ストックオプションとは
自社株をあらかじめ決まった価格で取得できる権利のことです。
この権利は、会社の従業員や取締役が取得することができます。
簡単に言うと「会社にとっては社員の士気を、社員にとっては報酬を上げるもの」です。
以下に解説してゆきます。
ストックオプションの意味
株式会社の社員が自社の株式を取得できる権利
あらかじめ決まった価格(権利行使価格と言います)で株式を購入すると、市場価格よりも安く取得できます。
その後に株価が上昇した際に、市場価格で株価を売却すれば差額の利益(キャピタルゲイン)が生まれ、権利行使価格と株価上昇分の差額が利益になる報酬制度です。
株価・数量・期間が決められている
ただしいつでも取得の権利があるわけではありません。
ポイントは「あらかじめ決められた期間内に、あらかじめ決まった価格や数量で株式を購入できる」ことです。
また、ストックオプションはあくまでも「権利」。
例え会社の業績が悪化して株価が下がったもストックオプション行使をしなければよいので、損を被りません。
ストックオプションの歴史
米国で始まった制度
ストックオプションの始まりは米国です。
始めは金融商品のオプション的な制度でしたが、1970年以降は経営者獲得の方法として広まりを見せます。
その後は欧州でも普及してゆくことに。
日本では1997年に制度として導入
1997年の商法改正以降、日本では制度として導入されます。
その後は東証マザーズが1999年に開設され、ベンチャー企業が増加してゆき、これに連れて利用される機会も増えてゆくのです。
現在は多くの企業のインセンティブ制度に定着しており、毎年600社前後が発行しています。
ストックオプションのメリットとデメリット
ストックオプションにもメリット、デメリットが存在します。以下解説します。
ストックオプションのメリット
人件費の削減
ストックオプション制度は社員が企業へ定着することに効果があり、離職率を低下させます。
これは社員が(ストックオプションの)「権利を行使する前に退職すれば損をする」と考えるためです。
また、ストックオプションがあれば将来的なインセンティブのアピールとなりますし、
業績が上がれば将来的に報酬も上がる期待を含むため、より優秀な人材を確保できます。
他には上場を目指す企業の場合を見てみましょう。
大企業並みの報酬は用意できないが、より優秀な人材が欲しいケースはストックオプション制度が有効になります。
社員のモチベーション向上
ストックオプションを与えることは、従業員のモチベーションアップを向上できます。
自社の業績が上がれば株価も上昇し、ストックオプションの利益が増えるのです。
そのため従業員は自然と会社の価値を上げることを望むようになり、より業務に励み、業績にも影響してゆきます。
また従業員だけではなく経営者も同じ目標・意識をもつので、より連帯感が生まれるでしょう。
他には、ストックオプションは付与された従業員や取締役に損をさせることがない点が挙げられます。
ストックオプションのデメリット
対象者を決定する必要がある
ストックオプションの権利を付与するには、対象者をじっくり選ぶのがポイントです。
また付与の配分によっても差がうまれるため、社員間の軋轢になる恐れもあります。
将来的ではありますが、ストックオプションの権利を行使した従業員が離職するという点も不安な点ではあります。
株価が上昇しない可能性もある
会社の業績が上がれば報酬額も上がる半面、業績が上がらなければ報酬効果はなくなる恐れもあります。
景気変動による影響も考えられるため、不確定要素を含んでいる面もあるでしょう。
また「業績が上がれば」という予測できない条件にはどうしても一抹の不安があるのは仕方ありません。
十分な利益が確保できなかった場合、社員の士気に関わることも考えられます。
特にストックオプションを目当てにしていた社員ならば、退職するリスクも考えられます。
ストックオプションの種類
ストックオプションにはいくつかの種類がありますが、代表的な4種類を解説しましょう。
①税制適格ストックオプション
最も一般的なストックオプション
税制適格ストックオプションはもっとも一般的なもので、通常はこれがストックオプションを指します。
株価の上昇による差額が報酬となる
報酬額が発生するのは、権利行使の際に付与時よりも株価が上昇している場合です。
税制適格の条件を満たせば、課税されるのは権利行使時ではなく、株式売却時になります。
利益確定される時点で課税されますが、企業としては損金算入ができません。
少し面倒な点は、証券会社での特定口座対象外であるので、従業員自身で確定申告をする必要があります。
②株式報酬型ストックオプショ株式で報酬を支払う方式
株式報酬型ストックオプションとは、権利行使の株価が実質の報酬になるものです。
株式を報酬で支払う方式であり、権利行使価格を1円などの低い価格に設定します。
税制適格条件を満たさない
こちらは税制適格条件を満たさないストックオプションです。
権利行使時と株式売却時の両方に課税されますが、企業が損金算入できます。
ストックオプションとしては、株価上昇時のインセンティブが大きく働く方式です。
③有償型ストックオプション
新株予約権を時価で発行
役員などを対象に、新株予約権をその時の時価で発行するストックオプションです。
対価の支払いが必要
有償型ストックオプションは、付与時に対価の支払いが必要になるのが特徴です。
そのため手元資金に余裕のある方でないと利用しにくいと言えるでしょう。
対して通常のストックオプションは付与時には無償になっています。
④信託型ストックオプション
受託者にストックオプションを信託
発行時に付与対象者や配分を決めず、受託者へストックオプションを信託するものです。
信託期間が終了する時点で、社員によって評価を変えてストックオプションを付与します。
個人個人の在籍期間、役職や貢献度によって異なります。
新しい形として近年注目されている
従来のストックオプションでは、社員によっての勤続年数や業績の違いで差をつけることはありませんでした。
しかし信託型ストックオプションでは、人それぞれに付与を変えることが可能であり、企業としても納得できるため近年の注目を集めています。
ストックオプションの導入方法
ストックオプションの導入は、会社法で規定されています。
次の5ステップで解説してゆきます。
①新株予約権の募集事項を決定
内容・数量・期日などを決定
決定する項目は
・募集する新株予約券の内容と数量
・発行価額
・行使価格
・割当日
・払込期日
となります。
公開会社かどうかで機関決定方法が異なる
また機関決定の方法が異なるのですが、「公開会社」であれば原則は取締役会が、「非公開会社」であれば株主総会の特別決議になります。
②割当契約の締結
付与対象者との契約
決定した対象者と 割り当て契約の締結をおこないます。
ここでは新株予約権の申し込みと割り当ての手続きが必要です。
総額引受方式では手続きを省略可
付与対象者と割り当て数が決定済ならば、手続きを省略することも可能です。
この方法は総額引き受け方式と呼ばれています。
③新株予約権原簿の作成
発行後は速やかに新株予約券原簿を作成することが義務付けられています。
記載に必要な事項は以下の2点です。
・予約権者の氏名と住所を記載
・新株予約権の内容と数を記載
④登記申請
割当日から2週間以内に登記申請
会社の登記簿変更は、割当日から2週間以内になっているので注意が必要です。
株式や資本金額の変更はもちろん、将来行使される予定の新株予約権も登記必要事項になります。
期限を過ぎると制裁金が発生する可能性も
上記の2週間を過ぎると、ペナルティとして制裁金(過料と呼ばれる)が発生する恐れがあります。
必ず期限内に登記申請するようにしましょう。
またストックオプションの登記申請は複雑な内容になっているため、しっかりと理解した上で作成するのがポイントです。
もし難しいならば、専用支援サービスを活用するのもよいでしょう。
⑤調書の提出
税制適格ストックオプションの適用要件
適用要件として、新株予約権利者の氏名を記載した調書を税務署に提出しなくてはなりません。
この点も重要で、未提出だと以下の3点のリスクが生まれます。
・税務優遇措置の適用が受けられない。
・付与対象者の税額が増えてしまう。
・報酬効果が薄まってしまう。
ですので、必ず提出期限を守ることが重要です。