アセットファイナンスとは
アセットファイナンスとは資産(アセット)を利用し、資金調達(ファイナンス)することをいいます。具体例としては、企業が保有している社宅などの不動産を売却し、資金を調達することがあげられます。アセットファイナンスの仕組みやメリットとデメリットを詳しく解説していきますので、自社に適した資金調達方法なのか確認していきましょう。
証券化と何が違う?
アセットファイナンスの一つに不動産証券化があります。不動産証券化とは企業が所有している不動産を証券化し売却する手法で、アセットファイナンスの一部です。
もう少し具体的に説明します。企業が保有しているオフィスビルを売却した場合、当該ビルを購入した事業体が運用し、出資した投資家に賃貸収入などを分配すること。これを不動産証券化と呼びます。
アセットファイナンスの種類と基本的な仕組み
アセットファイナンスには次の3種類があります。種類別に基本的な仕組みを解説していきます。
ファクタリング
ファクタリングとは売掛債権をファクタリング会社に売却し資金を調達する手法です。
ファクタリング会社には違法業者が存在するので、利用する場合は手数料が高額でないかなど注意する必要があります。
不動産などの資産売却
会社が保有している不動産や有価証券など、資産を売却し資金を調達する手法もアセットファイナンスの一つです。
事業の継続に影響のない範囲で資産を売却し、現金化することで資金調達をすることができます。
リースバック
リースバックとは、保有資産をリース会社に売却し資金調達をおこなう方法を指します。
詳しくは後ほど説明していきます。
アセットファイナンスのメリット
次はアセットファイナンスの利点について深堀していきましょう。
新規企業でも資金調達がしやすい
アセットファイナンスのメリットは、所有している資産を利用して資金調達できることです。
設立して間もないベンチャー企業は、金融機関から融資を受けることが難しいケースも数多く存在します。しかし、アセットファイナンスにより自社の保有している資産を利用すれば、資金調達をおこないやすくなります。
返済の必要がない
アセットファイナンスは金融機関などから資金を借り入れているわけではないため、返済の必要がなく利息もかかりません。銀行から融資を受けるケースでは、返済や利息により経営を圧迫してしまう恐れがありますが、アセットファイナンスの場合、返済について考慮する必要がないため資金面での負担は軽減されます。
現金化がしやすい
アセットファイナンスは資産の売却が決まれば資金を調達することができるため、現金化がしやすいというメリットがあります。早く資金を確保したい経営者にとっては利用価値のある手法といえるでしょう。
資産価値の変動リスクを回避できる
アセットファイナンスにより現金化しておくことで、資産価値の変動リスクを回避することができます。保有している資産が建物などの不動産の場合、築年数を重ねることで資産価値が下がります。対してアセットファイナンスにより現金化してある資産であれば、価格変動のリスクを負う必要はありません。
アセットファイナンスのデメリット
アセットファイナンスは手数料が発生するので注意が必要です。アセットファイナンスを利用する場合は、手数料を差し引くため保有資産と同等の現金を手に入れることができないことを頭に入れておきましょう。
また資産がなくては資金を確保できません。保有資産の質によって資金調達の金額が変わるため、資産価値のあるものを保有していなくては、多額の資金を調達することができないこともデメリットの一つです。
アセットファイナンスの利用例
アセットファイナンスの利用例について詳しく解説していきます。
対象資産
アセットファイナンスで担保にできる資産は、次のとおりです。
・売掛債権(商品を売った企業が、顧客から代金の支払いを受ける権利)
・固定資産(土地や建物など、1年以上保有や使用している資産)
・金融資産(現金、株式、投資信託、生命保険、小切手など)
・知的財産権(著作物などの無形物を生み出した者に与えられる独占権)
このように不動産のような有形資産や知的財産権のような無形資産も担保にできます。
リースバックを利用したアセットファイナンス
リースバックとは企業が有している資産を売却し、資金調達する方法です。
具体例でみていきましょう。自社で保有しているトラックをリース会社に売却して資金を調達し、さらにリース会社から車を借りて事業を継続すること。これがリースバックです。
資金が調達でき、売却後もトラックをそのまま利用できることがメリットです。
リースバックをおこなう際は、リース料なども考慮しマイナスにならないよう注意して利用しましょう。
他の資金調達方法
アセットファイナンスの他にはどのような資金調達方法があるのか確認していきましょう。
デットファイナンス
デッドファイナンスは借り入れによる資金調達のことをいいます。銀行からの融資、ビジネスローン、不動産担保ローンなどがあります。
デッドファイナンスは、審査が厳しいことが多くお金を借りられない可能性もあります。また返済の義務があり、完済まで利息がかかることもデメリットの一つです。
エクイティファイナンス
エクイティファイナンスとは株式による資金調達のことです。投資家に会社の株式を渡すため、投資という形で資金を調達できるので利息や返済をしなくてよいことがメリットといえるでしょう。エクイティファイナンスを利用する場合の注意点は、投資家に事業運営権を握られる可能性があることです。この場合、一定の者に多くの株式を渡さないなど対策が必要です。
プロジェクトファイナンス
プロジェクトファイナンスとは、特定のプロジェクトに対して融資をおこない、その事業で発生した収益やキャッシュフローを返済原資とする手法です。例えばインフラを整備するために大規模な工事を行う場合、このインフラ整備のプロジェクト自体を対象とし、資金調達をすることをプロジェクトファイナンスと呼んでいます。
コーポレートファイナンスとの違い
コーポレートファイナンスとは自社の価値や信用をもとに資金調達する方法です。
アセットファイナンスは「保有資産の価値」で資金を調達するのに対し、コーポレートファイナンスは「会社の価値」で資金調達をする点で違いがあります。
また設立したばかりのベンチャー企業では信頼残高が貯まっていないため、コーポレートファイナンスは利用できません。逆をいうと企業価値を高めていけば、コーポレートファイナンスを利用することができます。
まとめ
アセットファイナンスは保有資産に対して資金を調達する手法です。不動産や売掛債権など多くの資産を保有している企業であれば、アセットファイナンスで資金を調達することを検討するのも一つです。そのためには、自社の保有している資産をきちんと確認する必要があります。
この記事では、アセットファイナンスのメリット・デメリットについて解説しています。特徴をしっかりと理解し上手に活用していきましょう。
アセットファイナンス以外にも資金調達には様々な手法があるため、それぞれの特徴を理解し、自社に適した方法で無理なく資金を調達しましょう。