コンピテンシーとは?人材評価や面接でのメリット、導入方法も解説

コンピテンシーとは

コンピテンシー(competency)は「能力」「技能」「力量」「適性」といったさまざまな意味があり、近年その概念に注目が集まっています。

成果を発揮する行動特性

特にハイパフォーマーには共通してみられる行動特性であり、コンピテンシーは高い成果にむずびつきます。

社員の能力を分析する

コンピテンシーのもっともポピュラーな活用シーンは企業における人事評価で、社内で実績をあげているハイパフォーマーを評価したり、あるいは彼らを他の人材の評価基準とすることもできます。

評価基準に基づき評価する

コンピテンシーによる評価では、より納得感の強い評価が可能です。これまでの職務職能資格制度では評価基準が上司や評価者によってその差が大きくなってしまいますが、コンピテンシー評価であれば根拠や基準が明確なのでより納得感の強い評価が実現できます。

コンピテンシーの起源

コンピテンシーは共通する行動特性をみつけだし、人材の選抜や育成の指針に役立てようとしたことを起源としています。

1970年代の米国で誕生

誕生は1970年代で、米国のマクレランド(D.C.McClleland)博士が成功者の行動を分析しようとしたのがきっかけとなりました。

能力を発揮する職員の特性

コンピテンシーの高い人材は共通して、組織の役割に応じ安定的に成績をあげ続けることができる行動特性を持っています。

コンピテンシーの活用方法

コンピテンシーがもっとも活用されるのは企業における人事評価のほか、面接などです。

コンピテンシー評価

コンピテンシーによる人事評価はコンピテンシー評価と呼ばれます。コンピテンシー評価では人材の能力の見極めや、当事者のモチベーション維持に役立ちます。

評価の基準を明確化

コンピテンシー評価は基準が明確で、人材の長所・短所を具体的にフィードバックできるので、効率的な人材育成が実現します。

客観的な視点で評価

コンピテンシー評価なら、上司や評価者の主観が混在することがありません。また具体性もあるので、各人の課題も明確になります。

コンピテンシー面接

面接に活用されるコンピテンシーは、応募者がハイパフォーマーに共通した行動特性をどれだけ有しているかを見極めるものです。

面接官の主観によらない評価

コンピテンシー評価同様、コンピテンシー面接も客観的事実に基づき判断することから、面接官の主観によって評価がぶれることはありません。

面接の対応能力によらない評価

従来の面接方法では無意識の思い込みや偏見である「アンコンシャスバイアス」が働いてしまいます。しかしコンピテンシー面接は表面的な情報に惑わされないため、面接の対応能力に左右されやすい雰囲気や第一印象などによらない評価が可能です。

コンピテンシー評価のメリット

コンピテンシー評価では、具体的に次のようなメリットが期待できます。

成果を追求できる

コンピテンシー評価における最大のメリットは成果を追求できることです。これにより、新たなメリットも生まれます。

適切な指導につながる

コンピテンシー評価は評価者にとっては行動ベースでフィードバックをおこなうことができるので、これが指導基準となるので、能力開発や人材育成がしやすくなります。

問題点に対応しやすい

評価対象者は改善点が明確なので行動をイメージしやすく、着実に自身の成長に結びつけることができます。

コンピテンシー面接のメリット

一方、コンピテンシー面接におけるメリットは次の通りです。

企業に利益を生み出す人材の見極め

コンピテンシー面接では採用候補者の行動や考え方などから人材の本質を見極めることができます。また、会話形式で進められることから、誇張や矛盾も見抜きやすくなります。

具体的な体験談を重視

コンピテンシー面接の手法のひとつとしてエピソードを掘り下げて聞いて行くというものがあります。これにより応募者はその場で自分の行動について深く考えなければならず、嘘がつけなくなるため、本心や本質を見抜きやすくなります。

評価のぶれを減らす

応募者の本質を見極められるコンピテンシー面接はぶれがないことから、新卒採用や未経験者といった、スキルを評価しにくい採用にも有効です。

コンピテンシーの導入方法

では企業ではどのようにコンピテンシーを導入すればよいのでしょう。その手順についてみていきます。

モデルとなる人材の調査

コンピテンシーの導入ではまずモデルとなる人材の調査をおこないます。それには既存社員からより高い成果を上げている人材を選出し、十分なヒアリングと観察をおこなって、ハイパフォーマーとしての行動特性を分析します。

そのうえでモデルとなる型を決定しますが、これは主に次のふたつです。

実在型モデル

実際に社内で活躍しているハイパフォーマーたちを元にして作成するモデルです。

人材の調査の結果、現状に即したモデルを作成する場合にはこちらを選択します。

理想型モデル

企業の方針や理念、あるいは事業計画などに基づいた理想的なモデルです。

人材の調査の結果、現状に即したモデルがみつからない場合や企業理念を取り入れたい場合にはこちらを選択します。

コンピテンシーの抽出

次にハイパフォーマーからヒアリングした内容から、その行動特性を抽出します。

成果につながるポイントを重視

抽出の際にはより具体的で、出来不出来が明確になるようにします。またその候補は多くてもかまいませんが、自社に適し、オリジナリティのあるものであることが大切です。

コンピテンシー・ディクショナリーの活用

ハイパフォーマーからヒアリングした行動特性はコンピテンシー・ディクショナリーの要素と照らし合わせます。このコンピテンシー・ディクショナリーとはライル・M.スペンサー とシグネ・M.スペンサーにより1990年代に発表された「あらゆる職務に通じるコンピテンシーリスト」です。

企業の方針とのすり合わせ

抽出したコンピテンシーは企業のビジョンやバリュー、ミッションなどとすり合わせをおこないます。

不適切な要素を除外

企業のビジョンやバリュー、ミッションなどにそぐわないもの、また合致していても、優先度や重要度が低い要素はこれを除外します。

理想と現実のバランスを重視

さらに実現可能かどうか、現実と理想のバランスが調整されていることも重要です。

評価基準の決定

選定したコンピテンシーは「評価シート」にまとめるのがよいでしょう。

成果につながる項目を優先

このとき、特に成果への影響が大きい項目を優先するようにします。すべてのコンピテンシーを評価に取り入れてしまうとかえって運用の負担となります。

従業員の取り組みやすさを重視

また、従業員の取り組みやすさも重視し、継続的に能力向上に活用できるコンピテンシーを選ぶようにします。

コンピテンシーを細分化

コンピテンシーは細分化し、レベルわけしておくことも重要です。これにより人事評価に活用しやすくなります。

およそ3~5段階に分ける

目安としてはおよそ3~5段階にするのが理想的です。また新入社員、中堅社員、ベテラン社員など、立場や役職ごとに分類するとより評価しやすくなります。

公正で客観的な視点

レベルわけしたコンピテンシーは達成度や習熟状態の判断ができるよう、基準を明確化し、公正で客観的な視点が保たれていなければなりません。

運用テスト

上記の手順でコンピテンシー導入のたたき台ができたら評価基準が適正であるかを判断するため運用テストをおこないます。

対象の人材を評価

運用テストでは複数人の中程度の業績の社員を対象とし、ハイパフォーマーよりも高評価にならないかチェックします。また、ハイパフォーマーが実際に高評価になるのか、整合性についても確認が必要です。

結果に応じて修正

導入したコンピテンシーはテストや運用した結果を確認・分析したうえで都度修正しなければなりません。このように試行錯誤を繰り返すことで、より精度の高いコンピテンシーが策定できるようになります。そして組織経営において重要な要素となる人材マネジメントにコンピテンシーを取り入れることには非常に大きな意味も持ちます。


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