SPCの目的とは?設立するメリット・デメリットを紹介

SPCとは

SPCは「Special Purpose Company」の略称で「特別目的会社」の意味です。

これは限定された目的のために設立される法人のことになります。

狭い意味では「資産の流動化に関する法律」で作られた「特定目的会社」です。

SPCの目的

SPC設立の目的は以下の2点になります。

①不動産投資の投資単位を小口化すること

②投資家による投資を呼び込み事業をスムーズに進めること

不動産投資の投資単位を小口化すること

投資単位を小口化すれば、小額投資が可能になります。

なぜなら不動産を証券化すれば資金調達はやりやすくなりますが投資額は高額であり、資金は集まりにくいので投資家のチャンスも奪わるのです。

そこで投資単位が小口化されれば多くの人が投資でき、結果多くの資金が調達できます。

②投資家による投資を呼び込み事業をスムーズに進めること

①により多くの資金が調達できれば、投資家への利益還元が容易になります。

このことで投資家の投資意欲がさらに高まるのです。

有価証券には「配当金」の仕組みがあるため、利益還元されます。

SPC法とは

SPC法は「特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律」のことです。

平成10年6月5日に公布されて、同年の9月1日に施行されています。

特定目的会社や特定目的信託が不動産などの資産を保有・運用する際、収益を裏付けとして、証券や信託受益権を発行する場合の手続きやルールを定めています。

当初は流動化の対象資産が限定されていましたが、平成13年4月に改正され、全ての財産権を対象にした流動化が可能になりました。

SPC法の目的は「投資家による投資を容易にする」ことであり、資産の有効活用や、多様な金融商品の開発に影響する重要な法律です。

SPCを設立するメリット

SPCを設立するメリットは以下の3点になります。

①投資者から出資されやすくなる

まず1点目は、不動産を証券化することで資金調達がしやすくなることです。

②倒産しても資産を守れる

2点目は、不動産会社が倒産しても大規模不動産開発プロジェクトやSPCは継続することです。

例えば不動産開発会社がSPCを設立して大規模不動産開発プロジェクトを実施した場合。

投資家や金融機関は、母体である不動産会社の経営情報を考慮する必要がありません。

これはSPCにより「大規模不動産開発が不動産開発会社から切り離されている」ためです。

③資産を切り離せる

3点目は、資産を切り離せる「資産のオフバランス化」です。

これは資産や取引などが、事業主体の財務諸表(貸借対照表)に記載されない状態になります。

バランスとは「バランスシート」である貸借対照表のことであり、事業活動で用いた資産や負債は通常バランスシートに計上する義務があるのです。

本来計上すべき資産を計上しないこと(オフバランス)は違法ですが、種類によってはオフバランスしても良いものがあります。

例えば、大規模な不動産などは財務諸表に入れてしまうと、負債比率が上昇し財務状況が悪化します。

そこで「資産のオフバランス化」が活きるのです。

SPCを設立して不動産を移すことで負債はSPCが受け持ち、なお不動産会社はSPCを通じて質的に不動産の権利を維持できることになります。

SPCを設立するデメリット

ではデメリットについても挙げてみましょう。以下の2点になります。

①運営コストが必要

デメリット1点目は「コスト」です。

特定目的会社を活用するスキームには特にコストがかかります。

例としては「設立コスト」です。

会社法での会社設立なら1円でよいのですが、特定目的会社の設立

だと最低10万円の資本金が必要です。

その他には会計監査や投資家への適宜報告、また設立時の届け出にもコストがかかってきます。

②不正利用される可能性がある

SPCは不正利用される恐れがあります。

かつて(会計基準がまだ発展途上の頃)、SPC特定の資産を本体の会社から切り離す不正が横行していました。

資金を迂回させるなどして、含み損のある資産を薄価格で売却したとし、損失を計上しないように見せる方法です。

以前はSPCを連結対象にしなくてもよい制度だったので、連結決算上においても含み損は計上しなくてよかったのですが、現在では制度が厳しくなったため、以前のような粉飾決算は出来なくなっています。

ペーパーカンパニーとの違いは?

ペーパーカンパニーとは登記上設立されながら活動実績のない会社のことです。

SPCもそれ自体は活動実績がないと見られるかもしれませんが、責任の流動化など特定の目的で設立されて目的を果たしています。

この点でペーパーカンパニーとは違うものと言えるでしょう。

SPCスキームの種類

「スキーム」は英語で「scheme」と記し「計画」「案」「枠組み」の意味です。

似た言葉で「フレームワーク(framework)」や「プラン(plan)」がありますが「スキーム」には継続的な意味が込められていることがポイントで、単発的ではなくある程度実行することを指しています。

SPCスキームには3種類あります。順に見てみましょう。

①GK-TKスキーム

GKは合同会社(Godo Kaisya)と匿名組合(Tokumei Kumiai)の頭文字をとっての略称です。

合同会社(GK)を設立し、投資家からの匿名組合(TK)を通じての出資や金融機関から資金を調達します。

匿名組合からの出資では、出資者が事業の議決権を持てません。

しかし分配金への課税がなく設立しやすいことやコストが低いので利用されることが多いSPCです。

②TMKスキーム

SPCとしてTMK(Tokutei Mokuteki kaisya)を設立し不動産信託受益権や現物の不動産を所得して運用するスキームです。

投資家からの出資を受けて、金融機関から借り入れて不動産事業をしてアセットマネージャーに資産運用を委託します。

この点は他のREITやGK-TKとは同じですが、TMKを設立している点が相違点です。

TMKの根拠法はSPC法となります。

③REITスキーム

REITは「Real Estate Investment Trust」の略称で「不動産投資信託」

の意味です。

REITは不動産投資法人の名称であり、株式投資信託の不動産版とも言えるでしょう。

投資家は、株式会社の株式に当たる投資証券を購入して投資をします。

その際に資産保管会社に資産保管を委託したり、アセットマネージャーに資産運用を委託したりします。

REITの根拠法は、投信法(投資信託、投資法人に関する法律)です。

SPCの設立方法

設立の相談

まず会計や税務に関する業務は税理士や会計事務所に依頼します。

設立においては、司法書士事務所に依頼すれば手続きのサポートが受けられます。

必要なものの準備

●設立に必要な書類(発起人または取締役人の印鑑証明書)

●代表者の印鑑(設立後はSPCの実印となります)

その他設立に必要なものは以下の6点です

①資本金(10万円以上)

②内閣総理大臣への届け出

③登録免許税(3万円)

④定款印紙

⑤取締役1名と監査役1名

⑥会計監査法人(必要な場合もあります)

定款の作成・認証

相談している事務所で定款を作成し、発起人全員の実印を押します。

その後は事務所側が公証役場へ行き、定款で公証人の認証を受けます。

資金調達

定款認証後は資金調達をおこないますが、金融機関から「払込金保管証明書」をもらう際に必要です。

これは特定資本金を預金して、SPCをつくる出資金が入金された証拠になります。

書類の作成・登録

「払込金保管証明書」をもらったら各種書面の作成です。

法務局で、発起人または役員の印鑑を押して作った書面を提出し、登記申請手続きをおこないます。

会社法に基づいた場合との違い

SPC法で設立した会社と、会社法で設立会社の比較を見てみましょう。

●資本金は(SPC法)10万円以上に対して(会社法)1円以上

●登録免許税(SPC法)3万円に対して(会社法)15万円

●届け出は(SPC法)内閣総理大臣に対して(会社法)不要

●役員は(SPC法)取締役、監査役が各々1人(会社法)取締役1人

●事業開始まで

(SPC法)会社設立後、資産流動化計画を作成して業務開始届けを出す

(会社法)会社設立後にすぐ事業を開始できる

SPC法で設立する会社は会社法と比較すると、手間がかかること特徴です。

ただし設立するメリットは大きく、各種税金や公租公課などの優遇措置があることや、一定の要件のもとパススルー効果を活用すれば税金を安く済ませることが挙げられます。

M&AへのSPC活用

M&Aとは「企業の合併・買収」のことですが、SPCも使うことが可能で、

LBO(leverageⅾ byout レバレッジド バイアウト)がよく使われます。

これは、買い手企業が売り手企業(買収する企業)の資産やキャッシュフローを担保に買収資金を調達し、その資金で売り手企業を買収する手法です。

流れとしては

①SPCの設立

②金融機関から借り入れる

③売り手企業を買収

④買収した企業とSPCの合併

⑤金融機関に返済する となります。

SPC(統計的工程管理)とは

おなじSPCでも全く異なる意味の言葉があります。

こちらのSPCは「Statistical Process Control」の略称で意味は「統計的工程管理」です。

製造された製品の品質を評価したり、監視したりする方法を表す種々の方法であり、工程の最終段階で不良品を出さないことが狙いとなります。

特別目的会社とは全く意味が異なるので間違えないようにしてください。

まとめ

以前の特別目的会社は、粉飾決算に使われるマイナスイメージがありました。

現在は法整備も厳しくなったため、適正に使用されている点はポイントです。

SPCは非常に複雑ですが、多くの利用方法を熟知することはこれからの経営者に求められる姿勢といえるでしょう。


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