リクルーティングとは?採用担当者に必要な能力や戦略も解説

社会において重要な位置を占める「リクルーティング」。企業や組織が新たな人材を採用するために行う活動であり、採用担当者は組織のニーズや戦略に基づき、優秀な人材を確保する役割の担い手です。

本記事では、リクルーティングの概念と、実際に採用担当者に求められる要素について解説します。

リクルーティングとは

リクルーティングは、組織や企業が新しい人材を採用するための活動を指します。これには、求人広告の作成・掲載、応募書類の審査、面接や選考プロセス、最終的な採用決定などが含まれます。

リクルーティングの目的は、組織にとって適した候補者の選定と、その採用による組織の成長や目標達成への貢献です。

企業の人材採用活動

企業における人材採用活動は、人材ニーズの特定、応募書類の審査、採用手続きなどを経て実施されることが一般的です。

「集める」「募集する」という意味の英単語が語源

「リクルーティング(recruiting)」という言葉は、英語の「recruit」から派生しています。この単語は「集める」「募集する」といった意味です。リクルーティングは組織が求める優秀な人材を集めるための活動です。

人事部門が担当する業務

人事部門は組織内で従業員の管理と、それに類するさまざまな業務を担当しています。

その一環として、新しい社員の採用活動(新しい人材の採用計画や選考プロセスの設計、求人広告の作成など)を行います。

日本の採用事情の変化

時代の変遷に伴い、日本における採用事情にも従来とは異なった点が出てきました。

リクルーティングに従事する場合、この変化についてもおさえておくべきでしょう。

終身雇用制度の崩壊

従来の日本は終身雇用制度でした。しかし経済の低迷、労働効率の重視、また成果主義の導入により、この制度は崩壊に近いのが現状です。

転職の増加

一生ひとつの会社に勤めるという固定観念が崩れたことで、近年転職もすっかり一般的になりました。

従業員の間でキャリア意識が高まり、自己成長やスキルアップの機会を求める、あるいはより自分に適した環境や業種を追求するために、転職を選択する人が最近は多くなりました。

リクルーティングの業務内容

リクルーティングの業務は基本的に人材採用ですが、その採用手法にもいくつか種類があります。

新卒者の採用

新卒者の採用は、大学や専門学校を卒業したばかりの学生を対象とした採用活動であり、企業は新卒者を採用し、社会人としてのキャリアをスタートさせる機会を提供します。

メンバーシップ型採用

上記のような新卒者の採用手段は、採用した後に仕事を割り当てる「メンバーシップ型採用」と呼ばれます。スキルを持っていない段階で、当人の人間性やポテンシャルをメインに採用を判断するというのは日本特有のシステムともいえそうです。

ジョブ型採用

対して欧米などで一般的なのが「ジョブ型採用」です。プロジェクトの成功や業務の遂行に必要な特定のスキルや経験を持つ人材に絞って採用する方法です。近年では日本においても導入の傾向が見え始めています。

中途採用

中途採用とは、一般的に就業経験のある人材を採用することです。新卒の場合は 未経験として採用しますが、ここでは前職での経験を生かせる人材として企業側は採用します。

ヘッドハンティング

ヘッドハンティングは、優秀な人材を他の企業から引き抜く手法です。

採用担当者や専門の人材紹介会社が、特定のポジションにふさわしい候補者を特定し、積極的にアプローチします。ヘッドハンティングでは、現在の候補者のスキルや経験、キャリアに基づいて個別のオファーが行われることが一般的です。

即戦力を期待

特定のポジションにおいて即戦力となるスキルや知識を持つ者を得たいがために中途採用を行うのであり、この手法では候補者の過去の実績、業務経験が重視され、短期間で成果を上げる人材であることが求められます。

派遣社員の採用

派遣社員とは、企業が一定期間の契約で他の会社や組織から派遣された労働者のことですが、自社の社員として雇用するのとはまた違った特徴を持ちます。

人員補充がしやすい

採用プロセスが迅速かつ効率的に進行し、組織のニーズに合った人材を必要な期間だけ迅速に配置できるというのがメリットです。また、各種保険、給与等は派遣会社側の管理であるため、管理コストが低いのも人員調整に適した特徴です。

重要な仕事は任せにくい

人員補充や採用のプロセスがスムーズである一方、重要性のある仕事、責任の大きい業務を任せることは難しいでしょう。

プロジェクトや組織の根幹となる業務には、経験やその社特有の専門知識が必要です。また、一定の契約期間で派遣社員側からも契約終了しやすいため、長期のプロジェクトを任せるのは難しいという面もあります。

リクルーティング担当者に必要な能力

それでは、リクルーティング担当者になるにあたって、要求される能力とはどういったものが考えられるのでしょうか。

人事業務の総合的な経験

基本的に、採用だけでなく、労務管理や労働法規など人事業務全般に関する業務や会社の業務の概要の把握が求められます。

採用しかできない人材は不適格

採用担当者には、単に人材を選定するだけでなく、応募者とのコミュニケーションや選考プロセスの円滑な進行、採用戦略の立案など、多岐にわたる一定能力が求められます。

そのため、総合的な人事業務の経験や知識を持ち、広範な業務を遂行できる能力が求められます。

他の部署経験も有効

また、リクルーティング担当者にとって、他の部署での経験は有益です。他の部署での経験を持つと、組織の全体像の把握にもつながります。

異なる部署経験を積むことで、リクルーティング担当者はより総合的な視点を採用活動に活かせるでしょう。

法制度の理解

リクルーティング担当者には労働法や雇用関連の法制度に関する理解が重要です。採用プロセスや雇用契約の作成、採用に関わる手続きなど、法的な要件を遵守する必要があります。

労働関連法令の知識

リクルーティング担当者は労働基準法・雇用保険法・労働者派遣法などの労働関連法令に関する十分な知識を持つ必要があります。

労働関連法令の知識を持つことで、労働者とのトラブルや雇用リスクを回避しやすくなります。

コンプライアンスの遵守

リクルーティング担当者は、採用プロセスや応募者情報の管理、採用手続きや選考の公正性確保など、倫理的な原則や法令の遵守が求められます。

適正な個人情報の取り扱いや差別禁止の徹底、採用における公正な競争の促進など、コンプライアンスに対する意識と実践が重要です。

プレゼンテーション能力

採用プロセスや求人広告の内容にあたっては、組織の魅力やビジョン、また求める条件をいかに効果的かつ的確に伝えるか、という事柄も同様に重要です。

自社のアピール力が問われる

優秀な人材を採用するためには、まずは優秀な人材に入社したいと思ってもらわなければ始まりません。

同業他社も多い採用市場において、自社に優秀な人材の興味を引き付けるために、企業のブランド価値や文化、成長機会や入社のメリットなどを魅力的に伝える力が問われます。

日常的に訓練が必要

社会とは常に変化しうるものであり、新たな採用手法や応募者のトレンドが現れることもあり得ます。

そのため、リクルーティング担当者は業界の動向や最新の採用手法に関する知識を継続的に更新し、採用活動の効果の最大化を目指すことが必要です。

コミュニケーション能力

ほかに重要な要素としては、コミュニケーション能力が考えられます。候補者との円滑なコミュニケーションは、適切な情報の伝達や双方の期待や要求の理解を進め、信頼関係を築くことにつながるためです。

初対面の人物との会話が多い

リクルーティング担当者は、求職者との面接や候補者とのコンタクトなど、初対面の人物との会話が多くなります。

候補者とのコミュニケーションを通じて、彼らのスキルや経験、モチベーション、適性を評価する役割を果たし、また、聴取力や共感力を発揮し、候補者の意図や要望を理解する能力も不可欠です。

洞察力が求められる

洞察力というのもリクルーティングの領域では必要です。

求職者のパフォーマンスやポテンシャルを正確に評価し、適切な判断を下すためには、候補者の行動や言動から必要な情報を読み取る能力が求められ、その責任は重大です。

リクルーティング戦略

リクルーティング戦略は、優秀な人材を獲得するための計画やアプローチのことであり、企業の人材確保の重要な核です。

ダイレクトリクルーティング

ダイレクトリクルーティングは、企業が求人広告や人材紹介会社を介さず、直接候補者を探し出す方法です。

企業側から直接コンタクト

ダイレクトリクルーティングでは、企業が興味を持った候補者に対して、面接や説明会、個別の面談などを通じて直接コンタクトを取ります。

企業側からの直接コンタクトは、候補者に特別感を抱かせ応募意欲を高める効果も期待できるでしょう。

海外の人材にも注目

新卒者や中途以外にも、上記手法であれば海外人材へのアプローチも同様に可能であり、採用に幅が生まれます。しかし当然採用面接等に際して、言語や文化による問題点が発生しうるのが一つのネックです。

リファラルリクルーティング

また、従業員の人脈や関係性を活用して新たな人材を採用する、リファラルリクルーティングというのも選択肢の一つです。

従業員の人脈を活用

リファラルリクルーティングでは、企業は従業員に対して、自身が知っている優れた候補者を紹介するよう促し、推薦者となってもらいます。そのため、従業員の人脈が重要となってきます。

入社後の教育がしやすい

リファラルリクルーティングで既存従業員からの推薦を受けた候補者は、すでに親密な間柄であるため組織文化や価値観に適合しやすく、入社後の社員教育やチームワークの構築がしやすいというメリットがあります。

ソーシャルリクルーティング

ソーシャルリクルーティングは、ソーシャルメディアや専門的ネットサイトを活用して行われる採用手法です。

SNSの活用

ソーシャルリクルーティングでは、企業はSNSプラットフォーム(例: LinkedIn、Facebook、Twitter)や専門的なコミュニティサイト(例: GitHub)が広告プラットフォームとして活用されます。

企業は自社のブランドや魅力を強調し、求人情報を効果的に配信することで、興味を持った候補者にリーチします。

近年はアプリも活用

近年活用されているのがアプリケーションによる採用です。求職者がスマートフォンやタブレットで利用するアプリを通じて、気軽に求人情報や企業のプロフィールにアクセスできます。

求人サイトの活用

求人サイトは、企業が求人情報を掲載し、求職者とのマッチングを図るために利用されるプラットフォームです。

転職希望者がメインターゲット

求人サイトは、転職やキャリアアップを考えている求職者がメインターゲットです。

求職者は求人サイトを通じて、自身のスキルや経験に合った求人情報の検索・応募が可能であり、企業側は求人サイトの活用により、幅広く多様な人材を獲得することができます。

掲載料がかかる

求人サイトでは、企業が求人情報を掲載するために一定の掲載料が発生します。しかし、求人サイトは費用対効果が高いため一般的に活用される手法です。

メンバーシップ型による採用

メンバーシップ型採用は、デメリットもあるものの日本では依然として主な手段の一つです。

日本に定着した方法

メンバーシップ型採用は、日本の企業において終身雇用、年功序列制と共に長年定着しています。

同期の結束を生みやすい

メンバーシップ型採用では、同タイミングで入社した社員同士が一緒に研修を受けたり、共に業務に取り組んだりする機会が発生しやすいです。このような経験を通じて、連帯感が生まれ、社員の帰属や組織の一体化に寄与します。

まとめ

リクルーティングは、優れた人材を集めるための効果的な戦略とプロセスを含みます。適切な採用方法や広告手段を選び、適格な候補者を選考し、最終的には最適な人材を採用することが目的です。

どの業態の企業においても、リクルーティングは不可欠の概念であり、組織の成長や競争力維持には、適切な人材の採用と育成が必要です。

効果的なリクルーティングの戦略と実践は、優れた人材の確保と企業の成功のために継続的に行うべきものでしょう。


AD