クラウド型シンクライアントの比較

「クラウド型シンクライアント」とは?

「クラウド型シンクライアント」は、クラウドサーバに提供された作業環境にユーザーの端末(PC等)からアクセスする仕組みを指します。

そもそも「シンクライアント」とは、サーバー側大きな処理を行い、ユーザーの端末上ではで大容量の記憶媒体(HDD・SSD)を省き、限られた処理のみを行う仕組みのこと。最小限の性能で成り立っていることから、「少ない(Thin)」「クライアント端末(Client)」という意味で「シンクライアント(Thin Client)」と呼ばれています。シンクライアントを利用する場合、アプリケーションの実行やデータの管理などはすべてサーバ側が行います。そして、この仕組みを実現する手段の1つが「仮想デスクトップ」です。

仮想デスクトップ下において、シンクライアント側はキーボードやマウスの操作を暗号化して送信し、仮想デスクトップ側は仮想PCの画面情報を暗号化して送信します。例えば、仮想デスクトップ下でExcelを利用する場合、シンクライアント上にはExcelの画面が見えますが、実際にアプリケーションの本体やデータがあるのはサーバ側です。つまり、シンクライアントはネットワーク経由でサーバにあるExcelにアクセスし、サーバ内に保存されたデータを編集しています。

なお、従来の仮想デスクトップは、自社ネットワークで管理しているサーバ上に仮想デスクトップ環境を構築する「オンプレミス型」が主流でしが、オンプレミス型は膨大な導入コストがかかってしまうというデメリットがありました。

そこで、近年注目を浴びているのが「クラウド型」の仮想デスクトップ。クラウド型はクラウドサービス提供会社の所有サーバ上に仮想デスクトップ環境を構築するため、オンプレミス型よりもコストを抑えることができ、従業員は場所を気にせずいつもと同じPC環境を利用できるメリットもあります。

近年の働き方改革の影響もあり、テレワークを実現する方法として「クラウド型シンクライアント」は注目を集めている仕組みです。

「クラウド型シンクライアント」にはどのようなタイプがある?

クラウド型シンクライアントの提供形態は、「プライベートクラウド」「ハイブリッドクラウド」「パブリッククラウド」の3つに分かれます。

プライベートクラウド

「プライベートクラウド」は1つの企業に向けて構築されたクラウド環境です。他企業とは独立した環境で利用できるため、セキュリティ性が高く、OSやソフトなどのカスタマイズ性に優れているのが特徴です。

ハイブリッドクラウド

「ハイブリッドクラウド」はサービス事業者が提供するクラウド上に、自社専用の仮想デスクトップ環境を構築したクラウド環境です。プライベートクラウドほど独立した環境ではないものの、他の企業が同じ環境を利用することはなく、セキュリティ性は高いと言えます。

パブリッククラウド

パブリッククラウドは、複数企業が共有して利用するオープンなクラウド環境です。そのため、セキュリティ性は必ずしも高いとは言えず、カスタマイズもほぼできないのが難点です。ただし、その分「プライベートクラウド」「ハイブリッドクラウド」と比べて導入費用が安い点が最大のメリットです。

「クラウド型シンクライアント」の選び方は?

価格

クラウド型シンクライアントを比較検討する際に、まずチェックすべきが「価格」です。クラウド型シンクライアントの価格は、買い切りタイプや月額制などサービスによってさまざま。また、利用数によるボリュームディスカウントがある場合や、機能によって別途オプション料金がかかる場合もあります。自社の利用パターンを踏まえたうえで、各社に見積もりをとって比較検討しましょう。

機能

次にチェックすべきなのが「機能」です。働き方改革の影響もあり、近年注目が集まっているため、提供するベンダーも増えており、複数の機能を搭載して差別化している場合もあります。しかし、機能が充実しているものは価格が高額なパターンも。いくら多機能でも使用しなければ意味がないため、無駄なコストがかからないように必要な機能を見極めるのが大切です。

「クラウド型シンクライアント」比較検討時の注意点は?

クラウド型シンクライアントを比較検討する際に、サイジングをしっかりと行うようにしましょう。

導入後に発生する問題として、始業時などアクセスが集中した場合に「仮想デスクトップが遅くて作業がなかなか進まない」という例が挙げられます。このような状況を発生させないためにも、業務を行う人数や規模を正確に把握してサーバのサイジングを行うのが重要です。また、将来的な利用人数増減も考慮するのを忘れないようにしましょう。

主要な「クラウド型シンクライアント」の一覧

「iDEA Desktop Cloud」(イデア・コンサルティング株式会社)

おすすめ対象者

導入前の丁寧なコンサルティングで適正プランを確認したい企業

主要機能

仮想デスクトップ環境利用、多要素認証、アンチウイルスサービスなど

特徴

PCだけでなくタブレットでも同じような操作快適性を実現。

コンサルタントが企業規模に応じてプランを策定してくれるため、初心者にも安心です。

初期費用、月額費用、その他費用

別途問い合わせ

無料プランの有無、無償トライアルの有無

有(7日間)

サポートの有無

別途問い合わせ

「NEC Cloud DaaS」(日本電気株式会社)

おすすめ対象者

利用者数100人以上の中~大規模企業

主要機能

仮想デスクトップ環境利用、VPN接続、ウイルス対策など

特徴

100ID以上対応で利用人数が多い企業もOK。

運用はすべてNEC側で行ってくれるため手間がかかりません。

初期費用、月額費用、その他費用

37,800円~(デスクトップ型)

無料プランの有無、無償トライアルの有無

有(7日間)

サポートの有無

別途問い合わせ

「STclient」(NECネッツエスアイ株式会社)

おすすめ対象者

導入前・導入後と充実したサポートを求める企業

主要機能

仮想デスクトップ環境利用、マルチデバイス対応、

セキュアゲートウェイサービスなど

特徴

低価格のトライアルサービスがあるため、導入前に適正をチェックできます。

充実したサポートで導入後の運用面も安心。

初期費用、月額費用、その他費用

別途問い合わせ

無料プランの有無、無償トライアルの有無

トライアルサービス有(期間などは問い合わせ)

サポートの有無

有(仮想デスクトップ環境のフルバックアップなど24時間365日サポート)

「クラウド型シンクライアント」導入のメリット、デメリット

メリット1:従業員の生産性が高まる

クラウド型シンクライアント導入のメリットは、まず「従業員の生産性向上が期待できる」点です。クラウド型シンクライアントを導入すれば、従業員は場所を問わず業務が可能になります。ネットワークに接続できる端末さえあれば作業可能です。自宅で作業ができれば、プライベートと仕事を行き来する働き方も実現でき、小さいお子さんがいる主婦の方も働きやすくなります。また、仮に災害などでオフィスが使えなくなった場合も、サーバさえ無事であれば保存されたデータを見て事業継続が可能です。従業員の生産性向上と共に、事業継続の安定性も保つことができます。

メリット2:セキュリティ対策が可能

次に、「セキュリティ対策が可能」な点です。リモートワークをするうえで不安視されるのが、ユーザー端末からの情報漏えいやマルウェア感染被害。出先での作業により端末を紛失する危険や、マルウェア感染によってデータを抜き取られてしまう事態に対して、シンクライアントであれば端末にデータが保存されていないため、端末から情報漏えいする心配はありません。また、端末にアプリケーションをインストールすることもないため、インストールによるマルウェア感染も防げます。導入により自然にセキュリティ対策ができるのが、クラウド型シンクライアントのポイントです。

メリット3:管理者や従業員の負担を軽減できる

次に、「管理者や従業員の負担を軽減できる」点です。アプリケーションやデータがサーバに集約されるクラウド型シンクライアントは、さまざまな場面で一括管理が可能。例えばアプリケーションの更新が必要な場合、管理者がサーバ上のアプリケーションを操作するだけで更新できます。管理者は従業員1人1人に更新を促す必要がなく、従業員は更新作業の手間がいりません。また、破損などで端末を交換する事態が発生してもデータをコピーする必要はなく、新しい端末からネットワークに接続すれば継続して業務ができます。このように、さまざまな場面で従業員の作業負担を軽減できるメリットがあります。

メリット4:コストの削減に繋がる

最後に、「コスト削減に繋がる」点が挙げられます。クラウド型シンクライアントを導入すれば、端末を問わず同じPC環境にアクセスが可能です。例えば従業員の自宅PCの使用も可能で、従業員1人につき1台のPCを配布する必要がありません。外回りが中心の営業など、PC作業が少ない従業員は共有PCを使用すれば会社全体の利用PC数を減らせます。結果、コスト削減につながる可能性があるのがクラウド型シンクライアント導入のメリットです。

デメリット1:導入時のコストが高くなる場合がある

一方、クラウド型シンクライアント導入のデメリットとして「導入時のコスト」が挙げられます。クラウド型シンクライアントの導入にあたり、PC端末等のシンクライアントの他、専用サーバ環境も確保する必要があります。そのため、導入当初は多大なコストが発生するのは否めません。場合によっては、従来のように従業員分のPCを用意するよりコストがかかる可能性があります。

デメリット2:信頼性の高いネットワーク環境が必要

次に、「信頼性の高いネットワーク環境が必要」な点が挙げられます。クラウド型シンクライアントでは安定したネットワーク環境が不可欠。ネットワーク環境がよくないと業務に支障が出てしまい、従業員の生産性が下がってしまいます。また、仮にネットワーク障害が起きた場合、業務自体がすべて止まってしまう可能性も否めません。このような事態を防ぐためにも、信頼性の高いネットワーク環境の構築が必要です。また、基本的にオフライン環境で利用できない点もクラウド型シンクライアントのデメリットと言えます。

まとめ

いかがだったでしょうか?

これを機にクラウド型シンクライアントの導入を検討してみてください。


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