ホスピタリティとは?意味や効果、サービス業や医療業界でのホスピタリティを解説

今年の4月に入社式をリアル(対面式)で実施した企業は6割以上で昨年の約2倍を記録したと言いますので、やっとノーマルな状態に戻りつつあるようです。とりわけ、飲食店など接客が必須の企業はほっとしていると思います。

入社式で社長などから「わが社の運営方針は『ホスピタリティ』が基本なので、その精神を忘れずに業務に取り組むように」と訓示を受けた新入社員の方がいるかもしれませんね。

また、「ホスピタル(Hospital)」はご存じの英語で「病院」を意味しますので、「ホスピタリティ」は医療関係でも使われております。さらに、ホスピタリティの精神を人間が持つことで素晴らしい社会が生まれる可能性も期待できます。そこでここでは「ホスピタリティ」について取り上げますので参考にしてください。

ホスピタリティとは

「NPO法人日本ホスピタリティ推進協議会」は、ホスピタリティについて「ホスピタリティとは接客・接遇の場面だけで発揮されるものではなく、人と人、人とモノ、人と社会、人と自然などの関わりにおいて具現化されるものである。」と定義しています。これはホスピタリティの精神を含めた大きな枠組みの中での定義と言えます。

ホスピタリティの語源

そこで「ホスピタリティの語源」を調べたところ、「ラテン語から派生した英単語が由来」ということが分かりました。

ラテン語から派生した英単語が由来

ラテン語では「ホスピタリティ」という言葉はなく、客人の保護者を意味する「hospes」から派生したものと思われます。「hospes」をウェブ専用辞書英辞郎で調べてみると発音は 

「hɑ́spis」ですから外来語のカタカナ読みが得意な日本人は「ハスピス」と言う方が外国人に通じるのではないかと思います。

「もてなし」や「歓迎」を意味する

「ホスピタリティ」と言うと日本語では「もてなし」や「歓迎」を意味します。その他に類義語として「厚遇」「歓待」「心遣い」「気配り」などがあげられます。「厚遇は厚くもてなすこと」「歓待は喜んでもてなすこと」「心遣いや気配りは細心の注意を払って、相手の人の役に立ったり、喜ぶようなことをすること」を意味します。

接客や医療などで使用されるホスピタリティ

「接客や医療などで使用されるホスピタリティ」は「顧客への行動や考え方を表す」あるいは「広い意味でのホスピタリティ」になります。

顧客への行動や考え方を表す

接客業や医療従事者は顧客に対して少なくとも最低限のマナーを持って接する必要がありますが、「ホスピタリティ」は顧客に対して、それ以上の献身マインドを持って接することです。

例えば、「きょうは多忙だったのでワインでも飲みながら食事をしよう」と思ってレストランに入ったとします。扉を開けると案内係のスタッフが笑顔で「いらっしゃいませ」と深々とお辞儀をして「顧客の意向を聞いて希望するテーブルに案内し、左利きか右利きかを聞いてその人の使いやすいように食器類を配置する。メニューは顧客が決めるまでそばにいてどのようなものか説明する。ワインの選択にも付き合って最高の状態のワインを提供する等々、通常の接待を超えた心のこもった対応をすると人間ですから顧客も感激してくれます。 

広い意味でのホスピタリティ

以上は店舗のスタッフと顧客の間で「ホスピタリティ」の精神を介して結ばれた2者間の絆ですが、このようなことが続けられれば店舗とすべての顧客の間で太い絆ができることになります。広い意味での「ホスピタリティ」と言うことができます。

サービスとの違い

 ホスピタリティに似ていて時々混同しているのではないかという言葉に「サービス」があります。比較すると分かりますが、サービスには主従関係があり、ホスピタリティは対等な関係と言うことができます。

サービスは主従関係

「あの店は必ずお土産をつけてくれてサービスが良いでの今回も新年会はあの店にしよう」と言うような会話をしたことはありませんか?」サービスは一方の人が他方の人に何かを提供したりパフォーマンスをしたりする行為をいいます。「提供する人が従で受ける人が主」

という主従関係ができます。

ホスピタリティは対等な関係

これに対してホスピタリティは常に対等な関係にあります。顧客が喜んでくれたり感謝してくれる様子を見たい、あるいは信頼の絆を結びたいために心を尽くして対応をしてくれる関係をいいます。例えば、生徒の海外旅行の引率者が、ホテルに戻った生徒が購入したお土産の封を切ってしまった時に、自分持ちでタクシーを呼んで生徒と一緒に購入先のデパートまでいって交渉し、新しいものに交換した行為などは自分の任務を超えたホスピタリティの精神が発揮された結果だと思われます。(外国で免税品として購入したものは開封すると関税がかかることがあります。)

ホスピタリティの効果

ここでは、ホスピタリティを心がけて活動するとどのような効果があるのか「仕事への効果」や「人間性の向上」について述べます。

仕事への効果

ホスピタリティマインドがもたらす仕事への効果としては「積極的に行動できるようになる」「自分のするべき仕事が分かる」「自発的に行動できる 」「生産性が向上する」などの効果が期待できます。

積極的に行動できる

接客業などでは通常の業務と違って顧客との応対で失礼になることは厳禁です。そのため多くの企業が応対方法についてマニュアル作成をしています。マニュアルに従って活動すれば自分の行動は高い評価を受けるはずです。しかし、ホスピタリティマインドがあると、それだけにとどまらず顧客に心から喜んでもらえるための活動を考えますので、さらに積極的な行動につながります。

自分のするべき仕事が分かる

ホスピタリティマインドがあると常にランクが「高いおもてなし」を目指していますので、ルーティンワークの上に自分が何をするべきか判断することができます。自分がするべき仕事を分かった上で活動に取り組んでいます。

自発的に行動できる

日常の経験とホスピタリティマインドの作用により「この顧客にはこのような応対をしてあげれば最高のおもてなしになるに違いない」と確信できれば「自発的に行動できる」こともホスピタリティの目的の1つです。

生産性が向上する

最初は1個人のホスピタリティマインドから始まった顧客への心がこもったおもてなしは、顧客の感謝の言葉などで必ず拡散します。店舗全員のスタッフが太い絆で結ばれることによりインセンティブが働き「生産性が向上します。」

人間性の向上

 ホスピタリティは「他者への気配りができる」「信頼を得られる」「自分に自信がつく」「心にゆとりができる」などの有益性がありますので、「人間性の向上」にも役立ちます。

他者への気配りができる

ホスピタリティマインドが高い人はいつも「他者への気配りができる人」です。気配りは思いやりの類語でもありますので、他者への気配りは他者への思いやりでもあります。何も対価を期待することなく純粋な思いやりから行った活動について感謝され、それに喜びを感じることで、その人の人間性はさらに向上します。

信頼を得られる

ホスピタリティマインドに基づく活動は信頼を得られる活動でもあります。「私をもてなしてくれるために深い思いやりをもって尽くしてくれた」と感激すれば、2人の間には絶大な信頼関係が生まれます。

自分に自信がつく

以上のような活動の繰り返しでホスピタリティマインドはますます向上し、「自分の活動で多くの人に感謝されている。自分が歩んできた道は正しかった」と思うようになり「自分自身に自信がつく」ようになります。

心にゆとりができる

自信がつくことで「心にもゆとりができる」ようになり、おそらく社会的にも認知されるようになるのではないかと思います。そのような好結果が巡ってきても、それは自然体の中で受け止め、ホスピタリティマインドを忘れずに活動を続けることで、社会に良い影響を及ぼすとともに、自分たちの「人間性の向上」につながっていきます。

サービス業におけるホスピタリティ

サービス業におけるホスピタリティは、「顧客満足度の向上」と「従業員のモチベーションの維持」を目指すことにあります。

顧客満足度の向上

「顧客満足度の向上」を図るには,「見返りを求めない姿勢」と「もてなしの心を持つ」ことが求められます。

見返りを求めない姿勢

顧客満足度の向上を図るには、「見返りを求めない姿勢」を保持することが大切です。サービス業ですから従業員には顧客に対する応対の仕方を厳しく訓練していると思います。しかし、マニュアルに沿った応対の仕方は利益をあげるための計算的な側面がありますので、顧客は「感じがいいお店だと思っても心からもてなしてくれている」とは感じないと思います。サービス業といえどもホスピタリティマインドを発揮して「見返りを求めない姿勢」を示すことがポイントになります。 

もてなしの心を持つ

見返りを求めずに、ホスピタリティマインドが目指す「もてなしの心を持って」顧客に応対してみてください。良い結果に巡り合えると思います。

従業員のモチベーション維持

サービス業におけるホスピタリティでは「従業員のモチベーションを維持すること」も重要です。モチベーションは英語で「motivation⇒動機・自発性・やる気・刺激・意欲」などの意味がありますが「自発性・やる気・意欲」を維持することが求められます。

意欲的に取り組める

モチベーションが維持されることで、「従業員は意欲的に毎日の活動に取り組む」ことができます。その時にはやはりホスピタリティマインドを持って取り組んでください。従業員全員がお仕着せでなく、心から顧客のおもてなしに徹することで評判の良い店として地域の中で有名になるでしょう。

職場の意思統一につながる

従業員全員がホスピタリティマインドを持つことは、職場の意思統一につながります。店を訪れた顧客が「この店は本当に心が休まる」と感謝してくれれば従業員全員で共有することができ人生が豊かになります。

医療業界におけるホスピタリティ

ここまではホスピタリティマインドが必要とされるサービス業について述べましたが、医療関係や介護その他の業界でもホスピタリティの必要性が説かれるようになっています。

例えば、宿泊業、運輸業、旅行業、ブライダル、テーマパーク、空港などがホスピタリティ産業と呼ばれていますがここでは医療関係でホスピタリティがどう捉えられているのか述べます。

近年浸透してきたホスピタリティ

近年は医療の分野でもホスピタリティマインドを持って応対することの重要性が認識されています。定期的に接遇マナーと合わせてホスピタリティについても学ぶ講座を設けている大学病院がいくつかあります。しかし、チームを組んでケース対応(治療やリハビリ等)するためホスピタリティをどのように実践したらいいのか悩んでいるようです。

基本は「患者さんに対して思いやりの心」を持つことです。そして医療関係は多くの場合家族も関係しますので「患者と家族へのいたわり」が必要です。

思いやりの心

「思いやりの心」は持っていても「毎日仕事に追われて時間が取れない」という話を何度か聞いたことがあります。でも評判が良い病院の看護師は、普段の仕事の中で信頼関係を築くことが大事と言います。例えば朝の検温の時間に笑顔で挨拶して「よく眠れましたか?」

「何か困っていることがありますか?」「治療で分からないことがありますか?」等々些細なことでも会話を続けることで患者さんは心を開いてくれるといいます。患者さんは「心のケア」も一緒にしていくことが大切といいます。 

患者や家族へのいたわり

患者さんからの信頼を得ると同時にご家族へのいたわりにも心をくばる必要があります。その際は、「毎日のようにおいでいただきありがとうございます。Mさんも感謝しておられると思います。私もお手伝いさせていただきますので、何なりとお申し付けください。」など家族へのねぎらいと一緒にケアに取り組む姿勢を示すことが有効と言います。

医療の質の向上

大学病院などが実施しているホスピタリティ講座は「医療の質の向上」にも寄与すると言われています。「接遇力が身について」「医療従事者側にも好影響」をもたらしてくれるからです。

接遇力が身に付く

接遇力は顧客と出会ったときの対応方法を言います。基本的なマナーを守ることが大切です。次の5項目に気を配る必要があります。

1 最初に交わす挨拶で患者さんに安心感を与えることができているか

2 清潔感がある身だしなみか

3 常に明るい表情で患者さんに接しているか

4 言葉遣いは敬語を使っているか

5 立ち居振る舞いで患者さんに不快感を与えていないか

です。

医療従事者側にも好影響

上記のような接遇力が備わってくると、医療従事者側にも良い影響がもたらされます。

患者さんやご家族は不安の中にいますので、「この先生なら色々聞いても大丈夫だ」と安心すると思います。

対等の立場で接する

病状や治療方針などを説明する時だけに限らず、話し合いをするときは常に対等の立場で接するようにしてください。病気治療のプロフェッショナルと患者や家族という構図は、どうしても上下の関係になりがちです。それを打ち破ってホスピタリティの精神で接することにより治療に良い効果が出る可能性があります。

患者に安心感を与える

対等の立場だと患者さんは病気や治療について何でも聞けると思い、安心感と病気を治す意欲が沸いてくると思います。

家族から信頼される

また、家族は「この先生なら心配しないで治療を任すことができる」と信頼されます。


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