マルチホーミングの比較

「マルチホーミング」とは?

「マルチホーミング」とは、複数のISP(インターネットサービスプロバイダ)を通じてインターネットに接続する仕組みを指します。

今や、インターネットは企業の活動において欠かせないものになりました。そんな中で、インターネット接続に不具合が発生すれば業務に多大な影響が出てしまいます。そのため、企業は業務が円滑に行えるよう、インターネット環境を整える必要があります。

そこで、注目されているのが「マルチホーミング」。一般的に、企業は特定の1社とのみ契約して1つの回線を使用します。一方、マルチホーミングは複数社と契約し、2つあるいはそれ以上の回線を使用します。マルチホーミングを採用した場合、仮に1つのISPに障害が発生しても他のISPに接続できるため業務に支障が出ることはありません。このように複数のISPを利用することで回線負荷を軽減し、インターネット障害を防ぐのがマルチホーミングの目的です。

なお、マルチホーミングと似ている仕組みとして間違われやすいのが、「リンクアグリゲーション」と「ADC」です。

「リンクアグリゲーション」はマルチホーミング同様にISPを複数利用することを指します。ただし、「複数社と契約してISPを複数利用する」マルチホーミングとは異なり、「1社と複数契約をしてISPを複数利用する」のがリンクアグリケーションです。どちらも回線を分散しているため通信の安定性が期待できますが、耐障害性に欠けるのがリンクアグリケーションのデメリット。1つのISPに障害が発生した場合、障害元が同じになるリンクアグリケーションは、結果業務に支障をきたしてしまいます。

そして、耐障害性を主な目的とするもので「ADC」があります。マルチホーミングが2つ以上の回線を使用して障害を防ぐのに対し、ADCはサーバを2つ以上設置して1つのサーバへアクセスが集中するのを防ぎます。つまり、回線の負荷を防ぐのが「マルチホーミング」、サーバへの負荷を防ぐのが「ADC」となります。

「マルチホーミング」、そして「リンクアグリゲーション」「ADC」は、どれもインターネットが不可欠になった近年において重要視されている仕組みです。

「マルチホーミング」にはどのようなタイプがある?

マルチホーミングには、「マルチホーミング専用型」と「多機能型」の2タイプがあります。

近年増えている「多機能型」は、主にADCにマルチホーミング機能が搭載されているタイプ。安定したネットワークを維持できるだけでなく、セキュリティ面も含めた総合管理ができるサービスとなります。ただし、機能が多すぎると使いにくいと感じる場合もあるため、自社に必要な最低限の機能をそろえたサービスを選ぶことが重要です。

「マルチホーミング」の選び方は?

機能性

マルチホーミングを比較検討する際には、まず「機能性」をチェックしましょう。ADC機能とあわせた多機能型はもちろん、マルチホーミング専用型でもさまざまな機能が搭載されている場合があります。

よくある機能としては、インターネット側からの接続負荷を分散する「インバウンド」、社内側からの接続負荷を分散する「アウトバンド」、遅延時間や帯域幅などを最適化する「トラフィック分析機能」などがあります。まずは自社の課題を整理し、どの機能が必要かを見極めてサービスを比較検討しましょう。

価格

次にチェックすべきが「価格」です。多機能サービスは優秀に思いがちですが、機能が多いほど価格が高額になりがちです。さまざまな機能が搭載されていても、使用しなければ意味がありません。無駄なコストをかけることのないよう、自社に必要な機能を最低限そろえたサービスを選びましょう。

「マルチホーミング」比較検討時の注意点は?

マルチホーミングの導入を検討する際に、同時に帯域保証回線の利用も比較検討しましょう。

マルチホーミングを採用することで、インターネット回線の帯域幅は確保できます。一方で、ISPが用意する「SLA(サービス品質保証)」には、利用できる回線容量が保証されている「帯域保証型回線」があります。マルチホーミングと同じようにインターネット接続の安定性を保てるため、マルチホーミングを利用するか、帯域保証型回線を利用するかもあわせて検討しましょう。

マルチホーミングは「ベストエフォート」と言われる通信速度が保証されない共有回線のため、やり取りするデータ量が増えるほど通信速度は遅くなってしまいます。一方、帯域保証回線は一定の通信速度が保証されますが、通信料金が高額になる可能性があります。

自社のネットワーク規模によっても、どちらが最適な手段かは異なります。従業員が少なくデータ量が膨大になることがなければ、コストを抑えて導入できるマルチホーミングがおすすめです。インターネット回線を使用する人数や、通信するデータ量などを踏まえて、どちらを採用すべきか検討しましょう。

主要な「マルチホーミング」の一覧

「ビジネスセキュリティ」(株式会社 USEN ICT Solutions)

おすすめ対象者

さまざまなインターネットリスクに対応したい企業

主要機能

マルチホーミング、ルータ機能、ファイアウォール、ロードバランサなど

特徴

マルチホーミング機能だけでなく、豊富なセキュリティ機能を搭載。

ビジネスにおけるさまざまなインターネットリスクに対応できます。

初期費用、月額費用、その他費用

別途問い合わせ

無料プランの有無、無償トライアルの有無

別途問い合わせ

サポートの有無

有(24時間365日 機器の運用・監視)

「ArrayAPVシリーズ」(株式会社日立ソリューションズ)

おすすめ対象者

低コストで多機能な製品を求める企業

主要機能

サーバ負荷分散、マルチホーミング、セキュリティ機能など

特徴

マルチホーミング機能、セキュリティ機能などを搭載した多機能型のADC。

インバウンド、アウトバンド双方向通信の回線負荷軽減が可能です。

初期費用、月額費用、その他費用

別途問い合わせ

無料プランの有無、無償トライアルの有無

(電話・メールによるサポート、バージョンアップ版のソフトウェア提供など)

「マルチホーミング」導入のメリット、デメリット

メリット1:生産性の向上

マルチホーミング導入のメリットは、まず「社員の生産性向上が期待できる」点です。インターネット環境は企業のビジネス活動において不可欠なものです。マルチホーミングの採用でアクセスが集中しても安定したインターネット環境を保つことで、よりスムーズに業務が進めることができます。結果、社員のパフォーマンスが上がり、企業の業績向上も期待できます。

メリット2:ネットワーク障害のリスクに事前に備えられる

また、「ネットワーク障害によるリスクに事前に対応できる」点もマルチホーミング導入のメリットです。インターネットに障害が発生すれば業務がストップするのはもちろん、場合によっては大きなビジネスチャンスを逃す可能性もあります。このようなリスクを防ぐためにも、複数回線を利用するマルチホーミングは効果的な手段です。

デメリット1:初期費用がかかる

一方、「初期費用がかかる」点がマルチホーミングのデメリットとして挙げられます。サービス導入にあたり、機器購入のコストがかかってしまいます。しかし、帯域保証の高額なISPと契約する場合に比べれば、帯域保証をしないISPと複数契約する方が安く済む場合もあります。導入にあたっては各社の見積もりを確認し、自社にとって最適なサービスを選びましょう。

デメリット2:導入・運用の手間がかかる

また、「導入や運用の手間がかかる」点もマルチホーミング導入のデメリットと言えます。サービスによっては、導入時の手厚いサポートや運用まで行ってくれる場合もあるので、自社だけでの導入・運用が難しい場合は、サポートが充実しているサービスや、業者が運用まで行ってくれるサービスも視野に入れて比較検討しましょう。

まとめ

いかがだったでしょうか?

これを機にマルチホーミングを導入してネットワーク接続をより強固なものにしてください。


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