プロダクトマーケティングとは?行う意味や戦略・進め方も解説

貴方は子どもから「マーケティングってなーに?」と聞かれたら何と答えますか?

マーケティングについて統一された定義は現在ありませんが、代表的な3例を紹介します。

1 1957年に創設された公益社団法人「日本マーケティング協会」の定義

マーケティングとは、企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である

2 問題解決学を専門とする「日本オペレーションズ学会」の定義

マーケティングとは、個人や組織が製品の創造を行い、市場での交換を通じて自らのニーズや欲求を満たすために行う様々なプロセスのことである

3 ビジネスリーダーの養成を手掛ける「グロービス経営大学院」の定義

マーケティングとは、顧客満足を軸に『売れる仕組み』を考える活動である

いかがでしょうか?組織形態の違いにより定義も多少変わっているように思われます。

ついでにビジネス大国のアメリカではマーケティングをどのように定義しているのか

調べてみました。

1 アメリカマーケティング協会(American Marketing Association:AMA)の定義

マーケティングとは、顧客、依頼人、パートナー、社会全体にとって価値のある提供物を創造・伝達・配達・交換するための活動であり、一連の制度、そしてプロセスである。

(Marketing is the activity, set of institutions, and processes for creating, communicating, delivering, and exchanging offerings that have value for customers, clients, partners, and society at large.)

(慶應義塾大学 高橋 郁夫氏による翻訳)

2 マネジメントの創始者ピーター・ドラッガーのマーケティング定義

マーケティングの目的は、顧客を知り、理解することで、製品やサービスが顧客によく適合し、それ自体が販売されるようにすることである

(The aim of marketing is to know and understand the customer so well the product or service fits him and sells itself.)

マーケティングという言葉はよく使うので分かっているつもりですが、「説明しなさい」と言われると難しいですね。以上はマーケティングという言葉を一般的に理解するために取り上げたものですが、マーケティングの手法も顧客の購入活動の変化などに伴って変化しています。近年は企業が顧客のニーズなどを調査して開発した製品やサービス、つまり「プロダクト」のマーケティングを重視する傾向があります。

そこでこのサイトではプロダクトマーケティングとはどのようなことなのか、それを実施する意味や戦略・進め方も取り上げていますので、会社でプロダクトマーケティングをご検討されているのであれば是非参考にしてください。

プロダクトマーケティングとは

「プロダクトマーケティング」はマーケティング手法の一種です。

マーケティング手法の一種

現時点で代表的なマーケティング手法として「Webマーケティング」「インバウンドマーケティング」「コンテンツマーケティング」「SNSマーケティング」「インフルエンサーマーケティング」「動画マーケティング」「メールマーケティング」などがありますが、プロダクトマーケティングはこれらの中から、そのプロダクトに最もフィットした手法を使うか組み合わせて使い実施されています。

プロダクトごとにマーケティング

また、企業が自社活動の中で扱う製品やサービスは数種類に上るのが一般的です。プロダクトマーケティングの特徴的なことの1つとして、大部分が1つのプロダクトごとに実施されています。1つの商品やサービスに集中することでそれぞれの特徴や有用性・将来性等をマーケティング活動で十分活かすことができ、リード(見込み客)の獲得につながるだけでなく、それぞれのビジネスシーンでタイムリーな戦略を講じることができるからです。

プロダクトマーケティングマネージャーとは

多くの大企業が「プロダクトマーケティングマネージャー」を置いています。このマネージャーの役割は、前述のような活動をすることが要求されますので専門性が要求されタフな仕事になります。プロダクトマネージャーが置かれていても製品やサービス開発からマーケティングまで処理することは困難です。このため、プロダクトマネージャーの下にプロダクトマーケティングマネージャーを設置して、プロダクトマネージャーは商品・サービス開発に専念するシステムを取っているのが大企業では一般的です。

プロダクトマーケティングの特徴

「プロダクトマーケティング」はその名称が示すように、企業などが開発した製品やサービスなど「プロダクト」をマーケット市場に出してその存在を明らかにして認知してもらい、販売の拡大策を講じるものです。大きな企業になると開発・販売するプロダクトは多数あるのが通常です。一括してプロモーション策を推進することは稀で、プロダクトマーケティングの場合は各プロダクトを単独にしてそれぞれの担当者を決めてプロモーション戦略を進めるところに特徴があります。1人の担当者が複数のプロダクトを扱うこともあります。プロダクトはそれぞれ個性があり、その個性に基づいてニーズを把握し、ターゲットを絞った方がリードの育成につながるという考え方に基づいています。 

マーケティングとの違い

一般的なマーケティングとプロダクトマーケティングの違いはどこにあるのでしょうか?一般的なマーケティングは「広義のマーケティング」とも言われますが、企業が顧客のニーズなどに基づいて開発した製品やサービスを市場に出して、それを「認知」してもらうこと、その特長やメリットなどを説明して関心を持ってもらい、リードを育成して最終的に購入してもらうことから、商品開発、市場調査、戦略立案までが入ります。

これに対してプロダクトマーケティングは、担当者が市場に出した「プロダクト」のスペシャリストの機能を果たします。担当するプロダクトについてリードの養成はもとより、その継続的な購入、購入者との継続的な会話を通じてプロダクトに関するコミュニティの形成等、担当するプロダクトについて、戦略面も含めマーケット市場で最大限の効果を発揮する方策を考えて実施します。

プロダクトマネジメントとの違い

プロダクトマーケティングが上述のような機能を発揮するのに対し、プロダクトマネジメントは、プロダクトのターゲットを決定したら、そのカストマーを主軸に置きそのビジネスシーンの全てに責任をもつ組織機能を言います。

プロダクトマーケティングを行う意味

プロダクトマーケティングを行う意味は、企業によって異なることもありますが、大分部の大企業は多数のプロダクトを保有しています。保有するプロダクトはニーズ調査やターゲットを想定して開発を進めていますので、プロダクトはそれぞれ異なった個性を持っています。

特定の商品やサービスに特化

このような状況を勘案して、「特定の商品やサービスに特化」してマーケティングを進めた方が効果的であると考えられるようになりました。その背景には次のようなマーケット市場の変化も考慮されています。

消費者のニーズが多様化

日本では1950年代から始まったと言われる電化製品を中心とした「大量生産大量消費」時代が1970年代初め頃まで続いたことにより、消費者は電化製品など物質面での豊かさは感じることができるようになりました。しかし、同時に各種の製品が便利さを追求した使い捨て製品が多かったり、家電製品の大型化などでごみ処理問題などが発生したりして、消費者の間に反省を含めた「ニーズの変化」が見られるようになります。

自分専用のオンリーワン製品を志向する動きなどがその例です。中小企業はそのニーズに応えようと努力しています。 

プロダクトの増加

上記のような動きと同時に、企業側は消費者の選択肢を拡大するために様々なプロダクトを提供し続けていますので、プロダクトの増加も背景にあります。

自社製品を選んでもらうためには

プロダクトごとのスペシャリストの活動を通じて自社製品を選んでもらうには、次の2点に注意する必要があります。

消費者とのコミュニケーションだけでは不足

消費者とのコミュニケーションはもちろん重要ですが、それだけでは貴社の製品を購入してくれることにつながりません。もし貴社が店舗を経営しているのであれば、その店舗に何日間か出かけて、売れている商品分析、店員さんとの話し合い、顧客へのアンケート調査等顧客のニーズが何なのかきちんと把握できる方策を考えて実行することができると良いフィールドワークになります。

1つだけの店舗では範囲が狭すぎると考えがちですが、逆にプロダクトと顧客の接点がどこにあるのか知ることができます。例えばオフラインで作製したチラシを見た顧客が「この商品は役に立ちそうだ」と思えば購入してくれる可能性が高くなります。

より高精度なターゲティング

 上記のようなプロセスに誘導するには、顧客が関心を示しているプロダクトの「試供品提供」あるいはアンケートの協力者には自社製品の購入に使える「ポイント付与」など顧客にメリットがある方策を考えて実行すると「より高精度なターゲティング」になります。

プロダクトマーケティングの現状

大企業は保有する製品やサービスが多いので、業種などにより実践方法は異なることもありますが、多くの企業がプロダクトマーケティングを実行しています。そのため、新たに参入する場合は次の2点を考慮しておく必要があります。

既に多くの企業が導入

既に多くの企業が導入していますので、後発企業は競合他社として自社製品の徹底した「差別化」を図ることがポイントになります。自社のプロダクト購入で消費者はどのようなメリットが得られるのかを鮮明にする必要があります。

「価格破壊」などのキャンペーンで安売りをするケースが見られますが、価格競争は泥沼化する恐れがあり、どの企業にとっても良い結果をもたらしませんので、できるだけ避けるべきだと言われています。

緻密なプロモーションの実行

企業としてプロダクトマーケティングに参入することが決定したら、「緻密なプロモーション戦略」を検討して実行すべきです。過去の自社製品に対する消費者の行動分析、競合他社の類似製品に対する消費者の反応、広告媒体は何が適切か等、あらゆる角度から全社的な意見交換をして方向性を決め実行すべきです。

プロダクトマーケティングのおもな戦略

ここでは、「プロダクトマーケティング」における主な戦略について述べます。

マーケット関連

マーケット関連では、「プロダクトのポジショニング」と「マーケットの変化への対応法」について述べます。

プロダクトのポジショニング

ポジショニング(positioning)は英語で「位置決め、位置調整」などの意味がありますが、扱うプロダクトを「市場のどこに配置したら良いのか」を決める必要があります。プロダクトを作るときに顧客のニーズ調査などをしますので、プロダクト開発時に「高級感があり、安価で操作が簡単な時計」などをコンセプトにしていれば、マーケティングに出す場合はこのような属性も考慮に入れて適正なポジショニングをすることで顧客に訴求しやすくなります。例えば、年配者の顧客が「高級感があって値段が手ごろな時計がないかしら」というニーズを持っていれば、すぐ購入行動に入ってくれるかもしれません。顧客分析の結果、年配者に一番人気があれば、そこにポジショニングを取るようにします。

マーケットの変化に対応

マーケットは生き物です。「昨日まで大量にオーダーを受けていたプロダクトが今日はストップして回復の兆しがない」というようなマーケットの変化が起こる可能性は常にあります。そのような変化に冷静に対応して原因を突き止め、修復を図ることができるように体制を整えておく必要があります。担当者はプロダクトごとにそのデビューから人気が落ちて引退するまで責任を持つことが求められます。

顧客関連

顧客関連では、「顧客ニーズの確保」「ニーズの継続性」「顧客情報の共有」を図ることが重要です。

顧客ニーズの確保

顧客ニーズが分かればそれをターゲットにすれば顧客の購入行動に結びつきやすいことを前述しましたが、「顧客ニーズの確保」は必須です。顧客ニーズの確保は顧客と親しくなる必要があります。会社が店舗を運営しているのであれば「お客様感謝会」などの名目で顧客のグループ化をしたり、店舗モニター制度などを設けるなど、プロダクトマーケティング担当者同士でブレーンストーミングを実践して、アイディアを出し合うことをお勧めします。各店舗において顧客がどのようなプロダクトを購入しているのか分析することもニーズ確保につながります。店舗所在地の周辺環境によっても顧客のニーズが異なることがありますので企業が運営する全店舗の情報を集め、「顧客の地域別ニーズマップ」などを作成しておくと役に立ちます。

ニーズの継続性

ニーズの継続性を保つには、顧客のプロダクト購入歴を記録しておき、リピートが必要と思われる時期の前後にメール等で「リマインド」させるのが効果的です。

顧客情報の共有

プロダクトマーケティングに関する顧客情報の社内共有は重要です。活動しているといろいろなケースが出てきます。時には顧客からクレームが寄せられることもあります。定期的に連絡会を設けて情報交換や困難なケースへのサジェスチョンをもらうようにしてください。プロダクトマーケティングマネージャーが設置されていれば、そのマネージャーをトップとして実施することをお勧めします。社員間で情報のギャップを生じさせないことがプロダクトマーケティングの成功につながります。

プロダクトマーケティングの進め方

ここからは、実際にプロダクトマーケティングをどのように進めたら良いのかを説明します。ここまでの説明でかなりの事項をカバーしていると思いますが、全体的な枠組みとして捉えてください。

進め方の順序は「顧客の開発」⇒「ポジショニング」⇒「製品リリース計画の作成」⇒「コンテンツの作成」⇒「ローンチ」になります。

顧客の開発

プロダクトマーケティングではプロダクト開発の段階で様々な顧客のニーズや顧客が持つ属性(高級品志向等)にも注目して多種多様なプロダクトの開発を心がけていますからプロモーションするプロダクト自体がそれぞれ異なった個性を持っています。

従って、顧客のニーズがプロダクトの1つに合致すればすぐにでも購入行動に入ってくれる可能性が高くなります。顧客開発の意味で次の2点は常に心掛けておく必要があります。

ターゲット市場を定義

開発(予定も含む)されたプロダクトのそれぞれに、市場における役割をもたせるようにします。例えば、年代を重要視するのであれば、「乳幼児・小学生・中学生・高校生・青年層・一般成人層・高年者層」等々でプロダクトが一番フィットするのはどの層かを決定します。

社会のトレンドや問題点を把握

「社会のトレンドや問題点を把握」しておくことも必要です。コロナでマスクの製造が追いつかなかった事態が発生しましたが、社会・経済的な要因がニーズに直結します。常に社会のトレンドや問題点を把握していれば、何か変化が生じた時に、各種用意されたプロダクトの出番が来る可能性が高くなります。

ポジショニング

「ポジショニング」は前述しましたが、プロダクトのマーケット内での立ち位置をどこにすべきか決定する必要があります。決定したら次の2点を実行してください。

顧客とのマッチングを検証

決定したポジショニングが顧客ニーズの引き出しに連動しているか検証します。

ずれているとプロダクトがどんなに優れていても顧客の購入行動に結びつきませんので、直ちに修正するようにします。

ポジショニングの伝達

ポジショニングが決定したら関係者全員に伝達して、社内における情報格差が生じないようにします。

製品リリース計画の作成

プロダクトマーケティングを実行するに当たって新たな製品開発をしてリリースするご計画をお持ちかもしれませんのでその際の進め方を述べます。 

プロダクトマーケティングマネージャーを中心に作成

プロダクトマーケティングマネージャーが設置されている場合はその道のプロですから、その方を中心に計画を作成するようにしてください。

できるだけ具体的に

計画はできるだけ具体的にすることと計画内容は透明化して全員が共有できるようにします。

コンテンツの作成

コンテンツの作成は「計画をもとに作成」することと「広告宣伝目的」で作成します。

計画をもとに作成

コンテンツの内容は計画をもとに作成しますが、広告宣伝にも活用しますので、箇条書きで誰でもすぐ理解できる表現にします。近年は中学生でも素晴らしいイラストやアニメを作成しますので活用することも考えられます。

広告宣伝に活用

話題性を呼ぶためにプロダクトの画像イメージを公募することも選択肢の1つにあげられます。

ローンチ

「ローンチ」するに当たっては、「プロダクトの販売予告」など様々な演出を

プロダクトをリリース

することも可能ですが、プロダクトをリリースすることがメインになります。

プロダクトをリリースする時は、Webで告知ページを設けてプロダクト紹介をしたり、サンプルを作成したり試供品を提供したりすることもローンチに花を添えてくれます。

キャンペーンのローンチ

新プロダクトのキャンペーンを予定しているのであれば、そのキャンペーンをローンチすることも考えられます。

「このビジネスシーンで自分が顧客だったらどうするか」常に顧客目線で考えると誠意が伝わり良い結果が得られます。


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