面に進む提案をするチャンスと前向きに捉えることもできます。例えば、次のような提案が考えられます。

【代表者の提案文例】

「企業連携についていつまでも放置しておくことは両社にとって大きなマイナスを抱えることになりますので、その後も公取委と何度もコンタクトを取って方向性の提示をお願いした結果、条件付きでペンディング状態を解除してもよいという回答がありました。これを契機に両社の絆をより強化したいと思いできるだけ早い時期にミーティングの再開を計画したいと考えておりますがいかがでしょうか?その際に提示された条件についてもご討議いただきたいと思います。」

ペンディング中

「ペンディング中」の場合は既にペンディングの状態になっているわけですから、その事実確認をしたうえでこれからの対策を協議するなど前向きな姿勢が評価されます。

【代表者のメッセージ文例】

「両社の企業連携は独禁法上の規程に反する可能性があると公取委からご指摘をいただきペンディングにさせていただきました。しかし、公取委の事情聴取に両社代表が積極的に応じてご説明をさせていただいた結果、条件付きながらペンディングの解除ができる方向に進んでおります。両社の企業連携は消費者へのサービス向上に不可欠ですので協議を再開させていただくことにいたしました。よろしくご協力のほどお願いいたします。

ペンディング事項

ビジネスシーンで「ペンディング事項」と言う場合は、ビジネス遂行上で「保留されている事項」という意味になります。いつまでも「保留されている状態」は好ましくありませんので解決策を検討する必要があります。

ペンディングの例文

ペンディングにする場合の例文を「社内で使用する場合」と「社外で使用する場合」に分けて紹介します。

社内で使用する場合

社内会議は経営戦略などを検討するプロジェクトが多いと思いますがペンディングを使用する場合は、次の2つのケースが想定できます。

1 議論百出で議長が無理にまとめないで期間をおいた方が良いと判断した場合

2 経営層などの判断を仰ぐ必要がある場合

です。それぞれの適切なまとめ方の例は次の通りです。

1の場合:大変熱心にご討議いただきありがとうございます。多くのご意見やご提案をいただきましたので、結論を急がずに会議をいったんペンディングにさせていただきます。これまでのご意見やご提言を整理・類型化した資料を作成し事前にお配りします。次回ミーティングで方向性が決定できるようご協力をお願いします。

2の場合:熱心にご討議いただいた結果、方向性が示されました。この案を推進すると競合他社に先んずることができるものと思いますが、経営戦略に関わることですので、経営層の了解を得る必要があります。とりあえず本日はペンディングにさせていただき、経営層の会議で推進が決定され次第、ミーティングを再開させていただきます。

社外で使用する場合

社外で使用する場合は、上述したストーリーで述べたケースで、公取委のペンディング解除が認められれば、企業連携が進むことになります。

ペンディングの関連用語

ペンディングの関連用語として「ペンディングの類義語」「ペンディングの反対語」について述べます。

ペンディングの類義語

ペンディングの類義語として「据え置き」「繰り延べ」「休止」「未解決」「未確定」

を取り上げます。ペンディングの意味を思い浮かべながら比較してください。

据え置き

「据え置き」には

1 「すえつけておくこと」

2 「備えつけておくこと」

3 「そのままの状態にしておくこと」

4 「 放置しておくこと」

の意味があります。ペンディングに近いのは3及び4と思われますが、ペンディングは対応策を検討する必要があることも認識してください。

繰り延べ

「繰り延べ」には

1 期限や予定のある日時などを延ばす

2 綱など長いものを順々に延ばしてゆく

の意味があります。ペンディングとは期限を延ばす意味で共通点があります。

休止

「休止」には

1 動いていたものが一時的に動きを止める

2 企業などが行っている活動を休む

の意味があります。ペンディングとは動きや活動を再開する可能性が高いことに共通点があります。

未解決

「未解決」とは

1 紛争や問題がまだ解決していない状態

2 結論や解答が出ていない状態

を言います。

ペンディングも解決していない点で共通性があります。

未確定

「未確定」とは

1 物事が決まっていない状態

2 決定が下されていない状態 

を言います。ペンディングも宙に浮いた状態である点で共通性があります。

ペンディングの反対語

ペンディングの反対語として「決定」「既決」「継続」があります。

決定

「決定」は物事をはっきり決めることを言います。これに対してペンディングは決定されずに宙に浮いた状態を言います。

既決

「既決」は

1 物事が既に決まっていること

2 裁判で判決が既に確定していること

を言います。ペンディングは物事の決定を先送りした状態を言います。

継続

「継続」は

1 前から実施している活動をつづけること

2 前から行われている活動を受け継いで続けること

を言います。

ペンディングは「中断している」状態を意味しています。

ペンディングを使用する際の注意点

ペンディングは決定を躊躇する場合などに便利ですが、その状態をいつまでも続けるべきではありません。一定期間プロジェクトが進まない、商談が前進しないなどの案件については、組織内で話し合って中止にするなどルールを作ることが望まれます。

乱用は避ける

ペンディングは便利ですが乱用するとペンディング案件ばかりが蓄積してどれから手を付けていいのか分からなくなったり、次に述べる2項目のような懸念も生じますので「乱用は避ける」べきです。 

結論の先延ばしを印象付ける

企業連携などのプロジェクトで普段からまとめの段階で「この件はペンディングにしましょう」という言葉を乱用する人は「この人はいつも結論を先延ばしする人だ。」と評価され相手企業に悪い印象を与えてしまいます。相手企業が企業連携に積極的でその体制づくりまで取り組んでいる時は両社間の信頼関係が失われる可能性もあります。「結論の先延ばしを印象付ける」言動は慎むことが大切です。

安易に使用すると印象が悪い

「前向きに取り組んでいるが、ちょっと先送りしたい」と言う時の婉曲表現としてペンディングが使われるケースが多いですが、逆に「安易に使用すると相手に悪い印象」を与えます。討議事項について決定権がある職位の人が「これは面倒だから、ペンディングにしておこうよ」などと安易に使用すると表立てて言わないかもしれませんが「またなの!仕事が進まないよ」とやる気を失わせてしまうかもしれません。決定できることは即決定して、安易に使用することは避けるべきです。

保留したまま放置しない

ペンディングにした場合は保留状態になりますが、「保留したまま放置しない」ことが求められます。その理由は次の2項目にあります。

ペンディングは中止ではない

「ペンディングは中止を意味していません。」ペンディングのニュアンスは「一時停止」もしくは「一時凍結」に近いと言えます。したがって、前提としては「後日続きがある」ことを認識しておく必要があります。

相手は報告を待っている

上述しましたが、ペンディングにする場合は相手方が「その理由や期間・ペンディング中や結論判明後の対応」等について報告を待っていますので対応する必要があります。

意味が通じない場合もある

初めて企業に就職した方は、職場で日常使われる外国由来のカタカナ言葉が通じないことで焦ってしまうかもしれません。1年程度経過すればスペシャリストになっていると思いますが、次の2項目は特に気を使うことをお勧めします。 

おもにIT業界で使用される

IT関係の企業に就職された方は、ペンディングに限らず使われる多くの用語がカタカナを使っています。用語の意味も企業によって異なることがあります。例えば、ペンディングにした案件は「そのままお蔵入り」にする企業があります。新人の場合は辛いかもしれませんが「ペンディング」と言われたら頭を下げて「どのような取り扱いにしたらよいのか」確認するようにすると先輩が気が付いてその他の用語についても説明してくれるかもしれません。

使用するシーンに注意 

ペンディングに限らず外国語由来のカタカナ語は「意味と使い方」に精通していない時は、ビジネスシーンでは使用しないほうが無難です。特に他社と共同プロジェクトを発足させて業務連携などを検討している時に誤った用語を使うと信頼関係を損ねることがありますので、注意するようにしてください。


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